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2022-10-09

台湾登山ルートガイド:台北近郊登山 南港山を一巡り

南港山を一巡りする
当文章も、台北近郊登山ルートガイドである。台北盆地の東端に位置する南港山は、その名の固有ピークもあり、またその他近くの山峰を含む山塊の総称としても呼ばれる。台北市政府の親山歩道が完備し、それ以外に地元住民が運動などで通う土の道も縦横に走っている。とても親しまれている山である。

親山歩道は、四獸山步道や南港山縱走步道,さらに山腹を行く虎山自然步道などいくつかの石畳の道だ。路面は方形の花崗岩が敷かれており、分岐等にはしっかりした道しるべもある。一方、それとは別の麓から稜線などへのアクセスや、親山歩道と並行するような土の道がある。踏み跡がしっかりした道から、草に埋もれかけた道など、程度の差が大きい。道しるべはあまりない。位置づけとしては、親山歩道は一般大衆向け、そうでないものは地元民や地図が判読できる登山者向け、といったところだろう。
南港山は台北盆地の東端
このガイドで紹介するのは、後者の道を多く取り入れて南港山をぐるっと回るという趣旨のルートである。親山歩道は、日本から訪れて歩くとしても、特にガイドがなくても歩けるような道である。本ブログの検索で、南港山と入れて探してもらえれば、かなりの数の記録文も出てくる。このガイドは、一度南港山を歩いた後、ちょっと別のルートで違う南港山をトライしたい、というような読者を想定対象としている。

登山対象:

ルート 吳興街站 -  (20分) - 信義路五段150巷末尾 - (12分) - 清靜山不二法門土地公 - (10分) - 一線天/好漢坡 - (10分) - 象山山頂 - (四獸山步道25分) - 忍字碑 - (8分) - 糶米古道 - (稜線路30分) - 拇指山鞍部 - 拇指山山頂往復(10分) - 鞍部 - (6分) - 後山步道分岐 - (20分) - 九五峰分岐 -(10分) -九五峰 - (25分) -黃禪園 - (虎山自然步道30分) - 豹山 - (松山路15分) - 獅山 - (30分) - 永春高中站 休憩無しで4時間20分 距離8.1㎞ 上昇470m 下降490m コース定数16

象山 南港山の前衛に位置する四つのピーク(四獸山)の内の一つ。台北の主要ランドマーク101ビルのすぐそばにあるので、ここから101ビルの写真が多く撮られいろいろな場面で使われている。標高はわずか184mでアクセスもよく、登山者だけでなく遊楽客や地元民の運動・散歩の場所として、多くの人が訪れる。山頂のすぐ裏、トイレわきの休憩場所にはバーベルなどがおいてあり、地元民が登ってきてウェイトトレーニングをしている。
象山山頂
台北101ビルを望む
糶米古道 当用漢字にはない糶は、売るという意味で糶米はコメを販売するための道の意味だ。その昔木柵や深坑などへコメを運ぶために南港山の南西に伸びる稜線を越えていく峠越えの道である。稜線上の道も糶米古道と称されている。日本でも古道という名称を与えた道があるが、同じく過去に歩かれそれが交通の発展で忘れさられ、ハイキングの道としてまた復活した道である。
糶米古道の標識石
拇指山 標高320mの砂岩頂上を持つこの山は、周囲の森から頭を出しているので、とてもよい展望台である。ただ、北東側の展望はさらに高い南港山に遮られている。拇指とは親指の意味で、市内の平らな場所から見ると親指が突き出たような形状に見えることから命名されたといいう。
拇指山山頂からのパノラマ、左遠くに三峽の山から右陽明山まで見える

後山山腰步道 人口の多い南港山の北側にくらべ、山を隔てた反対側は、その背後の山並みとの谷間で、人口も少ない。したがって後山という性格だ。ちなみに、清朝時代は、台湾の背骨でもある中央の3000m高山山脈に遮られ、東側は後山といわれていた。南港山は、北面はザっと切れ落ちる急な斜面であるが、南側は緩やかな斜面だ。後山歩道は、この斜面を横切って進む。少しの上り下りはあるが、稜線を行く親山歩道に比べればトータルの上下は少ない。途中、南港山最高点である九五峰へと枝尾根を登る道が分岐する。
後山歩道入口、右にある道標には記されていない
黃蟬園 上記のように南港山の北側は急な斜面だが、それが緩くなり始めた中腹に黃蟬園が張り付くように造られている。黃蟬とは、黄色の花の名前である。日本時代にブラジルからもたらされたという。黃蟬が庭園に植えられている。40年ほど前に退官した教授が、廃屋木材を利用して作り始めたのが始まりという。その後有志によって、拡張され現在に至っている。何軒かある家屋は、確かに廃材で造られていることがわかる。誰にでも開放されているので、休憩にとるとよい。我々もここで休憩をとっている。
入口の門
園内の家屋
虎山自然步道 南港山の北側山腹を横切る親山歩道である。この高度まで下がると、傾斜は緩くなる。その高度を横切っていく。虎山は、四獸山の一座でこの歩道よりも低いところに山頂がある。この歩道は、5月は蛍が多く出現する。そのころにはマイクロ・エコツアーとでもいうべき催しものも開催される。
歩道名が刻まれた石
豹山 四獸山の一座。標高は142m。山頂からは、101ビルや信義区の高層ビルが良く見える。1930年代に南港山の炭鉱が開発され、近くに松山一坑の坑道があった。

趵山山頂
獅山 
四獸山の一座。標高は151m。松山路にある道しるべから少し入ったところに山頂がある。樹木に囲まれ、ほとんど展望はない。
獅山山頂

ルート概要

吳興街のバス停から信義路五段150巷へ向かう。住宅街を抜けていくので、路地がたくさんある。それらのいずれかを抜けて、信義路五段150巷の末尾へ歩く。そこから次の目標清靜山土地公への坂道が始まる。コンクリート舗装された道は、ちょっと急な坂で上り、右に折れて山腹を平らに進む。南洋杉の間を行くとコンクリ道が終わり、へちま畑の脇を登ると清靜山だ。
住宅街を抜けて信義路五段150巷の末端、101ビルが近い
坂を登り平らになった道を清靜山土地公へ
右上鉄のテラスが清靜山土地公
清靜山は急斜面の露岩に造られた土地公(仏像もある)で、鉄製のテラスが造られてスペースを確保している。すぐわきには仏教用語である不二法門や、その他の文字や顔が岩壁に刻まれている。不二法門脇の階段を登り、上部にある菜園を突っ切る。本来ここは家屋があったようで、柱だけの廃屋が残り、その前庭が今は菜園として使われている。廃屋脇の道を登っていく。ここはちょうど高速道路の上で、トンネル入口が眼下に見える。ここまで上がると、遠くに插天山脈が前面の山並みの奥に望める。
清靜山土地公
不二法門脇の石段を登る
菜園を横切る
下に高速道路が見える
遠く插天山脈が望める
土道をすこし行くと、岩と岩の狭い間に道が急登する。一線天と呼ばれるところだ。これを登り切ったところが好漢坡である。好漢坡は、日本語で言えばさしずめ男坂といったところだ。好漢坡の文字が刻まれた岩壁の前はテラス状で、樹木なければよい展望があるだろう。岩壁に刻まれたステップを上がり、山道を登っていく。右に涼亭を見ると、道には石段が現れすぐに象山すぐ下のトイレわきにでる。山頂はすぐ上だ。
一線天
好漢坡
象山山頂下の広場、地元民が運動している
象山からはしばらく石畳の四獸山歩道を進む。下って少し登り返していく。前方に左に曲がり急な石段を見ると、そのすぐ右下に大きな忍の字が刻まれた岩がある。この岩の下をいく土の道を取り、登っていく。少し急になり、上部を行く糶米古道に合流する。右にとって少し登り、鞍部で左に折れる。廃棄されたような石のベンチがあるところの上に、尾根上を行くかすかな踏み跡を見る。これが拇指山へと続く尾根道だ。
四獸山步道を進む
石段道を登る
右の忍の字の道をとる
糶米古道へ合流
尾根道はすぐに急なロープセクションになる。三段になるこのセクションを登りきると、道はシダの密生する斜面を行く。踏み跡はほとんどなく、この道はあまり歩かれていないことがわかる。邪魔をする樹木がないので、筆架山連峰から二格山などの貓空の山、さらに遠くの山々、反対側は台湾の盆地やその縁にある山々が良く見える。道は森に入り、またロープの急坂を下ると拇指山下の鞍部に出る。雨などの時は滑りやすいので、この区間は同様な道の経験がない登山者は避けたほうがよい。忍字碑から親山歩道を歩くことを勧める。
ロープの架かる急坂道
急坂を登る
シダが密生し踏み跡が見えない
シダの密生する斜面から南方向のパノラマ
拇指山下の鞍部
にぎやかな拇指山を往復し、下って石畳の親山歩道を進む。少し登るとテラス状になっている。ここから後山歩道が分岐する。土の歩道は、よく歩かれているので迷うことはない。山襞をぬって進む。少しの登り下りがある。前方に九五峰へのサインを見たら、左におれて山頂へ登る。登り切ったところが山頂だ。ここは稜線道をやってくる登山者でにぎやかだ。
拇指山山頂へ
石畳道を行く
わずかな上り下りのある後山歩道を進む
九五峰への分岐点
九五峰へ登る
人だかりの九五峰
しばらく石段稜線道を下る。途中涼亭や通信用タワーの脇を通る。下りきると、右から後山歩道を合わせる。すぐ左に黃蟬園へ下る道が分岐する。急な階段道を下る。手すりもあるので、心強い。急な石段が終ると黃蟬園が現れる。道脇に門が上下二か所にある。どちらから入ってもよい。中には数か所小屋が造られており、自由に出入りできる。小さな池や花壇もある。
稜線道から見る台北の町並み、遠くは陽明山、五指山山系
稜線道を下る
黃蟬園への分岐
手すりのある石段道
黃蟬園はすぐ下
階段道をさらに下り、山腹を横切って進む虎山自然步道に降り、左に曲がる。道脇の街灯には、光源が広がらないような覆いがある。この地帯に生息する蛍のためだ。あまり起伏のない道は、途中十方大法禪寺の前庭を横切る。道は復興園の広場にいったん出る。台北が俯瞰できる展望台もある。ここから復興園の文字が掲げられた門をくぐり、少し登って右にいく。飲用水用の設備の脇を行く。
黃蟬園を後に下る
山腹を行く虎山自然步道
寺院の前庭を突っ切る
復興園の門
飲料水処理設備
道は石畳から木チップが敷き詰められた道になり、大きめの涼亭を通り過ぎ、九五禪寺の前を通る。振り返るとちょうど先ほど通り過ぎた九五峰下の通信鉄塔が、すでに高くなった稜線の上に見える。道は右に大きく階段で下り、瑤池宮廟の脇で松山道にでる。左に折れすぐに豹山山頂への入口を見る。山頂は道を入ってすぐに着く。
木チップの路面と大きめの涼亭
九五禪寺から九五峰を見上げる
瑤池宮脇で松山路に出る
豹山
松山路に戻り道なりに進む。山腹を横切っていく松山路は少し上下はある。左に松靈隱寺の山門、右に豹山溪歩道入口をみて少し登る。登り切ったところで、右に獅山への山道が入口を開いている。少し登り獅山に着く。ここから、獅山稜線上の道を行く。ちょっとしたロープの坂を下り、左からの道を合わせる。道なりに進み、左に分岐する道をとる。この道には特に道しるべはないので、注意する。石段ととても急な坂を下りきると、まだ塗りなおされて新しい多くの羅漢像が様々な姿態で、設置されている。
松山路を進む
松靈隱寺山門
獅山入口
獅山から下る
急階段を下る
降りた道は、左の天寶聖道宮からやってくる道で、右に曲がって進む。途中分岐を左に下り、間もなく石畳道になる。涼亭のあるテラス脇を行き、階段を下る。左に曲がっていき、松山路650巷15弄の舗装路を登る。信号のある交差点を右に曲がれば永春高中バス停だ。道の対面はバスがたくさん並んでいる。その上は永春高中(高等学校)だ。
右に鮮やかな色に塗られた羅漢像、左に下る
涼亭を通り過ぎ下る
ここを右に曲がれば永春高中バス停

アクセス:
MRTの最寄りの駅は象山だが、このルートの始点終点ともにちょっと遠いので、バスを利用することを勧める。吳興街バス停は、 22番、32番、37番、藍5番のバス、永春高中站は、20番、33番、286番、299番がある。両者とも始発終着バス停だ。バスの本数も多い。

装備:
半日のルートで、街からとても近いので、行動食、水など基本装備でOK。但し、拇指山前の稜線道は、ロープの急坂があるので手袋があったほうが良い。基本は樹木の下を行くが、夏は高度が低いので、やはり熱い。飲料水は十分携帯することを勧める。途中、有志による水タンクや、虎山自然步道などには飲料水飲み場がある。
ボランティアが提供する歩道脇の水タンク

黃蟬の黄色い花


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