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2020-07-14

2020年7月12日~13日 太加縱走 宜蘭太平山-加羅湖(山)の縦走

加羅湖
今年5月に宜蘭の旧太平山山域を歩いた。その際に、今回の縦走路の登山口を通り過ぎた。いずれは歩いてみようと思った。それがこの活動の始まりだ。現在大平山と呼ばれる場所は、大平山林場のうち1937年からスタートした後半に開発された場所である。1917年に始まった旧太平山林場は、加羅山の一帯である。この二日で歩いたルートは、新大平山と旧大平山を結ぶルートといえる。過去に伐採された場所なので、ルート上には切り株などが残る。その後育った森には、ヒノキや台湾ツガ、杉などが伸びている。台湾でも最多雨量の山域を突っ切る山道は、ドロドロの泥濘や倒木、所狭しと伸びる根が行く手の邪魔をする。

閃電池のメンバー全員
大平山は標高約1850m、台湾のほかの林場と同様に伐採はすでに過去のもので、現在は森林遊樂區としてリクリエーションの場所に変身している。宿泊施設や、過去の遺産を利用した森林鉄道や自然歩道なども整備されている。アクセスも、車で行くことができる。最近は週末に宜蘭からバスも運行されている。一方、終点となる四季林道は、途中まで車で登れるが、上半分は徒歩しか手段がない。こちらは、一般観光地ではなく、山登りの対象だ。加羅湖は標高2200mぐらいに存在する高山湖泊で、多くの登山者が訪れる人気コースだ。

東から西へ縦走
二日の歩行高度表
メンバーは都合9名、台北よりシャトルサービスの車を利用して大平山に着き、そこから歩きはじめた。稜線への登坂部分は、自然歩道がありとてもよい道だが、一度縦走路に入ると、状況は一変する。稜線上の登り下りは少ないが、泥や倒木、木の根が邪魔をし、手足を使って通過しなければならないところが多い。思ったより時間を要する。出発が10時ということもあり、加羅湖まで行くことを変更し、多望池の近くで露営した。二日目は、早めに出発、夢幻森林といわるような森を抜け、加羅湖でくつろぎまた加羅山を登り、四季林道を下った。林道上で待っているシャトルサービスの車に着き、二日の縦走を終了した。10人乗りのシャトルサービス費用は、12000元である。

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第一日 7月12日(日) 台北 - 大平山 -鐵杉林步道 - 多門山 - 多望池 (宿)

太平山から多望池へ
歩行高度表
雪山隧道を抜けると、蘭陽平野が広がる
朝6時半に、台北駅付近に集合、車で一路宜蘭へ向かう。日曜日であることや朝時間が早いためだろう、五号高速の交通量はそれほどでなく、50数分で雪山隧道を抜ける。眼前には蘭陽平野と、そのむこうに始まる中央山脈末端の山々が見える。この山々を伝っていくと、大平山がある。高速道路の高架橋を進むと、右には鴻子山から南へ烘爐地山、最近登った小礁溪山など、蘭陽平野のへりを画す山々が連なっている。天候は実によい。

@太平山
車から荷物を下ろす
高速道路を降り、宜蘭市街の脇を通り過ぎる。途中コンビニに立ち寄り、昼食などを購入する。台7線に入り圓山を抜け、蘭陽溪左岸の泰雅路と名付けられた台7線を進む。松羅部落を過ぎ、次第に両岸の山並みが迫ってくる。幅の広い河床には、スイカがたくさん実っている。8時50分前、台7甲線の蘭陽溪を渡ったところで左に大平山の道を進む。昨年訪れたときは、天候があまりよくなくかったが、今日は実に良い天気で高度を上げるにつれ、視野が開け山々は深い谷が展開する。9時40分、大平山に到着する。広場の塔に取り付けられた電光掲示板は気温25度を示している。

太平山荘近くの歩道説明板
とてもよい歩道
支度をすませ、10時過ぎ大平山荘脇の石段を登り始める。今日は多くの家族連れ遊楽客が訪れている。重装備の登山者は我々だけだ。すぐに左に森林鉄道の駅へ道が分かれる。鎮安宮の赤い建物を見る。はじめは檜木原始林歩道、そして鐵杉林步道と続く。木製階段の良い道だ。10時半前、鐵杉林步道の入口にある休憩場所で小休憩をとる。標高は2000m、約150mほど登ってきた。

鐵杉林步道を登る
縦走路入口
鐵杉林步道は、土の部分や木製階段板などで整備されている。ここまで来ると遊楽客は少なくなる。はじめはヒノキなどがメインだが、2100mぐらいまでくると台湾ツガ(鐵杉)の大木が出てくる。道の両脇には、矢竹も現れる。11時10分、全長1.3Kの鐵杉林步道が終わる。末端は展望台だが、霧で展望はない。終点のすぐ左に縦走路入口がある。林務局が管理する山道で、 107の数字のプレートが取り付けられている。これはキロポスト10.7Kという意味だ。

歩きはじめてすぐにドロと樹根の洗礼を受ける
森の中を進む
10分ほどの休憩後、縦走路を歩きはじめる。すぐに水たまりや泥濘が現れ、予想通りに悪路がスタートだ。両脇は枯れた矢竹が続く。悪路は悪路だが、道筋はすこぶる明瞭だ。起伏はあまり大きくないが、とにかく木の根や倒木が次々と現れ、厄介だ。倒木はくぐったり、乗り越えたり疲れる。台湾ツガとヒノキの森は樹木がまばらだ。木の根や地面は様々な苔で覆われている。12時36分、檜木營地に着く。キャンプ地といっても、地面には根が張っているので、小さいテント一張が使えるぐらいか。地面は乾いている。休憩をとる。

倒木を乗り越える
檜木營地
枯れた矢竹の生える道
多門山山頂
20分ほどの休憩後、広い稜線を進む。10分ほどで、多門山山頂(標高2273m)が現れる。プレート表示は085だ。登山口から2.2㎞ほど来たことになる。三角点はあるが、ちょっと小高いだけで、周囲はすべて樹木や草、展望はない。少し下り気味に進む。三名の若い登山者とすれ違う。そのうち霧が濃くなり、森は神秘的な雰囲気が出てくる。霧で見えないが右が切れた場所を進む。この辺りはカヤが一面に茂っている。14時13分、少し広い場所で休憩をとる。

濃い霧の森を行く
鞍部は水気が多い
滑りやすい急坂を下る
下り気味に進む。鞍部はぬかってドロドロの場所も多い。距離がなかなか伸びない。休憩もいれた平均で時速1㎞といったところ、別に坂が急なのでなく、とにかく足元が良くないので慎重に足を運ばなければならないためだ。メンバーは泥濘に長靴を取られて、足が抜けなくなってしまう。そのうち霧は晴れてくる。降雨率は80%という天気予報だが、どうやらにわか雨は来ないようだ。ロープの急坂は、土が滑りやすく気が抜けない。

泥に足を取られたメンバーを救出
ちょっと見にはよさそうだが、踏むと水が染み出す
乾いた場所で設営
15時42分、多望池近くの小さな池脇に開けた場所がある。草が寝ているので、以前露営されたようだが、踏むと水分がにじむ。その先、乾いたところを探す。すると、我々のテントが張れるだけの比較的乾いた場所がある。この先、今のような道の状態だと、まだ3Km先の加羅湖まではあと3時間ぐらいかかる。そこで、ここで設営宿泊することにする。わきの木に取り付けられたプレートは062だ。今日は歩行距離約6㎞、登坂累計約400ⅿ、休憩込み活動時間は5時間40分ほどだ。

縦走路で多く見かける花(東方肉穗野牡丹)
大小四張りのテントを張ると、露営地はいっぱいになる。水は、池の水を濾過煮沸して使う。泥濘に多いルートだが、使用するとなると水源は限られる。食事をすませ、20時までには就寝する。深い森の中のテント場だ。夜中目を覚ますと、森の底の音だろうか、何か聞こえてきたのを記憶している。錯覚だろうか。






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第一日 7月13日(月) 多望池 -  閃電池 - 加羅湖 - 加羅山 - 神木登山口 - 四季林道

多望池から加羅湖、加羅山を経て四季林道へ
メインは下りの歩き
撤収し準備をする
4時過ぎに隣のテントから話声が聞こえてくる。4時半前に起床、食事をすませて撤収する。6時出発の予定だが、準備が完了したので少し早めに出発する。多望池は鞍部にある。ここから約100mの落差を登っていく。道は相変わらず、泥濘や倒木、樹根が面倒だ。30数分登ると、尾根は大木がまばらに生える広い尾根の森の中に入る。056のプレートと加羅湖まで2.5時間という表示がある。少し先の、平らな場所で休憩をとる。鳥のさえずりが、早朝の森に伝わる。

朝陽が当たりだした森の中を登る
泥濘、倒木の台湾ツガ林
広い朝の森で休憩
朝陽の森を下る
森の中を進む
木々の向こうに加羅山
休憩後、森の中を進み下りが始まる。10数分の緩い下りのあと、森は低い灌木に換わり坂も急になる。樹木の向こうに加羅山がちょこっと頭を見せる。途中一度休みを取り、小さな上下を過ぎていく。樹木が少なくなり、矢竹やカヤの中を行く。最後部を越すと、緩く下っていく。8時9分、前方に広く平らな場所が広がる。その真ん中に小さな池がある。閃電池だ。大雨などのあとは、水位も上がるのだろうが、今は小さな水たまりがあるだけだ。広々として、メンバーは気持ちが盛り上がる。

倒木が折り重なる道
カヤと低い灌木の道を下る
広い閃電池
水があるのはほんの一部だけ
草原の間を行く
落雷した大木
20分ほど池の脇で過ごし、また登っていく。8時36分、038のプレートを見る。加羅湖まであと1㎞だ。しばらく樹木のない草原を登る。陽光が強い。そのうち森に入る。コケモモが咲いている。森を抜けてまた草原にでる。落雷して焦げ跡の残る白木が目に付く。閃電池の名前が示すように、草原の一本大木は雷が落ちやすいのだろう。この辺りは水分も少ないようで、泥濘は少なくなりまた倒木もあまりなく、進行がはかどる。前方に森の頭越しに、雪山山脈の聖稜線が右に大霸尖左に雪山主峰を頂き、長く続く峰々を見せる。緩い坂を下り、9時8分加羅湖が下方に姿を現す。加羅湖往復だけに来たという登山者二人が、ちょうど挨拶し去っていく。

森の向こうに雪山聖稜線がのぞく
加羅湖が現れた
テントを干したり、ゆっくり過ごす
今日は、時間的に余裕がある。せっかく来た加羅湖,ゆっくり休憩をとる。濡れたテントなどを干す。日差しが強いが、時々風が吹き、あまり暑さは感じない。ストーブを取り出しコーヒーをいれる。週末などは多くの登山者が訪れるが、今日は我々だけだ。日曜日出発にしたのも、混雑を避ける目的もあった。

加羅湖の全員
028のプレート、道はぬかっている
5月に旧太平山を訪れたときも、山中の池を訪ねたが、この辺りは多くの池がある。その中で、加羅湖は周囲は緩やかな坂で囲まれ、その大きさで野営地としてとてもよく、また水の透明度が高く、登山者をもっともひきつける。加羅湖は、もともとタイヤル族の言葉のカロに漢字をあてたものだ。日本語読みではカロになるが、中国語発音では、本来の音とは異なる。

偉蛋池
豪邁池へ先に下る
森を抜けて最後の草原を登る
10時10分、加羅湖を後に緩やかな坂を登る。周囲は草原で、縦走路前半とは随分異なる容貌だ。間もなく、左下に小さな偉蛋池を見る。森に入り、20分ほどで加羅山への分岐に来る。空身で山頂へ向かう。先に少し下り、左に豪邁池を見て、登りが始まる。草原を登り切り、森に入る。森を抜け草原を登ると、背後に雄大な風景が広がる。先ほど楽しい時間を過ごした加羅湖が見える。その遠く高くに、南湖大山へと続く山塊の一部が壮絶な崩壊面を見せて広がる。審馬陣山から南湖大山北峰へと続く稜線だ。その右に畑や民家が判別できる南山村の谷間を挟んで、雪山山脈が長く広がっている。いつ見ても大霸尖の奇峰は、つくづくよくこのような形になったものだと思う。山脈前面の峰々は、武陵四秀の桃山などだ。

壮大な風景が広がる、左は南湖大山の一部、右は雪山山脈
加羅山山頂
11時、加羅山山頂(標高2320m)に着く。草原の山頂脇には、枝が残る枯れ木が印象的だ。山頂で10数分過ごしているうちに、霧が上がってきた。往路を下り始める。先ほどはっきり見えていた風景は、霧が往来し見え隠れする。山の天気は変わりやすい。11時半前に縦走路の分岐へ戻る。少し休憩をとる。11時50分、下山を開始する。ところどころ泥濘のあるカヤの間の道を進む。ほとんど平らで距離がのびる。左下に撤退池を見て、12時2分峠に着く。ここからは、急坂で神木登山口まで下り一本だ。プレートは019、所要時間約2時間とある。

霧がでてきて加羅湖は見え隠れする
切り株が残る過去の伐採地、左は先ほど登った加羅山
ぬかるみを過ぎる
ここは多くの登山者に歩かれている人気ルートだ、道の状態はすこぶる良い。ただ、ところどころ樹根が表面に蛇のようにうねって現れるので、滑らないように注意は必要だ。大きな切り株もある伐採地は、また植林されている。ただ、それほど太くない。12時40分、風が吹き抜ける場所で休憩をとる。休憩後、さらに下る。ところどころ、勾配の少ない林道を少し行き、また急坂を進む。もともとの林道は誰も歩かないので、状態は良くないだろう。13時25分、神木登山口に着く。休憩込みで一時間半の下りだ。

樹根が所せましと広がる登山道
急坂を慎重に下る
メンバーみんなは神木と一緒に写真を多く撮る。30分ほど登山口で過ごし、四季林道を進む。すぐに加納富溪を渡る。水の補給や、汚れた長靴を洗う。太加縱走路は、長靴が必須だ。道は少し登り返していく。途中、ホースで引かれた水場を過ぎる。14時15分、左に廃棄された作業小屋を見る。さらに数分進み、分岐点で休憩をとる。ここが林道の最高点になる。

神木登山口にて
加納富溪からしばらく登り返す
鉄柵まで下ってきた
車まであとわずか
残りは4Km足らずの林道歩きだ。それも下りがメインなので、はかどる。部分的に平らな部分もあるが、けっこう勾配のきつい部分もある。40分ほどで、車が入ってこれる最終点の鉄柵地点に着く。車が3,4台とまっている。前回訪れた時は土曜日だったので満杯だったが、今日は平日随分差がある。我々のシャトルサービスの車は、まだその先で待っている。さらに数分、舗装された林道を下る。15時20分、車のところまで歩きついた。全員が到着し、着替えなどをすませ、15時50分台北へ向け出発する。今日の歩きは、約13.5㎞、登坂累計で440ⅿほどある。一方下りは、1400ⅿほどだ。休憩込みで約10時間だった。

着替えをすませ、帰宅準備
夕暮れ迫る中雪山隧道へノロノロと進む
帰途上、宜蘭近くの圓山で食事をとり、19時ごろ常に混雑しているかのような雪山隧道に向けてノロノロと進む。左には、夕暮れ迫るなか、宜蘭を取り囲む稜線が浮かぶ。トンネルに入ると、スムースに進み、20時20分に台北駅に戻りついた。







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縦走路脇で見た菌類
二日とも好天で、実によい山行だった。前日の土曜日には1時間ほど強いにわか雨があった、ということなのでなおさらだ。その雨で泥濘が多かったこともあるだろうが。実際、台湾でも雨量最多の地区で、このような快晴二日は貴重だ。勿論季節的な要素もあるが。全体的に上り下りも多くない、地図上では楽に見えるルートだが、太平山登山口から、閃電池までの6Kⅿぐらいは、足元に常に注意しなければならない難路である。しかし、それはより自然に近いということでもある。林務局が管理しているので、道筋ははっきりし、道標もしっかりしている。時間に余裕を持ち、森林を楽しむという気持ちで行けば、とてもよい縦走路だ。

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