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登山道脇に咲く流蘇の白い花、背後は基隆山 |
九份は、今では台湾観光の必須訪問地だ。日本人観光客がとても多い。でも、ほとんどが九份老街や金瓜石あたりの散策だけで、その周囲の山に登る人は少ないようだ。しっかり整備された登山道があるので、天気が良ければ足を伸ばして九份や金瓜石の地形や景観を上から眺めるのも、かつての金鉱の町を鑑賞するのに役に立つ。
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右のルートは昨年9月の金瓜石登山道と貂山古道 |
去年9月末に金瓜石から
金瓜石登山道と貂山古道を経て牡丹まで歩いた。海に近く樹木の少ないこの地帯の山は、夏は強烈な太陽光を遮るものが無く辛い。今年もすでに五月になり日差しが強くなってきたが、真夏到来の前に今回は、九份に近い基隆山を往復、その後また九份の背後にそびえる小金瓜大粗坑山まで登り返し、大粗坑古道をへて侯硐へ下った。
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九份から歩き始め、左下の侯硐へ |
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基隆山登山道入口 |
基隆山はその古名を雞籠山という。その名の通り、鶏の籠に見える独立峰である。基隆の街の名前は、もともとこの『雞籠』山と同じ音をとり名付けたということだ。標高は588mで、周囲の山に比べて特に高くないが、海岸沿いにそびえる独立峰であり、とても目立つ山である。台北郊外の山々からも、三角形ピラミッドの基隆山はすぐ判別できる。登山口は、瑞金公路の脇にあり、そこから頂上までは約260mの高度差となる。もし海岸からの登りであれば、まるまる588mの登りで、そこそこの登りとなるが、九份から出発であれば、半分ですむことになる。
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九份の街は山腹に広がる |
基隆山登山だけでは、一日山行としては少ない。そこで、もう一度小金瓜露頭へ登り返し、そこから反対側に下る大粗坑古道を下った。小金瓜露頭は標高560mで基隆山より少し低いが、基隆山から一旦下りまた登り返しになるので、2度目の登りは気温が上がってきたこともあり、少し辛かった。侯硐へは三つの古道がある。小粗坑古道、大粗坑古道、そして金字碑古道である。大粗坑古道はこのなかで、小金瓜露頭から一番近い。廃校になった小学校跡があったり、立派な天橋も作られていて、道としても興味深い。
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基隆山山腹の道から見る西方向の眺め、左の五分山から台北市、その右は五指、陽明山系 |
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直行道と山腹道との合流点 |
台北市忠孝東路のバス停から金瓜石行き7時10分発1062番バスで出発。1時間ほどで、九份老街につく。今日は休日であるが、時間が早いので乗客は少ない。瑞金公路を登り、数分で基隆山登山口に着く。入口の石碑には雞籠山と記してある。石畳の立派な道が始まる。登ること数分で、そのまま直進する道と左に山腹を巻いてゆるい登りの枝道との分岐がある。距離は山腹を行く道のほうが長いが、基隆方向の景色を見れるので、こちらを進む。右の道は石段だが、こちらは土の道である。道はゆっくりと登っていく。途中に展望台が二ヶ所作られている。この道も高い木はないが、まだ朝早いので陽が当たらず、歩きやすい。二ヶ所目の展望台から、山腹の巻き道が方向を換え、高度を上げるようになる。分岐から40分、二つ目のあずま屋のすぐ下で、直行の道と合流した。更に登ること10分、9時20分に基隆山の頂上に着いた。枝道分岐で、そのまま直進した登山客はすでに到着し、しばらく休んでいる様子だ。時間はかかったが、この道は別の眺めができるので、登り或いは下りに歩いたほうが、もっとこの山を楽しめる。
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基隆山山頂から東方向を見る、金瓜石とその背後の山々、半平山、燦光寮山、牡丹山 |
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大粗坑山小金瓜、下に欽賢國中と登山道が見える |
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基隆山頂上 |
基隆山は独立峰だけに、眺めは広い。登ってきた道のすぐ脇に通信施設があるので、この部分は頂上からの展望が遮られるが、それ以外には頂上の脇に設けられている展望台から、海と山の景色が感動的だ。今まで登った山々から基隆山が見えたが、今回はここからそれらの山が遠くに見える。陽明山山系から、五指山、
五分山、
中央尖、もちろん金瓜石の谷を挟んで半平山とその右に燦光寮山がある。台北の街、101ビルも見える。茶壺山の頂上岩は半平山から手前側に派生する尾根の突端に載っかっている。海側は基隆の町や港はもちろんはっきり見える。反対側は東北角の先端になる鼻頭角が海に飛び出している。半平山の左にある低い山は苦命嶺や和美山だろう。天気はよいが、日差しが強いので頂上のあずま屋で食事をとり休む。
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基隆山登山道とあずま屋、下に九份とその左に墓地 |
半時間ほど頂上で過ごした後、登ってきた道を下る。基隆山は反対側に下る道はない。枝道の分岐からは、直進の石段道を下る。老若男女が何人もグループで道を登ってくる。天気が良いので、この登り一本の道はきつそうだ。多くは軽装なので、九份観光に来たついで登るというところのようだ。二番目の登山道脇のあずま屋から、道は少しジグザグになり下っていく。約30分で登山口に降り立った。ここは、双渓まで続く双渓公道と瑞金公路の分岐でもある。右に双渓公道を取り、道の両側に多くの墓が立っている中を登っていく。道からは、基隆山や半平山がよく見える。この墓地は、金鉱の栄華を過ごした人たちが、眠っているのだろう。このあたりから見る基隆山は、妊婦が横になっているように見えるそうで、基隆山は別の名を大肚美人山とも言うそうだが、どうみれば妊婦に見えるのだろうか。
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双渓公路から見る半平山と金瓜石、手前は墓地 |
双渓公道を登り、聖明宮の山門前の分岐を右にとる。この道は欽賢中学校へ続く。分岐から登りは少しきつくなる。10分ほどで、小金瓜へ続く山道の入口が左に現れる。表示は金字碑通往九份觀光步道となっている。花崗岩の石畳が敷き詰められた、立派な山道である。ところどころ階段が現れるが、全体的にはゆっくりと山腹を登っていく。途中、白い花の流蘇の潅木が二、三箇所群生していた。基隆山がだんだんと同じぐらいの高さになってくると、この山道もそろそろ終わりに近づく。右から小金瓜露頭へ続く道が合流する。この道を登ると、下ってくる登山客とすれ違った。基隆山とは違い、こちらは登山客はあまり多くない。小金瓜露頭は、金を含む岩石のある場所で、以前は金鉱があった。金鉱開発前の砂金が発見されたのも、ここから流れ出す大、小粗坑渓に砂金が流れていったから、ということだ。もともとかぼちゃのような形状だったそうだが、掘られて形が変わり、今は双渓公路の角度から見ると河馬の頭のように見える。
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九份の街と基隆山 |
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小金瓜露頭 |
時刻は11時20分、基隆山の登山口からちょうど1時間だ。ここからは、反対側が見えるようになる。牡丹山から三貂山へと連なる尾根の山腹を双渓公路がいく。すぐ下の谷には、大粗坑古道の天橋が見える。木々しかない緑の山腹にある白い天橋はとてもめだつ。小金瓜露頭から先の道を戻り、双渓公道への入口まで行く。入口は鉄の門が作られ、車は入ってこれないようになっている。すぐとなりは、大粗坑古道の入口だ。古道といっても、この道はしっかり舗装されている、幅広の道である。古道という雰囲気はない。道はさきほどの小金瓜露頭の下を行き、方向を換えて下ると天橋が現れる。こんな場所に、このような立派な橋をなぜ作ったのか。橋からは、これから通過する集落廃墟が見える。先の広い場所は、大川小学校分校の廃墟である。
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大粗坑古道入口 |
大粗坑の集落は、もともとあった金鉱のためのもので、200戸1200人の住民がいたそうだ。当時の繁栄が偲ばれる。橋を降りてすぐの廃屋の前は、変わらず小沢が流れ、花も咲いている。家屋の中からは、人の話し声が聞こえる気がするが、錯覚だろう。大川分校は、小学一、二年生が登校し、それ以上は麓の本校に通っていた。有名な映画監督呉念真は、ここの出身と聞く。
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天橋から見る廃墟と周囲の山々 |
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古道脇の廃屋 |
ここからは、石段の道となり沢沿い下っていく。沢沿いの道もあまり木々がなく、暑い。途中、天災で流された場所もあるが、それを乗り越えるように道が作られている。萬善堂の祠の脇を下り、森の中をいくと、12時半古道の入口についた。双渓公路の入口から、下ること約40分である。
少し休んだ後、侯硐駅へ向かって舗装路を下る。遠くには五分山のレーダーが前の山の奥に見えている。住居が現れるが、黒犬がすごい勢いで吠えかかってきた。小さいのに威勢がよい。更に下ると、金字碑古道への分岐が現れる。脇に車が2台止まっているが、おそらく登山者がここに置いていったのだろう。ここから下ると右に旧侯硐小学校がある。ここは、2000年の台風の鉄砲水で大被害を受け、廃棄されたそうだ。すでに土砂などは取り除かれ、教室や校庭などははガラガラである以外、被害の程を知ることはできないが。沢では地元の人達だろう、釣りをしたり水遊びをしたりしている。瑞芳へと続く瑞侯公道を左に曲がり、侯硐の集落を過ぎる。狭い道を観光客が車を駆って通り過ぎる。基隆河を橋で渡り、右に侯硐駅が見えてきた。
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侯硐の集落、残る廃屋 |
侯硐は炭鉱の町であったが、付近の炭鉱の町と同様に石炭産業は廃れ、今は観光の街へと変身している。多くの観光客が駅の周りにいる。到着した電車からは、多くの観光客が降りてくる。1時10分に駅につくと、ちょうど台北方面の電車が出るところ、次の電車は1時間後だ。ここでゆっくり待ち、14時12分発の電車で台北に戻った。
今回の山行は、距離10.6km、時間は5時間である。高度差は、二回の登りであったので合計600mを超える。小金瓜への登りの際は、陽が陰り助かったが、それでも太陽光線は強く、手や顔はすっかり日焼けした。東北角の山は、まだまだ登るに値する道が結構ある。金字碑古道などもそうだが、それ以外に草山やそれに連なる苦命嶺などの山々もある。いずれは登ってみたい。
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侯硐の橋から見る大粗坑山方向 |
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高度プロファイル |
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