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2024-07-10

台湾登山ルートガイド:三峽組合山 雲森瀑布 暑い夏のおすすめコース

先に組合山に登り雲森瀑布に下る回遊型ルート
台北から第三高速道路を南西に20数キロ下ったところに、新北市三峽區がある。この地区は、その南に山岳地帯を抱えるが、一方台北のベッドタウンとしてここ10数年目覚ましい発展を遂げている。この地区の南は、烏來區との境界である標高1300~1800m台の插天山脈がある。台北から一番近い、「奥深い」山を体験できる場所でもある。筆者は12年前ほどから、時々訪れ主稜線の一部を除き、かなり歩き込んだ。この記事は、台北から日帰り可能なこの山域で、もっとも訪れる人が多い雲森瀑布と、そのすぐ上に聳える組合山(熊空南山)を巡るルートガイドである。台北近郊の山は、6月から9月ぐらいまでは、かなり暑い時が多く、滝を含むルートは、そうした時期に歩くとよい。

台北中心の南西にある山域

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登山対象:

ルート

三峽台北客運一站バスターミナル→(807番バス約45分)→熊空バス停→(2分)→中興橋→(5分)→民家脇登山口→(120分)→組合山→(50分)→阿花瀑布→(10分)→滑滝→(20分)→雲心瀑布→(30分)→登山口駐車場→(中坑產業道路15分)→近道入口→(10分)→熊空バス停→三峽 

歩行時間約4時間20分(休憩含まず)距離約7㎞、上昇下降各約610m、コース定数18

組合山(熊空南山)

台灣主要山脈雪山山脈の北部に属する插天山脈の樂佩山卡保山の主稜線から北へ派生する支脈上にある。三等三角点を有する標高908mの山である。この付近には熊空山(標高972m)があるので、間違いをしにくい組合山と呼ばれることが多いが、地図上では熊空南山の記載が多い。ちなみに熊空という地名は、この地に先住していたタイヤル族の「森の深くにある美しい滝」の意味の言葉から来ている、という説がある。組合山という名称も、ちょっと一風変わってはいるが。

組合山山頂
雲森瀑布

上記の熊空地名の由来だったかもしれない中坑溪の滝である。この名称は落差が大きく見ごたえのある、代表的な雲心瀑布を指すこともあるが、その上流と下流にも滝がありその総称でもある。このガイドのルートでは、上流の阿花瀑布やその下の無名滑滝などの滝を見て下っていく。阿花とは、日本語で言えばさしずめ「お花ちゃん」といった意味合いである。雲心瀑布は比較的簡単に行けるので、一般遊楽客も多く訪れる。

雲心瀑布
コース概要:

台北の各地点から様々なバスルートが三峽へ往復している(詳細は後述)。現在MRTの延長工事が進行中で、いずれはMRTでの往復も可能だ。三峽の旧市街地区にある三峽一站バスターミナルから、滿月圓行807番バスで熊空へ向かう。市街を抜け、次第に山に入っていく。谷が狭まり深山に来た感じを覚える。

三峽一站で807番バスに乗車
雄空溪の谷間を行く
約45~50分ほどの乗車後熊空バス停で下車する。熊空バス停近くには雑貨店があり、トイレも近くにある。バスで登ってきた道は、ここで三方向に分かれる。左は更に山に向かい登っていく道で、紅河谷古道や熊空山などへ続く。中の道は中坑產業道路、そして右の道は滿月圓方向へと下る。組合山へは、この右の道を下り、中興橋を渡る。渡ったすぐあとに左に登っていく道を取る。登りきると大きな民家が二軒ある。その二軒目の脇から山道が始まる。

熊空バス停と対面の雑貨屋
中興橋を渡り、その先左の坂道を登る
二軒の民家の奥の家わきから登山道に入る
初めはコンクリ舗装の(廃棄)農道がしばらく続く。この道は勾配が緩く遠回りの場所には近道があるので、それをとって登る。途中つづれ折れを通り過ぎ、登山口から約40分ほどで、農道を離れ雑木林の尾根上を行く山道となる。尾根は幅が広く、道の両脇はシダが覆う。勾配もきつくなる。

コンクリ舗装の農道
厄介な倒木
つづら折れの道
山道に入る、右に道標
シダ下草の森の道
更に20分ほど登ると杉が道端に現れはじめ、そのうち周囲は杉の人造林に換わる。台湾の林業は、すでに行われなくなって久しい。かなり太い杉の木もそのままだ。この辺りの山道は、本来この造林のための道だったのだろう。杉林はまた雑木林に換わり、最後の坂を登ると、右から滿月圓からの道を合わせる。組合山はそのすぐ先だ。約2時間の登りである。

杉人造林を進む

森の中を登る
山頂下の分岐
組合山山頂は、木々に囲まれて展望はない。三角点の周りは10人ぐらいであれば座って休める。山頂から少し下り、分岐を見る。右は樂佩山方面へと続く。左にとって少し登り返す。その上は、左に樹木がきれて加九嶺や熊空山からずっと白雞山へと続く山並みが見える。

2014年の組合山山頂
左雲森瀑布、右樂佩山
熊空山
道は下って右に曲がり、杉林の中を山腹を巻いていく。そのうち右から下ってくる道を合わせる。先ほどの分岐を右に樂佩山方面へとり、その先の分岐から左に曲がって降りてきても、ここに来る。更に20分ほど下ると、分岐がある。この道は中坑溪の左岸を行く道で、ここで右にとって阿花瀑布へと往復する。阿花瀑布へはほんの2,3分の距離だ。

所どころの急坂

阿花瀑布への分岐

阿花瀑布の上部
数段の小滝が続く阿花瀑布のちょうど中間あたりを道が横切る。この道をそのままずっと行って雲心瀑布から登ってくる道と合流するが、先ほどの分岐へ戻り更に下る。この道であれば、下流の滑滝を通過していく。分岐から下ること数分で、沢に降りる。大きな一枚岩の上は滑りやすいので注意が必要だ。木橋を対岸へ渡り、沢沿いの一枚岩の上を歩いていく。遊楽客はここまで上がってこないので、時間があればゆっくりするとよい。

滑滝
丸木橋
岩盤上を行く
道は少しのぼって、分岐に出る。左にとって下る。10分強で雲心瀑布の下に降りる。水量が多い時は、見ごたえのある滝である。ここからは、あまり上下のない道が始まる。すぐにアルミ製橋を渡る。大水で流されたこともあるこの場所の橋は。最近このアルミ製の立派な端になった。

山道を下る
雲心瀑布上部
遊楽客でにぎわう雲心瀑布下
アルミ橋を渡る
約30分ほどの山腹道を行くと、中坑產業道路にでる。すぐ左下にかなり大きな駐車場がある。自分で車を運転する場合は、ここまで来ることができる。舗装路をしばらく下ると、大きく左にヘアピンカーブで曲がる場所に、近道の入口がある。そのまま中坑產業道路くだってもいけるが、こちらのほうが短く速い。山道を民家脇で車道にでて、左に少し行けば熊空バス停である。

山腹を縫って道が進む
中坑產業道路にでた、左下に駐車場
ここで近道に入る
にわか雨の中やってきた807番バス

アクセス:

三峽へは台北MRTの多くの駅から頻繁にバスが出ている。具体的には、永寧駅から916番バス,板橋駅から910番バス、景安駅から908番バス、台北市役所付近から939番など多くある。これ以外にも三峽一站バスターミナルにはいかないが、近くまでのバスも数本あるので、選択肢は多い。2025年にはMRTが三峽まで開通の予定である。

熊空へは、三峽一站バスターミナルで807番バスに乗り換える。平日と休祭日とでは時刻表が異なるので注意が必要だ。また休日の8:30発、午後15時頃に熊空を通過する807番バスは、特に暑い時期はとても混むので早めに並んだほうがよい。

装備:

一般日帰り装備で十分である。夏は暑いので、飲料水は十分に準備したほうがよい。アブなどが多いので、虫よけがあったほうが良い。夏の前半には、午後にわか雨となることが多いので、雨具を忘れずに。

2024-06-26

2024年6月22日 宜蘭 東阿玉山 暑い中の苦労登山

東阿玉山山頂
宜蘭と新北市烏來との間にまたがる山並みに阿玉という名を冠した山が数座ある。その盟主は阿玉山であるが、その他西、東、下、中などを阿玉の前にもつ、阿玉山の衛星山峰がある。今回の登山はそのなかの東阿玉山である。筆者は、3,4年前にこの山域に多く入り二回訪れた阿玉山をはじめ阿玉山グループの登山をした。西阿玉山下阿玉山は登頂、中阿玉山はトライしたが及ばすであった。東阿玉山は、訪れる人も少ない不人気山である。最近大礁溪から登る道が歩かれている情報を得て、今回の運びとなった。

同じ道を往復
阿玉山は標高1420mだが、東阿玉山は1019mと400mほど低く、また東を冠するように宜蘭の蘭陽平野に近い位置にある。6月も後半に入り、すっかり夏の気候になっている。午前中は青空が広がるが、午後には雷雨が降ることが多い。そのような形態なので、朝早く出発し登頂を目指した。もともと訪れる人が少なく、道は良くない。道筋も草に埋もれているところが多い。更にのっけから稜線までの高度差約600mは、ほぼ途切れることない急登である。風もなく、気温の高い中、かなり苦しい登山を強いられた。往復7㎞ほどの距離だが、休憩を多くとったこともあり、10時間を要した。

@東阿玉山山頂
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高速道路から見る阿玉山(中央)、小礁溪山,烘爐地山
今回は、5人が一台のシェアカーで向かう。朝5時に台北を出発する。今日は夏至の翌日である。5時はすっかり明るい。雪山隧道が混む第5高速道路も、この時間帯は車が少ない、まったく混雑なく宜蘭平野を見る。途中の坪林では山がまだ霧の中だったが、蘭陽平野は青空が広がる。前方に中央山脈北端になる太平山山系の山々が広がり、西側には鴻子山から南に伸びる雪山山脈の山々が連なる。高架高速道路を進むと、次第に烘爐地山小礁溪山、そして阿玉山が見えてくる。

高速道路の向こうに太平山山塊
正面に東阿玉山の尾根筋が見える
登山口にて、後方の尾根を登る
高速道路を降り、街中を過ぎて大礁溪に沿って山地に入っていく。宜5県道を進み、山が近づいてくる。日安農場の看板を見て、更に両側の草木が迫る道を進む。6時4分、登山口に着いた。台北から一時間であった。車を降りた場所から、右に行けば大礁溪を越えて道が進む。一方、そのまま非舗装路が更に進んでいる。ともに、地図上では稜線へとつながる道が表示されているが、現状ではどうなのだろうか。

沢の右側を登る
草をかき分けての急登
6時20分、我々の登山口は、どこなのか探す。すると、GPS軌跡で示す場所の奥に、マーカーが付けられている。しばらく誰も歩いていないのだろう、登山口は草にふさがれていた。歩き始めると、すぐに沢の中を進み、右側の岸に取りつき登り始める。マーカーはそこそこあるが、自分たちも補っていく。

マーカーリボンを補う
枝尾根上に上がった
前に聞いていた通り、道は急坂である。毎日のように降っている午後のにわか雨で、路面の土は水分を含み、気を付けないとすぐ滑る。補助のロープなどは一切ないので、道脇の木々などを適宜つかみよじ登る。斜面を登るので、風は全くない。全身汗が噴き出す。

厄介な倒木
草に覆われた急坂
7時20分、登山口から150mほど高度を登ったところで、枝尾根上に上がる。少し勾配がゆるかなったと思ったら、またすぐに急登になる。7時35分、少し開けた草地に着く。標高600m、稜線までの半分の高度だ。休憩をとる。これまで暑い中を登ってきたが、急ぎすぎたようだ。軽い熱中症なのだろうか、少しめまいを感じる。体がまだ本格的な夏の暑さに慣れていなこともある。長めに20分ほど休憩をとる。

ここで休憩
シダの野原を登る
登りはじめて間もなく、草木がないシダ野原を登る。背後の陽光は容赦なく、とても暑い。森に入り、引き続き登る。8時35分、先ほどの休憩からさら200m弱登ったところで、また休憩をとる。体が重い。20分ほどの休憩後、また急登を続ける。草原を過ぎるとき、大礁溪の谷を挟んだ対面の烘爐地山が低くなってきているのが、唯一の慰めだ。9時30分、稜線上にたどり着いた。

烘爐地山の稜線が見える
稜線へ向けてひたすら登る
稜線に着いた
ロープが架かる急坂
稜線を左に行けば前阿玉山を経て麓までの稜線が下る。右にとって進む。道は左に少し下り、尾根上の滑りやすい登りにとりかかる。ここは幸いロープが取り付けられている。9時45分、尾根上小ピークの平らな場所で休憩をとる。標高は960mだ。幸い、時々少し風を感じる。

ここで休憩
樹間から大礁溪山
東阿玉山までの間に、上り下りがある。幸い数十メートルの落差だが、それでもつらい。右側木々の間から大礁溪山が姿を見せる。稜線上には多くの野牡丹が紫の花をつけている。緑の森の中の唯一の別色だ。下って、また登り返す。10時48分、二つ目の鞍部で休憩をとる。朝が早かったので、ここで昼食をとる。

野牡丹の花
鞍部で休憩
東阿玉山東峰への分岐
11時20分、東阿玉山へ向けて歩き始める。残りは落差約100m、距離は1㎞足らずだが、遠くに感じる。最後の登りは、比較的緩やかだ。数分登ってくると、左に東阿玉山東峰への道が分岐する。直進し、尾根上を進む。11時36分、また東阿玉山東峰への分岐を見る。更に数分進み、11時48分山頂に着いた。やっとのことでの登頂だ。

密生したシダの間を進む
山頂の筆者
平たい山頂には基石はない。周囲も樹木で展望などはない。つらい登りであったが、目的地に着いたことは嬉しい。15分ほどの山頂での時間のあと、往路を下り始める。東峰への寄り道も、メンバーが乗り気でなく、そのままパスする。12時33分、往路で休んだ鞍部で休憩をとる。かなりの汗を流したので、それなりに塩をとったつもりだが、不足のようで太腿がつり気味だ。更に塩分を補う。

往路を下る
稜線上の登り下りは厄介
20分ほど休んだ後、尾根を分岐まで戻る。帰りの登り返しは厄介だ。13時30分、分岐に戻りまた休憩をとる。天気予報では14時頃からにわか雨が降るということだが、幸い空模様は雨が降りそうもない。長めの30分の休憩後、尾根から離れて下り始める。当初は、天気が持てば前阿玉山まで足を延ばすことも考えていたが、今は誰も行きたいとは思わない。

前阿玉山への分岐道しるべ
急坂を下り始める
急登の登り道は、下りでは大変だ。赤土の現れた場所では、特に神経を使う。ただ、高度が下がるのは速い。14時40分、行きに休んだ小草原に着き休憩する。15時25分、最後の下りにとりかかる。尾根を離れ、岩が表面に多く現れるセクションを下ると、沢音が大きくなる。まもなく沢沿いに降りる。タオルを浸し顔を拭く。実に気持ちが良い。最後に沢を下り、16時18分、登山口に戻りついた。ほっとした。

草原を下る
遠くに蘭陽平野と海岸線
小草地で休憩
登山口に着いた
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大礁溪に架かる橋から上流東阿玉山方向を見る
山からでて、街のコンビニに立ち寄り一息つき、台北へ帰った。帰路も雪山隧道に入るとき、少しスピードが落ちたが、それでも1時間10分ほどで帰り着いた。今回は、都合2時間半ほどの休憩をしているが、それでも7時間半ほどの歩きである。道の状態が悪い、暑くて行動が遅いなどの要素が、10時間も要した理由だ。累計の昇降はそれぞれ約800mである。