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ホテルから望む高雄の街とその向こうに壽山 |
台湾には各地の代表的な山百座が小百岳として選ばれている。「小」と付いているのは、3000m級の百座が百岳として別に選ばれているからだ。百岳は高山だけが対象だが、小百岳は標高ではなく、その土地を代表する山容や歴史文化が選定の条件である。日本の百名山選定条件に近い。台湾全土に散在するので、全部を登ることはそれなりに時間や手間がかかる。今回高雄を訪れる機会があった。そこで、高雄に近い小百岳二座を登った。急げば一日で二座とも登る事ができるだろうが、今回の日程ではきついし、アクセスなども不慣れなので二日に分けて行った。初日は高雄市中心に最も近い壽山を訪れた。二日目は岡山から行く
大崗山に登った。
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四維五路の登山口から往復する |
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単一ピークの往復 |
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壽山は高雄市街の西側、海際に位置する |
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壽山には野生の猿が棲息している |
筆者は台湾在住20数年になるので、高雄の壽山はすでに訪れたことがある。但し、登山ではなく車で麓の動物園や忠霊廟などの行楽である。頂上へ自分の足で登るのは初めてだ。壽山は、高雄市街の西側海ぎわにそびえる標高356mの山である。南側は日本統治時代に造られた壽山公園や動物園がある。海側も含めた北側は軍事基地となっており、一般人は足を踏み入れられない。本来は海景が望めるはずだが、この基地があるので現在は不可である。サンゴ礁石灰岩が多く、山中には表面が凸凹した白い岩石が多い。またそのため、洞穴や奇岩も多くいろいろな名前を着けられている。
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西子灣地下鉄駅、すぐ左が高雄港駅 |
高雄は、原住民平埔族の家を囲った竹を指す言葉カタオが、中国語(正確には方言の閩南語)の打狗(犬をたたく)に近く打狗と称され、山も打狗山と呼ばれた。その後日本時代に高雄に変更、山も1921年に高雄山と改称、さらに1923年昭和天皇が皇太子時代に訪れた時に、麓に設けられた壽山館にちなんで壽山とされた。その後この山名が長く使われている。高雄市街のどこからでも眺められるこの山は、平地の多い高雄では、とても目立つ存在である。標高は低いが小百岳に選定されるのもうなずける。
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高雄港駅鉄道パークから望む背後の壽山 |
今回の高雄行は、夕方の宴会がメインなので昼間壽山を登ることにした。台北を早朝6時半の高速鉄道(台湾新幹線)で高雄に向かう。8時半高雄左営駅に着いたあと、登山に必要以外の荷物を投宿するホテルに預る。ホテルから近い高雄市MRT三多商圏駅から西子灣駅へ向かう。高雄市のMRTは南北に走る紅線と美麗島でクロスする東西に走る黄線の二系統がある。西子灣駅は、後者の最西端にある。電力節約のために多くの照明を消しているので、駅内部は薄暗い。
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登山口わきのガジュマロ |
10時10分西子灣駅から出たすぐそこは、鉄道の高雄港駅である。今はすでに列車運行はされておらず、駅舎やその前のヤードは現在鉄道文化展示場になっている。駅舎からホームに出ると、蒸気機関車が二台(日本形式ではC55と9600、
筆者は蒸機や古い車両施設にしか興味のない偏った鉄道ファンでもある)、その他にディーゼル機関車や客車貨車が陳列してある。海に近く雨ざらしなので、保存状態は必ずしも良くない。昔は海運のターミナルであったわけで、残されている線路は多くないが、ヤードはとても広い。ここで貨車が台湾各目的地に向けて仕分けや、船に載せるために待機していたのだろう。
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登山歩道入口 |
10時半、高雄港駅から壽山へ向けて鼓山路を歩く。台湾の主要街路に面した建物は隣と連なった二階建以上が多く、騎樓と呼ばれる家屋の1階の部分が歩道になっている。これは中国南部地区建築の特徴で、多雨高温の気候に対応する智慧であり、強い日差しをさけ雨に濡れずに歩くことができる。高雄だけでなく台北でも勿論こうした造りの街路が多い。華僑の多い東南アジア都市のチャイナタウンでも良く見かける。高雄はこの騎樓には店のテーブル・イス、商品、また自家用車が駐車していて、歩くことが難しい。台北では騎樓は人が歩けるように開放してあり、これと比べると高雄の街を歩いてこの落差に気づく。
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コンクリ階段道が続く |
10分ほどで四維五路の登山口に着く。巨大なガジュマロが枝を四方八方に伸ばして、階段の上に覆いかぶさる。階段を車道へ登り、法興禅寺の山門に出る。学生が境内に続く長い階段を利用してトレーニングをしている。車道を右にとり、すぐ先の分岐を左に動物園へ向けて登る。10時57分、動物園入口に来る。更に道を進み、王母宮わきの登山口に来る。車道わきには多くのバイクが停めてある。山から降りてくるハイカーとすれ違う。数分で、登山歩道の入口に来る。車道は動物園の作業裏口に通じる。
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觀林亭の案内板、猿が上にのっている |
11時10分、ここからが山登りだ。入口にはトーテンポールのような木柱、右側の看板はもともと何か表示があったのだろうが、今は何もない。入ったすぐ左に道案内板がある。歩道は、コンクリの階段道である。右にコンクリの壁が続く。以前の軍事基地の塀だったものだろうか。ところどころ銃口を出すための穴のような物が開いている。壁際に歩く人もいる。11時21分、觀林亭に着く。看板の上に猿の形の木板がつけてあり、あずま屋の上にも猿の人形載せてある。この山は猿が多い。
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右が登山道、下りは左の山道から下ってきた |
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相思亭 |
木桟道が左に続く。桟道が切れると、土の道が左に二つ分岐し右に山腹を平らな道が進む。台北でもそうだが、住居に近い山は住人が山を散歩や健康のために多く歩き、オフィシャルな山道以外にたくさん山道ができていいる。これらは、道標などもなく初めてで慣れていない場合は、あまり無闇に入らないほうがよい。11時28分、相思亭にくる。山側には展望台がある。高雄の街は霞んでいてよく見えない。一休みする。
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良友亭、左に木階段が登っていく |
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七蔓站、柵の中でお茶を無料提供している |
また急坂が暫く続く。登りきり、コンクリ製の道を進む。良友亭の左から木階段が登っていく。右の緩い道を進む。木階段は上部でまた合流する。道は大きく左に曲がり、山友亭の前を過ぎる。その先で、先ほどの近道が合流する。左に軍事基地へ続く道が分岐する。看板は、無断進入禁止とある。右にまた大きく曲がり進む。七蔓奉茶站に着く。ここはお茶をハイカーに無料で提供している。多くの人が休んでいる。
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好漢坡の道を行く、サンゴ礁石が多く現れる |
七蔓站のすぐ左に好漢坡の山道が分岐する。これを登る。ところどころ珊瑚岩も現れる土の道で、やっと山道らしくなる。補助ロープもある。数分急坂を登る。好漢亭のあずま屋が現れる。そのまま更に登る道があるが、あずま屋の先に行く平らな道を進む。右へまた道が分岐するが、直進する。道標がある。左は基地の入口で鉄扉がしまっている。右に下っていく。12時6分、長春亭に来る。食事休憩を取る。
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長春亭 |
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土の山道を歩く |
20分ほど休憩し、出発する。長春亭の前から木製階段が続く。これは百獣岩方面に続く道だ。階段をのぼり行く。すぐ右に道が分岐するが、そのまま進む。その先も分岐がある。そこそこ歩かれている道だ。道は南方向に進む。百獣岩とは違う方向だが、進んでみる。家屋の土台部分だけが残っている。ここから先は軍用地という表示もある。猿がやって来た。リュックを下ろすと近寄っている。餌を与えると思ったのだろう。野生の猿なので餌はやらないほうがよい。その先少し行くと有刺鉄線の柵となり、道は突き当りになる。同じ道を折り返す。長春亭の前に戻る。
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リュックを下ろすとやって来た猿、建物の土台部分だけが残っている |
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軍地基地の入口 |
長春亭近くの説明板に三角点が表示してある。壽山の三角点基石は、軍事基地の中と聞いているが、その図の示す方向に歩く。先ほどの基地の門の左に塀に沿って道がある。これを登る。13時、少し開けて椅子やテーブルがある。ここが今日の歩きの最高点のようだ。これから下山だ。先に進んで好漢亭へ下る。さらに長春亭から長春園へ下る。右にとり、広い道を七蔓站へ下る。
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最高地点、右は基地の塀が続く |
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高雄市街方向を望む、霞んでいる |
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蜘蛛の巣のように枝を伸ばすガジュマロ |
七蔓站から更に下り、13時半右に近道を取り下る。良友亭のところで、広い道に合流する。すぐ右に翠嶺亭へ道が分岐する。岩壁の道を右にまがると、そこには蜘蛛の巣のように枝を伸ばしたガジュマロの木が岩に生え、その下にあずま屋がある。台湾ではガジュマロはよく見かけるが、これはすごい。土の道が下っていく。これをとり下がっていく。下っていくと、広場に下りる。カマドがある。ここも軍事基地の一部だったのだろうか。基地は以前より縮小されたということだ。立派な道標がある。
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青春歓楽園、土管状のものの後ろから道が続く |
少し登り返すと、青春歓楽園の広場とあずま屋がある。数名の登山者が休憩している。その前を通り過ぎ、山道を進む。しかし下っていく方向が違う。左に折れて主要登山道にでる道があるはずだ。幾つかの枝道を進む。するとその先は広場になっているが、そこから先の道がない行き止まりだ。そんなことを二、三度繰り返し、先の青春歓楽園へ戻る。そこで登山者に尋ねると、この広場の裏の道を進めばよいとのこと。それを進む。果たして登山道の木桟道の分岐にでた。枝道が入り組み何の道標もないので、もし不安ならば土の道には入らないほうが良いだろう。
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枝道をゆくとこのような行き止まりの広場がたくさんある |
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カマドのある広場 |
コンクリ道を下る。觀林亭を通り過ぎる。その先に親子連れの猿が、コンクリ道の凹みにある飲み物を飲んでいる。ハイカーがそこに流したもののようだ。人を恐れずにかがんで飲んでいる。14時11分、登山口に戻る。動物園バス停に着く。56番バスがちょうど待っている。14時20分に発車、14時半前にMRT鹽埕埔駅バス停に着いた。
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猿の親子連れ |
初めての高雄の山の登山である。暑いかと思っていたが、山の上は風が吹きそれほど暑くなかった。行動時間3時間50分、歩行距離9.3kmであった。頂上らしい頂上がなく、基石も見なかった。山の上には、珊瑚石の洞がたくさんある。道もいたるところにあり、住民の憩いの場所でもある。高雄市街が望めるスポットも幾つかあった。残念ながら霞んで遠くまで見れなかったが。困難度は道も体力要求度も共にクラス2だ。半日で登山できるので、高雄を訪れ時間が取れるであればお薦めである。
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