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林家草厝と背後に猴山岳の稜線 |
山道は、同じ道でも登りと下りに通過するのでは、印象が変わる。それは、足を止めて見る周囲の景色は同じでも、登りの最中にみる前方の風景と下りの最中とでは異なり、なおかつその時の気持ちも異なるためだろう。登りではいつ苦しい坂道が終わるのかとしきりに考え、足元を見ながら行くが、下りでは急な下りではもちろん足元に注意が大切だが、前方が見渡せるので、印象が違う。上り下りともに歩いて、初めてその山道を歩いたことがある、と言えるのかもしれない。
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北の深坑から西の指南宮へ歩く |
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歩行高度プロファイル |
今回歩いた道は、
5年ほど前に一度歩いた場所の、ほぼ同じルートを逆方向にただるものだ。前回は一人で歩いたが、今回は九名の仲間と一緒だ。八月は良い天気が続いたが、とにかく暑いので台北郊外の山はあまり気乗りがしなかった。九月もこの時期は日中はかなり暑く、それほど変わらいといえばそうだが、歩くことにした。
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茶葉の天日干し作業中 |
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石段の大崎嶺古道 |
深坑は、MRTこそ通っていないがバスの便も多く、アクセスはよい。豆腐の街として古い町並み(老街)も整備され、いまではすっかり観光地である。日本人はあまり見かけないが、休日はかなりの人出でにぎわう。老街から阿柔洋產業道路を少し行き、大崎嶺古道と廃棄産業道路などを経由して炮仔崙瀑布を見る。その後登り返して茶山古道を行く。この古道は峠を越えて貓空の草湳へ続く。途中には、住人がまだそこで生活している林家古厝(古家の意味)がある。草ぶきの屋根の家は100年以上の歴史だそうだ。お茶を栽培しそこで製茶している。そのお茶をハイカーにふるまう。茶葉も販売している。お茶をいただき昼食をとった後、ふたたび登って峠に行き、稜線をおって猴山岳を越え指南宮へ下った。6時間の行動時間だが、そのうちの二時間ちょっとは休みの時間。自分も含めビールを持ち込んだメンバーも多く、昼食に、また猴山岳前峰でも飲んだ。山歩きの途中にビールを飲むのは問題視する人もあるが、このようなコースでは、問題がない。
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大崎嶺古道の入り口近く |
7時半にMRT木柵駅のバス停で集合、バス乗車20分ほどで深坑につく。深坑を通っていくバスの便は多いので、便利だ。深坑で別途やってきた二名と合流し、8時に都合10名で出発する。天気は良く、これから歩く大崎嶺古道のある枝尾根や猴山岳の稜線がはっきり見える。交通量の多い文山路を渡り、ガソリンスタンドの脇の阿柔洋產業道路を進む。すぐに右に大崎嶺古道の入り口が現れる。ここは
2013年1月に筆架山から下ってきた尾寮古道であるが、その後名前が変わっている。
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炮仔崙瀑布へ右の道を行く |
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廃棄産業道路を行く |
入り口近くの石畳の道はすぐ終了し、本来の土の道が始まる。砂岩をつかった石段が古道であることを示す。8時20分、稜線上で右が開けた場所で一休みする。遠く下には深坑の街が見える。森の中の道は、気持ちがよい。気温が高いので汗は流れる。道標や地図が新しい。前回通ったあと、整備されたのだろう。8時30分、右に炮仔崙瀑布への道が分かれる。こちらの道は、大崎嶺古道とは異なり草深い道だ。山腹を縫って10分ほど進むと、廃棄された産業道路に出る。右に少し下っていくが、様子がおかしい。地図で確認すると、左に行くほうが正しいので引き返し登っていく。この辺りは、マーカーリボンもないので地図を確認することが大切だ。
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濡れた岩場を下る |
草の茂る廃棄産業道を登っていく。十数分ほど登っていく。そこで右に送電鉄塔方向への道に入る。鉄塔の少し前で、左に山道に入る。結構急な下りだ。水音が聞こえてくる。分岐が現れ、右に補助ロープの取り付けられている岩場を下る。湿っていて足元には注意をして下る。下り切ったところは炮仔崙瀑布だ。9時22分、出発して1時間20分だ。滝の周辺には数人が休んでいる。滝の下では、水に打たれている人もいる。わきの小屋では着替えができる。我々もしばし休憩する。
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炮仔崙瀑布 |
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茶山古道 |
9時36分、沢を越して対岸の道を登る。こちらも急な坂でロープを頼りに上がる。左から道が合わさり、またすぐ分岐にくる。先に直進して上がるが、踏跡がはっきりせず戻って、右の道を行く。畑のわきに出、民家わきを上がると茶山古道に合流する。左に登っていく。鉄パイプの欄干から左を見る。先ほど越してきた尾根や滝の方向が見える。コンクリの道が終わり、また土の道になる。踏まれて表面がくぼんでいる石段は、この道の年齢と往来を表している。10時8分、ベンチのもうけられている休憩所で休む。
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古道を登る |
十数分の休憩後、古道を引き続きのぼっていく。時々微風があり、森の木々の下なので、日向を登るよりは楽だ。10時33分、右に分岐を分け左に登っていく。さらにもう一つ分岐を分け、沢わきの石段を上る。まもなく眼前に水田が現れる。台湾は三期作なので、今の時期はまだまだ稲は小さい。水田のすぐ上は林家古厝だ。電気はもちろんあるが、水は沢から引いた水を使っているようだ。この時代に草ぶきの家は本当に珍しい。ここは自動車道がないから、住人は古道を歩いて街へでる。草ぶき家の上方には、トタンの小屋がある。ここではお茶をふるまっている。時刻は11時で少し早いが、ここで昼食をとることにする。お茶を出してくれる住人は、子供のころは1時間以上かけて学校に通っていたとのこと。ここで暮らすのは大変だ。前日冷凍庫で冷やしたビールを取り出し、みんなで飲む。
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水田の向こうが林家古厝 |
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林家古厝の上の製茶作業の小屋 |
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小屋の内部、ここで昼食 |
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前方に峠、古道最後の登り |
そのうち、小屋の手前で二人の老齢職人がお茶の葉を天日にさらす作業を始めた。ここでとれたお茶は、買うこともできる。11時50分過ぎ、約1時間ほどの休憩後峠を目指して古道を歩き始める。道はすぐまた森の中に入る。左に石壁が残る廃屋を見る。勾配がきつくなる。12時5分、峠に到着。古道を離れ、そのまま右に稜線を登っていく。稜線上は風が吹いている。12時28分、猴山岳主峰の三角点基石に来る。以前あった山名の札は遺失している。ここからは下りだ。12時34分、展望の開ける猴山岳前峰に来る。ここでしばし休憩する。
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猴山岳前峰で集合写真 |
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岩場の急坂を下る |
今回は、筆者も含めビールを持ってきたメンバーが多く、ここでも最後のビールをみんなで飲む。暑い郊外の山頂で飲む冷たいビールはとてもうまい。今日は、遠くがかすんでいる。101ビルがかろうじて見えるが、遠くの陽明山系ははっきりしない。20分ほど休憩の後、急坂を下る。最初にここを下ったのはもう6年前だ。ロープの取り付けてある岩場は、そのとき緊張したが、今は慣れてしまった。20分ほどで産業道路にでる。左に進み、指南宮へ続く山道を行く。13時48分、ロープウェイ指南宮駅につく。メンバーのうちの三名はここからロープウェイで下山、残りのメンバーは指南宮を抜けて、その下のバス停から530番バスで台北に戻った。
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ロープウェイ指南宮が左に見える |
今回は、まだ少し暑い歩き出会ったが、吹き抜ける風は秋が近いことを感じさせる。陽明山や南港山の石畳道に比べると、こうした土の古道はより素朴で好きな道である。途中にある林家古厝など、気軽に自然や純朴な山野を楽しめることができる。だれにでもお勧めの道である。歩行距離は約8㎞、多くの休憩を含めて6時間であった。
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指南宮 |