当ブログは、実際に登山やハイキングをした後にその記録を残すことがメインである。この記事は、具体的な登山記録ではないが、台湾山岳登山環境に関する今後の動向や課題を検討する座談会での様子を紹介するものである。それは、台湾で登山をするものにとって、今後影響を受けることになるかもしれない事項である。日本や台湾、またその他の国の読者が最近増えている。台湾山岳や登山に対する関心が、高まっていることの反映だと思う。その流れの中で、一歩下がり台湾山岳登山界を俯瞰する意味で、この記事を書くことにした。座談会は、もちろん資料を含め中国語である。できるだけ、日本人読者が理解できるように努めて記載する。
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座談会会場受付 |
本座談会は、台湾中央政府内政部国家公園署が主催するものである。運営については、社団法人台湾山岳文教協会が担当した。筆者は、台湾山岳文教協会よりのお知らせで、当座談会に参加させてもらった。座談会のパネラーは、関連政府部門、学者有識者であり、参列者は山岳登山に関係する民間業者や団体である。2019年前に中央政府が打ち出した、山林(山岳)開放政策の推進にあたり、今までの成果の報告や今後の動向を模索することが当座談会の目的である。
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座談会パネラー.講話は山岳文教協会張理事長 |
◎ 山林開放政策の現在までの成果発表
- 山岳登山関連の政府機関、民間、及び海外国立公園との交流
- 具体的には、台湾の国家公園や消防(遭難捜索救助)、原住民委員会、観光局、中華民國山岳協会などの民間山岳団体、山岳ポーター、ガイド、旅行社、山岳雑誌、山岳関連著名作者などとの意見交換が行われた。
- 海外との交流は、2024年7月の日本中部山岳国立公園への訪問、また左記関係者の台湾訪問交流(昨年11月の玉山登山を含む)。 - 山岳登山環境の整備改善
- 山小屋の改善及び新築増加 (目標30に対し27カ所完了,すべてにPAC設置)
- 登山道整備、標識などの整備(登山道のグレード分けやそれに伴う対応)
- 宣伝啓蒙活動で登山者の意識向上(「登山は自己責任」をはじめとする認識)
- 届出など登山手続の現場チェック強化
- ネット環境の整備(申請窓口統合化、SNSなどでの情報提供)
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主催者の內政部國家公園署王成機署長開会あいさつ |
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台湾山岳文教協会座談会陳育平司会より資料説明 |
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第二部でのパネラー発表の様子(台灣生態旅遊協會郭理事長)
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◎ 今後の動向予想
- 国家公園などの入園に伴う費用徴収の検討
林業及自然保育署管理下の山小屋や玉山国家公園の排雲山荘ではすでに小屋使用料金があるが、それに加えて今後は、現在無料の入園登山道使用(あるいは登山道上の小屋)、さらにはその他付帯サービスに対する料金課金が議論されていくようだ。
- 自然保護の実施強化
無人小屋や野営地の管理、残飯の対応、トイレの対応が議論され改善が望まれる。日本で普及している簡易トイレとトイレバッグの使用も含め検討されていく模様だ。下の写真は、日本での簡易トレイの実例 (筆者撮影)。 - 民間団体の活用
台湾の山小屋は、日本は民間が主要なのに対し、すべて官有である。その運用に関しては、数カ所が民間が入札などの手続きをへて行っている。このような民間団体の活用拡大、あるいは山岳地帯に多く生活する原住民の参加強化(文化リクリエーション活等)なども議論される模様。
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簡易トイレ内部 (日本安達太良山での例) |
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携帯トイレキット |
上記に一枚貼り付けたものを含む会議の資料は、このQRコードを利用してダウンロード可。
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筆者としては、台湾が有する稀にみる雄大かつ変化に富む山岳環境を、よりよい状態で活用することに対しては、大いに歓迎である。サステイナブルに環境を保持し、多くの人がそれを享受することは、熟成した社会では望ましいことである。
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意見発表中の筆者 |
この座談会で討議されたことは、今後の台湾山岳環境の利用についての方向を示すが、主な対象は本国人であるので、外国人が訪れるときに面するもう一つの問題、アクセス交通手段についての議論がないことは、少し残念だ。本国人が自家用車でアクセスできるところも、国外から訪れる場合、レンタルカーなどを利用しないと、なかなか行けない場所もある。交通となると、政府の別部門管轄なので一筋縄でないが、こちらも今後は検討項目として、アクセスの利便性を高めることを、考慮してほしいと願う。
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座談会が行われた台灣大學集思會議中心(センター) |
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