このブログを検索:山名などキーワードを入れてください

2011-12-29

2011年12月28日 筆架山縱走:二格山から石碇へ

台北は今年は11月から雨が多い。ニュースでは日照時間が平年の半分だということだ。12月になっても、なかなか好天に恵まれない。そんなとき、寒気が緩んで晴れの日がやってきた。まえから考えていた筆架山縱走に行ってきた。長く降り続いた雨のため、陽がでても道はぬかっている。たっぷり水気を吸い込んだ砂岩は、見た目には乾いているがその実滑りやすい。そんなことで、結構気を使う場面もあったが、補助ロープや岩場もたくさん現れる縦走路を草楠から石碇へ歩いた。

筆架山縦走路と今まで歩いた付近の山
草湳から石碇まで歩く(クリックで拡大)
大榕樹の分岐点近く
このあたりは、以前6月初旬に二格山から猴山岳へ歩いた。そのときも草楠から出発した。MRT動物園駅から棕15のバスに乗る。草楠で下車したのは、自分ひとりだけだ。時刻は8時少し過ぎ。草楠から産業道路を少しいくと、大きな榕樹(ガジュマロ)がある。前回はこれで右に曲がり、南邦寮山経由で二格山へ行ったのだが、今回は産業道路をそのまままっすぐに進む。野良犬が数匹たむろしているが、おとなしく吼えてこない。台湾黒犬に混じり3匹はラプラドール犬だが、捨てられたのだろうか。

薄暗い谷あいの山道
空は晴れているが、夏山とは違い日差しが弱く、ここは北側の谷間なので薄暗い。歩きはじめて20分ぐらいで、道の右側に屋根だけの古い建物が現れた。その少し先から山道が始まる。はじめは石段の立派な道だが、しばらくすると土の山道に変わる。ところどころ、石がごろごろしているが、おおむね歩きやすい。9時少し前に猴山岳へつながる稜線の道に合流する。日差しが薄暗い谷を歩いてきた目には明るい。草楠から約40分ぐらいである。道を右にとり、わずかに登ると二格山と筆架山との鞍部に着く。天気もよく、時間もまだ早いので、二格山へ往復する。二格山へは、ここからすぐ尾根に取り付いて登る道と、少し産業道路を反対側に下りそこから山腹を登る石段の道がある。6月はこの尾根道を知らなかったが、今回はこれを登ることにする。尾根の道は昔ながらの土の道である。根っこが出ている部分もある。しばらく登り緩やかになると、石段の道に合流した。ここからは二格山頂上まではわずかである。稜線に着き、右にいくと頂上だ。

二格山から台北方向を見る、観音山も見える
筆架山の山なみと皇帝殿山、その左は平渓の山々(姜子寮山,五分山)
9時20分二格山頂上の展望台についた。6月のときも好天で遠くまで見えたが、今回はそれよりはっきり見える。夏は空気中の水蒸気のためだろうか、はっきりしなかった観音山も台北市街の向こうに見える。南港山の山並みの向こう側は陽明山の山並みがある。視線を山側に向ければ、ギザギザの特徴ある稜線の皇帝殿山の向こうには、平渓の山々が並んでる。薯榔尖や五分山も見える。翡翠水庫のある谷間は雲海が埋めているが、よくみると少しずつ晴れてきている。二格山へ登ってきたのは正解だ。

消えていく雲海
二格山と筆架山の鞍部、右奥には鉄橋
30分ほど写真をとりながら休憩した後、展望台からくだる。前にはこれから縦走する筆架山の山並みが見えている。下りは、石段の道をくだる。下りきり鞍部に向かっていくと、人の話し声が聞こえてくる。果たして70代と見受けられる老夫婦が鞍部のベンチで休んでいた。ここにはよくやってくるような口ぶりで、最近雨が降り続いたためか、登山客が少ないといっていた。道を右にとり、筆架山へ向かう。ベンチ脇の路程柱には、石碇まで6.1kmとある。いきなり鉄製の橋が現れる。ここからは上をみると、二格山の展望台が見える。道は、砂岩が露出した場所や補助ロープがしばしば現れるやせ尾根となる。登りの途中、道脇にある大きな砂岩上から振り返ると、二格山が大きい。岩は乾いているようにみえるが、水を吸っているせいだろう、すべり易く注意が必要だ。

筆架山への途中の岩から
尾根の右腹、左腹と道は進む。平らな場所は少ない。小さな上り下りが多い。左側は結構切り立っている場所もあり、数箇所滑落防止のためのネットが張ってある。最後に砂岩の壁に階段が刻んである登りを登りきると、 右へ谷を下っていく道、筆架山頂上の大岩をまいていく縦走路、頂上へ登っていく道が合流する鞍部についた。「筆架」とは、日本語では筆置きの意味だが、この鞍部はその筆を置くくぼんだ部分に当たる。少し登ると、岩が露出した頂上だ。時刻は11時、二格山との鞍部から1時間である。

筆架山山頂からのパノラマ(クリックで拡大)
筆架山から見る皇帝殿山、尾根上右の建物は華梵大學
筆架山の岩頂上から見る二格山
縦走路の安全ネット
標高580mの頂上は遮る物のない360度の展望が可能だ。安全のための補助ロープも張ってある。前方はこれからの縦走路の尾根、振り返れば二格山がある。左の深坑の谷の対岸は土庫山である。縦走路終端の向こうは皇帝殿山だが、それを右にたどれば華梵大學のキャンパスと思われる建物群が稜線近くにある。その奥のほうは10月に登った獅公髺尾山だろうか。快晴のもと食事をとりながらゆっくり景色を眺める。

縦走路の梯子
頂上から一旦鞍部に戻る。鞍部からは桟道や補助ロープつたいに大岩をまいていく。岩に掘り込んだ足場やアルミ梯子なども途中現れる。上り下りも結構ある。ところどころ樹木がきれて、左、右に景色が見えるところを通過する。筆架山から約30分で、道しるべが山道は90度右に折れ曲がるように示しているところに出た。直線状に進む道があるが、行ってみると細いロープが張ってあり、先は道のないことを示している。ちょっと間違いやすいところである。地図で見ると真直ぐ進む道の先に尾根がつづいているが、この尾根には道がない。結局、縦走路は下り気味に主稜線の左をまいていき、炙子頭山へ続く。上り下りを繰り返すが、尾根幅が少し広いところもでてくる。右へ烏塗窟へと続く下り道を分岐し少し登ると、炙子頭山(標高528m)であった。時刻は12時10分。ちょうど3名の登山パーティが筆架山へ向かって出発するところですれ違った。頂上は展望はないが、平坦でベンチが数個すえつけられている。深坑桜花谷へと降りていく山道も左に分岐する。ここで縦走路全行程の約半分を歩いたことになる。

炙子頭山頂上のベンチ
縦走路から見る土庫山
石碇方向へ縦走路は、筆架山からおおむね下りになるが、西帽子岩(標高485m)までは、それほど大きな高低差はない。ただし、間には小さな登り下りの多いノコギリの歯のような稜線であり、補助ロープや梯子などが出てくる山道なので、距離がなかなか稼げない。歩くこと30分で西帽子岩についた。ここは大きな岩が二つ合わさり中空な形状になっているが、それがなければ展望もなく気付かないで通り過ぎてしまうかもしれない。西帽子岩を過ぎると、道は平坦で稜線幅もある場所があわられる。左の谷底には高速道路が見えてきた。沢をまたいでいく高速道路の橋の下は筆架山縦走登山道の入口だ。ここは、高度はまだ400数十mあり、あと300mほど下りがまっている。

やってきた道を振り返る、西帽子岩と炙子頭山
縦走路から見る高速道路、橋の下には縦走路入口がある
岩に這う根
高圧送電線の鉄塔から、右に谷沿いに摸乳巷へ下る保線路が分岐する。縦走路は少し登り返した後、大きく下り道となる。1時50分、西帽子岩から約1時間で筆架山縦走路尾根の末端部についた。ここから右に尾根沿いに下る道と、左に谷沿いに下る道に分岐する。左の谷沿いの道は古くからある登山道のようだ。この谷沿いの道をくだる。かなり急な下り道である。さらに雨が降り続いたため、大きな岩が地盤が緩んで転げ落ち、当たった木が折れて倒れている場所もあった。滑りやすいので慎重に下る。下ること30分で、一番山奥の農家についた。鶏小屋がある。お茶など売っているそうだが、そのまま通り過ぎる。

山道と農家
農家からは、道は歩きやすくなる。道の脇には畑も作られている。さらに下ること20分弱、時刻は2時40分に登山道入口についた。見上げるとかなり高い位置に高速道路が橋でまたいでいる。ここを右に舗装路を沢沿いに歩くと、石碇国民小学校の前を通り、万寿橋をわたると今日の終点の石碇のバス停についた。時刻は3時であった。

今回の行程は、距離10.8km、時間は7時間弱である。休憩時間を含んでいるが、時間の割には距離が少ない。小さな登り下りの多いこと、補助ロープなどがあるように結構急な坂が多いことが理由である。歩きやすい舗装路や整備された山道が全行程中少ないこともある。当初石碇から草楠へ歩くことも考えたが、今回は逆の方向であったことが幸いした。午後になると天候が下り坂気味で、雨は降らなかったが可視距離が少なくなった。午前中二格山や筆架山ではよい眺望に恵まれたが、もし反対方向で言った場合は、おそらくそれほどよい眺めは得られなかったのではないかと思う。

2011-12-08

12月7日 三峽白雞山-雞罩山 雨の中休み快晴に登る

廃墟に咲く花
白雞山(標高740m)は三峡の南側にある山だ。台北から見ると土城の天上山の奥(南)に、また11月初めに登った獅仔頭山の西に位置する。雞罩山(標高780m)と鹿窟尖(643m)と3つあわせて白雞三山と呼ばれている。今回は、このうちの白雞山と雞罩山に登った。台湾北部は冬は東北季節風が吹き、この冷たい風が南からの湿った風とぶつかり、天気が悪く雨が多い。今年は11月からそのような状況が続き、天気のよい日が少ない。かなりの大雨が2日続いた後、ぽっかりと晴れ間が出てきた。白雞山からはよい展望が期待できるので、この晴れを逃さずに登ってきた。ただ、好天は長続きせず、また寒気が下がってきたため、午後になるとガスが発生してきた。登山路が山の北側で陽があたらないこともあるのだろうが、全体が濡れており、大量の雨水が流れたため、道が川のように掘られているところもあった。

台北中心から見て南西に位置する
白雞三山
行修宮の前、右を登山口へ登る
三峡は大型住宅開発プロジェクトが積極的に行われてきたので人口が増え、台北からのアクセスは思っていたより速い。MRT板南線の永寧駅から接続バスが頻繁にでている。白雞山の麓、行修宮までバスがあるが、これは三峡出発なのでまず三峡まで行く必要がある。家を7時過ぎに出発、永寧駅バス停で待っていると、922番バスが来た。バスは高速道路経由で行く。途中料金所あたりでは溪南山の奥に白雞山が見える。行き先標示が三峡なのでこの922番に乗ったが、白雞行きのバスがでる三峡の旧市街まで行かないため、終点三峡二站で916番バスに乗換え三峡老街で下車した。待つこと十数分8時48分に、白雞行き1078番バスが来た。朝は30分おきぐらいに発車しているので、都合がよい。
登山口

三峡老街から白雞までは20分で着いた。時間は9時10分である。乗換えがあるので、アプローチにはやはり時間がかかる。準備を済ませ早速出発、行修宮の右側の産業道路を登る。行修宮はちょうど修繕中で、建物全体がビニールシートで覆われている。禅光寺への道が左に分岐するが、そのまま川沿いの道を進む。間もなく、右に川を渡り土の道が延びていく登山口についた。今日は気温も上がり、シャツを着ていると暑い。ここで半そでのシャツだけになる。道は石も多いが、土の部分は雨水のためやわらかくなっている。地方自治体が整備した登山道の始まり0kmを示す標示が右にある。

道に残るレール
この道は以前炭鉱からトロッコが往来していたようだ。途中レール1本の一部分が残されていた。沢を越える橋は、鉄板が乗せてあるが前後に少しだけ、レールが残っている。勾配はあるが、道幅も広く歩きやすい。登山口から20分ほどで、今は廃墟になっている海山炭鉱忠義坑跡についた。ここは1986年に92名の炭鉱夫が、一酸化炭素が充満した坑道で死亡する災害が起きている。コストの上昇もあり、また同時期に発生したほかの2件の炭鉱災害のため、台湾の石炭産業はこのころ末期を迎えたようだ。レンガの建物はまだ残っているが、草が生い茂るなか少しづつ自然に戻りつつある。陽が当たらなく薄暗いので、なおさらのこと寂しさを感じる。

廃坑口と残されたウィンチ
小沢を越える
白雞山頂上直下の岩壁

登山道はここから2つに分かれる。左は急坂で登りつめ天后宮へつながる道と尾根上で合流し、岩壁を登りきり白雞山の頂上へ着く。右は、沢を離れると結構急な道となるが、鹿窟尖への稜線と合流した後、左に登って白雞山へ着く。今回は左の道を先に登ることにした。山の北側の谷あいであるため、陽が当たらず薄暗い。ところどころ、枕木が敷いてあるが草が左右からかぶさる。水量のある小沢を渡り、枝尾根を登っていく。道の石は濡れているが、苔があまりついていないので、それほど滑りやすくない。忠義坑跡から登ること40分、竹やぶを通り過ぎると周囲が明るくなってきた。尾根に近くなったのだ。さらに5分で、天后宮への道との分岐についた。木漏れ陽の山道を右にとり行くと、右側に木々がきれて三峡の街やその先の亀山あたりが遠くに見える。白雞山の直前は、ロープを伝って登る岩壁が4箇所ほどある。しっかりロープを伝っていけば問題がないが、一箇所だけ木が途中に飛び出し足場がとりにくいところがあった。登りきると突然枕木の階段が現れ、すぐに頂上に到着した。時刻は11時10分、歩きはじめてちょうど2時間である。

白雞山から見る樹林、新荘、三重と観音山
山間に木柵が見える、左には台北101ビル

白雞山山頂
頂上は道がつづく西側を除いて、展望が非常にきく。特に北側は、台北と周辺の街が遠くに広がる。尾根上のピークが真ん中にデンと座っているので、その部分はさえぎられるが、ピークの左には新荘や三重、そのさきに観音山が見える。ピークの右は101ビルや木柵の街が見えている。陽明山の山塊もはっきり見える。木柵から右に視線を向けると、東側に獅仔頭山の山並みや、大丘田山ののぼりで道がわからず、結局歩けなかった大丘田山からの長い尾根が見える。その奥には二格山の山塊、さらにその先は四分尾山、姜子頭山の山がある。南側は、尾根をつたっていくと、このあと登る雞罩山がある。本当によい天気のもと、食事をしながら景観を十分に楽しんだ。

行修宮が足元に見える
頂上から下ること少しで、雞罩山への分岐点についた。途中右側が開けたところからは、朝出発した行修宮が下に見える。分岐からは左に道をとり、雞罩山へ向かう。途中に小ピークが二つ、三つあるので尾根道は上下がある。ロープが張ってある急坂もある。白雞山から二十数分で、左に六寮茶場へ下る道が分岐する。右へほんの少しで雞罩山前峰へあがっていく道がある。これを登ると、北東方面が開けている雞罩山前峰(標高770m)につく。ここからは、先ほどの白雞山からは尾根上のピークでさえぎられていた部分、土城天上山の山並みやその奥には、台北市の中心部分も見える。雞罩山前峰から雞罩山もわずかである。時刻は12時。標高は前峰から10mだけ高い。ただ、三頭三角点のある頂上は周囲を木々に囲まれ展望がない。ススキに蝶がとまっている。展望もないので、早々に今来た道を戻ることにする。

雞罩山前峰から見る台北とその向こうの陽明山山塊、手前の尾根は白雞山から延びる尾根
谷あいにはガスが
12時半に白雞山からの分岐に戻りついた。下り始めて右を見ると、ほんの一時間前には見えた谷あいに霧がかかり始めている。左側はまだ天気がよいが。下り道は、ところどころ枕木の階段があり、おおむね歩きやすい。途中竹林の近くでは、地元の人が作業をしているのだろう、機械の音が聞こえてくる。下り20分で、尾根から右に下り道が始まる分岐点についた。このまま尾根を行けば、鹿窟尖へつながる。往復することを考えたが、ガスが多くなってきている、また鹿窟尖からは展望もないようなので、今回はこのまま下ることにした。天気は下り坂だ。

鹿窟尖への分岐
廃坑跡へ続く下り道
道は、登りのときの道と同じに、濡れている。乾かないのだろう。石もかなりごろごろしている。ひとつの石をひと階段にした部分もある。枕木の階段もところどころある。小沢には木の橋がかけられている。沢が近づくと、坂は緩んでくる。道に水があふれている。連日の雨で水量がやはり多いのだろう。木はしらとロープでできた手すりがでてくると、ほどなく忠義坑跡の廃屋に着いた。下りは尾根の分岐から40分であった。

廃屋
忠義坑跡からは、朝登ってきた同じ道を下る。鉄板の橋までくると、赤犬がうるさく吼えている。振り向くと後ずさりをする。1時50分に行修宮へ戻りついた。振り返ると山はガスの中で、稜線は見えない。歩行距離は8km、標高差は550m、歩行時間4時間40分である。次のバスは2時25分発、ちょっと時間があるので行修宮をのぞいた。この寺は台北市内の行天宮の別宮とのことで、行天宮と同じように老若男女の信徒がたえない。寺の前には商店街もあり、にぎやかである。

行修宮の近く、山は霧の中
1078番バスで三峡老街にもどり、すぐにやってきた916番バスに乗り換える。高速道路から白雞山を眺めると、すべて白い霧の中で朝のような景観はない。今日は本当に幸運なことに、雨の中休みの晴天山行であった。

2011-11-30

11月29日 宜蘭桃源谷 海が見える草原の山

山道でであった野良猫
数ヶ月前登山対象の山を探しているうちに、この地を管理する行政機関の東北角及宜蘭国家風景区Web siteなどで桃源谷を見つけた。場所は、以前仕事で宜蘭に行く途中往復した濱海公路の大里付近である。さえぎるもののない大草原は暑い時期ではたいへんだろうと思い、風がススキの波をたてていく秋まで待っていた。ところが11月になると、雨がずっと降り続き、なかなか実行できなかった。今回行ってみたところ、雨こそ降らなかったが、海側は晴れているものの、草原の広がる山側は霧が去来し、残念ながら大草原を満喫とはならかなった。桃源谷は素顔を半分隠したままだった。

新北市と宜蘭県にまたがる桃源谷の山塊
ルート図(クリックで拡大)
台北から宜蘭までは距離がある。今は雪山トンネルを経ていけば近くなっているが、今回登山開始の大渓へは電車で行くと、2時間弱かかる。そこで、うちを早朝6時に出発、台北駅6:40発の電車に乗った。出発前に、天候など状況がリアルタイムでわかるe政府WebCamのサイトで見ると、大里は天気がよさそうだった。ところが瑞芳あたりでは、晴れていれば見える五分山などはガスの中、双渓まで来ると雨が降っている。今日は、桃源谷は何も見えないのでは、と半ばあきらめかけたが、福隆をすぎトンネルを抜けると、晴れている。桃源谷のある草嶺稜線が西側から流れてくる雲をさえぎっているので、海側は晴れているのだ。

大渓駅から海を見る
トンネルを抜けるまでは、予定を変えて雨の草嶺古道でも歩くかと考えたが、青空を見てそのまま大渓まで行き下車する。大渓駅は海の脇にたたずむ無人駅となっている。駅前の濱海公道を大里の方向へ歩き始める。海岸沿いの道からは晴れた空のもと亀山島が近い。内大渓の橋をわたるとすぐに左側に公園があり、奥まったあずま屋の脇から桃源谷への登山道が始まる。ここから桃源谷まで5キロの道のりだ。時刻は9時少し前。はじめは山すそを沿っていくが、もうひとつの小公園からは登りが始まる。今回の最高点海抜544mまでは出発点が海に近いので、まるまるその高度差の登りとなる。さらに海側は急斜面なので、登りは結構きつい。石段の道はよく整備されており、0.5kmごとに里程石も設けられている。

登山口
強い風が吹き抜ける稜線近くは背の低い潅木しかないが、麓は高い樹木が生い茂っている。木漏れ日が差し、風もなく汗が噴出す。登り一本の道は、ところどころ開けた広場やベンチが設けてある。ただ、どこも同じだが座る人はほとんどいないようで、苔むしている。登ること30分ぐらい、振りかえると大渓港や沖には亀山島が見える。さらに登るとあずま屋が高台に設けられている。周囲は樹木が高くしげっているので、海が見えるほか、あまり景観はない。ここからは、山道は草嶺稜線から派生する枝尾根を行く。少しの登り下りを過ぎると、右から旧来の細い土の山道が合流する。さらに登ると、今度は右に蕃薯寮山を右に巻いていく、小道が分岐する。ここまで登りはじめて1時間である。

蕃薯寮山への登り
標高456mの蕃薯寮山は、この枝尾根上のピークである。先ほどのまき道分岐から約20分ぐらいの登りであった。時刻は10時15分。ここには三等三角点が設けられている。眺めると登ってきた尾根の向こう側には海が広がり、亀山島が浮かんでいる。反対側を見ると草嶺稜線が見える。谷を挟んで草嶺稜線から石観音山の枝尾根が延びている。草嶺稜線上はガスが去来している。反対側は天気がよくないのだ。

蕃薯寮山山頂
蕃薯寮山からの眺め、歩いてきた尾根と沖には亀山島
蕃薯寮山からの下り
蕃薯寮山からはしばらく下り道となる。下りきって登りが始まると間もなく、一匹の猫が走ってやってきた。山道では野良犬は珍しくないが、猫ははじめてである。足音を聞きつけたのだろう。でも、どうしてこんなところに猫がいるのだろうか。この猫、こぎれいだが、観光に来た飼い主からはぐれたのだろうか。ニュアーニャーと、足元にすり寄ってくる。腹がすいているようなので、持っている握り飯を少しわけてやった。その後しばらく後をついてきた。

登り途中、猫がついてくる





枝尾根上の道は小さい上り下りがあるが、蕃薯寮山から25分で山腹をまいてくる小道と合流、その少し上には立派なお手洗いがある。さらに進むと、草原に放牧している牛が出れないように山道に柵ができている。ここからなだらかな登り道をしばらくいくと稜線についた。時刻は11時、登りはじめて約2時間である。思っていた通り、稜線の反対側はガスであまり見えない。海側は晴れて、亀山島が見えている。ここを左にいくと、鹿窟尾尖にいく。広場になっており、脇にある苔むした土地公のほこらの上には、コンクリの屋根が作られている。
牛のための柵

土地公のある稜線の広場
ススキの稜線道、左からガスが昇ってくる
桃源谷は右に行く。ガスが左の谷側から昇ってきては、稜線にかかると消える。山道はこの稜線上を行くので右は海が見えるが、左側はあまり視界がきかない。これからの行き先も見え隠れしている。稜線の左側はなだらかな斜面でそこに草原が広がる、海側はそれと対照的に切立っている。道の両側はススキが茂っているが、しっかり刈られており、歩きやすい。しばらく登ると桃源谷の最高点(標高544m)の展望台についた。展望台といっても石を敷き詰めた広場になっているだけだ。海側は草があるものの展望が利く。ここからは蕃薯寮山の尾根筋とその先には亀山島が見える。天候は変わりやすく、そのうちガスが多くなり海側を含め視界がきかなくなった。
右の海側は切り立っている

霧の中のあずま屋と登山道
霧の登山道
最高点の展望台から下り、登り返すとあずま屋がある。途中には石の柵ができている。あずま屋はガスの中で展望がない。ここで食事をして少し休憩した。稜線の道は草の道で晴れていれば、それこそ快適な歩行だろう。残念ながらガスがかかり、視界が利かない。また道筋もはっきりしないので、注意しないと方向を見失う。かなりぬかっているところもあるので、雨がしばらく降り続いていることがわかる。牛には出会わないが、ところどころ糞がころがっている。石の基点がある禿山をくだると、石観音寺へ降りていく山道の分岐についた。脇には駐車場があり車が1台駐車している。貢寮からは車でも来れるのだ。時刻は12時20分。この分岐点から草嶺稜線を行き、草嶺古道の啞口へと行くことも考えたが、おそらく今日はこのまま天気がよくなることはなく、ガスが去来し視界もきかない草原道はつまらないので、石観音寺登山道を下ることにした。

石観音寺歩道の分岐点
全長3.5kmのこの山道は、大渓からの道に比べると整備度が低い。海岸から石観音寺までの2.5kmの部分は30年前に整備されているので、結構古い。山道の入口には、台風や大雨などで道が壊れることもあるので、寺に行く用事のない者は下らないほうがよいとの警告板がある。実際下ってみれば、それほど悪くはない。ほとんど歩かれていない山の道に比べれば、ずっとよい。石畳が切れて土の道も部分もあり、軽快である。下ること20分で、石観音寺に着いた。途中結構急な階段もある。石観音寺から谷を挟んで、灣坑頭山が大きくそびえている。ガスが稜線を越えると消えていく。実際の標高より、かなり雄大に見える。お寺の飼い犬がけたたましく吠え立てたが、そのうち住職がたしなめて静かになった。しばらくすると、また吠え立てる。2人の登山客が降りてきたのだ。今日の行程中でであった、唯一の登山客だ。朝の電車では、かなり多くの登山客が乗っていたが、ほとんどは貢寮で降りたので草嶺古道へ行ったのだろう。

石観音寺から湾坑頭山を見る
崩落した山道
石観音寺は、180年近い歴史を持つ古刹のようだ。この峻険な山に結構大きな規模の寺である。寺からの下り道は、同じく急な下り坂が続く。古いコンクリートの階段は崩れかけているところもある。途中、山道が手すりとともに崩落している場所を通過する。補助ロープが張ってある。ここから、灣坑頭山を眺めると、山腹に滝が2つかかっており、水音が聞こえてくる。寺から下ること30分、沢に降り立ち数十メートルこの沢底を進む。沢釣りをしている釣り客がいる。沢を越えると、今度は別の尾根を登り返す。濱海公道を行く車の音が聞こえ始める。沢から30分、寺から約1時間で石観音寺歩道を下りきり、山門についた。

下り道から湾坑頭山を見る
ここからは、濱海公道を左に大里または右に今日の出発点の大渓のどちらへも同じぐらいの距離である。大里へ行くことにする。濱海公道は大型トラックもかなりのスピードで往来するので、あまり歩いて楽しい道ではない。以前は自分も車でこの道を何度通り過ぎたことか。歩くスピードだと、車上からは見過ごしていたものがたくさん見える。車からは注意もしなかったが、左側の山容が立派なことに気付く。稜線は結構上り下りがある。最も低い鞍部は、草嶺古道の峠である啞口だろう。海岸側には花も咲いている。途中浜辺に下りたり、ゆっくり進む。歩くこと40分、大里の老街を通り過ぎ、2時40分に大里駅についた。

大里駅は利用客も多いので有人駅だ。大勢の登山客がいる。聞くと草嶺古道を歩いてきたそうだ。貢寮で下車した小学生の遠足グループもいた。15時16分発の七堵行き電車に乗り、七堵で乗換え台北駅に着いた。時刻は午後5時過ぎ、同じく2時間弱の乗車である。台北駅を出ると、日は暮れ始めていた。

大里の街
今回の登山は全行程13kmあまり、時間は休みも含めて6時間である。海に迫った急斜面の山道で、なおかつほぼ海抜0mからのスタートなので、桃源谷はその名とはうらはらに、登りがいのある山だ。管理する行政機関の整備もしっかり行われており、道自体は状態がよく、明確な道標や説明案内などが設けられている。天気がよいときに、また草嶺古道とあわせて行こうと思う。ただ、今回の登山で結構体力が必要なことがわかったので、草嶺古道とあわせて行くならば歩行距離が結構あり、それなりの心構えが必要だ。