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Broadwood Tower |
ロンドンの南西にあるサリー州(Surrey Borough)は、多くの農場や自然が残っている。ロンドンに近接するので、都会を離れて自然を求める人が多く訪れる。今月初めに訪れた
St. Martha's hillはそうした場所の一つだ。この丘は、イギリス島東南部に東西に走るNorth Downsと呼ばれる標高200数十メートルのピークを持つ、なだらかな稜線である。白墨と同じチョーク(Chalk)と呼ばれる柔らかい石灰岩で構成されている。いくつかの河がこの長く続く稜線の途中で南北に流れ、山脈を切断するように谷を構成している。
今回訪れたのは、St.Martha's hillからさらに東に進んだ場所にあるBox Hillと称される丘である。西側にはMole河の谷があり、そこから東に登って続く最高点227mを持つなだらかな丘である。南側に広がる谷を見下ろすことができる草原の丘や、主に広葉樹の森林、静かな小村など、それをめぐるハイキングコースがある。この一帯は、英国ナショナル・トラスト(National Trust)により、管理メンテされている。ロンドン中心から約31マイル(約50㎞)と比較的近いので、年間80数万人が訪れるという。コースは、ナショナル・トラストが設定したルートである。この丘や谷をめぐり、上り下りが続く。標高自体は低いが、累計で600m近く登っており、距離も16.5㎞ほどあった。数字の上では台北近郊低山登山と同じような、山歩きであった。
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鉄道駅からスタート、時計回りに回遊 |
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Martha's Hill(青)とBox Hill(赤)のロンドン中心との位置関係 |
筆者の滞在ウォーキング(Woking)からだとドーキング(Dorking)はちょっと距離がある。一般交通機関利用だと、途中ギルフォード(Guildford)で乗り換えが必要だ。鉄道で行くこともできるが、今回は滞在地近くのバス停から34番バスでギルフォードへ行き、そこからGreat Western鉄道でドーキングへ向かう。実は、バスもあるが便数が少なく、乗り継ぎがうまくいかないとかなり時間のロスになる。
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ギルフォード駅 |
朝7時20分過ぎに出発し、近くのバス停で34番バスを待つ。案の定10分ほど遅れてきた。朝の交通ラッシュで、車が多い。街並みを抜けると、遅れを取り戻すかの如rく、バスは飛ばす。それでも予定時刻より15分遅れて8時33分ギルフォードに到着する。ここから32番バスがドーキングを経由していくが、8時30分発ですでに発車していた。代案で鉄道駅へ向かい9時10分発のRedhill行の列車を待つ。ホームには待合室があるので、助かる。列車は遅れることなく、予定通りにやってきた。
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Dorking Deepden無人駅プラットフォーム |
ギルフォードから先は未電化区間である。列車はディーゼルカー三台編成だ。床下のエンジンの響きを感じる。ギルフォードを出発し、東に曲がっていくと、左側車窓からSt.Martha's hillが見えてくる。26分の乗車でDorking Deepden駅に到着。ドーキングは、駅が3つある。Dorking、Dorking WestそしてこのDorking Deepden。Dorking Deepdenは住宅が多くできたので、新たに新設された駅のように見える。無人駅だ。
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Pixhamから望むBox Hill |
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Mole河、雑木林の向こうはBox Hill |
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草地を突っ切る公衆歩道 |
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ナショナル・トラストのハイキングルート |
9時39分に駅を出て、公衆歩道を伝い、線路の橋をくぐってPixham集落へと出る。クリケット場から、これから向かうBox Hillが望める。空はまだ曇り気味で、少し肌寒い。Mole河を橋でわたり、対岸の草地にでる。ここも公衆歩道をつたって進む。左側の盛土線路を列車が行く。車道にでて左に坂を上っていく。鉄道の下をくぐり、10時13分ナショナル・トラストのハイキングルートに着く。駅からここまで約2㎞である。ナショナル・トラストのルートは、ガイドでは丘の上の駐車場からスタートしている。駅からだとここからコースに入ることになる。
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道標にしがたい柵の門を開けて登る |
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登るにつれ視界が広がる |
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展望台近くの筆者、背後はドーキングの街 |
登山道はしっかり踏まれた良い道だが、急坂になる。草地の坂道を登るにつれ、視界が広がっていく。約10分ほどの登りで、展望台に着く。登りですっかり熱くなり、ダウンジャケットを脱いでウィンドブレーカーに着替える。ここからの展望は、実に広くまた遠くまで見渡せる。等高線が混んでいる草地の丘なので、とても視野が広い。
Surrey Hills Area of Outstanding Natural Beauty(AONB) という表示を見るが、確かにここは良い場所だ。
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展望台とその向こうのパノラマ |
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森の中を緩く下っていく |
展望台のすぐ上には、Box Hill Roadの車道があるので、車で訪れることもできる。車道を渡り草地を横切り、ハイキングコースを追っていく。この丘の上にはBox Hill Hike以外の短いルートもある。このルートは全長8マイル(12.8㎞)とされている。分岐など主な場所には、ルートの表示があるので、それを追っていけば問題ない。道は森の中を緩く下っていく。平日だが、道行く人も少なくない。11時7分、Broadwood Towerにでる。塔の名前の富裕なピアノ製造家族のメンバーが、1815年にこの地に建てたという。しっかり立っているが今は廃墟であり、またBox hillのアイコンでもある。
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犬をつれた散歩者が草原を行く |
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柵の向こうにBroadwood Tower |
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階段道を下って対面の丘へ登り返す |
道はここで大きく右に曲がり、最後は階段の急坂で谷間に下る。その先また登り返す。ここの部分はコースとは少し離れるが、草地で見晴らしがよい。別の道からコースに戻る。車道にでて、そこから始まるまた階段の急坂を上りつめる。坂が緩くなり11時41分峠を越えて下る。急坂を苦労して登ってくるマウンテンバイクのサイクリストとすれ違う。坂を下ること約10分で、Micklehamの小村にでる。少し行くと墓園が囲むSt. Michael & All Angels教会が右側に現れる。教会の敷地にはいり、わきのベンチで休み、昼食をとる。幸い、ちょうど雲間が切れて陽光が照らし温かい。
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牛の群れの向こうから下りてきて門を開け出た、牛はとてもおとなしい |
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階段の急坂を登る |
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マウンテンバイクのサイクリストが登ってくる |
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Micklehm St.Michael & All Angels教会 |
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教会前のパブ |
12時13分、教会をでて右手に進む。道脇には小さな旅館PUBがある、静かなたたずまいの集落だ。Boxhill School正門前のDell Closeの道に曲がり、すぐに左に公衆歩道のコースに戻る。牧場わきからThe King William五世パブわきの急坂階段道に取りつく。平らに進む道を渡りさらに登ると、右に二台のひっくり返った車がある。一台はすでにほぼシャーシだけだが、もう一台は最近の物のようだ。いずれしても、人が歩けるだけの幅の登山道にどうしてこのような車がやってきて、ひっくり返ったのか不思議だ。
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牧場兼練馬場、背後の丘から下りてきて、また登り返す |
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ウィリアム五世パブの脇を登る |
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細い登山道脇に転覆した新旧二台の自動車 |
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雑木林の間を行く |
坂を上りつめ、昔のRoman road of Stane Streetを渡り、12時24分Mickleham Downsと呼ばれる緩やかな幅広い稜線上の草地を進む。ここは3000年前の遺跡があるところで、その後ローマ帝国時代にも利用されたという。さらにアングロサクソン系の集落農地として使われ、近代では都会を離れ自然を求める人々に供したそうだ。犬の訓練中の二人とであう。広々とした草地を闊歩すること約10分、草原は終わり森の道になる。
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Mackleham Gallopの草原と左に説明板 |
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坂を下って民家脇から登り返す |
森の道はすぐに右に曲がり、急坂で丘を下る。下り切り細い車道を渡り、民家脇から対面の山道を登る。右には多くの羊が草を食む草原だ。10分ほど登ると、眼前に太い幹や枝が折り重なって道をふさいでいる。乗り越えて進む。おそらく最近倒れた大木が道をふさいだようだ。その先に道しるべもあり、間違っていない。
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多くの羊が草を食む |
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倒れた大木が道をふさぐ |
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High Ashurst入口 |
13時13分、右にHigh Ashurstという名称の戸外訓練センターをみて、その入口近くから公衆歩道を下る。下り切り少し谷間を行くと、また右に丘を登り返す。草地が切れ、平らな森の中を進む。右に折れて下り、また登り返す。13時48分、説明看板のある歩道入口につく。この辺りはHeadley Heathと呼ばれる森で、第二次大戦のころは連合軍のカナダ軍がこの地で訓練をしたそうだ。この地もナショナル・トラストの管理下にある。看板脇の切り株に腰を掛け、しばし休憩する。
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登り返し平らな丘の上を進む |
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Headley Heath入口前で小休憩 |
10分ほど休憩し、門をでて左に進む。両脇が民家のHeadley Heath Approachという車道を歩く。14時8分、Box Hill Roadを横切り対面の公衆歩道を行く。少し進むと、道は下り始める。下ると分岐がある。そこにはSt. Martha's hillで見たNorth Downs Wayの道標がある。ここもこの長距離歩道の一部のようだ。さらに少し下ると、右に階段道を登り、そこからまた緩やかな丘の斜面の道を下っていく。14時21分、景色が開けたスポットにベンチがある。ちょっと腰掛け休憩する。
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しばらく民家の間の道を進む |
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North Downs Wayの道標 |
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見晴らしのよいベンチでまた一休み |
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草原脇の道を下る |
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白いチョーク地層が露出している |
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牛糞に注意 |
この地は放牧地なので、道には陽明山でも見かける牛糞が道に転がっている。14時44分、前方に建築中の家を見て、左に細い公衆歩道を下る。車道にでて少し行くと、朝に通過した分岐に戻る。道なりにをさらに下り、右に草地の公衆歩道をいく。右に朝は曇空の下のBox Hillの丘は、今は陽光を浴びてたたずんでいる。景色を眺めた展望台も判別できる。
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下ってきた草原を振り返る |
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駅ホーム待合室で待つ |
公衆歩道の橋を渡り、朝にきた道を戻る。Pixhamをすぎ15時20分、Dorking Deepden駅に帰り着く。次の列車は15時55分、まだ時間がある。待合室でまつ。このベンチは座りずらい。ちょうど学校の下校時間のようで、多くの通学学生がやってくる。時刻どおり到着した列車にのり、16時19分ギルフォードへ戻る。34番バスは17時15分で、まだかなり時間がある。そこでギルフォードの街を少し散策写真を写す。17時前にバス停に戻り、時刻表通りに発車したバスで帰宅した。
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時刻表通りバスは発車 |
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Box Hill Hike標識 |
今回は、それぞれは短いが多くの登り下りのコースであり、累計で582ⅿの登り592ⅿの下りである。距離は16.5㎞、休憩を含め5時間40分のハイキングだった。登攀は多くないが、距離はそこそこある歩きで、久しぶりの山行という感覚だ。費用は、バスは片道2ポンド、鉄道は往復7.5ポンド、合計11.5ポンド(台湾ドル約430元)である。台湾に比べ、交通費は高い。逆にいうと台湾の交通費は実に安い、ということだ。台湾の山々を登るのは、本当にコストパフォーマンスがよい運動である。
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