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守村農場の虎禮山登山口にある道標、ちょっと虎に見えないが |
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李棟山付近から望む虎禮山(左)、雪白山(2014/9撮影) |
台湾国内の山は、武漢肺炎のため海外旅行ができない状況下、山とはあまり親しみのなかった人も登るようになっている。そのため、メディアなどで報道される山は、行列ができるありさまだ。そうしたなか、ちょっと奥深い位置にある今回の登山対象は、週末だが一パーティと出会っただけで、実に静かな山を満喫できた。
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北側の守村農場から往復 |
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歩行高度表 |
虎禮山(標高2276m)は、1911~13年に起きた李棟山事件の現場
李棟山(1914m)の南に、玉峰溪を挟んで立ちあがる芝生毛台山(1789m)から延びていく山脈の一峰である。この山脈上には、玉峰山(2392m)を挟んで、桃園市管内の最高峰
雪白山(2444m)、さらに
西丘斯山(2427m)、東丘斯山(2176m)、
唐穗山2090m)そして
稜山(1889m)まで続き、三光溪に落ちる。唐穗山近くから東に枝尾根が伸び、そこには
梵梵山(1713m)がある。玉峰山から北に
低陸山(2160m)に続く尾根が分かれる。これら全部の山塊は、北横公路の南に位置する。ちなみに玉峰溪も三光溪も巴陵で合流し、北横公路が沿って大溪へと流れる大漢溪の支流である。
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赤いボックスが今回の訪問地 |
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虎禮山山頂の全メンバー |
今回の登山は、標高約1360mの守村農場から稜線に登り、先に虎禮山を登頂、稜線を戻って分岐からさらに芝生毛台山を往復、稜線から別の登山道で守村農場に下る、という回遊形式の縦走だ。盛夏の今、標高が1500mぐらいを越えると気温もそれほど高くなく、比較的涼しい中の登山ができる。台北から登山口へは、三峽から北横公路を経由してくることも可能だが、第三高速道路を關西インターチェンジで降り、內灣経由で錦屏後山產道で上宇老の峠を越えたほうが、時間的に速い。
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玉峰道路から望む芝生毛台山 |
今回は日帰りでなおかつ行動時間も9~10時間ぐらいの見込みなので、台北を5時半に出発する。まだMRTなど交通機関の始発がないが、台北に二台、新北に一台のシェアカーに集まりそれぞれ出発する。高速道路を降り、內灣老街脇で合流する。今日は全員で11名だ。台120線から竹60号線(錦屏後山路)に入り、谷間を登っていく。李棟山の南に東穗山,
島田山と連なる山並みにあたると、つづら折れで高度を上げていく。7時40分、上宇老の峠を越え、すぐ左に竹60-1線玉峰道路を下る。途中右に、今日の目的地の芝生毛台山から延びていく山塊を見る。大きな赤色のトラス玉峰橋を渡って石磊產道を登る。8時10分過ぎに守村農場に着く。
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登山口への農道から望む、右遠くは巴陵近くの山々 |
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登山口脇のキャベツ畑、対面は李棟山 |
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雑木林の中を急登 |
守村農場の周辺は、車を駐車できるところが少ない。地元の人と相談して場所を確保し、8時40分過ぎにやっと三台の車を駐車し出発する。キャベツ畑や果樹園の間を急な坂道が登っていく。キャベツ畑の向こうには、先ほどの上宇老やその右側に李棟山の山並みがある。さらにその右遠く、
拉拉山や
塔曼山が青く佇んでいる。9時、竹林のところに登山口が開いている。登山道は、すぐに急な坂で上っていく。先ほどは強い日差しの中で歩いたが、雑木林の道は木陰ではあるが、風がなくはやり汗が噴き出す。9時20分過ぎ、標高約1600mあたりで休憩をとる。
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焚火跡のある開けた場所 |
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倒木を越えて登る |
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さらに急登を行く |
さらに進み、9時50分すぎ少し開けた場所に着く。後方の一人が遅れ気味だ。10数分待つ。体調がすぐれないようで、みんなで荷物を分担し担ぐ。急坂は相変わらずだ。さらに1850mあたりで休憩をとる。稜線に近付くにつれ、勾配は緩くなる。11時7分、稜線上の三差路分岐に着く。右は稜線を芝生毛台山へと道が続く。左にとり進む。道はまだ登りが続くが、それほどきつくない。尾根の右側をトラバースして進む。樹木がまばらになり、底は広葉樹の落ち葉が敷き詰められている。11時24分、少し窪みになっているところで休憩をとる。
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三差路分岐、直進し虎禮山を目指す |
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稜線上の休憩場所 |
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虎禮山山頂前の急登 |
少し進み、虎禮山への最後の急坂登りに取り掛かる。標高差は約200mほど、ひたすら登っていく。上部に近付くと、太い樹木も目に付く。勾配がすこし緩くなり、12時2分、虎禮山山頂(標高2276m)に到着する。登山者二人が休んでいる。話を聞くと別の登山口軍艦岩から芝生毛台山を経由し、5時間でやってきたという。我々は約3時間の道のりだった。三角点のある山頂はそれほど広くない。周囲は樹木で展望はない。昼食休憩をとる。
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山頂直下の台湾ツガ大木 |
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山頂から下り始める |
山頂から少し下ったところに鐵杉(台湾ツガ)の大木があるという。以前雪白山に登った時も、鐵杉の大木があったのを覚えている。食事後少し下り、ツガの木を見る。登り返し、12時48分芝生毛台山に向けて山頂から下り始める。少し下っていくと、先ほど登っているときは気づかなかったが、こちら側にも台湾ツガの大木が生えている。下りの途中で、また登ってくるパーティとすれ違う。先ほど山頂で出会ったメンバーと同じグループで、メンバーには80歳を超えた老練登山家もいる。自分もこの歳までこのように登山ができるだろうか。13時19分、三差路分岐に来る。
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こちら側も大木がある |
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アカマツ林の緩やかな道を行く |
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稜線上の分岐に着く |
左に稜線上の道を取る。芝生毛台山は標高1800ḿ足らずなので、基本は下り坂だが、稜線上の道は登り部分もある。ちょっと登り返した後、尾根はアカマツ林になる。道は松葉絨毯だ。風が稜線上を吹き抜け、午前中無風状態の登りが嘘のように、爽快だ。平らな道を10分足らず進み、下りが始まる。この稜線には少ない矢竹の草むらを通り過ぎ、13時45分、分岐に来る。ここは右に守村農場へ下る道の分岐で、芝生毛台山の往復後ほどここから下る予定だ。
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急坂を下る |
ちょっとした登りのピークを越え、大きく下っていく。尾根が狭まり、丸太の桟道が渡してある場所を過ぎる。尾根はまた広がり、最後に少し登る。14時20分、芝生毛台山山頂に着く。平たい山頂には三角点の基石が植わっている。周囲はすべて樹木、ここも展望はない。芝生毛台山には、隘勇線の遺跡が多く残っている。軍艦岩登山口から登れば、途中に砲台跡や分遣所遺跡などがあるが、山頂のすぐ下に石積があるので、ここにも何か施設があったのだろう。酒瓶や大日本ビールの瓶破片が残っている。芝生毛台山と玉峰溪を挟んだ対岸の屯野生台山と烏來山の三か所に砲台が設定され、それがこの地の原住民の抵抗を抑え帰順につながったということだ。
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丸太の桟橋 |
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芝生毛台山山頂 |
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頂上直下に残る遺跡 |
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少ない矢竹の間を進む |
14時50分、往路を戻り始める。ナイフリッジを通り過ぎ、約150ḿの落差を登り返す。途中で、先ほどすれ違った登山者が下山して来るのと出会う。15時30分、分岐につき小休憩をとる。休んでいると、メンバー一人が雨粒を感じたという。確かに周囲は暗くなって来ているので、そこそこに下り始める。この道も、勾配がきつい。登山口までの落差は約550ḿだ。急坂は神経を使うが、高度が下がるのは速い。16時20分、小沢脇に降りる。残りは少ないが、ここで小休憩をとる。二カ所の山頂でもメンバーのビールがあった。この場で最後のビールを開ける。
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竹林を抜けて下る |
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水管沿いの道を行く |
沢から水を引いている管が道脇に進む。少し歩きにくい場所もあるが、勾配は緩い。少し登り返し竹林を過ぎると、道が広がり農園に出る。果樹園脇から下ってきた方向を見ると、山腹から上半分は雲の中だ。先ほど下ってくると、明るくなってきたのはこのためだ。さらに少し進み、16時50分、出発点に戻る。約10㎞の道のりを、休み込みで約8時間、登り下りともに累計で1300ḿだ。
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桃の果樹園脇を下る |
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芝生毛台山に残る瓶類 |
着替えをすませ、17時10分過ぎ車で下山を始める。往路を戻っていく。上宇老の峠あたりから路面がぬれている。こちらはにわか雨があったようだ。我々は、まったく雨に遭遇せず、ラッキーだった。內灣の少し前にある、原住民料理の店で食事をとり、帰京した。
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