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2023-07-24

台灣登山ルートガイド: 地元ボランティアが切り開いた忘憂古道から平溪峰頭尖を登る

平溪菁桐の南に位置する
台湾の山道は、政府が切り開きメンテする官製道がある一方、本来地元民が生活のために歩いた山道がとても多い。交通の発展により一時は見捨てられたが、登山活動が盛んになるにつれ手入れされてまた通行できるようになった古道と称される道もたくさんある。後者は、大部分が登山団体などによる自主的な活動によってメンテされている。今年2023年になって注目されている道の一つが、忘憂古道である。名前もユニークだが、この道を切り開きメンテしているのは、地元の高齢者である。このガイドは、そうした民間による新道を経て、平溪三尖のうち最も手強い峰頭尖(標高609m)を往復するガイドである。
台北盆地の東側の山塊に位置する

登山対象:

ルート 菁桐(鉄道)或は中埔バス停→(25分) → 忘憂古道入口(涼亭脇の橋)→(5分)→ 稜線路と沢沿路分岐→(15分)→稜線路休憩ベンチ→(20分)→展望台→(20分)→溪谷路分岐→(10分)→第二展望台→(20分)→稜線道と山腹道分岐→(15分)→主稜線分岐→(20分)→山腹道分岐→(10分)→東勢格越嶺古道分岐→(20分)→白石腳分岐→(10分)→峰頭尖山頂→(6 分)→白石腳分岐→(18分)→東勢格越嶺古道分岐→(10分)→山腹道分岐→(18分)→稜線道と山腹道分岐=溪谷路分岐→(15分)→古厝遺址→(10分)→石棚有應公→(15分)→小水壩→(5分)→古道入口涼亭→(15分)→中埔バス停 約5.6km 上昇下降各430m 5時間  コース定数15

峰頭尖 今やスカイランタンで有名な平溪は、一度さびれその後観光地として復活した炭鉱の街である。その中でも大きな坑道があった菁桐は、鉄道平溪線の終点でもある。この菁桐の近くには平溪三尖と呼ばれる尖った山峰をいただく山がある。石筍尖,薯榔尖そしてこの峰頭尖である。前二者は単一のピークであるが、基隆河を挟んだ対岸の峰頭尖は、西側皇帝殿山などから望むと三角ピラミッドが顕著だが、菁桐から望むと長々と峰々が続く山である。そのうち西側のピークが峰頭尖の山頂とされている。一方、この連峰の東には峰頭尖東峰がある。これらのピークを端から端まで縦走することができるが、稜線上には小ピークが次々と現れ、そこそこの時間を要する。最近は、ボランティアの道整理で草が刈られ、多くの場所で安全ロープが取り付けられてて、四方からの登山が可能である。
北側薯榔尖から望む峰頭尖、最右の峰が三角点山頂
西側皇帝殿山から望むと鋭い山峰を見せる

古道を整備した黄さん
忘憂古道 忘憂は憂さを忘れるという意味だ。本来は谷の奥にある民家などへの生活路であった。地元の82歳になる黄さんが自力で道を整備し、一般に公開している。その他のボランティアグループも協力し、今日の歩きやすい歩道になっている。入口近くで主稜線から北に伸びる支稜に沿って行く稜線路とその東側の沢に沿って行き、稜線に上がる溪谷路の二つのルートがある。そしてその合流した先からは、またそのまま稜線を行く道と、山腹に沿って行きさらに西側で稜線に上がる二つのルートがある。上り下り別々のルートをとって歩くと、違った風景が展開し面白い。

古厝遺址 古厝とは古い家のことである。ここでは上記黄さんの親戚が住んでいた家とのことだ。台湾の山間の民家は、石を積み上げて壁にしている。屋根は昔はわらなどで覆っていたようだ。打ち捨てられると、屋根などが落ちてなくなるが、石壁は残りその存在を示している。近郊低山には、山から降りて移住していった後の残された古厝がたくさんある。中には石臼なども残っていて、当時の生活の様子が偲ばれる。

有應公 道教の神様である土地公に対し、有應公は台湾の民間で発生した信仰である。中国大陸から移民してきたが、不幸に病死などで行き倒れた人たちの遺骨を集め埋葬しその魂を弔うことから発生した。日本と同じに先祖を祭る中華文化圏では、こうした素性のわからない人は、まともな埋葬がされない。その隙間を埋めるような形でこの信仰が形づくられたという。土地公は、道祖神のように台湾各地に多く存在する、道教の地位ランキングでは比較的低い階層の各土地を守護する神である。有應公も、多くの場所にその祠が設けられている。

菁桐 大正7年(1918)に、藤田組と台湾五大財閥といわれた顔家の合弁で台北炭礦株式會社(後の台陽礦業公司)が設立され、採掘する石炭運搬のための鉄道が建設された。それが今日の平溪線の前身である。優良かつ大量の石炭を算出するこの地には、会社運営のための事務所や職員宿舎が設けられた。戦後も採掘は引き続け行われたが、日本の石炭産業と同じように、石油へのエネルギー変換、採掘の困難度増加や事故などで1970年代には衰退し、2000年には全面閉鎖した。残っていた当時の日本式家屋は、そのご修復され観光資源として使用されている。
基隆河の両側に広がる菁桐の街、手前に台陽公司の日本式家屋が見える

コース概要:

中埔バス停で下車し、菁桐方向へ少し戻る(菁桐からは基隆河の橋を渡る)。歡迎白石腳里と記す石碑の前の観光商店街に入り、まだ新しいトイレわきの道を登る。道なりに進み、谷にそっていくと涼亭がある。そのすぐ上にある橋が忘憂古道の入口だ。ここから先は山道で危ないから、遊楽客は身の安全のために入らないように、という役所の看板がある。

中埔バス停で795番バスを下車
歡迎白石腳里の石碑、背後は薯榔尖
この商店街から入る
舗装路を登る
このすぐ先に古道入口の橋
橋の前の警告板
橋を渡り道なりに畑の中を進む。すぐに藍天隊の道標がある。右は稜線道、左は溪谷道だ。どちらでも行けるが、右は所々展望ができる、左は沢沿いで水に近い、という特徴があるので好みに応じて選べばよい。上り下り別々の道を行くのも面白い。夏の時季は、暑いので朝方に稜線道を行き、午後は水に近い沢沿いを降りるなどというバリエーションもよい。ここでは、そのパターンで紹介する。

畑の間を登る
藍天隊の道標
道はつづら折れで高度をあげ、山道の様子になる。ロープの手すりの坂を過ぎると、ベンチが置いてある休憩所だ。手前が開けて、展望できる。風が吹き抜けて、天気が良ければ気持ちがよい。尾根上には、上り下りがある。少し下り、また登り返していく。ベンチから20分ほど登ると、右に展望台への表示がある。そのまま直進もできるが、天気が良ければ立ち寄ると、高度が上がったので広い範囲が展望できる。菁桐の街も眼下だ。

つづら折れの山道で高度を上げる
ロープ手すりの坂道
休憩ベンチ
一部稜線下を進む
展望台への道標
展望台からのパノラマ
基本は登りだが、ところどころで少し下り、登り返しもある。尾根から少し離れて、斜面をジグザグに登る箇所もある。途中で少し戻る形になるが、第二展望台もある。さらに20分ほどで、左に沢へ下っていく道を分岐し、そのすぐ上に稜線道と山腹道の分岐を見る。

稜線上を登る
斜面をジグザグに登る
第二展望台
稜線道(左)と山腹道の分岐点
稜線道は、急な勾配を登る。左の斜面に回り込み、安全ネットもある箇所をトラバースする。さらに急坂を登りつめ、アルミ製梯子を登る。これをさらに登ると主稜線に着く。主稜線を西(右)へと少し行くと、大きく砂岩が露出した尾根になる。岩の上を注意深く進む。天気が良ければ、岩の上からは南北広い範囲の展望ができる。雨の場合は、足元に注意が必要だ。
セーフティネット
ジグザグに切られた斜面の道
アルミ梯子
砂岩が露出した主稜線
岩稜上の眺め
急坂に取りつき、登りつめて下る。主稜線上では、こうした小さなコブがたくさんあるので、なかなか距離が稼げない。下ると、先ほど分かれた山腹道との分岐点だ。付近から前方に目的地の峰頭尖山頂とその背後の山々や、台北の街が望める。尾根上には露出した岩や急坂があるので、足元は注意だ。最近の整備でロープはたくさん取り付けられている。上り下りが過ぎ、左に東勢格越嶺古道方向へ道を分ける。この辺りはそこそこ平らな場所もあるので、休憩によい。
稜線上のコブを登る
山頂のピークを望む、右遠くには台北
急な下りそしてまた登り返し
東勢格越嶺古道方向(左)への分岐
分岐からさらに下り、また小ピークを越えていく。稜線下をトラバースする場所もある。右に白石腳への山道を分岐すると、山頂への最後の登りだ。登りきると樹木に囲まれた山頂(標高609m)が現れる。それほど広くないが、10人は座って休める広さはある。
稜線下をトラバース
山頂への登り
白石腳(右)への分岐
峰頭尖山頂
帰路は、往路を山腹道分岐まで戻る。帰りも小さな上り下りが続き、うんざりする。分岐から、急な斜面を下る。こちらも梯子がある。急な坂を下り、斜面をトラバースしていくと、稜線道との合流点だ。その先すぐに右に沢方向へ下る。ジグザグに道筋が切られた斜面を行き、谷間に降りる。少し登り返し、左に稜線道を分けて間もなく古厝遺址だ。この遺跡は、あまり壁が残っていないが、以前の広い前庭などがわかる。
山頂からの下り
主稜線上の山腹道分岐
谷間に降りる
稜線道との分岐に戻る
溪谷路へ下る
ジグザグ道を下る
古厝遺址
道は下って広くなる。以前は棚田だったように見える。すぐ左上に有應公の小さな祠がひっそりとある。さらに行くと、沢音が聞こえ水が近くなる。この辺りで休憩をとるのもよい。オオタニワタリなどが多く樹木にとりつき、ジャングルの様相だ。右岸に渡り沢沿いに進む。下って左に沢を見ると、それを横切り先ほどの稜線道との分岐に行く。そのまま下って行っても、涼亭へとつく。さらに下って、登りに通った観光商店へと戻る。
以前は棚田だったと思う広い道
素朴な石棚有應公
オオタニワタリが多く取りついている
右岸へ渡る
沢沿いに進む
ここを進めば稜線道との分岐
本コースだと約半日で終わるので、その後菁桐老街散策や、健脚であれば対岸の薯榔尖石筍尖などへ足を延ばすのもよいだろう。また、峰頭尖も、忘憂古道だけでなく、九龍山経由や白石腳登山道、或いは反対南側からのアクセスもある。これらの道はここ1年ぐらいは、まだ状態が良いはずだ。



アクセス:
鉄道平溪線菁桐駅、或いは795番台灣好行バス中埔バス停から往復する。795番バスは台北MRT木柵駅をでて木柵路上のバス停で乗り換える。

装備:
商店街脇のお手洗い

天気が良ければ、時間も短いので十分な水や行動食で十分である。木陰を行く部分が多いが、5月から10月ごろまでの熱い時期の好天下では、昼間は風がないと結構暑い。トイレは、上記案内中にあるように、観光商店街のはずれにある。

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