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鹿寮坑の赤い鉢巻をまいた石爺石娘とその手前の祭壇 |
樟之細路は台湾西北部を北から中部まで、台三線道路付近の古道やそれをつなぐ一般道路を行くルートである。
前回第一段階として、桃園市石門から新竹縣關西へと歩いた。始めての 樟之細路だが、その意義を体験した。今回はその第二段階として、前回の終点關西から竹東へと歩いた。まだ吹き抜ける風が少し冷たく、こうした里山的な場所をあるくには好都合の天候であった。
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關西から竹東へと南へ歩く |
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歩行高度表 |
古道は、關西近くの二か所だけだが、それ以外の道も舗装されている部分を含め、ほとんど車両交通がなく、快適であった。工業区がある竹26県道はトラックなどの往来がある。本来の樟之細路に指定されている竹26県道は、峠部分からは飛沙縱走の縦走路を歩いて一部をスキップし、歴史的な意義のある石爺石娘の近くから戻り、120号線へと出た。
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赤線は第一回、青線は今回第二回の歩いた軌跡 |
牛欄河と鳳山溪との合流点台地に発展した關西鎮は、客家人が全体の九割を占める客家人の町だ。以前は鹹菜甕と呼ばれたが、日本時代の区画整理の際に今の關西に変更された。日本の關西と同じで、不思議に思うかもしれない。それはザーサイのような塩漬け野菜を意味する鹹菜は、客家語の読み方が日本語の「かんさい」に近く、關西に変更されたからだ。今でも鹹菜の生産量は多く、前回のハイキングでも道端に干してある鹹菜を多くみかけた。
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道端に干してある鹹菜(2021/1撮影) |
客家人は、台湾の人口を構成するグループの一つである。日本でも出身地がどこかということで区分けをするが、台湾は移民の国なので、その祖先によっての区分けがある。先住民である山岳原住民やほぼ移民してきた漢人とほとんど同化している平地原住民(平埔族)の土地に、中国大陸から移民がやってきた。早く到着した福建各地からの移民の後に、中国廣州の梅縣などから客家人が移民してきた。到着時期が遅いので、閩南語を話すいわゆる台湾人が平野を開墾し定着したのに対し、山に近い場所での定着となる。具体的には北部の里山的な地帯や、南部孝雄の美濃などの場所だ。
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南何山にて、同行してきた犬も一緒 |
台湾を南北に貫通する縦貫路は、台一線と台三線がある。台三線は、山に近い場所を南北に縦貫していく。ちょうど客家人の多い地帯を進む。台湾中央政府には客家委員會という部署があり、客家の文化風俗などの進展に関与している。当地政府や客家委員會の推す
ロマン(浪漫)台三線というコンセプトの観光プロモーションがある。台三線と絡んで進む樟之細路は、客家委員會の後押しも受けている。
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座頭市の看板もある旧映画館 |
長い樟之細路は、区間を分けて歩く。今回は、前の終了点關西から出発する。台北轉運站7:10発の國光客運の竹東行1820A番バスで出発する。途中のバス停でほかのメンバーも乗り込む。平日朝の下り方面のバスは空席も多い。8時26分、關西鎮公所バス停で下車する。今日は台北も天気が良いが、ここも上天気だ。ちょっと肌寒い。全員14人でバス停から歩き始める。關西小学校の脇を通り、マーケットがある老街地区へ進む。人気がまばらなマーケットを過ぎると、右に座頭市を描いた看板ががある。何だろうと思ってみると、古い映画館だ。今はもう営業していないが、懐かしい映画の看板が並んでいる。
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壁に昔の写真がある坂道を下る |
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台地下の耕地でトラクターが作業中、白鷺が追っていく |
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樹齢200年の茄苳樹 |
道は台地から下っていく。今は新しい石畳だが、このも昔は純朴な坂道だったようだ。昔の写真が土留壁に取り付けてある。下って左に南山地區の石碑を見る。右に曲がり畑の間を行く。今はちょうど農閑期のようで畑は更地だ。右に關西の高台を背景に、トラクターが作業をしている。その後ろに多くの白鷺が追っかけている。南山大橋で鳳山溪を渡る。橋のたもとに樹齢200年の茄苳樹が高い。大木はたくさんのコブがあり、面白いことにその一つは角度によって太った男のように見える。土地公の祠を左に曲がり、渡南古道に入る。
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まだ新しい渡南古道の道しるべ |
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渡南古道を行くメンバー
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鳳山溪にかかる渡船頭橋とその東奥關西の台地 |
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虎縞の台湾犬が現れ先導、右に墓が見える |
川の岸辺を行く渡南古道は、長く放置され最近整備された。道にはまだ新しい樟之古道の道しるべが取り付けてある。0.75㎞の道のりに50分かかるという表示は、ちょっと大げさだ。我々は12分で、9時12分に渡船頭大橋のたもとに着く。渡船頭は、その昔鳳山溪の渡し船があった場所だ。人々は渡し船で鳳山溪を渡り、關西の街へ向かっていた。集落の脇を南へと歩く。そのうちに虎縞の台湾犬が現れ、我々を先導していく。右の山側は、大きな墓が続く。9時27分、顯伯公風景區と記されたアーチの脇の百齡亭で小休憩をとる。
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左の百齡亭脇から飛鳳古道が始まる |
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玉石石畳の飛鳳古道 |
飛鳳古道はこの涼亭の脇から始まる。丘の方向に畑の間を進み、玉石の石畳道になる。5分ほどで古道は終了し、右から登ってくる舗装路に合わさる。もともとはこの舗装路も古道の一部だったのだろう。道は山を登っていく。途中で左に道を分け、さらに高度を上げる。道には落ち葉が多くなり、車の往来がないことがわかる。9時58分、高度がだいぶ上がって270mぐらいになった場所では、左側が開け横山方向の谷と背後の山が望める。さらに10分ほど行くと、赤い寒緋櫻が多く咲いている。その先右に鉄の門をみると、道は舗装が切れ土の道となる。
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枯葉が道を覆う |
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寒緋桜が咲いている |
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十六分山山頂 |
10時17分、左に十六分山の入り口がある。ほんの1,2分で山頂〈標高356m〉の基石を見る。あまり人が訪れない、森の中の山頂だ。入口に戻りさらに数分進む。左に果樹園が広がり、乗用車が止めてある。コンクリ舗装もしてある。まだ新しい東屋があり、持ち主がいる。最近整理をしたという。道に腰掛け休憩する。少し風があるが、陽光は暖かい。果樹園越しに、遠くに山並みが重なる。おそらく桃園市復興區や新竹縣尖石鄉の山々だろう。
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コンクリ舗装の道に腰をおろし休憩 |
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遠くの山々が霞の遠くに見える |
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竹26県道の左に縦走路が始まる |
10時41分、歩き始めすぐ竹26県道に出る。そのうち下りはじめ、10時55分飛沙縱走路の入り口を見る。ここを右に縦走路を行けば
飛鳳山へと続く。舗装路をさらに5分ほど下り、飛沙縱走路後半部分の入口を見る。竹26県道を離れ、稜線上の登山道を進む。虎縞の犬はまだついてくる。登山道は雑木林や竹林を抜けあまり起伏もなく進む。11時14分、南何山(標高376m)が現れる。樹木の中の山頂は、展望はない。そのさき5分ほどで南何山南峰(標高365m)に着く。
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南何山南峰、手前の幹に飛沙縱走の赤色矢印 |
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金網フェンス脇を行く |
山頂から下がっていく。3,4分で右に金網フェンスを見る。フェンスの内側は石畳の道がある。そのうちフェンスから離れ、送電鉄塔をくぐる。11個33分、山道は峠(標高305m)を越えていく舗装路で分断される。縦走路は、土留壁に掛けられた梯子を登る。台湾電力の工事表示がある。虎柄犬は梯子を登れずここでお別れだ。梯子のさきはしばらく急坂続く。11時39分、工事進行中の送電鉄塔脇を通り、保線路を進む。数分で高い物品運送用のケーブル柱の脇から、また山道になる。11時51分、眼前に涼亭が現れる。沙坑山(標高398m)に着いた。ゆっくりと昼食休憩をとる。
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舗装路が峠を越える、左の梯子を登る |
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縦走路は台湾電力の工が進行中 |
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沙坑山の涼亭 |
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予定の道は鉄の門で入れない |
12時半、幅の広い尾根道を下る。数分で右に鉄のゲートがある金網フェンスに来る。地図上では、ここから右に竹26県道に下る道があるが、私有地のためか入れない。登山道をさらに行き、右の果樹園の下から本来歩く予定の道へ下れるようなので、果樹園の間を下る。果たして果樹園から降り少し下ると、予定の道に合流する。勾配のきつい舗装路を20分ほど下り、右に大きな工場がある。台星科技(Wintech)の工場であった。時間は13時半、先ほどのフェンスのところで、道探しに時間を要したが、問題なく予定の道にでた。
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果樹園を下る |
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予定の急坂道を竹26県道へ下る |
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竹26県道に出た |
右に竹26県道を数分進む。左に石爺石娘の大小二つの石が赤い帯をまとって並んでいる。そのすぐわきには土地公祠がある。石爺石娘は縁結びの神様とされているようだ。脇の説明によれば、その昔とても睦まじい老夫婦がこの鹿寮坑に暮らしていた。この話から、万物に神を見る客家人は、この石を拝んだ。この石は、この地の守り神でもある、ということだ。日本でも巨石や巨木に神の存在を見るが、それと通じるものだろう。
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石爺石娘脇の説明板 |
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300年茄苳老樹 |
石爺石娘から往路を戻り、さらに1.5㎞ほど竹26県道を下っていく。すぐ左に樹齢300年茄苳神樹が広く高く枝を広げている。この道は、沿線に工場があるので、トラックの往来がそこそこある。下っていくと、右の壁に土地の土地公やその他土地の特徴ある場所の写真が取り付けてある。この地を大切に思っている住人の郷土愛の表れだろう。14時16分、120号線との交差点に着く。近くのバス停は、1時間以上待たないと便がない。先に道路を渡りコンビニで一休みする。その後さらに3㎞ほど120号線を歩き、15時28分石潭バス停に着く。まもなく1820番バスがやってきて、台北に帰郷した。
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土地の名所の写真が並ぶ |
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120号線から竹東の五指山や鵝公髻山(右)を望む |
今回の歩きは、都合17.8㎞、登坂下降それぞれ635m、7時間である。コース定数は24だ。尾根上を歩いているときは、ちょっと冷たさを感じさる風もあったが、暖かな日差しが常にさし、快適なハイキングであった。暑くなる前に続けて樟之細路を南へ歩いていくつもりだ。
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南山大橋たもとの茄苳樹の人形コブ |
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