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2020-08-27

2020年8月23日 比大鳥縱走 比林山/大窩山/鳥嘴山 日本時代の隘勇遺跡が残る縦走路

下山時に望む夕方の比林山,右の雲の中に大窩山

本来高山縦走を予定していた。ところが、台風が発生しその後天気の悪化が予想された。本来の高山縦走を延期し、空いた週末にこの予定を入れた。とはいえ、急にこの場所を決めたのではなく、以前からチャンスがあれば行こうと考えていた。今回縦走の出発点鳥嘴山は六年前同一稜線線の北にある鵝公髻山へと歩いた。今回は同じ鳥嘴山から南へと縦走するルートだ。

北側の六角亭登山口から往復
歩行高度表
目的地は上坪から南にのびる五峰天際線稜線上の山峰

鳥嘴山(標高1550m)から南へ大窩山(標高1642m)、比林山(標高1812m)へと続く。さらに尾根を追っていけば南比林山,鹿坑山、そして稜線最高点の樂山(鹿場大山 標高2618m)を越え、一週間前に訪れた北坑山へと続く。樂山から東に行けば、大霸尖山の登山入口になる觀霧がある。以前モギリと呼ばれた觀霧から今の大鹿林道、以前の結城-田村台警備道を追っていけば、霞喀羅古道へと続く。今は廃棄され、崖崩れなどもあるこれら日本時代の警備道は、当時鹿場越嶺道(民間に募集した名称では鹿場周り温泉道路)と総称された。この山域の原住民タイヤル族各部落民は、政府への抵抗が激しく多くの衝突が起きている。それら衝突を経て、この地には山域全体をカバーするべく、多くの警備道が開かれた。昭和の時代になると、原住民はすべて帰順し安全が確保され、大霸尖山など高山も含む登山ハイキングが行われた道でもある。

比林山山頂のメンバー全員

六角亭登山口、鳥嘴山は直進
巴威台風が台湾の東を北上し、昨日は一日中雨が突然ザーッと降る不安定な天気であった。夜にもまだ雨が降っていた。朝は雨が止んでいる。天気予報は、午後から天気の回復を示している。6時半、台北から二台のシェアカーで出発する。第三高速の竹東インターチェンジで降り、竹東から122県道で上坪溪の谷間に入っていく。8時過ぎ、上坪のコンビニで休憩をとる。引き続き122県道を進む。谷間は次第に狭まり、谷底はかなり下になる。左に日本時代井上(温泉)と呼ばれた清泉への道を分ける。この道は、今は舗装された車道だが、その前身はシャカロ・サカヤチン警備道(霞喀羅古道)である。さらに觀霧への道を左に分け、道は白蘭部落に向けて登っていく。多くのキャンプ場を通り過ぎ、9時5分六角涼亭の登山口に着く。台北から2時間半の道のりだ。

鳥嘴山へ登る、左は面拖油山
開墾がだいぶ進行している

稜線上の分岐に上がる
六角涼亭の場所はちょうど十字路になっている。左の道は午後下山後戻ってくる道、道標の指す直進の道を取る。9時20分過ぎに歩きはじめる。登っていくと道脇から、谷を挟んで面托油山が望める。山頂はまだ雲をかぶっている。途中鳥嘴山キャンプ場の間を登っていく。キャンプ場が終わるとキャベツ畑が現れる。6年前に比べ、さらに開墾が進んでいるようだ。9時40分、右に草むらの中に登山道が入っていく。昨日の雨で草は露で濡れている。山道は、道筋がはっきりしている。雑木林から竹林になる。急な坂を登り切り、9時52分稜線上に上がる。高度が上がって雲の中に入ったようで、周囲は霧だ。
五峰天際線16.5Kの表示がある鳥嘴山山頂

鳥嘴山山頂の筆者
先に右へ鳥嘴山山頂へ向かう。急な坂を登り切り、9時58分山頂(標高1550m)に着く。もともと樹木に囲まれた山頂は、展望がない。三角点基石が二つ、そして民国73年の水源標識石がある。五峰天際線として整備された黄色の山名鉄板や、今月初めに塔曼山で見たのと同じような木製の山名板がある。また五峰天際線の表示板は 16.5Kとある。写真撮影のあと、往路を下る。わずかで先ほど上がってきた分岐を通り過ぎ、急な坂を下っていく。

急坂を下る
杉人造林の分岐

少ないが倒木もある
林相は雑木林から杉人造林、また雑木林と変わっていく。10時37分、17.5Kの表示板を過ぎて間もなく、道に水を引くゴム管が走っているのに気づく。10時48分、鞍部に着く。ここは左に下っていく道がある分岐だ。大窩山を越えて比林山へ往復し、その後ここから直接登山口に下る予定だ。

稜線道(右)と山腹道の分岐

密生する矢竹を藪漕ぎ
登り坂が始まる。上りでは汗が流れるが、霧でなおかつ風が吹いているので涼しい。上りが終わり、左にあるピークは山腹を巻いていく。11時15分、分岐にくる。二つの道はともに大窩山へと続くが、左は山腹を行く道、右は稜線を追っていく道だ。右に取って登る。すぐに矢竹の中に入る。こちらは歩行者が少ないようで、道筋はしっかりしているが、矢竹が密生している。昨日の雨をたっぷり含んだ矢竹の藪漕ぎは、すぐに衣服を濡らす。こちらの道選んだことを後悔する。忠実に尾根を小さな上り下りで追っていく。11時38分、道は左からの山腹道と合流する。19.5Kの表示板がある。休憩をとる。

杉林の急坂を登る

大窩山山頂

10分ほどの休憩後、杉林の中の急坂を登る。すぐにまた分岐に来る。左は山頂を巻いていく。右に取り更に急坂を登る。坂が緩くなり、11時58分、古い道標を見る。右は石壁山へ下っていく道だが、殆ど歩かれていないようだ。さらに2,3分進み大窩山山頂(標高1642m)に到着する。昼食休憩をとる。食事をしていると、雲が切れて青空がのぞく。先ほど濡れた衣服は、知らず知らずのうちに乾いていく。
広い稜線上の杉林を進む

狭い稜線上を登る
12時40分、比林山へ向けて進む。下ること約5分で、山腹を巻いてくる道と合流する。人造林の幅広尾根をさらに下る。ときどき、陽光が森の中に差し込む。尾根が狭まり、補助ロープもある急な坂を下る。21K表示を過ぎ、また登りが始まる。右に樹木が切れ場所から、谷を挟んで向天湖山から加里山へと続く山が見るが、尾根の上部は雲の中だ。13時19分、ちょっと急な坂を下る。鞍部には石積がある。そのすぐ先は開けた場所になり、また石積壁もある。説明板は、大窩駐在所,日軍軍營遺址とある。この地はタイヤル族との衝突に備えた隘勇線の遺構だ。かなり大きな規模である。左手山腹には平らな場所が開かれ、もともと建物などがあったようだ。上がってみると、日本時代の大日本麦酒のビール瓶が転がっている。大日本ビールは戦前の最大手ビール会社で、戦後はその独占的な市場占有率のため、アサヒビールとサッポロビールに分割された。


隘勇遺址
藍天隊の表示
大日本ビールのビール瓶

穴が開き水が漏れているゴム管
遺跡から少し登る。開けた場所で登山者パーティが休憩している。道沿いにずっとひかれている水道ゴム管に穴があいて、そこから水が漏れている。このゴム管は、鳥嘴山の山腹に多くあるキャンプ場へ上流から共同で引いているもののようだ。さらに少し登り、21K表示板のところで休憩をとる。標高は約1640m、比林山まで約170~80mの落差だ。坂を登っていくと、平らな道がある。隘勇線の道だったものか。あるいはその後造林用に開かれたものなのか。平らな道から離れ稜線上の道をさらに登り、底に穴が開いた飯炊釜が道端に転がっているのを見ると間もなく、14時16分比林山山頂(標高1812m)につく。平たく広い山頂の周囲はすべて森で、なおかつ霧なので展望はない。

21K地点で休憩
緩やかな道を行く
比林山山頂

つい最近の比林山東北峰への道標
23Kの五峰天際線の表示のある比林山は今日の最高点であり、また折り返し点でもある。五峰天際線は上坪から起算全行程28.5Kmのようだ。そこから約9.5Kの樂山林道を行くと觀霧に着く。山頂近くには、右に比林山東北峰へ尾根を追っていく道が、つい最近整理されたように、道標が取り付けてある。14時40分、先ほど登ってきた道を下っていく。15時10分、隘勇遺址を通過、さらに下って登り返す。往路でのロープの急坂はやっかいだ。15時47分、大窩山の巻き道分岐にくる。休憩をとる。

向天湖山方向を見る、上部はまだ雲の中
急坂を登り返す
大窩山巻き道分岐部

山腹道を進む
巻き道は10分ほどで終わり、山頂からの道と合流する。さらに少し下り、稜線道と山腹道の分岐に来る。ここは朝の教訓があるので、右に山腹道を進む。こちらは、がけ淵の少し歩きにくいところもあるが、おおむね良好でなおかつ矢竹はない。多くの登山者がこちらを通るのがうなづける。16時34分、稜線道との分岐を通過。少し登り返し右のピーク巻いていく。人造林の杉はまっすぐで、なおかつ等間隔に植えられているので、とても整然としている。それが濃霧の中では、また別の幻想的な森を演出する。右に下っていく道の分岐があるが、ひもで封鎖されている。最近は歩かれていなようで、荒れている。朝の登りの時には気づかなかった。16時44分、分岐に着く。

ひもでふさがれた山道入口

大きなサルスベリの脇を下る
右に六角亭登山口への道をとり、杉林の間の急坂を下る。大きなサルスベリの大木がある。すでに枯れているようだ。右にひもで立入を禁止している分岐を過ぎ、最後の急坂を下りきる。16時54分、ぽっかり前面が開けたキャベツ畑の登山口に出る。前方には、雲が晴れ面托油山がくっきりとした姿で鎮座している。その左奥のピークは麥巴萊山だ。畑脇の道を下り切り、舗装された産業道路に降りる。残りは左に約1㎞弱で車を駐車している登山口だ。

畑の向こうに面托油山,左の麥巴萊山はまだ雲の中

畑脇の道を登山口へ戻る、左上に鳥嘴山
舗装路はところどころ舗装がきれて、泥濘もあるが車道なので歩きは速い。しばらく進み振り返ると、今日登った比林山が少し雲をかぶって佇んでいる。その山頂から右に大窩山があるが、まだ雲の中だ。また比林山から左に比林山東北峰へ長い支稜が降りている。17時20分、登山口に戻る。休憩込みで8時間の行程だった。距離は約13.3㎞、登り下りも累計で約1100mというところだ。着替えをすませ、帰途に就く。途中竹東の街で夕食を取り、21時に帰り着いた。

道脇の花
前日がけっこうの降雨で心配したが、台風が去るにつれ天候が回復し、雨に降られることはなかった。午後には晴れ間が出てきて、ある高度以上は雲の中であったが、それはそれで涼しく盛夏の時期の登山としては快適だ。五峰天際線は、道の状態もよくまた道標なども完備している。体力さえ問題なければ、お薦めだ。今回は、全員の足並みがそろっていたので、軽快に歩くことができた。

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