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2018-04-21

2018年4月20日 唐穗山-稜山縱走 北橫公路の中級山を歩く

嘎拉賀部落から望む稜山(左)と唐穂山
唐穗山は、カラホという原住民言語の山名を日本語の漢字読みで当てた名前だ。中国語読みで嘎拉賀の文字が当てられ近くの部落の名前となっている。一方の稜山は、ふもとにあった日本時代警備道上の四稜駐在所の稜から来ているということだ。ともに桃園市と東の宜蘭県を隔てる境界の山で、前に登った西丘斯山や雪白山と間に東丘斯山を挟んで連なる。台湾北部を横断する北部横断道路(北横公路)のわきにある山々の一つである。実は去年秋にこの二つの山を縦走すること予定したが、大雨で予定を取りやめた。この縦走路は、かなりきついルートであることで知られている。天候が悪ければ、輪をかけて大変だ。太平洋側からの風をまともに受ける山並みは、天候が変わりやすい。幸い今回は天気に恵まれた。

唐穂山山頂にて、背後に西丘斯山と雪白山
稜山山頂にて
上述雪白山の南側は新竹縣司馬可斯で神木巨木で有名だ。実はこの山の周辺は、こうした巨木が多く今回の登山中にも多くの紅檜(ベニヒ)や扁柏(タイワンヒノキ)の巨木を見た。樹齢は少なくても数百年なのだろう。初めは驚異の感があるが、多すぎて次第に鈍感になってしまうほどだ。登山道わきでこれだけあるのだから、それ以外にどれだけあるのか。
反時計回りに歩く
歩行高度、下った後最後に登り返すのがつらい
桃園と宜蘭との境界上の山
前(19)日に稜山下山後の三光溪渡渉点を確認
今回は、幸いなことにメンバーの一人Lさんの友人が嘎拉賀部落に山の家を持っており、それを借りて基地にできた。前日19日午前に出発、北横公路をへて巴陵から嘎拉賀部落へ向かい、昼食後三光溪へくだって、翌日稜山からくだってきたときに渡る渡渉点を確認した。二、三日前は雨が降ったが、幸いに天気が良かったので沢の水も多くなく、大丈夫な様子だった。十数時間かけて縦走し下ってきて、増水した沢で足止めされるのでは身も蓋もない。用心のためにもっていったロープは使うことはなかった。
嘎拉賀部落を出発、前方に唐穂山のシルエットが見える
産業道路から見る唐穂山から西丘斯山への稜線
昨日も良い天気だったが、午後遅く霧が発生して、昼過ぎには見えていた対岸の稜山から唐穗山への稜線は霧に隠れてしまっていた。4時に起きて外に出ると星が出ている。天気はよい。食事を済ませ4時50分に出発する。初めは舗装された産業道路を進む。歩くにつれ、空は白んでくる。前方には唐穗山から西丘斯山の稜線がくっきり浮かぶ。5時20分、少し左が開けて畑になっているところを通り過ぎる。右には彩虹瀑布への道の入り口がある。更に数分進むと産業道路の終点にくる。右には、雪白山への道が続く。終点付近は広い平らな場所で、ここで設営して登山する人も多いようだ。

三光溪を渡渉する
渡渉後急坂を登る
広場前左の道を下っていく。初めのコンクリの道が切れ竹藪を過ぎる。5時38分沢に降りる。幸い沢の水は多くなく、渡渉も簡単だ。沢を渡って少し道を進むと二回目の渡渉点だ。飛び石があるが、ほとんど水をかぶっている。長靴であれば、問題なく越せる。嘎拉賀部落が標高約1200m、沢底は約950m、すでに200m以上の高度差を下がってきた。小休憩のあと、6時少し前頂上へ1150mの高度差の長い坂道が始まる。すぐに補助ロープのある急坂が現れる。約20分ほどの急登りを過ぎると、少し緩やかになる。赤い道標が唐穗山方向を示している。

焚火あとが残る平地、赤い道標がある
下草の間を登っていく
雪白山が対岸に見える
道筋ははっきりしているが、両脇の草の雫でズボンが濡れる。また坂が急になる。7時にトタンが転がっている場所がある。焚火の跡もある。おそらく狩猟などの小屋あとだろう。わきにある半分文字が消えているトタンの道標には神木と記してある。道は山腹を緩い坂でトラバースしていく。樹木の切れ目から対岸の雪白山が望める。7時半、標高1500mぐらいからそれまでの広葉樹林から、ヒノキの巨木が現れ始める。下から見上げる太い幹には、手を伸ばしているかのように枝が分かれている。巨木の近くで小休憩をとる。

登山道わきのヒノキ巨木
倒木の根をくぐる
巨木が次々と現れる。標高1600mを越えるころからまた坂が急になる。ひたすら登るだけだ。下草は背の低いシダ類がメインになる。更に登ると緑の苔類が目立つようになる。8時26分、倒れた巨木の根をくぐっていく。8時半に休憩を取り、またさらに登る。8時50分、唐穗山まで90分と記された道標を見る。巨木は相変わらず、そこここに見られる。9時標高1900mを越えるあたりから、ニイタカヤタケが現れ、森の底を埋める。前方上方に高いピークが木々の向こうに見える。坂が一段と急になり、ロープがつけられた急坂を登る。9時20分、今度はあと60分という道標を見る。

あと90分の表示がある巨木の場所
ヤタケの間を行く
嘎拉賀部落が下方に見える
9時30分、ピークの上につく。樹木の間から、朝出発した嘎拉賀部落が下の方に望める。道は少し下り、9時40分、右に東丘斯山への縦走路を分ける。こちらの道は歩いている人が少ないようで、ヤタケに埋もれている感じだ。道は緩くなるが、倒れた樹木やうねうねしたシャクナゲの木々が所せましとあり、緑の苔と相まって迷い込んだら出られない不思議の森を歩いているような感じだ。苔の上に落ちたシャクナゲのピンクの花は絨毯のさまだ。加油(頑張れ)頂上はすぐという赤い標識を見ると、ロープの急坂が現れ10時16分唐穗山山頂(標高2096m)に到着する。

苔が密生する森の底を行く
苔の上におちたシャクナゲの花
唐穂山山頂の筆者
実によい天気の山頂は、周囲の樹木がすくなく素晴らしい展望台だ。南西方向に延びる尾根にある西丘斯山や雪白山が近い。その左(南)側には雪山山脈が、大霸尖山から東に延びている。その手前には武陵四秀の品田山、池有山、桃山などが並ぶ。そのさらに左(東)側には、南湖大山を盟主とする中央山脈北一段の山々が尖った中央尖の山と鎮座している。目を北に向ければ、大漢溪の右岸にある塔曼山から把博庫魯山、復興尖山への山並み、さらに拉拉山や夫婦山,その遠く向こうには南插天山と魯培山が見えている。左岸にかなたには那結山も判別できる。嘎拉賀部落の我々が泊まった家もわかる。その左上方の山は低陸山だ。過去に自分の足で歩いた北部の山々が見える。実に感動のひと時だ。

南側雪山山脈方向を見る
東側南湖大山方向を見る、右の尖った山は中央尖山
北方向を見る
水晶蘭
10時50分、30分の食事休憩をすませ、稜山に向けて縦走を始める。道はまだまだ長い、先を急がなければならない。もともと10時までに到着を目標にしていたので、ちょっと遅れ気味だ。道筋は、今までと比べると明らかに細く不明瞭だ。しかし、マーカーリボンは適当にあるので、地図と照らし合わせていけば迷うことはない。道はシャクナゲの灌木の林を抜けていく。腐敗土は柔らかく、足元はフカフカした感じだ。数分で右に100林道への道を分ける。林道といっても廃棄されて久しいので全く山道と変わらない。分岐の少し先で花弁が透き通った珍しい水晶蘭の花を見る。

苔の生える森をゆく
唐穂山を振り返る
苔の生えた森を過ぎ、ニイタカヤタケの茂った森を行く。また苔の森と、交互に現れる。12時6分、唐穂山から標高差約300m近く下がった鞍部に到着する。ここは右に130林道への道を分ける。道はここから登りが始まり、小さなピークを越えていく。12時39分、ピークを越えたあと、低い樹木の向こうにやってきた唐穗山とそれから伸びる登山道のある枝尾根が見える。

上り下りを繰り返す
文字がかすれてしまった道標の分岐部
時間を気にしながら、稜線を追っていく。ガスがだいぶわいてきた。周囲は白一色だ。14時5分、少し休憩をとる。休憩後右に大きく下り、山腹をトラバースする。14時17分、文字が消えてしまっている道標の鞍部分岐を過ぎる。少し登り返し14時22分、稜山への分岐を過ぎる。さらに登り、ヤタケを藪漕ぎし14時28分、稜山(標高1889m)に到着する。

稜山山頂
霧の中急坂を下る
頂上の周囲は樹木で展望はない。霧が出てきたので、樹木がなくても展望はできない。日暮れまで3時間半ほどしかない。道は長い。14時51分、下り始める。先ほどの分岐に戻り、右に道をとり急坂を下る。坂は本当に急だ。補助ロープなどもなく、足元が不安な場所は慎重に下る。霧が濃くなって幻想的な森の中をひたすら下り、15時15分廃棄130林道に降りる。廃棄されて久しい林道は、がけ崩れや生えた樹木などで林道というよりは、普通の山道である。唯一勾配が緩いのが林道の証だ。距離約1キロほどの林道を行く。15時43分、林道から離れる山道の入り口にくる。

廃棄林道をゆく
こちらも巨木が多い
標高約1700m、三光溪の谷底までまだ850mほど高度差がある。緩やかな広い尾根を下る。ここにも多くの巨木があらわれる。林道ができたが、これらの巨木は伐採を免れたのだろう。道は方向を西向きに変わり、16時24分廃棄された小屋を通り過ぎる。ここは作業小屋だったようで、踏跡は少しはっきりする。坂は勾配が強くなる。林相が換わり広葉樹の森になる。ちょっとした幅の狭い尾根を下っていく。17時少し休憩し、さらに下る。森の中はだいぶ暗くなってきている。時間との競争だ。17時20分ころから、森の底は密生した草になる。標高も1200mまで下がってきた。

廃棄作業小屋
暗くなり始めた下り道を急ぐ
尾根筋がはっきりしてくると、坂は少し緩くなる。18時少しまえに、尾根から右に山腹を下り始める。用意していたヘッドランプを点灯する。ザレた場所をロープを頼りに下る。18時20分、沢に降り立つ。あたりはだいぶ暗くなってきている。すぐに渡渉し対岸に渡る。少し休憩する。残りは、昨日すでに一度歩いている場所だ。暗くても問題は少ない。ホッとする。

ヘッドランプを点灯し沢際に降りる


山道を登り返す。初めは急な岩登りだ。急な上りを行き、竹林に入る。約20数分で嘎拉賀溫泉へ続く道の涼亭わきにでる。落ち葉重なる道は、ヘッドランプだけでは道筋の判別が難しい。よく歩かれている高山などの道は、暗がりでヘッドランプだけでも大丈夫だが、こうした踏跡だけの山道はわかっていないと、とても難しい。日暮れ前に急いで良かった。そうでないと、道を探すだけで大変だったろう。とっぷり暮れて闇の中を、最後に舗装された道を登り、19時48分嘎拉賀部落の道に着く。さらに山の家まで歩き、約15時間の縦走を終えた。

すっかり暗くなった嘎拉賀部落に到着
メンバーは、体力的にもそろっていたので、15時間、距離18㎞、累計登坂1900mの縦走でも問題なく終了できた。十数時間歩く山歩きは、初めてではない。今まで何度か経験しているが、この縦走路は逃げ道がない。一度縦走を始めてしまえば、全部を歩くしかない。唐穗山への到着が遅ければ、迷うことなく縦走は取りやめ往路を引き返す方がよいだろう。また日中の時間が長い時期に、そして増水して沢を渡れないことがないように天気も重要だ。体力的にもルート的にも困難度はクラス4+だ。それなりの経験と体力がなければ、お勧めしない。

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