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102号線から望む牡丹山 |
瑞芳の街から見上げて高くそびえる山が牡丹山である。頂上近くに高圧電線塔が立っているので、判別しやすい。また、秋になればススキが一面に生え薄い黄色に山肌が変わる。この山頂から、102号省道へススキの間を山道が続いている。草は伸びるのがとても速い。密生した草薮は、かなりの藪こぎを覚悟しなければならない。そんなこんなで、今まで付近は何度も訪れているが、まだ登っていなかった。つい二日前に藍天隊が草を刈り取り、この草の道を歩きやすくしてくれた。また、草に埋もれてしまう前に歩くべく、牡丹山へ行ってきた。
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北側の九份老街からスタート、猴硐駅へ下る |
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登り部分が少ない歩き |
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九份老街上部の聖明宮と遠くに基隆山 |
前日も山登りをしているので、今回はこの牡丹山だけを登り侯硐へ下る気楽な山行である。出発点も九份老街で標高は高く、登りは少ない。下りは、以前歩いた
金字碑古道の途中から侯硐へつながる後凹古道を下った。金字碑古道は清朝時代に開かれた台北(淡水)と宜蘭(葛瑪蘭)とを結ぶ淡蘭街道の一部である。日本時代に鉄道が台北から侯硐までつながると、歩き始めは侯硐となり、ここから直接峠までつなげるために後凹古道が歩かれた。その後、当時の大工事であった三貂嶺隧道が開通すると、後凹古道は忘れさられた。
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基隆山を背後に登る、左の九份はすでに遠い |
今回は出発もゆっくりだ。8時に1062番バスの忠孝復興バス停で落ち合う。参加者は自分も含めて五名である。そのうち初めて一緒に歩くFさんもいる。今日の紅一点だ。平日は九份金瓜山までのバス便は少ない。8時20分にバスがやってくる。平日でも九份行きのバスは乗客が多い。今日は晴天であることも関係しているだろうが。バスは1時間半かけて九份老街に着く。支度をして10時過ぎに出発だ。観光客で賑わう老街の中を進む。我々のような登山者は、ここでは場違いだ。九份国民小学校方向に観光街を離れ、階段を登る。そのうち遊楽客はいなくなる。小学校前を通り、更に登っていく。今日は秋晴れで、老街の屋根の向こうには、
基隆山と海が望める。ここまで約10分だ。
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樹梅坪からの眺め |
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貂山古道の鞍部、奥に土地公 |
聖明宮の山門をくぐり102号線に出る。右に山の方法へ車道を歩く。消防署の前を通り過ぎる。5,6分ほど来ると右に土地公がある。ここから山道が始まる。これは車道の102号線の近道となる。土地公の奥、トイレわきに石段が続く。これを登る。登ると広場の右には洞窟が開いている。広場の先から石段が始まる。石段は結構急だが、しっかり整備されている。登るにつれ、九份老街の街並みは遠くなり、海と山の景色は広がる。10時33分、102号線脇の樹梅坪展望台に来る。下には、金瓜石の谷と左に基隆山、右に
半平山がどっしりと座っている。歩き始めて約30分、小休憩をとる。
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牡丹山へ登る、綺麗に草が刈られている |
102号線を挟んで戰備道が始まる。入口に貂山古道への案内がある。巾の広い道を歩き始める。はじめはコンクリの路面だが、そのうち土の道になる。ススキが両側に風に揺れている。眼下に102号線のつづら折りが続いている。10時57分、土地公のある牡丹山登山口にくる。ここは鞍部で貂山古道の入口である。反対側は金瓜石から上ってくる百二崁古道だ。現在の102号線が整備される前は、金瓜石から牡丹へはこの二つの古道を使って往来していたのだろう。これから山道歩きになるので、スパッツなどを着けて準備する。
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燦光寮山を左に見ながら登る |
11時6分、牡丹山へ向けて歩き始める。ここは過去金の露天掘りがされていた付近になり、その頃の道が残っている。はじめはその名残の道を進む。ススキが生えているが、最近草刈りされたようで、綺麗になっている。この部分は、上部にある送電線鉄塔のメンテ用である保線路でもあるので、台電公司が行った草刈りだろう。刈られた草の切り口は、藍天隊の鎌ではなく草刈機のストリングで切られたものに見える。道脇に穴がある。以前の金鉱か。注意書きがある。登るに連れて、左の
燦光寮山の山容が見えるようになる。一つ目の鉄塔を脇をすぎ、11時20分そのまま第二の鉄塔へ続く道と牡丹山頂上への道の分岐に着く。一休みする。
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二番目の送電塔脇から見る大パノラマ |
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しっかり刈られた草の稜線道 |
牡丹山へ進む前に、二番目の鉄塔へ往復する。ここは絶好の展望台だ。左側から
五分山、遠くの陽明山山塊、目前の
大粗坑山、小粗坑山、右には半平山。そしてその向こうには大海原が広がっている。今日は最高の秋晴れである。目を凝らすと台北の街も見える。101ビルが五分山の支稜上に頭を出している。分岐にもどり草の稜線を進む。ここからは、前々日に藍天隊が入って草を刈った部分だ。草は綺麗に刈られ歩きやすい道が出現している。実に感謝だ。刈られていなければかなりの藪こぎをしなければならない。11時56分、牡丹山頂上(標高660m)に着く。頂上も草が広く刈取られ、基石もある。ここからは、五分山の左側に坪林や平溪の山々が望める。ギザギザのピークが続く
中央尖や
峰頭尖、
皇帝殿山、そして谷を挟んで
薯榔尖北稜がはっきり判別できる。かなり遠くは、烏來三峡の山々のようだ。今日の行程中の最高地点である。
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前方の草の丘が牡丹山頂上、背後には山々が望める |
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牡丹山頂上の筆者 |
頂上から先に、なだらかな尾根上に草の道が続いている。右下方には、不厭亭あずま屋が102号線の脇に見える。陽光に反射して白いススキの穂が風にたなびいている。草が刈られた山道は、僅かな登り下りがあるが、歩きやすい。稜線を十数分進む。道は右に曲がり、102号線に向かって下り始める。ここもしっかり草が刈られている。不厭亭がだんだん近くなってくる。12時36分、102号線に降り立つ。小高い丘にあるあずま屋へ登る。ここは、その名の通りいつまで見ても見飽きない風景が広がる。食事休憩とする。遊楽客が数名休んでいる。
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なだらかな稜線道を進む |
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不厭亭はすぐそこだ、左に五分山とその前に三抓子坑山,遠くには陽明山山系が見える |
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不厭亭から平溪方面の山を望む |
13時10分、出発する。102号線を歩く。すぐ先右に稜線を金字碑古道の峠部分へ続く山道がある。しかし、こちらは草に埋もれて踏み跡すらはっきりしない。藍天隊が入る予定であったが、先の牡丹山からの道の草の量が多くて時間を要し、こちらはまた別の機会に入るということだ。この道を進むのは、大変なのでそのまま102号線を下り、金字碑古道の入口へ行くことにする。102号線から振り返る。草に覆われた牡丹山がすでに高い。前方遠くには雙溪と宜蘭北部の峰々が長く連なっている。
灣坑頭山,
桃源谷,
三方向山,
窘寮山,
鶯子嶺など今までに訪れた山々がずっと途切れることなく続いている。これらは雪山山脈支稜の北端に位置する。手前には
柑腳山の山々がある。13時26分、金字碑古道入口に来る。コンクリ製敷石の敷かれた道を数分登る。13時32分、峠に着く。
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サイクリストが102号線を行く、背後には雙溪宜蘭の山々 |
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探幽亭と手前に清朝時代の石碑 |
探幽亭の奥に、先ほど歩くのを諦めた稜線道が分岐する。反対方向にたどれば三貂嶺山へ続く。今日は、このまま峠を下る。濡れた道は、少し滑りやすい。10分ほど下り、右にこの古道の名前由来の金字碑がある。13時58分、後凹古道分岐に来る。金字碑古道では侯硐へ行く場合、遠回りになる。侯硐へは、後凹古道が近い。冒頭でも述べたが、この道は昔日まさに侯硐から金字碑古道への近道として歩かれた。台北から宜蘭への鉄道建設は、侯硐まできて三貂嶺の山に突き当たった。駅は1920年に開かれたが、当時の大工事である三貂嶺隧道は、1919年から3年の年月を費やして初めて完成した。鉄道で侯硐までやって来たあと、更に宜蘭に行くには淡蘭道の峠を越えていく必要がある。そこで、トンネル開通までの短い期間、後凹古道から金字碑古道へつないで歩かれていた。
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峠直下からは、下り先の谷間が望める |
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後凹古道の石段を下る |
後凹古道は土の道である。しかし一時期であってもよく歩かれていた古道なので、道はしっかりしている。ところどころに石段が設けられている。沢の流れが聞こえる。道はゆるやかな部分が現れる。14時26分、かなり大きな規模の石造廃屋が現れる。古道を往来する旅人相手に商売や宿泊を提供していたのかと、思いをはせらす。たまたま一人道を上ってくる人とすれ違う。更に下る。民家と畑が現れる。だれも収穫しないので、みかんが道にたくさん落ちている。沢を越えさらに下る。14時42分、猴牡公路に出る。左に曲がり少し登っていく。沢から引いた水のタンクから水が流れ出ている。靴やステッキに着いた泥を洗い落とす。10分ほど歩き、猴硐神社跡にくる。
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大きな石壁の廃屋 |
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猴硐神社の鳥居 |
神社本殿は無いが、入口の鳥居はしっかり残っている。社本殿に続く石段も当時のままだろう。鳥居わきには説明文がある。中英日の言語で記してあるが、残念ながら日本語は少し正しくない。当用漢字でなく、中国本土の簡体字である。石段を登り切ると開けた場所にでる。ここから、先ほど歩いてきた牡丹山が遠くに見える。ピンク色の山茶花が咲いている。神社も含めて、この辺りは行楽客用に遊歩道が設けられている。立派な石段道を下る。瑞硐公道に降り立つ。介壽橋で基隆河を渡り駅へ向かう。15時12分、駅に到着する。平日なので、行楽客は少ない。15時24分発の区間電車で帰京した。
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神社跡地から牡丹山から三貂嶺山への稜線を仰ぐ |
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ピンクの山茶花が咲く、背後は大粗坑山 |
今回の行程は時間約5時、距離は9km足らずである。途中の休憩も多く、楽なハイキングである。すがすがしい秋空のもと、雄大な風景を眺めゆっくり歩くのは、実に楽しい。草の道は、来年また草が伸びて歩きにくくなる。もし行くのであれば、早めに行ったほうが良いだろう。山道、体力ともレベルは3である。お薦めである。
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