 |
桶後溪源流を行く、滝のわきを登る |
日本から台湾に帰ってきて、しばらく山に登らなかった。今回は、
7月下旬の山登りの際に偶然知り合った、Frank Laiさんの車で行く山行である。同行者は、筆者とたびたび同行するZさん、Frankさんの奥さんNancyさんと友人Sさんで、都合5名の登山である。一般の交通機関では日帰りは難しい山域であり、誘いに対し喜んで参加させてもらった。昼には沢際で調理をし、二時間かけて休憩をする、ゆったりとした山行であった。
 |
反時計回りに回遊する |
 |
最高点烘爐地山は1166mあるが、出発点が高いので高低差は少ない |
 |
蘭陽平野の縁にある烘爐地山 |
烏來の奥をさらに進むと、宜蘭県との県境になる。烏來を流れていく南勢溪を山間を遡ると、今回歩いた源流にたどり着く。ここは、宜蘭県との県境になる山並みの上部である。宜蘭側からみると、太平洋岸に広がる蘭陽平野の縁に標高1000m級の山が屏風のように続いている。以前登った
桃源谷や
三方向山、
横山などから南にずっとやってくる稜線で、台湾の二大山脈のひとつ、雪山山脈の北端に位置する。この稜線上で、低くなっている鞍部がある。それが桶後越嶺古道が通る峠であり、この峠を越えて下っていけば、烏來に続く。今回登山は、この峠の北にある宜蘭の名峰烘爐地山(標高1166m)である。宜蘭四名山の一座でもある。南勢溪は上流で`桶後溪と名前を変える。桶後越嶺古道に沿った沢とは、分かれて北に登っていく沢が今回の源流域である。ちょうど夏の渇水期で、かなりの距離沢底を歩く部分でも登山靴を濡らさずに歩くことができた。緩やかな斜面の間を流れる沢は、自然に溢れとても良い場所である。
 |
櫻花陵園の登山口 |
朝6時半にMRT民権西路駅で集合し、Frankさんの車で一路宜蘭に向かう。宜蘭に続く高速道路五号線は週末混雑するが、今日は宜蘭の児童節(子供まつり)の最終日で、宜蘭に向かう車がことのほか多い。高速道路の入口では、数十分かかってやっと入れた。高速道路上は、車両は多いものの流れている。8時過ぎ礁溪インターチェンジで降り、一般道を登山口のある櫻花陵園へ向かう。9時10分前、櫻花陵園の一番上部にある登山口に着く。ここは山の上に広がっている霊園である。登山者が乗ってきたと思われる車が、すでに三台駐車している。支度をしていると、数台の車が登ってきた。下車していくる人達は、江さんを代表とする有名な藍天隊であった。山の上でよく見かける道標の藍天隊である。草刈りを含む道の整備を行っているが、今日はリクリエーションがメインとのこと。9時5分、登り始める。
 |
山道入口 |
 |
十字路分岐、左の道を烘爐地山へ登る |
 |
急坂から振り返る、霧で遠くはあまり見えない |
舗装路が土の道に換わるが、幅員の広い産業道路である。四駆であれば更に進んで行くことが可能だ。霊園は樹木がなく、晴天下広い風景が望める。つづら折りに進む道は、そのうち草深くなり、十数分で山道の入口分岐に着く。背の高い草の間を進むこと約10分、森のなかの急登が始まる。急坂を登ること約15分、十字路に着く。ここは櫻花陵園への道の途中に下っていく山道、三角崙へ続く縦走路、そして烘爐地山への道である。一休みする。
 |
丸太の橋でぬかるみを越える |
 |
山頂下、最後の登りを行く |
また急坂が始まる。自動車で登って来る時に見えていた、烘爐地山を取り巻く霧の中に入ったようで、周囲は少し薄暗い。登りが終わり一度下っていく。小さな沢の周りにぬかるみがある。数本の丸木が渡してある。また坂道を登り、開けた場所で左に分岐を分ける。そこから頂上に向けて最後の登りを行く。途中森を抜けて、草地にでる。周囲の山々が望める。補助ロープのある急坂を登りきり10時30分に、頂上に着く。1時間半弱の登りだ。一等三角点基石の周りで、すでに数名の登山者が寛いでいる。先ほど登山口で先に出発していった、子供連れ三人もすでに登頂している。薄霧が掛かっているので、それほど遠くまでは見えないが、それでも平野の山際は望める。
 |
烘爐地山頂上から三角崙山方向を望む、三角崙山は前の山に隠れて見えない、眼下の谷が歩いた源流地帯 |
 |
沢に向けて下る、左奥の山が姑婆寮山 |
写真を写した後、休まず沢に向けてそのまま下り始める。急坂を数分下る。左に尾根上をそのまま進み、桶後林道へ下っていく道を分岐する。沢方向へは、右の枝尾根沿いに進む。森が開けた場所から、前方に姑婆寮山が遠くに望める。この山を西に行けば、鳥嘴尖、桶後崙山、落鳳山などを経て
大桶山へ通じる。勿論一日で歩ききるのは、難しいが。急坂を降りきり、11時23分に姑婆寮山への分岐に来る。約30分の下りである。
 |
深い谷の上部を進む |
 |
最初の渡渉部、この岸辺で昼食をとる |
 |
豊富な昼食、麺はまだ料理中 |
すぐわきに沢が流れている。右に曲がり沢沿いの道を進む。谷は結構深く、左岸上部を進む。分岐から10分ほどで沢に降り、渡渉する。ここは、かなり巾のある岸辺があり食事休憩となる。Frankさんと奥さんは、コンロや調理道具を取り出し、料理を始める。麺を煮始める。それ以外も煮物など、盛りだくさんの昼食だ。持ってきたビールを取り出し、皆で飲む。昨晩冷凍庫にいれておいたビールは、程よく溶け冷たい。空も晴れだし、沢底から青空が見える。木々の間から指す夏の日差しは、沢の水に反射して明るく、大自然の中にいることを満喫できる。調理できた温かい麺を、涼しい水辺でゆっくりいただく。
 |
藍天隊の江隊長と筆者 |
食事をしている間に、登山口で出会った藍天隊のメンバーがやって来た。彼らは、ちょうど我々と反対周りで歩いている。十数人のメンバーのうち、数名は長い鎌を持っている。これが、草深い山道を切り開き、登山者がその恩恵を得ている道具だ。隊長の江さんが立ち止まり、我々としばし話をする。気さくな人だ。台北近郊の登山をする人で、気楽な道だけを歩くハイカーを除いて、藍天隊を知らない者はいないだろう。一緒に写真を撮らせてもらう。
 |
左岸へまた渡る |
 |
沢を進む |
 |
淵の前でまた渡渉 |
 |
沢わきには歩けるだけの岸辺がある |
13時半過ぎ、約二時間の昼食休憩を終え、沢沿いに登り始める。右岸を進み、滝の前で対岸に渡る。水かさが低いので、飛び石を渡って行ける。それでも、滝の下にはかなり深い淵がある。左岸から右岸、右岸から左岸へと、何度か渡渉しながら進む。水はどこまでも透き通り、小さな滝を数箇所見る。上流に行くにつれ、水量も少なくなる。14時13分、右に沢をわけ更に沢は細くなる。ここからは、沢底を歩く場所が多くなる。Zさんによると、前回来た時は巾いっぱいに流れていたそうだが、今日は水際を十分に歩けるだけの岸がある。
 |
赤地に金字の外澳接天宮の標識リボン |
標識リボンは、普通白や黄色の物が多いが、赤に金字のりボンが掛かっている。よく見ると、
五月に太和山を訪れた際に通りすぎた外澳接天宮のものである。お寺のリボンは珍しい。14時30分、主流を離れて枝沢沿いに進む。14時40分、少し休憩する。休憩後、少し山腹を登りまた沢ぞいに進む。15時、ついに水がなくなり涸沢となる。約1時間半の沢歩きは、ここで終わりだ。すぐに草の谷間に踊り出る。右に高く烘爐地山がそびえている。
 |
沢の水は少なくなってきた |
 |
深い淵のわきを過ぎる |
 |
支流二俣部分、主流を渡り支流沿いに登る |
 |
沢から草の谷間へ登る |
15時6分、主稜線上の分岐に着く。鞍部になっているこの場所は、季節風が強く吹き抜けていくので、高い樹木は育たない。左には、三角崙への縦走路がある。少し進んで、視野の開けた場所へ行く。蘭陽平野が眼前に広がっている。左の海上には龜山島が、右遠くに蘇澳方面の山々が見える。縦走路はその先続いているはずだが、草に埋もれて道筋が見えない。
 |
鞍部、背後は烘爐地山 |
 |
鞍部から蘭陽平野を望む |
 |
真新しい藍天隊の道標 |
鞍部分岐に戻る。灌木に今日取り付けた真新しい藍天隊の道標がある。同じ木には、三年前の道標が取り付けられているが、厳しい天候にさらされ半分にちぎれている。朝に通過した、十字路分岐へ進む。すぐ森の中に入り、山腹を巻いていく。数分で十字路分岐へ下りる。少し休憩した後、登山口に向けて下山を開始する。15時51分、登山道入口に着く。上から藍天隊のメンバーが降りてきて、追い越していく。土の幅広道を進む。16時7分、櫻花陵園へ下りてきた。それと前後して、藍天隊の江さんも下ってきた。彼の持っている大鎌を手に取ってみる。見てくれより軽い。しかし、これだけの長さがあれば、山道での草刈りもはかどるだろう。16時17分、車で帰途に着いた。
 |
あともう少しで登山口 |
今回の活動時間は約7時間、しかし休憩を長く取っているので実働は5時間弱、歩行距離は約6.8kmであった。源流沿いの道はそのうちの1.3kmほどである。ここは、今回のようにゆっくり沢の景色を満喫しながらゆっくり歩くべきだろう。都会ではまだ36度にもなる夏の盛りに、涼しく水辺で過ごせるこの場所は、とってもおすすめの場所だ。また訪ねたい場所である。困難度は山道はクラス3、体力はクラス2である。
------------------------------------
更に多くの写真はこちら
0 件のコメント:
コメントを投稿