このブログを検索:山名などキーワードを入れてください

2022-10-05

台湾登山ルートガイド:台北近郊登山 七星山 一般登山ルートを登り、チャレンジルートを下る

東側から登り反時計回りに回遊(一部未録区間あり)
台北市の最高峰(標高1120m)、陽明山山系の最高点である七星山は、おそらく台北で最も登山者が多い山ではないだろうか。平日でも天気が良ければ山頂は人だかりである。それは、しっかり整備された登山道があり、冷水坑や小油坑の登山口からであれば標高差も400mに満たないこと、アクセスもとても良いこと、などが人気の原因だろう。筆者も今までかなりの回数訪れている。ちなみに小百岳に選定されている。

ただ、人が多い山頂は、実は主峰と東峰である。火山である七星山は、それ以外に北峰と南峰があり、こちらになると藪漕ぎがあるため、本当の山好きしか行かない。超人気七星山の穴場のような存在である。そしてこの峰へと通じる道は、官製登山道はなく、道標もない。つまりは、しっかり地図を判読し藪漕ぎなどに通じている登山者だけの、静かな山でもある。

台北盆地の北部に位置する
前回二回の台北近郊登山ルートガイドに続き、この文章もルートガイドである。台北盆地を囲む山々の内、前回は南端、今回は北端となる。登りは一般官製登山道を登り、下りは非官製山道を下るという趣向でガイドする。もしルートファインディングや藪漕ぎに自信がない人は、一般登山道を下山されることを勧める。逆方向に歩いてもよいが、同じくそうした技術は必要だ。もし下山路を別にとるのであれば、小油坑や冷水坑に下ると下降距離を少なくでき、時間も短い。

登山対象:

ルート 陽明山公車總站 - (人車分道16分) - 陽明山遊客中心 - (苗圃步道45分) - 七星公園分岐 - (苗圃步道45分) -七星山主峰 - 七星山北峰往返(30分) - 主峰 - (20分) - 七星山南峰 - (35分) - 金露山 - (10分) - 金露天宮 - (陽金公路或人車分道 35分) - 遊客中心 休憩無し4時間半 距離7.4㎞ 上昇810m 下降680m コース定数19

陽明山總站 陽明山公園や山を訪れるときに便利なバスターミナルである。台北MRTのいくつかの駅からここへバスルートが出ている。ターミナルから小油坑,二子坪公園,冷水坑などの登山口を巡回する108番バスがある。バスターミナルに到着後、108番バスに乗り換えこうした登山口に行ける。

背後に七星山を高く仰ぎ見る
人車分道 陽明山公園では、車の流れと人を分ける目的で、車道に並行した人車分道を設けている。車道のすぐわきを行くセクションもあれば、少し離れて山の中を行く部分もある。基本的に七星山のすそ野をぐるっと一周する。

陽明書局付近の人車分道(2011/9攝影)
陽明山遊客中心 国家公園の説明をする施設で、ビジターセンターという性格である。陽金公路脇のセンター以外に、冷水坑や小油坑,大屯公園などいくつか存在する。
遊客中心、背後に七星山
七星山
 七星山の由来は、淡水河から入り開墾を勧めた漢人先住民が、平地の奥に七つのピークをもつ山を望み、一方台北盆地のちょうど北に位置し北斗七星の七星からその名をえたという。小油坑には硫黄ガスが噴き出し、登山道際でも近くに噴き出している地点もある活火山である。現在の七星山の山体は上記先住民の七峰の内の一つであり、主峰以外に東西南北に地形測量基石があるピークを有する。主峰の南側の窪んだ場所には、原住民凱達格蘭族の祭壇があったという。それらしいものがあるが、真偽はまだ定説がない。地質学的には、台湾北部の山に多い砂岩とは異なり、火山性の安山岩が主要の構成岩石である。

大屯山から望む七星山、小油坑の硫黄噴出部が見える(2012/3攝影)
苗圃步道 七星山の南側からほぼ直登する急な登山道である。起点は遊客中心近くで、ほぼ全区間石畳石段が敷かれている。標高差680m、距離は2.4㎞とされ、200mごとにキロポストがある。ほぼ中間地点の分岐までは、土の道も並行している。石畳を嫌う人は、こちらを歩くようだ。なお,苗圃とは幼樹の苗床の意味である。

苗圃步道登山口
金露山 七星山の南西麓にある金露天宮の上方にちょっと盛り上がった丘である。本来無名だが、登山者が命名したようだ。

コース概要

陽明山バスターミナルから、歩きはじめすぐに人車分道の入口前に着く。トンネルに入り階段を登ると、陽金公路脇にでて石畳の道が始まる。遊客中心まで、車道に並行して登る。所々車道のすぐわきにでて、往来する車が見える。遊客中心にはトイレや休憩所がある。この先はトイレはない。時間に余裕があれば、遊客中心内の展示物を見学するのもよい。陽金公路を挟んで反対側には駐車場がある。またそのわきにはバス停もあり、 小8、小9、129番、108番バスが利用できる。

人車分道の入口トンネル
遊客中心への人車分道
遊客中心から少し進み、苗圃步道登山口を過ぎると、右にボーイスカウトのキャンプ場がある。その少し先で、苗圃步道は右に分岐する。直進する道は人車分道で小油坑へと続く。少し登り、左に最初の休憩ベンチをみると、その右に土道の入口がある。石畳官製歩道と並行する道である。一部離れるところもあるが、基本並行して進む。大部分の登山者は、石畳道を往来している。土道には一切道しるべがないので、地図などがない場合はお勧めしない。苗圃石畳道が、分岐で左に大きく曲がるところまで、土道を進んでくることもできる。分岐にはベンチもあるので、一休みに良い。

苗圃步道は右へ曲がる、直進は人車分道
石畳歩道と並行して進む土道
ベンチのある分岐、ここは左に進む
分岐後苗圃步道は、少し行くと涼亭があり、七星公園への道が右に分岐する。涼亭にはベンチもあり、ここでも休憩できる。またAED装置もおかれている。この分岐を過ぎると、道は俄然勾配がきつくなる。石段段差も少し大きめで、初めは戸惑うかもしれない。ここはひたすら登るだけだ。標高950mあたりで、草のセクションに少しでて、下方の展望ができる。大きな松の木を見てしばらく、標高980mあたり(キロポスト1.8K)で左に土道が分岐する。これは凱達格蘭遺址へと続くが、道標などないので地図判読や藪漕ぎのスキルが必要。その先少しで、道の両脇は高いヤタケの間を行く。急坂は残りわずかだ。

七星公園への分岐、直進する
急な石段道が続く

急坂中景色をみて気を取り直す
凱達格蘭遺址への入口(左)
ヤタケが現れると登りもあとわずか(2K地点)
最高点を過ぎて少し下り、右に東峰への道を分岐する。この分岐脇にもAED装置がある。つまり、心臓に問題があるような人が、この急坂で心臓不全などの症状が現れたときに、使うということだろう。最近設置されたもののようだ。左に最後の登りを登り切り、正面に一等三角点と七星山主峰の山名柱を見る。

長い登りが終了、左に主峰山頂が見える
AED装置のある東峰への分岐
山頂にはベンチもある。ただし、屋根はないので悪天の時はすぐ下ったほうが良いだろう。好天であれば、南に台北盆地の様子が俯瞰できる。北峰は、山頂の脇の密生する草むらの中にある。注意しないと気付かないだろう。七星山を含め、陽明山はその昔草山と称されていた。冬季季節風などの影響で高い樹木は育たず、草が覆う山である。北峰はこのカヤやヤタケの間を藪漕ぎ10分強で着く。測量基準石が埋まるだけの山頂である。

好天の時は台北盆地のよい展望台、中央のピークは南峰

人であふれる主峰山頂
北峰への入口
北峰山頂
往路をもどり山頂から、石畳登山道を下る。ほぼ下り切ったあたりで左に草むらの間に道が口を開いている。道しるべはない。この道は凱達格蘭遺址と南峰への道で、すぐに右に折れて南峰へ向かう。もう一つ右にまた石畳登山道への道を分け、高いヤタケの間を登る。視界が開け山頂に着く。山頂は測量基準石がカヤに埋まっている。

登山道に現れた竹雉
南峰への入口

南峰から見る主峰(左)と東峰
下り道も深い草の中だ。ただ草をかき分けると、足元の踏み跡はそこそこしっかりしている。そのうち両脇はヤタケになる。道はかなり急な勾配でヤタケをつかんで下る。20分ほど奮闘し、山腹を行く道と合流する。先ほど苗圃步道1.8K近くで分岐した土道でここまで来れる。右に曲がり、さらに高度を下げる。周囲は雑木林で、森の中は比較的明るい。歩く人が少なく、踏み跡はそれほど良くない。

背丈ほどあるカヤの藪漕ぎ
ヤタケをつかんで急坂を下る
山腹道の分岐点

踏み跡はもう少し明瞭でない
下ること約15分で右からの山道を合わせ、左に少し登ると金露山だ。ちょっとした森に囲まれた丘である。ここから先は、急坂には太い補助用ロープが取り付けてある。ずっと下っていくと、気配に気づいた金露天宮の飼い犬が一斉に吠え始める。金露天宮は訪れる参拝客も少ない、山中のひっそりした廟である。

金露山

金露天宮

陽金公路から車道が廟まで続いている。この道を下ることもできる。一方、下り始めてすぐ左に山道が分岐する。こちらを進むほうが、下山には早い。苔が生えた石段は滑らないように慎重に下る。この道を通う人は少ないようだが、途中の倒木はしっかり取り除かれて通行の邪魔にならない。最後の手すりのある階段を下り、陽金公路に降りる。残りは人車分道か公路を下り陽明山公園管理處バス停へと歩くだけだ。このバス停は、小9、小8、129などのバスが停まる。ただ終点はMRT石牌站であったり北投站なので、劍潭站へ行く場合は乗り換えるか或いは陽明山總站まで歩く必要がある。

苔の石段道

陽金公路に降りる

仰ぎ見る七星山はすでに高い
駐車場前の陽明山公園管理處バス停(白いブース)

アクセス:

上記にも触れているが、MRT駅からバスに乗り換え向かう。劍潭站からは紅5番 260番、北投站からは小9 番 129番(休日のみ)、石牌站から小8番バスがある。

装備:

前半の苗圃步道は、しっかりした道と道しるべが完備しているので地図はそれほど重要ではないが、後半の藪漕ぎが必要なルートは地図は必須である。山の上部では木陰がないので帽子や日焼け止めなどがあったほうがよい。特に晴天の日は冬の一時期を除いて陽射しは強い。その他は一般的な行動食、水、そして秋から春にかけては、そこそこ寒いこともあるのでジャケットなど防寒も考慮する必要がある。台湾北部は冬季は、東北季節風のため天候が悪いことが多い。その場合は樹木のない区間では風交じりの雨になるので、対応できる雨具は必要だ。

歴史ワンポイント:

記念石碑
人車分道のボーイスカウトキャンプ場の脇には、日本時代の石碑が残る。碑文は、行啓並御成婚記念造林地 昭和九年三月建碑、とある。ここでいう行啓は、まだ皇太子であった昭和天皇が1923年4月に台湾を訪れたことを指し、ご成婚は1924年の結婚を指す。それらを記念して植林が行われたことの石碑である。台湾には杉がなかったが、日本から持ち込まれて植林された。今日陽明山に杉林を見るのは、植林の結果である。

石碑は、昭和の文字と当時の台北州知事の名前が削られている。戦後国民党政権のもと、日本時代の名残を消し去るため、台湾各地で関連の物品や碑などが壊され、或いは文字が削られたりした。石碑は、そうした歴史変遷までをも物語っている。



0 件のコメント:

コメントを投稿