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2015-07-14

2015年7月12日 烏來波露山 台風一過後の登山

樂佩山の登りから見る波露山(2014年11月撮影)、右に下る尾根が今回歩いた西南稜
先週は插天山脈の南插天山を登った。今回は、插天山脈と南勢溪を挟んだ対岸の山々の一つ、波露山を登った。台北を流れる主要河川のひとつ、新店溪の上流南勢溪は、烏來の街で二俣に別れる。西に行く川はそのまま南勢溪の名前で上流へ遡る。東は桶后溪と名前を換えて上流へ続く。源流近くは昨年訪れた宜蘭の烘爐地山などになる。この二つ川の間には山塊が控えている。そのうちの一つが波露山で、稜線で露門山や阿玉山など主要なピークと連なる。今回は戦前はリモガンと呼ばれた烏來福山からの登山である。

西南稜線道を登り、哈盆古道に下る
下山後哈盆古道を約4km歩く
波露山は、頂上が広く平な山である。尾根も巾があり、なだらかに麓へおりていく。まんじゅうのような山といえばよいか。対岸の樂佩山から山容を見ると、それが顕著だ。登山路は、今回たどった福山側から、隣の露面山から縦走してくる尾根、そしてもうひとつは内洞林道から上がってくる尾根道だ。福山側の登山道は、卡拉莫基産業道路末端からの登山道と哈盆古道の途中からの道がある。それ以外にも卡拉莫基山を経由する道もあるようだ。今回は、卡拉莫基産業道路末端の登山口から登り、西南稜に上がった後頂上へ、その後哈盆古道3.8km位置の登山口に下りた。朝は、台風一過後の素晴らしい晴天だったが、昼過ぎ下山を始めるとすぐ大雨が降り出し、登山口に帰り着くまで数時間雨の下山となった。

南勢渓の右岸側、谷を挟んで插天山脈と向き合う
本来、この週末は台中の谷関付近の山を一泊二日で登る予定であった。昌鴻台風の接近で、11日土曜日は天気が良くないことが予想され、この予定は延期した。しかし、日曜日は天気が回復しそうなので、以前より登山を考えていたこの波露山に変更した。台風は、台湾の東をかすめて北上、沖縄などはかなりの影響があったようだ。上陸はしなかったが、勢力が大きく台湾北部は影響があった。実際、南勢溪は川幅いっぱいに、轟々と水が流れ雨量が多かったことを物語っている。
魯培山(左)から北插天山の山並み、手前に福山の集落
樂佩山(左)と卡保山、谷間の南勢溪は川幅いっぱいに水が流れる
登りはじめの急坂、背後に水量が多い沢が見える
11日は、台風が過ぎ天気も回復しだしていた。今回もカーシェアでのアクセスである。MRT古亭駅を6時半に出発、7名のパーティだ。北107郷道を進み、7時38分に福山の集落につく。ここから左に南勢溪の谷に下り、福山1号橋をわたって卡拉莫基産業道路を登っていく。途中、右の樹木が切れて、素晴らしいパノラマが展開する。先週登山の魯培山から北插天山,樂佩山そして卡保山までの插天山脈の主稜線が高い。北插天山から東に下る枝稜の麓はリモガン、福山の集落だ。日本統治時代の台湾山岳会主要メンバー千々岩助太郎が部長をしていた台北工業学校山岳部は、昭和15年秋このリモガンを基地に插天山脈の山々を登った。ここから見ると、かれらがどのようなルートを経て登っていったのか、それが見えるようだ。

雑木林の中を登る、大石が二つ
増水した小沢わきを行く
更に道を行く。道脇には車が二、三十台駐車してある。後にわかったのだが、彼らは台風後の沢釣りを楽しむためにやって来た釣人の車である。哈盆古道(卡拉莫基古道)の入口を過ぎ、空いている場所に駐車する。8時に出発、少しのぼって登山口に着く。登山口は枝沢のすぐ脇だが水量がとても多い。登山道はいきなり急坂で始まる。補助ロープや木の根を掴み、滑らないように登る。10分足らずで、道は雑木林の尾根道になり、竹林を通り過ぎる。日差しが射しこみ、森は明るい。思っていたほど道は濡れておらず、また下草も少ない。登山口から20分ほど来ると、道に水が流れている。さらに進むと小沢にでる。普段であれば、これほど水量が無いはずだ。数分で沢を離れ、山腹の登りになる。斜面は勾配が増し、苦しい登りが続く。8時44分、急坂の途中で少し平な場所があり、休憩を取る。

急な斜面を登る
杉林の急坂を行く
稜線まであと落差200mぐらいである。急坂はまだ続く。足元は滑りやすい。木々の間で少し景色が見える。位置からすると、おそらく檜山の方向だろう。上の方が明るくなってくる。稜線は近い。Vさんは今日は調子が悪いようで、すこし休憩したいとのこと。数分休憩し、また登る。杉林の中を進み、坂がゆるくなってくる。9時30分、卡拉莫基山への分岐に着く。分岐にある藍天隊の道標は今年1月のもので、また新しい。

卡拉莫基山への分岐部
風でおられた枝が道を塞ぐ
尾根は巾がとても広い。頂上までは、この西南稜を進む。台風の強風で吹き飛ばされたと見える枝が道を塞ぐ。台風の影響は確かにある。ところどころ、急坂も現れる。Vさんは、体調がすぐれず、ここから往路を戻り下山した。10時に開けた場所で休憩を取る。尾根といっても、とても幅が広いので谷も現れる。山腹を回り込んだあと、涸沢の中を進み、また右に登る。10時17分、熊笹が現れその間を進む。その先少し、右に凹った場所が現れる。波露池だ。池といっても、大部分は草に埋もれている。山道に近い部分に水がある。池の端を回りこみ、湿った場所を過ぎる。しばらく登りが続く。尾根の巾も狭くなってくる。10時37分、大きな倒木のある広場で休憩する。

谷状の部分を登る
波露池の水が右下に見える
波露池
巾の広い尾根を進む
哈盆古道への分岐部
登るに連れ、樹木の高さが低くなり高度が上がってきた事を感じる。ところどころ、熊笹も現れる。11時19分、哈盆古道へ下る登山道との分岐に着く。少し広場になっていて、ここで休憩を取る。頂上へはまだ1kmぐらいと少しあるものの、標高は1400m近くになっていて、標高差はわずかだ。休憩後、途中の二つのコブを越していく。少し急坂を下り、左山腹を横切って行く。2つ目のコブから少し下り、最後の坂を登りきって、12時4分に波露山頂上(標高1,418m)に到着する。ここはとても広い頂上の中心だ。三角点基石があるが周囲はすべて樹木で、展望は全くない。ビールで乾杯する。頂上わきの倒木のある場所で腰掛け、ゆっくり昼食を取る。

ここを下り登り返せば頂上だ
波露山頂上
40分ほどの休憩後、下山を始める。歩き始めようとした時、雨が降り出した。雨具を取り出して着ける。朝は、晴れ渡った空だったが、残念ながら先週に引き続き雨の下山となりそうだ。もともと展望がないので、あまり天気には注意を払っていないこともあるが、すこし意外な天気の変化だ。天気予報では30%の降雨率であった。やって来た尾根道を戻る。13時20分、約30分で分岐へ戻り一息ついたあと、左に哈盆古道へ下る。落差約800mの下り道である。

雨の中急坂を下る


道は急坂で始まる。濡れた土の道は滑りやすい。熊笹もところどころ現れる。尾根の形状が明らかになってくる。14時20分、少し平な場所で休憩をとる。雨は相変わらず降っている。手袋やタオルだけでなく、雨具の内側の汗でびっしょりだ。濡れた落ち葉は、その下がとても滑りやすく、注意を緩めると足をすくわれる。15時20分、約1時間の注意深い下りのあと、少し休憩する。標高は850m、植生の変化でだいぶ下ってきたことを感じる。残りは約200mである。
急坂の最後を下る




手元の地図では、この部分ではなく、東側の枝尾根を下りそこから山腹を横切る形になっている。しかし、横切る部分は、以前大きく崩れてしまったとこのことで、今歩いている道が開かれたようだ。もともと雨で濡れた道は踏跡がわかりにくいが、明らかに新しく歩かれている道であることがわかる。尾根上を直線的に下る。16時4分、焚火の後もある広場にでる。積石の土留め壁があるので、以前は何かの目的で切り開かれた場所だ。道は、踏跡がはっきりしたものになる。僅か2,3分で哈盆古道へ飛び出る。雨は上がり、薄日も差してくる。哈盆古道は、歩きやすいしっかりした道なので、ここで雨具を取り身軽になる。

3kmキロポストを過ぎる、傘をさして歩く
哈盆古道は、もともと原住民の狩猟用道で、それを整備した道だということである。福山に近い部分は卡拉莫基古道という別名称で扱われている。東に進めば宜蘭の福山植物園に続く。福山植物園周辺は保護区域で、入るためには許可が必要だ。16時30分、身軽になったところで古道入口に向け、西に歩く。整備された道は、とても歩きやすい。小さな水鴨腳秋海棠花の薄いピンクの花が、道脇に群生して咲いている。3.5kmのキロポストを過ぎ、少し進むと枝沢が道を横切る。梯子を下り、沢を渡る。水量が多い。渡ると、またまもなく雨が降り出した。雨脚は次第に強くなる。傘を取り出してさす。道が良いので、傘で十分だ。

増水した枝沢を渡る
16時53分、3kmキロポストを過ぎてまもなく、先程よりずっと大きな枝沢を越す。安全のためのロープなどがあるが、水量が多くて飛び石を渡る訳にはいかない。もともと靴の中もびっしょりなので、そのまま水の中を歩いて渡る。古道は、ところどころ以前の土砂崩れなどのため、それを巻いていく部分もある。そのため、少しの上り下りはある。コンクリ階段が現れ、17時48分最後の枝沢を越す。ここも水量が多く、そのままジャブジャブ水の中を歩く。左に卡拉莫基古道分岐のある橋を越え、右にコンクリ階段を登る。18時少しまえ、古道入口に着く。Vさんは車を入口まで回して待っていた。

雨が上がったてきた夕刻の樂佩山、手前の巫山が印象的だ
雨中の下山で、哈盆古道の部分もいれて約5時間半を要している。登りよりも時間がかかっている。途中、哈盆古道に下りたあたりで一時雨がやんだものの、登山口へもどりはじめて霧が上がりはじめた。下山はずっと雨であったわけだ。勿論全身濡れネズミである。登山口ですべて着替える。メンバーは、ヤマビルがついていないか慎重に脱いだ衣服を点検していた。筆車はヒルにはやられていないかった。雨具をつけていることや、登りの時は下草があまりなかったことも関係しているだろう。距離は約12.5km、活動時間は休憩を含め約10時間である。累計で約1400m超の登攀である。天気が良ければ、これほど時間はかからないだろうが、ルートとしてはクラス4、体力的にもクラス4である。烏來の山は、雨も多い。そうした事を踏まえて登る必要がある。経験者向けの山である。

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