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一等三角点のある九份二山山頂 |
今からではもう20年以上前になる台湾921大震災は、ご存じだろうか。1999年9月21日台湾中部で発生した最大震度7の地震で、台北付近でも倒壊するビルもでた。台湾では戦後最大の震災となった。筆者は当時台北にいて、その揺れの大きさを感じた。死者2300名、傷者6500名の犠牲が発生した。日本も311東日本大地震の記憶がまだ新しいが、同じ環太平洋火山帯上に位置する台湾も地震リスクが大きい。つい2年前にも、花蓮で大きな地震が発生している。
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登山口から山頂を往復 |
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同じ道で山頂を往復 |
冒頭から地震の話だが、今回の登山対象は921地震の震源地にある山である。位置は南投縣百姓鄉になる。山を登り、その後山の周辺に残る地震の爪痕や記念の場所を訪れた。小百岳に選ばれているこの山は、山そのものも山頂に一等三角点を有する、位置的も視野もよい場所だが、それに加えてすぐ近くには、地震の揺れで起こった大きな地滑りによる堰止湖などがある。震源地とされる場所では陥没した家屋や、地盤が傾き傾いてしまった家屋などが、震災の激しさを今でも伝えている。こうした場所は、国家地震紀念地九份二山震災紀念園區として保存されている。今回は、百岳になる
西巒大山と
郡大山を登る予定で、その前日に途上九份二山を訪れた。
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九份二山國家地震紀念地、上にある家は傾いた傾斜屋 |
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九份二山へ登っていく |
先月下旬に台湾南部の山を訪れた。冬の中南部は天気が良いが、三月を迎え春が近づくと、天気は周期的に変わるようになる。二日前に雨になり、昨日は大雨であった。今朝も朝から雨だ。6時半過ぎに予約している車に乗るため台北駅に向かう。集合場所では、すでに車が待っている。全員が集まり6時50分に出発する。五股インターチェンジから第一高速道路に乗り、途中桃園で乗車する二人を乗せる。今回は、全員七名のパーティだ。途中一時雨が小止みになるが、降り続いている。
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九份二山登山口 |
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果樹園の間のジグザグ道を登る |
10時過ぎ、第六高速の北山インターチェンジで降りて、147号線に入り谷間を進む。10分ほどで九份二山への入口に来る。右におれて山を登っていく。大きく九份二山國家地震紀念地と記された場所の前を過ぎ、さらに進む。少し下り始め、右に折れる道を登る。途中道を間違えたこともあり、11時7分に大石に文字が刻まれた登山口に着く。雨は幸い止んだ。
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コンクリ舗装道の終点 |
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木製手すりのやせ尾根みちを登る |
仮眠のメンバーを残し、六名は軽装で登り始める。果樹園の間を登っていく道は、コンクリ舗装がされている。ジグザグに高度を上げていく。果樹園の新緑が、雨に濡れていることも手伝い、とても美しい。そのうち竹林の間をすすみ、11時39分舗装が終わり、土の道がはじまる。看板とベンチが設けられている。土の道を、3,4分登ると稜線に出る。木製手すりが取り付けられている道は、そこそこやせた尾根でところどころ岩が露出している。雨が上がった後で岩は濡れているが、砂岩なのでそれほど滑らない。
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谷を挟んだ対面、右下方が地滑りした場所、左には檳榔畑 |
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山頂のメンバー |
樹木の間から右(西)側の景色がみえる。対面の斜面には檳榔畑がある。この辺りは地震の際に地滑りが起きたところのようだ。11時56分、標高1172mの山頂に着く。手前には一等三角点の基石が、奥には涼亭がある。涼亭の椅子に座り、昼食をとる。山頂からは、もう一つの谷側へ降りる道があるようだが、入口ははっきりしない。ほとんど歩かれていないようだ。12時23分、往路を下り始める。12時41分、舗装路終点のベンチに戻る。ジグザグ道を下り、13時5分車が待っている登山口に着き登山は終了だ。休憩込み約2時間、約3.1㎞の歩きだった。累計で約320mの登りである。
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堰止湖わきから見る正面斜面が地滑りした場所 |
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堰止湖公園の遊歩道、正面の雲をかぶった山が九份二山 |
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明湖宮 |
時間がまだ早いので、周辺の921地震がもたらした堰止湖や震源地に立ち寄ることにする。先に下って澀仔坑溪湖と韭菜坑溪湖と名付けられた二つの湖を訪れる。立派に整備された駐車場や、遊歩道がある。この付近の地形は地震の際に、対面の山が大きく崩れ土砂で埋まってできた場所だ。遊歩道を行くと明湖宮の土地公祠がある。地滑りでそのまま滑り落ちたが、壊れることがなかったという。今は歩道の脇に安置されている。谷を挟んだ対面は、崖崩れで土が滑り落ちたあとの岩盤が判明できる。
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右下方に堰止湖韭菜坑溪湖が見える、遠くに雲をかぶった西巒大山 |
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水社大山 |
30分ほど散歩したあと、九份二山國家地震紀念地へ向かう。途中堰止湖が下に見える場所で停まる。開けた谷の向こうには、
水社大山の大きな山容がある。その右方向には、雲に隠れた高い山々がある。明日登る予定の西巒大山のようだ。さらに下って、九份二山國家地震紀念地に立ち寄る。自身で地盤が傾き、家が傾いた傾斜屋がある。本来の住人はもちろん引っ越しているが、地震の被害を示す実例としてそのまま残されている。壊れずに傾いた家は、確かにすごい。
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傾斜屋 |
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震爆點,陥没した地面と傾いた家屋 |
震爆點という道標の方向へ、道を山のほうに登っていく。丘の上には、震爆點東側と説明表示があり、土地が陥没し崩れた家屋の壁や傾いた家がある。さらに少し上の木桟道を行くと、こちらはさらに大きく土地が陥没し、本来あった檳榔樹は曲がって伸びている。地震発生からすでに20年を過ぎているが、こうして実物を見るとその傷跡は実に生々しい。
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曲がった檳榔樹,対面に一戶残った家屋 |
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鉄門を開けてもらい入る |
14時50分過ぎに駐車場へ戻り、今日の目的地人倫林道へ向かう。人倫林道は17K地点にゲートがあり、開放時間は17時までだ。それを過ぎると車は入れない。道を急ぐ。途中雑貨屋で買い物をし、林道に入る。16時50分、門限の10分前に到着する。鉄門の脇にあるインターフォンで連絡すると、上部の事務所から係員がバイクでやってくる。入山証を提示し登録する。ゲートを開けてもらい、さらに林道を登る。
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登山口近くの林道上で設営 |
数分で登山口の前に来る。水場がすぐ近くにあるこの場所は、林道であるが平らで設営ができる場所になっている。青空も見え、天気は回復基調だ。西陽が樹木の間から差し込んでくる。早速テントを設営し、夕食を準備する。19時食事をとり、20時過ぎには就寝する。明日は早い。
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