今冬は雨降りの寒い日が、例年に増して長く続いている。寒波が緩み、久しぶりの青空が戻った。次の寒波が襲来する前、中休みを利用して内湖の山へ登った。今回は台湾ではじめて山登りをするH氏が同行する。台北近郊の山を知ってもらう目的で、アクセスが簡単で変化のあるコースを歩いた。大崙尾山から歩き始め、北東方向へ五指山への稜線を行き、碧山から南方向に折れて白石湖山、龍船岩をへてMRT大湖公園駅へ縦走した。
|
内湖の山は台北の町に近い、右は前回の新山 |
|
左の中社路登山口から大湖公園駅まで歩く(クリックで拡大) |
|
霧の中の登山口 |
内湖の山は、昨年5月以来だ。台北の街をはじめ陽明山塊も間近に見える展望台の大崙頭山もあり、登山客が多い。久しぶりの晴れの休日で、大崙尾頭山や龍船岩から下の道は多くの人とすれ違った。この2点の中間部分は、もともとあまり歩かれていない部分で、連日の雨でかなりぬかった山道も多くあった。道しるべのリボンはかなりの数がかかっているが、方向を示す標示が少なく、五指山と白石湖山との分岐で、少し迷った。また、白石湖山から龍船岩への下りでも、本来は開眼山を経ていくつもりであったが、開眼山へ続く枝尾根のひとつ前の小尾根を下る道へ入りこんで、結局先に一度碧山路に出たあと、龍船岩歩道を経て龍船岩へ行った。
|
霧を通して
朝日が 差し込む |
今日はMRT大直駅からスタートだ。朝8時過ぎにH氏と落ち合った後、棕13番バスで外双渓の中社路にある大崙尾山登山口に向かう。昨日もよい天気だったが、そのためだろう空気中の水蒸気が多くなり、朝は霧が濃い。自強トンネルを抜け、外双渓の谷を中社路へ登っていくと、視界がきかなくなる。9時に登山口でバスを降りると、あたりは霧のなかだ。
行程のはじめに歩く台北市の親山歩道は、しっかり整備されている登山道である。石段の登りが続く。途中道脇に、訓練に使うのだろうか、石製ダンベルや担ぐために紐がくくりつけてある60kgと記された石がおいていある。15分ほど石段を登ると、右から来る細い舗装路に合流し、これを進むとガジュマロ大樹の広場があった。太陽が顔を出し始め、あたりは木漏れ陽が霧に映るファンタジーだ。広場からまた石段の登りが始まり、さらに登ること15分、9時半に大崙尾山(標高451m)についた。広い山頂の左側にある小屋からは、双渓の谷を埋める雲海の上に頭をだした大屯山や七星山の山並みがくっきり見える。雲海のなせる業だろう、とても1000mを少し越えるだけの山とは思えないほど立派な山容だ。
|
大崙尾山から見る雲海に浮かんだ陽明山塊、左から面天山、大屯山、七星山 |
|
碧山路との合流点 |
大崙尾山から石段の道を下る。途中木々の切れ間から、次に登る大崙頭山が見える。霧はすっかり上がり、晴天の登山を約束している。スタンプ台がある九蓮寺方面への歩道と合流点を過ぎ、左に碧渓産業道路へ下る山道が分かれると、すぐに碧山路の峠部分に着く。多くの車が駐車し、遊山客が多い。前回5月に来た後に道路整備がされたのだろうか、立派な歩道が舗装路の脇に造られている。この道を行くと外双渓側に展望台もできている。碧山湖の脇から大崙頭山への登りが始まる。石段の道とその左に土の道がある。どちらも頂上へ続くが、土の道は濡れて滑りそうだ。登ること15分、10時15分に大崙頭山(475m)に到着。広い展望の利く頂上は、登山客が多い。展望台へ登り360度の展望を楽しむ。雲海はすっかり上がり、双渓の谷底も見える。台北側は101ビルがかすみの上にその頭を浮かべている。背景にかすかに見える山は新店獅頭山だろうか。内湖や汐止の方向は、霧がまだ十分上がっておらず、ぼんやりしている。これから進む五指山方面や、白石湖山などは目の前に続いている。
|
大崙頭山展望台からの眺め |
|
土の山道が始まる |
30分ほど写真を撮ったり、腹ごしらえをして休憩した後、北へ向かって出発する。石畳の道を下るとすぐ左に枕木歩道が分岐、さらにいくと右と左に道が分岐する。左は昨年5月に登ってきた森林木桟歩道である。石畳の道は、それから2,3分ほどいくと右に恒禅光寺方面へと下っていく。ここからは、土の山道が始まる。連日の雨のため、山道は結構ぬかっている。稜線は広く、森の中をいく感じだ。大崙頭山から15分、道は渓山里山方向へ直進するが、五指山方面はここを右に折れる。「大崙頭山友会館」とある小屋の脇を下る。補助ロープが張っている登り下りを過ぎる。
|
白石湖山と指している道しるべ |
分岐から20分ほどで、古ぼけた道しるべが立っている分岐についた。ここの分岐は左に五指山と右に白石湖山を示している。実際に歩いたあと軌跡を見てわかったのだが、この白石湖山という指示は間違っている。この指示にしたがってここで右に取ったのだが、結局遠回りをして左に行ったと同じ道に合流した。なぜこんな指示になっているか不明だ。白石湖山そのものもまだまだ先である。ただ、Google地図ではこの近くが「白石湖山」と記されており、われわれはこの指示板にしたがって、間違った白石湖山をぐるっと迂回したことになる。途中、岩の上に造られたビニールシートが掛けられた小屋のようなものを過ぎたが、これも何のためかわからない。
|
道脇の土地公 |
森の道は、マウンテンバイクも通ったあとのある広い道に変わる。脇に土地公の古い石の祠がある。その少し先に右に登る切り通しがある。これを登ってみると反対側にまた山道がある。実は、そのままこれを右に取るべきであったが、前の間違った道しるべのため少し方向の勘違いをしており、左へといった。道は産業道路で途切れ、反対側にまた山道が続いているが、そこの道しるべは五指山方面となっている。これで何かおかしいことに気付いた。産業道路を右に下ると、五指山公路があった。時刻は12時15分、とりあえず五指山公路脇の石のテーブルで腹ごしらえをする。テーブルには汐止公所製と刻まれている。
|
石像のある峠 |
食事小休憩のあと、降りてきた産業道路を登り返す。峠には二体大きな石の神像が向かい合って置かれている。だれが何のために据えたのだろうか。五叉路となる峠から向かい側下る道を行ってみたが、間もなくこれは間違いと気付いた。この道は内双渓へと下っていく道である。結局、先ほど本来右に取るべきであった道を進む。ちょうど反対方向からやってきた登山客に聞いたところ、間違いないこと確認できた。この付近は先ほどの古い指示板以外には方向を示す道しるべがなく、はじめて通過する時は少し注意が必要だ。
|
四叉路、中間の道を行く |
道はところどころ石畳になっている、しばらく行くとこの石畳の道が急に左に下がっていく四叉路についた。脇の古い道しるべは、今歩いて来た五指山方向をさしているだけで他には方向を示すものがない。ここは中間の尾根を行く道を取った。左はどうやら五指山公路へ降りる道、右は碧山路56号へ降りていく大崙頭山古道のようだ。四叉路分岐から10分で、白石湖山への登りを示す道しるべがあった。少し登ると、458mの白石湖山頂上に着いた。時刻は1時15分。周りは木々で展望はない。そこそこに下り始める。5分ほど下ると、また古い道案内がある。開眼山をさしており、また脇の木の幹につけられた小さな方向札は別方向の道を大邱田山と示している。開眼山の方向へ取り、下り始める。ほぼ下り一本の道であるが、涸れ沢の脇にを行ったりやせた尾根道になったりする。石畳のところもある。下りきると、いきなり碧山路に飛び出た。もともと開眼山を目指していたが、どうやらその前に分岐して別の道を下ってきたようだ。地図上には出ていなかったので、取り違えたようだ。
|
白石湖山山頂 |
龍船岩は左に長く下っていく枝尾根の先に、小さく白く載っかっている。緑の海に浮かぶ小船のようだ。ここから龍船岩歩道が続いているので、これを進む。龍船岩の標高は300m、この場所より少し高く、道は緩やかに上る。石畳の道を10分ほど進むと、開眼山から下りてくる道との十字路に着く。ここを右に取り、少し進むと大きな白い龍船岩である。岩にはチベット文字のような文が刻んである。さえぎるもののない岩の上からは、歩いてきた山並みが見える。とんがり山の忠勇山の右奥の大崙尾山から大崙頭山、さらに右に碧山へと続く稜線が延びる。すぐ上は開眼山から下がってくる尾根がある。反対側は太湖、その先には汐止方面が広がっている。太湖脇の高架線を行く、MRTも見える。台北101ビルもかすんでいるが遠くに見える。
|
龍船岩から歩いてきた稜線を見る、左から大崙尾山、大崙頭山、白石湖山、開岩山 |
|
急な下り道 |
龍船岩からは、急な下りの山道が続く。ところどころ補助ロープなども現れる。半分ぐらい下ったところには大湖方面が展望ができるスポットがある。さらに下ると尾根道から涸れ沢に降り、そのうちみかん畑が現れると、下り道は終わりだ。約30分の下りである。大溝渓を小橋でわたると、大湖から円覚瀑布へ続く沢沿いの歩道と合流する。せせらぎを聞きながら歩くこと十数分、途中鯉魚山からの道と合流し、3時少し前に大溝渓公園に着いた。多くの遊山客が快適な午後の自然を楽しんでいる。公園で小休憩したあと、3時半にMRTの大湖公園駅に着いた。
|
大溝渓公園、山は鯉魚山 |
今日の行程は約11.5km、休憩を含んだ行動時間は6時間半である。出発点の大崙尾山登山口は標高が300mぐらいあるので、登りは多くない。一方、大湖公園は20数十mなので、下りは400m以上であった。地方行政が整備している立派な石畳の親山歩道、それほどではないが歩きやすい山道、さらにあまり歩かれていない素朴な道と、同じ行程中にかなり質に差のある道を歩いた。天気にも恵まれ、雲海の陽明山など今までめぐり合わなかった景色も遭遇でき、ラッキーな山行であった。
|
歩行高度プロファイル |