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2022-01-23

2022年1月14日 玉里山 霧の魔幻森林を登る 玉里登山其之一

玉里山山頂直下の夢幻の森
花蓮縣の南部に位置する玉里は、西側中央山脈と東側海岸山脈に挟まれた、花蓮から南へ台東へと続く花東縱谷の重要な町である。その昔は、璞石閣と呼ばれた集落は、日本時代に玉里(璞石とは磨く前の玉のこと)と改名された。当時の行政単位である花蓮港廳下に玉里支廳が設置され、行政上重要な町に発展した。中央山脈を越え台湾西側と結ぶ八通關道路が、清朝時代に開鑿されその後日本時代にも別の経路で開鑿される。一方、東海岸へも安通越嶺道路が続く。東西南北各方面への交通要所でもあった。今日でも、鉄道はすべての列車が停車し、当駅から各方面へのバスが発車する。

三日間の登山場所、赤:玉里山 青:麻荖漏山(新港山) 紫:安通越嶺
筆者は、いままで何度かこの街を訪れている。中央山脈の縦走の前に一泊、或いは下山後食事をしたりして玉里はなじみがある。今回は、この地に三泊して近くの中級山や古道を歩くのが目的だ。対象は、苔が岩や樹木にびっしりと生え、ファンタジックな森を形成している玉里山(標高2157m)、海岸山脈の最高峰麻荖漏山(標高1682m、別名新港山)、そして東海岸と花東縱谷を結ぶ山越えの道安通越嶺古道である。それぞれが個性を持った登山対象だ。

安通越嶺古道から望む早朝の玉里山(手前右)
玉里山は、往復に10時間以上の時間を要する。そのため前日に玉里に宿泊し早朝に出発する必要がある。そこで13日の午後に、玉里に入った。玉里は今まで訪れているが、ほとんど歩いていない。この地にはかつて神社があり、その遺跡も社などの建物はすでにないが、鳥居などかなり完全な形で残っている。また、今は舗装された車道だが、日本時代の八通關越嶺古道の東側起点の場所がある。それらを午後玉里に到着後、荷物を宿舎においた後訪ねた。また、三日間を利用し土地の名物なども食した。筆者の玉里の街や花東縱谷に対する理解が深まった。

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新型自強號
山行前日の13日(木)は、午後12時45分発の新自強號特急列車で台北を出発した。この列車は、つい最近投入された日立製の新型車両である。前代の普悠瑪號と比べ外形にはそれほどの変化はないが、インテリアはかなり新しいスタイルになっている。さらに、当列車は停車駅が少ない。台北とすぐ隣の松山を出発すると、花蓮までノンストップ、その次がもう玉里だ。台北から3時間、以前に比べると随分と速くなったものだ。

かつてはここが八通關越嶺道の起点であった
玉里神社の鳥居

15時48分に玉里に到着、小雨模様だ。宿泊の瓦拉米客棧はすぐ駅前である。以前も宿泊したことがある。荷物を部屋に置き、すでに到着しているメンバー数名と町中を行き、中山路と民族路交差点から歩き始めた。今は花71県道の起点だが、その昔はここが八通關越道路の東起点であった。資料によれば道路開鑿の記念碑があったそうだが、今はない。道路を西に進み、鉄道線路をくぐる。線路を挟んで右側は玉里中学校だ。その先左に西邊街を曲がると間もなく、右側に玉里神社の参道入口が現れた。参道の両側は今では民家が立ち並んでいる。鳥居をくぐり階段を上る。また別の鳥居の前方に社があった高台がある。脇の説明板に当時の写真があり、見比べることができる。神社高台から望む玉里の街は、小雨に煙っていた。

神社参道

神社本殿と礼拝殿遺跡
本殿跡から望む、敷地はかなり広い

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登山口から山頂を往復
二台に分乗して出発

今日14日は、いよいよ本来の目的の登山だ。午前5時半に13名のメンバーは、二台の車に乗車し、まだ暗い中玉里の街を後にする。線路沿いに少し北方向に行き、踏切を渡る。卓溪にそって谷の道を行く。いよいよ登山口への道の分岐で、道に問題がある表示がある。運転手は、おそらく最近の雨で道路が通行不能になっているようだ、とのこと。別の道があるということで、引き返し登り始める。途中一度道を間違え、最終的に登山口のすぐ下で本来予定の道を合流し、6時50分に到着する。ここは山肌が開発された最上部(標高820m)だ。

登山口のメンバー
濡れた草の間を登り始める

霧がでていて遠望はない。登る道の草は露で湿っている。雨ズボンや雨具をつけて、7時少し前に歩き始める。ショウガが植えられているという畑の脇には、作業小屋がある。犬や鶏がいる。雫の白梅は満開だ。すぐに草に覆われた登山道を登り始める。道は山腹を横切り、そのうち高度を上げる。道は予想していたより、道筋がはっきりし、マーカーも多い。7時半、卓溪山への分岐でもある鞍部(標高996m)に到着する。

濃霧の稜線道
焚火跡のある広場
勾配はきつくない

玉里山は、登山口からの標高差は1300数十メートルで、それほど大変は数字ではない。大変なのは距離があることだ。つまりは遠い。したがって、部分的にきついところを除いて勾配はそれほどない。濃霧の森を進む。二つコブを越えて少し下り、登り返す。所々木々の間に開けた場所を過ぎる。焚火跡もある。おそらくキャンプしたあとだろう。地元民が猟にでて外泊した場所(獵寮)かもしれない。季節外れの根節蘭がひと株咲いている。大菁も咲いている。狭くなった尾根を少し登り、8時半過ぎ風があまり当たらないところで休憩する。

稜線の左下山腹を行く
所々急な坂が現れる

休憩後少し登ると、道は尾根を離れて左(西)側の山腹を進むようになる。平らな広い場所を過ぎると、傾斜が大きくなり道幅も狭くなる。雨でぬれた岩に足をとられ、右の膝が思い切り岩にぶつかった。痛みが強い。しばらくとどまり収まるのを待つ。幸い岩は平らで膝の正面をぶつけただけなので、切り傷はないようだ。痛みをこらえて歩き始める。9時13分、霧の森にちょうどマッコウクジラのように見える岩が現れる。所々急な坂を上り、9時35分広い場所に着く。休憩をとり、右ひざの様子を見る。少し表皮に傷があり、赤くなっているが、それ以外の切り傷はない。薬をつける。

クジラ石
霧の森を進む

引き続き稜線の左斜面を登っていく。霧の中でひたすら進むだけだ。少しサルオガセが目立つようになる。10時25分道が塞がれ、右に高巻きと思われる道が分かれる。直進する道は、流されてしまっているのかもしれない。右に登り、また山腹道へ下る。その先で道は、少量の水が流れる沢を越える。地図を見ると、その道は阿桑來嘎山への道の様だ。少し戻り見落とした分岐(標高1630m)を右に登る。開けたところは、ビニールシートが脇に置いてあり野宿場所のようだ。水場も近く、少し傾斜があり広くはないがテント二張りはOKのようだ。少し休みを取る。

倒木を越える、サルオガセが目立つ
ロープの架かる急坂

10時40分、玉里山山頂へ標高差約500mの登りが始まる。メンバー中の一人Hさんは、最近玉里山を登頂したので、この分岐で待ち我々の帰りを待つという。道は尾根上を進んでいく。十数分登り、手前にロープの架かるギャップを越える。その先少し行くと、この山の特徴である苔が一面に生えるシャクナゲの森が現れる。右が切れた場所に出る。晴れていれば遠望できる場所だが、今日は真っ白だ。また苔の森を行き、11時10分シャクナゲ原生林が切れてまた普通の雑木林を登る。11時半、少し平らになったところで休憩をとる。

空洞の幹
シャクナゲ原生林

玉里山山頂

山頂の筆者
奇怪な形状の樹木がここそこに現れ、濃霧と相まって魔法の森の如くだ。ロープのかかる急坂を登り、またシャクナゲ原生林に入る。最後のシャクナゲが所狭しと生える急坂を登り切り12時37分山頂につく。山頂は背の低い灌木に囲まれている。天気が良ければ、そこそこ展望があるのだろう。雲空は少し明るく切れたところもあるが、大きな変化は望めない。ただ、雲が薄いせいかたどってきた尾根上より暖かく感じる。山頂で食事をとる。

下山途中

ロープセクション
13時15分、往路を下り始める。展望もない山道はひたすら下るだけだ。水をたっぷり含んだ山道の表面は、とても滑りやすい。14時37分、分岐に着く。一人登頂せず残っていたHさんは、天幕を広げみんなのためにお湯を沸かし、コーヒーなどをみんなにふるまう。彼は、とても経験豊富な登山家の様だ。

天幕を広げた分岐キャンプ地
下りを急ぐ

分岐での15分ほど休みの後、下りを急ぐ。日暮れは17時半ごろなので、残りは2時間と少しだ。途中一度休みをとり、17時3分鞍部に着く。時間がもう30分早ければ、卓溪山へ往復するところだが、この時間なので日暮れとの競争でそのまま登山口に行く。17時、左に開けた場所では、霧がなく対面が見える。その少しで下り切り、迎えに来ていた車の運転者が待っている。17時35分、登山口にたどり着いた。

夕闇迫る中鞍部から下る
霧が晴れてきた、登山口はすぐ下

車で道を下るうちに、陽が暮れる。下方には灯火がちらほら見える。天気は良くなってきている。18時20分過ぎ民宿に到着する。山でぶつけた膝は、膝の骨周りが赤く腫れて少し痛い。動かさなければ、それほどでもない。その後着替えて街にでて有名な臭豆腐を食べ、またスーパーで食料などを買い、民宿に戻った。

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玉里の臭豆腐

距離16㎞、累計登坂1422m、下降1403m、所要時間10時間45分でコース定数は39である。一日中濃霧で、霧雨のような状態だった。雨具は終日着用で終わった。かなり泥も着いた。衣類は霧雨と汗でぬれた。展望がまったなかったのは、正直残念だ。ただ、この山は苔がびっしり生えるというのは、本来湿度がとても高いということで、今日はまさにそうした典型的な天候でもあったわけだ。別の山で霧のない夢幻森林も経験している。霧があることで、実は一層夢幻的でもあった。


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