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醜棟山付近から望む 2432峰とその下の烏石坑山,手前は山椒山(2021/12撮影) |
北海道の大雪山と同じ名前を冠する
台湾雪山山脈大雪山の名前を持つ林道が、台中にある。伐採した木材や物資を運んだこの林道が到達する当時の林場は、今は大雪山國家森林遊樂區に変身し、高所にあるリクリエーション施設になっている。当然この林道は舗装され、メンテされている。林道は、
雪山山脈西稜の末端を、東勢から登り小雪山の足元まで続いていおり、稜脊上にある峰々へ便利なアクセスを提供している。
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南側の遊樂區駐車場から反時計回りに回遊 |
筆者は、いままで大雪山林道は三回ほど訪れている。林道半ばほどにある
鳶嘴山や
橫嶺山登山の際、そして雪山山脈西稜縦走の際である。今回は林道上半分に位置する森林遊樂區のゲートをくぐったその先の烏石坑山と船型山の登山である。前者(標高2178m)は稜線から北側に大安溪へと下る支稜上のピークである。一方船型山(標高2274m)は、主稜線を縫っていく
小雪山國家步道上にあるピークである。台北から25人乗り小型バスで、森林遊樂區駐車場へ行きそこから210(船型山)林道を歩いて烏石坑山山頂を往復、主稜線へ登り小雪山步道を下り、途中船型山に立ち寄り、回遊型で駐車場へ戻った。
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烏石坑山山頂の全メンバー |
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台北を小型バスで出発 |
今回は参加者18名と多い。そこで25人乗小型バスをチャーターし、登山口へ往復する。台中の大雪山林道は遠い。早朝5時に集合し台北を出発する。第一高速道路を南下、途中泰安レストエリアで休憩し、7時に高速道路を降りて東勢への途中でコンビニに立ちより、食料などを調達する。
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林道に入り高度を上げていく |
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車窓から谷關の谷を挟んだ白姑大山を見る |
東勢から大雪山林道に入ると、高度を上げていく。青空のもと平地が次第に下になり、そのうち南の大甲溪谷關の深い谷を挟んで、百岳
白姑大山へと連なる高い山々が並ぶ。8時50分大雪山森林遊樂區のゲートで入場料(高齢者や台中市民の10元を除き一人200元)を支払い、そのすぐわきの駐車場で下車する。
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保安祠の左に210林道の入口 |
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出発前林道入口で集合写真 |
バスを降りるとすぐに涼しさを感じる。標高はすでに2000m強、理論値では30度を超える平地より10度以上涼しいことになる。メンバーそれぞれ準備をし、9時過ぎに歩き始める。駐車場をでてすぐ、保安祠を見る。その左に金属製ゲートがある道が210林道である。今は船型山林道と呼ばれている。林道の状態はすこぶる良く、今でも木材を積んだトラックが稼働できるのでは、と思うぐらいだ。一般車両は通行できない。
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鳶嘴山の三角ピーク |
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軽装ハイカーが林道を行く |
林道は、ところどころ谷側の樹木が切れて展望ができる。尖った顕著な三角峰は鳶嘴山だ。歩みを進めるにつれ、軽装のハイカーとすれ違う。この部分はこうした遊楽客も多いようだ。さらに進むと、角度が変わり鳶嘴山から伸びる西稜上の醜棟山や肥棟山が姿を現す。そのうち、
馬那邦山-大克山の稜線が大安溪の谷底から盛り上がり、屏風のように連なっているのを見る。
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鳶嘴山、醜棟山、肥棟山へとピークが続く |
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左の大克山から右の雲をかぶった馬那邦山への稜線 |
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右が烏石坑山山頂 |
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林道上の日陰で小休止 |
9時48分、壁に大きく2.75Kと書かれた作業小屋を過ぎる。山腹を縫っていく林道からは、最初の目的地烏石坑山が左に見える。その先林道入口から約4K地点で、10時過ぎに小休憩をとる。休憩後林道を少し進み、右に後ほど登る登山口を過ぎる。さらに少し進んで10時33分、烏石坑山登山口を見る。標高2178mの烏石坑山は、主稜線から北に大安溪へと落ちる支稜上のピークである。もちろん大安溪側からの道があるが、歩く人が少なくまたかなりの労力を強いられる。一方、210林道からは、少し登るだけで登頂できる。
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林道左に烏石坑山登山口 |
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アカマツの稜線道 |
烏石坑山山頂へは、少し下り登り返す。アカマツの明るい森の進み、シャクナゲ原生林を抜ける。途中右に樹木が切れた場所から望むと、鞍馬山から頂上にレーダー搭をいただく小雪山への稜線が高い。そのうちヤタケが道脇に現れ、10時55分、明るく二つの基石がある烏石坑山山頂に着く。写真撮影などの後、往路を戻る。霧が出てきたようで、先ほどはっきり見えていた小雪山は雲間に見え隠れしている。登山口から林道を少し戻り、主稜線への登山道入口で昼食休憩をとる。
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小雪山の稜線を望む |
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シャクナゲ原生林 |
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烏石坑山山頂に到着 |
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稜線への山道入口で食事休憩 |
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枯葉と苔の道 |
30分ほどの休憩の間に、霧は一層濃くなってきた。12時、急坂を登り始める。枯葉が覆う道は、林道に比べればずっと程度が落ちる。地表に現れている石や樹根は、緑の苔にびっしり覆われている。そのうち大きな古い切り株が現れはじめ、ここが以前林場であったことを物語る。周囲のヤタケはすべて枯れている。ヤタケは根が繋がっているので、長い年月に一度全部が枯れ、また復活する。今はこの周辺はちょうど一斉に枯死するタイミングのようだ。倒木も多い。
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濃霧の中の急登 |
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古い切り株 |
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枯れたヤタケと倒木 |
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勾配は緩やかになるが相変わらず倒木は多い |
急坂を登ること約1時間、300mほどの落差を登って坂は緩やかになる。先に一度下り登り返すと2432峰山頂だ。時刻は13時22分、林道わき入口からここまでが今日の行程上一番苦労のセクションだ。主稜線から林道へと降りる尾根上のピークは、本来名前はないので標高をそのまま命名している。ボランティア団体である、桃園鐮刀登山隊が年初に取りつけた山名板がまだ新しい。
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2432峰に到着 |
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突如として現れたヒノキ巨木 |
樹木に囲まれた山頂は、もともと展望はない。ましてや濃霧のなかだ。13時40分下り始める。こちら側もかなりの急坂だ。山老鼠と呼ばれる盗伐者に一部を削り取られたヒノキ巨木が突如として現れる。さらに下り、14時7分、小雪山步道に降り立つ。ここは國家步道とされている道だ。幅が広くしっかりメンテされている。左に行けば約3Kmで鞍馬山へ、我々は右にとり約5㎞路程の歩道で下山を始める。
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急坂を下る |
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小雪山歩道に着いた |
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階段の登り返し |
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枯葉と苔の森を行く |
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ベンチで休憩 |
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森の主のような巨木 |
歩道は、一度伐採された後自然に戻った森林を抜けていく。森の底は枯葉と深緑の苔でびっしり覆われ、濃霧と相まってまさに深山の風貌である。道は基本下りだが、一部登り返しもある。14時30分、一枚板のベンチが用意されている場所で休憩をとる。メンバーが持ってきたビールがシェアされる。10分ほどの休憩後、さらに進む。3K地点で巨木を見る。苔に覆われた大きな板根が地面をしっかり掴み、枝は上に向かって四方に広がり、まさに森の主の如く聳えている。メンバーは思わず写真を撮る。
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苔に覆われた板根 |
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霧の森をさらに行く |
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切り取られたヒノキ |
道は少し登り返していく。道脇にヒノキの香りがする。よく見ると、切断面がまだ新しいヒノキがある。おそらく盗伐者が切り取ったもののようだ。15時15分過ぎ、道は緩やかになりすぐ左脇の大きな切り株に船型山の銘板がついている。その名前が示すように、穏やかな斜面の山で、山頂という感じはあまりない。基石もなく、敢えて切り株の場所を山頂としているような感じだ。
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船型山山頂 |
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緩やかな斜面を下る |
歩道は残り2.5Kmだ。濃霧に包まれた緩やかな斜面の森を下っていく。階段が続くが、ちょっと邪魔な感じだ。少し登り返しの場所は、厄介だ。16時11分、大雪山林道の歩道入口に降りる。船型山からの下りで、少し雨がぱらつき始めた。ただ、森の中なので雨粒はあまり感じなかった。舗装された大雪山林道を右に少し下っていく。16時19分駐車場に停まっているバスに戻りつく。着替えなど済ませ、16時50分に帰途に着く。バスが動き出して間もなく、雨は本降りになってきた。
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大雪山林道わきの小雪山歩道入口 |
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駐車場のバス |
東勢まで降りてくると雨は止んだ。山の上だけの雨だったようだ。高速道路に上がる前にコンビニで夕食を購入、一路北上し20時13分、台北市内の出発点に到着し終了解散した。
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日本時代に西洋から持ち込まれた 外来種毛地黃(Foxglove) |
今回の山行は、13㎞強と少し長い。しかし、大部分が林道や国家歩道の良い道で、尚且つ参加メンバーの足並みがそろっていたので、休憩を含み7時間20分ほどで歩き終えた。累計の上昇下降はそれぞれ約600mである。コース定数は24となる。アクセスに片道3時間半以上かかるので、出発は当然早くなり帰りも遅い。こうした山行は、人数が集まれば自分で運転するよりは、貸し切りバスなどを使用したほうが楽である。今回は一人当たり670元だ。
台湾の夏は暑い。近郊低山歩きは、暑さとの闘いにもなる。2000mを越える中級山や高山は、避暑もかねてよい山歩きができる場所だ。
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