このブログを検索:山名などキーワードを入れてください

2022-01-23

2022年1月15日 海岸山脈の最高峰麻荖漏山(新港山)を登る 玉里登山其之二

壊れた一等三角点の麻荖漏山頂
台湾の山脈は5つに分類される。台湾島の背骨とでもいうべき三大高山山脈、北から雪山山脈、中央山脈さらに玉山山脈のほかに、玉山山脈の西に位置する阿里山山脈がある。そして、中央山脈との間に花東縱谷と称される南北に長い谷を形成する海岸山脈である。海岸山脈は、台湾島東岸の南半分175kmをカバーする。ほかの山脈に比べると高度も低く、また人口が少ない地域でもあるので、登山の対象としては少数の峰を除いてあまり注目されない。中央山脈や雪山山脈全域縦走などは、昔からかなり多くの登山家に踏破されているが、当山脈は2020年になって初めて全域縦走がなされた。標高は低いが、その急峻な地形や有毒生物もいる生態系を有する海岸山脈は、未知の地域でもあった。当登山の対象麻荖漏山、別名新港山は、この海岸山脈の最高峰である。

登山口から山頂を往復
玉里三日間の登山位置
麻荖漏(マラオロウ)山の山名は、地元の原住民阿美族の言葉である。焼かれ乾いている、という意味だそうだ。今日成功鎮と呼ばれている東海岸上の土地の原住民言語による本来の名前だ。その後日本時代、麻荖漏は新港に変更され、山名も新港山という呼称を得た。地図上には、当山の南に新港山という表示の山峰があるが、それとは異なる。標高1682mで一等三角点を山頂に有する当座は、全山脈の南三分の一ぐらいに位置する。登山道は、西側からがメインで東成功鎮からは、ほとんど歩かれていないようだ。当座は、注目を浴びない海岸山脈の中では、台東都蘭山を除いて、多く歩かれている山でもある。

--------------------------------

登山口へ向かう途中海岸山脈を望む
三日間の玉里登山の今日はなか日である。昨日は終日霧であった。天気は回復基調だ。朝5時50分民宿を出発する。登山口冨里鄉吉哈拉艾の登山口に向け、車は南へ進む。富里の街をぬけ、台23号線で山の中に入っていく。集落を過ぎトンネルを二つぬけて左に吉哈拉艾部落へ向かう。6時33分、白んだ曇り空のもと吉哈拉艾橋脇の登山口(標高約350m)に着く。

登山口吉哈拉愛橋にて
石厝溪沿いに進む
沢を離れ山腹をジグザグ道を登る
6時43分出発する。石厝溪に沿った舗装路を進み、舗装が切れると沢沿いにでる。道は岩の上を越え、少し離れて沢にそってしばらく行く。沢から水を取り込む用水路を過ぎる。7時過ぎ、道は右に山腹をジグザグに登り始める。勾配はそこそこある。本日の登坂落差は、昨日の玉里山と大きく違わないが、距離が短いので相対的に平均勾配はきつい。道の状態は予想よりずっとよい。マーカーリボンも多い。迷うことはないだろう。

木々の間からかろうじて遠くが見える
分岐は右にとる
明るい尾根を登る
ロープの急坂を登る
十数分のつづら折り道が終わり、道の周囲は尾根の形状が現れてくる。途中で休憩を取り、7時34分に往石厝溝という道しるべのある分岐を過ぎる。ここは右に行く。サウスベリが多く生える明るい森を抜け、8時尾根に取りつく。昨日の水を限界まで含んだ土とは違い、こちらは乾いていて助かる。尾根上も、広葉樹の比較的明るい森で、下草も少ない。所々トゲトゲの黃藤もあるが、幸い大部分はしっかり刈り取られている。勾配は緩いところと急なところが、交互に現れる。8時34分、休憩をとる。標高は1000m近く、約半分をこなした。

刺藤の滑りやすい坂
急坂が終わり、ビニールシートを見る
叫んでいる口の怪樹
落差100mほどの急坂がはじまる。表土が流され、樹木がない急坂を越え、さらに進む。9時少しまえ、捨てられたシートを見ると勾配は緩くなる。幹がムンクの叫びの絵画にあるような大きな口を開けた怪樹を見る。どうやら牛樟樹の様で、上部がない。牛樟は台湾固有のクスノキのなかまで、その香りは強く防虫効果が強い。この樹木で彫刻された神像などは数百年腐ることないという。また牛樟に生える樟芝は抗癌効果があるそうだ。ヒノキと同様に、高級樹木である。今は保護の対象で伐採が禁じられている。しかし、盗伐があとをたたない。この樹はそうした虐待に対する叫びなのか。

ごみの散らかるキャンプ跡、盗伐者の物か
盗伐された牛樟
怪樹のすぐ上に、また別の盗伐された牛樟には管理する林務局の管理札が取り付けられている。緩やかにまた広くなった尾根をさらに数分進むと、ごみやガス缶などが散らばるキャンプ跡を見る。おそらく盗伐グループ(台湾では山老鼠という)が残したものだろう。道は下り、涸沢に降りる。石の沢底を少し行くと、別の涸沢と合流し、そのすぐ右わきに露営地がある。ブルーシートが残っている。涸沢を少し下ると水場があるので、ここはよい露営地(標高1110m)だ。
涸れ沢二股のキャンプ地
涸れ沢から急坂を登る
9時33分、山頂に向けて登り始める。急坂のすぐわきは牛樟の巨木だ。少し登ると、また盗伐され、その一部が塊として切り取られた牛樟が痛々しく転がっている。10時25分、標高1450mあたりで、休みをとる。周囲は霧が出始めた。登るにつれ霧は濃くなる。また樹木に着いた苔も多くなる。海岸山脈は、その山上部は雲をかぶることが多いようだ。そのため、このように霧が立ち込め、苔が生える条件を満たすようだ。11時10分、露でぬれたヤタケが現れる。ヤタケを藪漕ぎしさらに2,3分で狭い山頂に着く。草に囲まれた狭い山頂には、断頭の基石がある。かろうじて一等の文字がわかる。昼食休憩をとる。
切り取られ一部をえぐられた牛樟
山頂直前は濡れヤタケ
山頂にて
山頂から往路を下る
12時過ぎ、山頂を後に往路を下り始める。山道は昨日の玉里山より概して勾配が強いが、表面は割合と乾いているので、滑ることはない。下るにつれ、霧は薄くなり、そのうち薄日が森の底に差し込む。登りは二本だった道は一本で下り、13時9分涸沢合流点に降りる。今日は順調に進行してきている。少し長めの休みをとる。昨日と同様、Hさんがみんなに暖かい飲み物を作ってくれる。
薄日のさす二股キャンプ地に到着
尾根道を下る
13時58分、涸沢をたどり少し登り返す。10分ほどで最高点を過ぎると、道は長い下りが始まる。樹木が切れた急坂からは、遠くに平地が見える。上りには気づかなかった。天気が良くなっていることも関係している。上りの時には、それほどの勾配を感じなかったところも、下りにとるとはっきりとその勾配を感じる。あまり密生していない森は、時々陽光が差し込み、さらに明るく感じる。途中で一度休憩をとり、15時40分沢わきに下りつく。石厝溪の岩が露出した場所で最後の休憩を取り、16時10分吉哈拉艾橋に着く。舗装路を少しいくと、我々の車が待っていた。
つづら折り道を下る
石厝石脇を進む
帰路上で海岸山脈の山々を望むと、上部は雲に隠れている。山頂近くで霧が濃くなったのは、まさにこの雲の中に入ったからだ。河床の広い秀姑巒溪を渡り、17時民宿に戻った。部屋で一休みし、18時半に全員で食事をとる。明日は下山後、台北に戻るため食事時間があるかわからないので、一足早い打ち上げの会食だ。





--------------------------------
海岸山脈の峰々の頭は雲の中

距離11.5㎞、累計登坂1403m、下降1403m、休憩込みで9時間半。今日は、予想よりも早く歩き終えた。コース定数は36である。もともと展望できる場所が少ない山だが、曇りで時々太陽が顔を表すという天気であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿