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2020-04-13

2020年4月12日 大礁溪山 山の斜面を埋め尽くす杉林は土倉龍次郎の夢を見るか

大礁溪山斜面標高800mあたり一面の杉林
去年6月、日本統治時代の初期に訪れ起業した土倉龍次郎の足跡を探すべく、日本からの来客と大桶山へ登った。土倉龍次郎は、江戸から明治にかけての財閥土倉家庄三郎の次男で、土倉家の事業である林業を台湾で展開すべく、日本による台湾接収早々の1895年末に台湾に来ている。1898年、総督府から300年の租借地として、烏來の山野の使用権を得た。具体的には、現在の龜山から南勢溪上流とその支流流域の山野になる。龜山に根拠地を設け、原生するクスノキを伐採して樟脳を生産、その跡地には杉を植林し、林業を進める。日本の土倉家の財政問題で、事業半ばに三井に売却し、志半ばで1907年台湾を離れる。
大礁溪山山頂のメンバー
台湾では柳杉と称される杉は、日本固有の樹木でもともと台湾にはない。まさに土倉龍次郎による植林によってもたらされた。今回訪れた大礁溪山は、頂上近くまで杉の人工林が斜面を埋め尽くす。今はもう伐採はされていないので、木々は枝打ちされていない。そこそこ太い杉もある。桶後溪は南勢溪の支流であり、ここは龍次郎が租借した土地の一部である。彼自身がこの地まで植林をすることはなかったが、ここに育つ杉林は、まさに彼が120年前に夢見たものである。

桶後古道から大礁溪山を往復
単一ピークの登頂
桶後溪は、烏來から宜蘭に抜ける桶後越嶺古道がそって進む河川である。上流には烘爐地山があり、数年前に訪れた。その後台風により壊滅的な被害を受け、長くこの地へのアクセスは閉ざされていた。修復工事が完了し、桶後越嶺古道は再び開放された。大礁溪山は、宜蘭側からもアクセスできるが、台北からだと山を回り込んで登る形になる。桶後越嶺古道からであれば、台北から烏來をへて時間的にも距離的も早くアクセスできる。しばらく閉ざされていたため、山道もあまり歩かれていなかった。そこへ2月末に藍天隊が入り、山道の整備をした。今回の登山はそうした上に実行した。

宜蘭との境界の山並みにある大礁溪山
公共交通機関は、烏來までの849番バスしかない。その先へ行くのはタクシーなどか自家用車で行くかである。今回は、山仲間の運転する車で桶後林道13Kの車アクセス最終点まで行く。週末の天気が崩れ、昨日土曜日は大雨が降った。今日も午前中は天気が良くない。しかし午後から天気が回復するとの天気予報だ。そこで、集合時間を一時間遅らせ8時にMRT
新店駅に集合した。今回参加者の車は全部で5台だ。一路烏來へ向かい、さらに9号甲公路を孝義へ走る。以前は、途中の派出所で入山の許可が必要だったが、今は必要ない。8時40分、9号甲の最終点に着く。二年ぶりの来訪だ。その時は、桶後林道には車で入れなかった。
以前はここで入山申請が必要だったが、今はもういらない
道に倒木、移動させて通過
林道は、9号甲公路に比べれば程度が落ちるが、ずっと舗装されている。11K を過ぎる辺りで、道に倒木がある。車を降り力を合わせ移動する。9時35分、13Kの終点に着く。すでに車が何台か止まっている。テントも張られている。雨の中、大変だ。雨具を付けて準備をする。二台のメンバーが、雨なのでそのまま引き返すという。残りのメンバー9名で歩き始める。すぐ左に壊れた吊橋を見る。右に桶後越嶺古道の説明板と車止めがある。ここから古道歩きだ。峠まで7Km である。

ゼロキロポスト(右)がある桶後越嶺古道の入口
大水で流された部分を行く
古道といっても幅広く、沢沿いのこの部分はほぼ平らだ。沢両側の山腹には多くの人造林がある。この古道は林道としての使用がされていたのだろう。歩いていくと、道が水で削られ、丸太で梯子が造られている。10分ほど歩き、右に大礁溪山への登山口を見る。すぐ近くには枝沢が流れ込んでいる。

登山口、すぐわきに枝沢が流れ込む
杉林の中の急坂を登る
ロープのあるちょっとした急坂部
山道は坂が続く。道の両側はずっと杉林だ。もともとは良く歩かれていた山道だ、手入れがされて良い状態に戻っている。片手には傘、もう他方には登山ステッキで、問題なく登れる。20分ほどで、補助ロープが取り付けられている部分がある。問題なく通過する。40分ほど登り、ちょっと立ったままで休む。登りはじめに比べると、傾斜はすこし緩くなるが、基本はずっと上り坂だ。

杉林の道が続く
下草が広く刈られた部分、道標が取り付けられている
ヤタケの間を行く
三角点のある山頂
次回は小礁溪山へも足を伸ばしたい
11時14分、ほぼ平らな場所で広く草が刈られている場所がある。白地の道しるべが新しい。藍天隊が整備をしたときにこの辺りで昼食したのだろう。標高は800mを越え、頂上までの半分以上を登った。さらに進み、また急坂になる。周囲は心もち霧が深くなったような気がする。道は、ところどころ水が流れ沢のようになっている。標高が1100m近くなり、周囲の杉林は雑木林に変わる。風も強く吹いてくるのを感じる。坂も緩くなり、稜線上を行く。12時15分、道の両脇はヤタケが現れる。しっかり刈られているので藪漕ぎはしなくてすむ。間もなく大礁溪山頂上(標高1161m)に着く。約2時間で登ってきた。

山頂近くを下る
東側は樹木がなく、天気が良ければ展望があるのだろうが、今日は全く霧の中真っ白だ。風も強く、立ち止まると寒さを感じる。全員が登頂し、食事もそこそこに、12時40分過ぎ往路を下り始める。ちょっとした上り下りの稜線を過ぎると、下りは速い。ただ、足元は泥でかなり滑りやすく気はやすめない。霧は相変わらず濃く、木々のしずくも落ちるが、雨は止んだようだ。傘はささず下っていく。13時20分過ぎに、登山口に戻る。下りは約1時間半だ。

緩やかなセクションを下る
急坂部分を慎重に下る
登山口わきの沢で汚れた雨具のズボンや長靴を洗う。霧が晴れてきて、周囲の山が見えてくる。古道を戻る。道はぬかった場所もある。15時前に駐車場に戻り、歩きを終了する。約7.7㎞、登りは800mである。休憩などをいれて5時間の活動時間だ。今回は、大礁溪山だけであったが、小礁溪山の道整備も行われるようなので、いずれまた小礁溪山と一緒に訪れたいと思う。宜蘭との境界になるこの山域は、山が深く道の状態も良くない。筆者にとって、まだまだ未踏の部分が多い場所でもある。

天気は回復基調だ

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