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2025-01-31

台湾登山ルートガイド :坪林三星 和尚髻山・源茂山・鬼子瀨尖 お茶のふるさとの一日コース


筆者の今までのルートガイドは、台北市街近くのものが多い。今回は、宜蘭へと向かう途中にある、坪林の代表的な三山を回遊するルートである。台湾には土地の有名な山を三座とか五座など奇数にまとめてその土地名を冠して何とか三星や五雄という山群を指すものが多い。当坪林三星もその流れである。

坪林は台北の南東にある
坪林は台北からの定期バスが通う。第五高速道路経由のものもあるし、その昔は宜蘭への主要幹線であった北宜公路を行くバスもある。便数もそこそこあり、台北から日帰りで訪れるのも問題ない。筆者は12年前に初めて訪れ、最近また訪れた。登山道も問題なく、普通の登山者であれば十分に一日を楽しめるコースである。そこで、今回はルートガイドとしてまとめる。回遊型なので、どちらから回ってもよい。当ガイドは、最近に歩いた反時計回りを記述する。時計回りについては、以前のブログを参考にしてほしい。

北勢溪の対岸から見る坪林三星(左から鬼子瀨尖,源茂山,和尚髻山 2014/1攝影)
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登山対象:

ルート

坪林國中バス停→(10分)→大湖尾步道入口→(60分)→大湖尾步道出口→(舗装路20分)→登山道入口→(15分)→和尚髻山→(40分)→源茂山西峰分岐→(源茂山西峰往復15分)→分岐→(25分)→源茂山下分岐→(源茂山往復10分)→分岐→(30分)→水聳淒坑山分岐→(30分)→水聳淒坑山→(15分)→大尾山登山步道分岐→(25分)→鬼子瀨山→(50分)→石雕公園入口→(5分)→坪林國中バス停

5時間50分(休憩時間を含まず)約10.5㎞  累計上昇下降ともに約850m コース定数23

坪林

台北中心から約30㎞ほど離れた坪林は、台北盆地を流れる淡水河流域上流北勢溪沿いの谷間の街である。19世紀初期ごろから漢人の開拓がはじまった。山に囲まれたこの地は、稲作などには適さず、大菁を原料とする藍染料生産があったが、その後山肌を開墾した茶園が広がり当地の主要産物となる。老街と称される昔からの集落から少し北勢溪上流側に行ったところに台北と宜蘭とを結ぶ第五号高速道路ジャンクションがある。高速道路は橋を超えるとすぐに台湾最長の雪山隧道に入る。北勢溪の対岸には新北市茶業博物館があり、当地の産業の紹介をしている。川沿いには遊歩道公園などもある。下山後時間に余裕があれば、ぶらついてみるのもよい。
ここでは、坪林は老街を中心とする集落を指しているが、行政単位としては新北市坪林區としての存在もあり、その場合はかなり広い範囲を含む地域となる。三星以外の付近の山々も、その意味では坪林の山である。

夕暮れ近づく坪林の街(2019/12攝影)
和尚髻山

坪林國中バス停で下車すると、北勢溪対岸にひときわ高い山がそびえる。その山が標高726mの和尚髻山である。山の形から和尚の頭を連想した命名はよくあるが、髻はひげのことであり、剃髪した和尚にひげなどはないはずなので、面白い名づけである。山頂は広く、周囲は樹木に囲まれ展望はない。三角点のわきにベンチや解説板が設けられている。

坪林國中バス停から見る和尚髻山(最奥の山頂)
大湖尾步道

坪林の麓から和尚髻山下の舗装路までの間の登山道である。行政単位により階段や手すり、道案内などが設けられている。ただ、この道のメンテは民間のボランティア活動によるところが多く、時期が外れるとかなり草深いこともある。

登山歩道案内板
源茂山(樟桔坑山)

標高881mで坪林三星の中の最高峰であり、どちらから回ってもほぼその中間地点になる。この山からさらに東へと稜線が続き、建牌崙や梳妝頂山のほうへと続くが、この間を行く登山者は多くない。最近は山頂の周りの樹木が刈られたようで、かなり広く展望ができる。天気が良ければ、遠く台湾東北角の燦光寮山草山なども望める。
源茂山西峰(標高750m)は、源茂山の西に位置し尾根が続いているが、道はそのまま稜線を行くのではない。また、山頂には日本時代の専売局大正11年と記された基石が埋められている。当時の専売はクスノキを原料とする樟脳も専売対象であり、しかも重要な政府収入源であった。専売局の基石は、ほかにもあり近くでは胡桶古道にも残っている。

源茂山山頂
源茂山山頂西峰專賣局基石
水聳淒坑山

標高669mの当座は、源茂山から鬼子瀨山へと続く尾根上の突起である。山頂は樹木に囲まれ展望はないが、途中には草原状のところがあり、そちからは展望ができる。行政による回遊ルートではこの山は通らない。したがって、道の状態もほかに比べると落ちる。もしルートファインディングに不安があれば、当座は外して一度水聳淒坑2号の民家に下り、大尾山步道を登り返して鬼子瀨山へ進むほうがよい。もともとこの山は三星の対象ではない。

水聳淒坑山,背後左は源茂山,右に和尚髻山(2013/7攝影)
鬼子瀨(尖)山(大尾山)

標高634mで、三星の中では最も低いが、その山容は尖の文字がつくようにかなり目立つ。和尚髻山から回っても、大湖尾步道はかなり急坂できついが、こちらも同様にほぼ休むことなく狭い尾根上の急坂が続く。山名については、次のような説明がある。翡翠水庫ダムが下流に建設される前は、北勢溪は流れが急でありそのさまを鬼のような沢=鬼子瀨と称した。その急流の上にある山で、この命名とのことである。

鬼子瀨尖(左のピーク)
大尾山登山步道

石雕公園のわきから、鬼子瀨尖山(大尾山)の尾根の末端にとりつき、山頂を越して水聳淒坑の集落へと降りる登山道である。こちらも行政による道で、メンテがされている。最近の山行でも、階段や手すりのメンテがされており、状態がよい。もし三山を回遊する時間や体力に不安があれば、この歩道を歩きそのまま坪林へ下ってもよい。

石雕公園にある大尾山步道起点ポスト
雪山隧道通氣口

このルート案内上では説明していないが、源茂山の真下を雪山トンネルが貫通している。その建設の際、またその後は通気や緊急対応のための入口が近くにある。もし興味があれば、源茂山の登山途中にちょっと立ち寄っても面白いかもしれない。もちろん入口だけで中には入れない。

雪山隧道通氣口入口

コース概要:

台北MRT新店駅バス停から923番バス乗車約40分で坪林國中バス停につく。高速道路を降りて初めのバス停である。北勢溪の対岸には三座の橋が架かっている。そのいずれかを渡り、北宜公路が通る交差点から、山に向かって大湖尾產業道路を登る。登ること数分で、道わきに大湖尾-源茂山登山步道の道案内板を見る。その角を右に曲がり少し行くと、大湖尾歩道入口を見る。

MRT新店駅前の923番バス乗り場
北勢溪にかかる三本の橋のうち、北宜公路の橋上から見るほかの二本

鬼子瀨尖を正面に見て大湖尾產業道路を行く
歩道入口
土の山道は、階段でいきなり高度を稼いでいく。途切れなくつづく登りを行くと、そのうち尾根の末端にとりつく。尾根上の小さな上り下りを過ぎ、さらに急坂を登る。二、三十分ほど登り振り返ると街並みはすでに下方で、だいぶ高度が稼げたことに気づく。反対廻りで鬼子瀨山から登っても、行程当初では同じく急坂である。登り切り、道が広く緩くなり、左に果樹園を見ると、歩道は終わって車道に出る。右には和尚髻山が近い。

急坂が続く
尾根上の階段道

最後の階段を登る

桜の背後に和尚髻山
十字路を突っ切り、さらに登る。民家を左にみて登り、その先左折してさらに舗装路を登る。天気が良ければ、果樹園の上で展望が開ける。空気の透明度が高ければ、北勢溪対岸の山々だけでなく、遠く陽明山山系の七星山や大屯山まで確認できる。道なりに上り、曲がったところで土の登山道が入口を開く。ここには特に官製道標はない。

歩道出口の道標,和尚髻の方向は正しくない。十字路は曲がらず直進
建築中の民家脇を登る
対岸の山の向こう遠くにに陽明山系の峰々が望める
登山口
雑木林の中の登山道は部分的に急なところもあるが、次第にゆるくなり、道しるべが現れる。そのすぐ右が和尚髻山山頂だ。ベンチが設けられている。山頂からは展望はきかない。分岐に戻り直進すると、すぐに階段の急坂となり下っていく。下りきると、今度は尾根上を追って登り返す。以前は、左(北)側の山腹を杉林を突っ切っていくトラバース道があったが、今はすでに不通のようで、入口すらわからない。
土の登山道

山頂前の分岐
和尚髻山山頂
階段急坂を下る

稜線を登り返す
尾根上の道は最高点を過ぎると、下っていく。杉林の中を平らに進み、十字路分岐に来る。右は峠を越して北宜公路まで枝尾根を下る道が、直進は源茂山へ、そして左は坪林へと下る。右の道をとって峠部分まで行き、右に折れて源茂山西峰へ往復する。鞍部からわずかで山頂に到着する。峠を越えていく道は、ほとんど登山者がいないようで、道はよくない。鞍部へ戻り、先ほどの十字路分岐へ下る。そこから源茂山へ向かう。

尾根上から右に源茂山が見える
杉林の平坦な道を進む
十字路分岐
源茂山西峰山頂
道は右に曲がってしばらく谷間を登り、階段を登りきると尾根に上がる。稜線の右(東)側山腹をしばらくトラバースし、小さな流れを超えるとまた階段急坂を登る。杉林にはいりそのうち、分岐に来る。登っていく道をとり少し行くと稜線上の分岐に出る。左が源茂山山頂だ。すぐにベンチがならぶ山頂につく。

階段道を稜線に上がる
山腹トラバース道
源茂山下の分岐、山頂まで残りわずか
源茂山山頂からの展望、遠くに東北角の山々が見える
山頂から先ほど登ってきた初めの分岐へ下り、右にとって下り始める。尾根から谷間に降りさらに下る。小沢に沿って下り、源茂山・水聳淒坑二號宅の道標のところに降りる。左に行く道は、道しるべにはないがこれをずっと行けば、雪山トンネルの通気口へと続く。この分岐で右に曲がり、進むと水聳淒坑山へと続く。入口で迷ったら、無理して水聳淒坑山へは行かず、水聳淒坑二號宅へと下り鬼子瀨山へと登り返すことを勧める。

山頂わき左に建牌崙への分岐
谷間に下り、小沢を超える
水聳淒坑山への表示はないがここから道が分かれる
水聳淒坑山への道は、今までの登山道に比べると道筋がもうひとつ頼りない。ところどころマーカーがあるので、それを注意をして進む。一度雑木林から出て草原状の場所を少し登り、下って涸沢を少し登る。そこから今度尾根にとりついて進む。補助ロープなどが少ないので、足場に注意。雑木林の道を進み、狭い尾根を過ぎると、台湾省と読める高さ1mほどのコンクリ角柱を見る。その下に「山」字の基石があり、そこが水聳淒坑山山頂だ。

涸沢状のくぼみを少し登り左にとりつく
山道はあまり状態は良くない
水聳淒坑山山頂
山頂から少し行くと、道は左に大きく方向を変える。そのまま直進して行かないように。かなり急な場所もあるが、ロープなどがついている場所は少ない。足元に注意しながら下る。そのうち左に開けた草原状の場所と並行して進む。以前は果樹園か何かだったのだろう。さらに下り、大尾山登山步道にひょっこり合流する。右に曲がって鬼子瀨山へ向かう。

草原状の場所から対面に歩いた稜線が見える
大尾山歩道に向けて下る
水パイプが走る大尾山歩道に降りた
少し登ると、右にほぼ廃棄状態の道を分岐する。道はそこから尾根上を忠実に進む。階段や手すりなどが設けられ、道の状態はよい。途中に三、四カ所の小さなコブを超えていき、岩が露出した個所を過ぎると、鬼子瀨山山頂だ。狭い山頂にはベンチが設けられている。山頂からは、足元に第五高速道路のインターチェンジあたりが見える。

尾根上の道を登る
岩が露出するこのコブを超えると頂上はすぐだ
鬼子瀨尖山頂
下り道は急坂階段である。足元に注意し、ひたすら下る。途中一度登り返しがあるが、大きくはない。道なりに下り最後に石雕公園最上部に出る。ピクニック・テーブルベンチが据えてある。ここから山茶花などの花園で、道はその中を下る。途中の分岐は右へ右へととっていくと、最短で石雕公園出口に行ける。園内はそこそこ広いので、時間があればゆっくり見ていってもよい。石雕公園から、坪林國中バス停は橋を挟んで目と鼻の先だ。

急階段道を下る、下方に高速道路
途中少し登り返す
石雕公園最上部のピクニックテーブル
石雕公園を下る
石雕公園出口近くの石像
アクセス:

台北MRT新店駅から高速道路経由の923番バス、また北宜公路を行く緑12番バスが坪林へと通う。後者は、坪林の街中どまりで高速道路ジャンクション近くの坪林國中バス停にはいかない。一方、923番バスの終点も坪林街中である。上記以外に大都會客運9028番羅東行きバスの一部が、坪林國中バス停に立ち寄る。ただ9028番バスは、台北新店の始発駅からは問題ないが、帰りの場合はもし満席であれば、乗車できない。台湾の高速道路は立席が許可されていない。同じ理由で923番バスも、上り方向は坪林國中バス停で満席であれば乗車できない。休日など乗客が多い場合は、坪林街中の始発駅から乗車するほうが確実である。緑12番は、時間がすこし余計にかかるが、同じくMRT新店駅まで行くので、どちらでもよい。緑12番は立席禁止はない。

装備:

一般の日帰り登山装備で十分である。ただ、休みも含めると一日行程なので、季節や天候を考慮し水や行動食などもそれに合わせて持ってくことを勧める。途中で沢を渡ることもほとんどないので、靴は登山靴などでも問題ない。もちろん平底の街歩きシューズなどは、不向きである。