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2025-01-25

2025年1月21日 暖暖・碇內の山中に残る清仏戦争の砲台遺跡を巡る

碇內砲台遺跡 (碇內尖山山頂)
昨年2月に基隆港の周りを囲む砲台遺跡を巡った。その時のブログ記事で述べているように、基隆港は台湾にとって重要な港であり、その防衛のために清朝時代から砲台が設けられ、日本時代(1895年~1945年)もそれをさらに拡張して保持した。その基隆港は、1883年から85年にかけて清朝とフランスとの間で、ベトナムの権益をめぐる清仏戦争が起き、戦いに巻き込まれた。1884年夏に、フランス艦隊が基隆港に攻め入り、上陸した。基隆港は、周囲を山で囲まれている。その山での戦いがあり、フランス軍は山の反対側を流れる基隆河にそって台北へと目指した。今回のハイキングの下山地点である四腳亭あたりまで攻めたが、清朝軍の増兵がありそれ以上には進まなかった。

U字型に縦走
基隆港との位置関係
この戦争のために、基隆河流域の暖暖や碇內の山の上に砲台が設けられ、また塹壕なども掘られた。実際の戦争でそれらはあまり役にたってはいないようである。当時のフランス軍兵器や戦術と清朝軍の差は大きかったが、戦争は終結に向かい、砲台などの軍事施設も山中に残され忘れ去れた。日本時代に拡張維持された基隆港周囲の砲台とは異なり、再び使われることはなかった。それから百数十年の年月が経ち、砲台の基礎などは木々や草に覆われ、自然に戻っていった。今回のハイキングは、そうした砲台の遺跡を巡る山旅である。

@粗坑頭山山頂
筆者は、過去何回かハイキングの途中で清仏戦争の砲台遺跡は訪れたことがある。今回は、砲台遺跡が多く残る稜線上の道の整備がされたこともあり、その稜線を追っていき遺跡を訪ねた。すでに140年ほどたっている遺跡は、もちろん大砲などの兵器はないが、大砲の周囲を囲む盛土壁などがまだ残っていて、当時の様子をうかがうことができる。それなりの規模があり明瞭な遺跡として確認できた場所は五か所あった。そのうちの一ヶ所碇內砲台は、地元団体の維持作業があるようで、遺跡は樹木などもなく、はっきりしている。ルートとしては、台湾鉄道の暖暖駅からそのすぐ裏の山にとりつき、五分山の前衛となる枝尾根の山々をぐるっとめぐって四腳亭駅へと下った。

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無人の暖暖駅、対面に台北方向上り区間電車
本来19日(日)に予定したが、天気がすぐれないので延期した。今日は平日である。定刻7:34から数分遅れて到着した宜蘭行区間電車に乗車する。車内は通勤客で満員である。数駅先の汐科駅まで来ると、通勤客はほぼすべて下車し、車内は閑散とする。8時28分に暖暖駅に到着した。この電車を乗り逃した二人のメンバーが次の電車で来るのを駅で待ち、8時50分全員12名がそろったところで歩き始める。

金山寺へ長い階段を登る
金山寺境内に入る、すでに高い
駅から下の車道におり、踏切を渡る。そのすぐ左にある廟の山門をくぐり、金山寺へと進む。表示に従い階段を登る。階段はかなり長い。登り切り前方に金山寺の大きな伽藍が見える。振り返ると、すでにけっこう高く、遠くまで見える。駅から約15分ほどだ。服装の調整などをして、境内わきの階段を登る。すぐに右からの道を合わす。地元登山グループ暖曦探勘隊がつけた道標がある。これから先も、最近山道整備し道しるべをつけている。

金山寺の伽藍
道標に従い左にまず砲台遺跡を見に行く
樹木が茂り隠す砲台遺跡
左の送電鉄塔脇が上記砲台遺跡の位置
暖壽山山頂
左の道を少し行くと、また分岐だ。左方向には砲台遺跡の表示がある。そこでまず右の暖壽山へ行く前に、砲台遺跡を見に行く。一度下って登り返し送電鉄塔の近くに、表示はないがそれらしいものがある。道を戻って、分岐から尾根沿いに進む。整備された道は広く、草が刈られた端部からは、展望もできる。9時35分、暖壽山山頂(標高140m)についた。山頂といっても、竹に囲まれた大きなくぼみがある。ここもその昔は砲台などの軍事施設があったのだろうか。

下方に運動公園、その後ろ鉄塔が頂寮山山頂
急坂を下る
下方に見える暖暖運動公園へ向けて下る。一度下りまた登り返す。急坂を下りきると、広い運動公園の一端に降りる。ここにはトイレもあるので、ちょっと立ち止まる。公園を巡る道を進み、暖暖吊橋を渡る。吊橋のこちら側は暖東苗圃である。こちらも山の裾に設けられた、かなり広い自然公園である。事務所建物を過ぎて、少し登るとそこそこ大きな自然生態池のわきに出る。10時4分、少し休憩をとる。

トイレ背後の山から運動公園の一角に降りる
生態池
木桟道の暖東自然歩道
先ほどの暖壽山近くから見えていた、対面の送電鉄塔がある頂寮山へ向けて暖東自然步道を登り始める。木製桟道のよい道である。歩くこと数分で、分岐に来る。右に曲がって少し下ると、左に尾根を登っていく道がある。ここで自然歩道から別れ、山道を登る。角にある官製道標は、方向が逆だ。山道はかなり勾配がきつい。最近整備されたばかりなので、状態はすこぶるよい。10時35分、鉄塔脇に基石がある頂寮山山頂(標高220m)についた。鉄塔の土台に上がると、基隆方向の展望が広がる。残念ながら、遠くはぼんやりしている。

山道に入る、道しるべは方向が逆だ
鉄塔脇の頂寮山山頂
鉄塔下から遠望
枝尾根道(左)の分岐
ここから碇內砲台が山頂にある碇內尖山まで、基本は登りの2㎞ほどの稜線道である。一度下って、間もなく左に枝尾根を麓に下る道を分ける。そのあとは、一つまた一つと次々に現れる、尾根上のコブを超えていく。上り下りはかなり急坂で、ロープの取り付けられたところも多く、厄介である。11時8分、大正九年二月の日付が片面に刻まれ、また陸軍省と記された石柱が鞍部にある。すぐわきの道標は砲台紀念碑としている。肝心の正面の文字がもう一つ判読できない。大正九年、また陸軍省とあるので、日本統治時代のものである。

尾根上のコブを超えていく
砲台紀念碑
大正九年二月の文字
石柱正面

砲台遺跡
左のほうに碇內尖山が近くなってくる。砲台遺址の表示がつけられた、大きなくぼみを通り過ぎる。その先、下っていき11時30分、車道へ降りる。山道入口では、ボランティアと思われる人が倒れた道標を戻す作業をしている。車道に降りてすぐ、左に階段が登る。これを登り進み、暖東龍關懷協會の觀音亭についた。時間は11時39分、屋根下のテーブルで食事休憩とする。ここはトイレも水道もあり、休憩にはとても良い場所だ。数年前にもここで休んだ。

車道に出た
左の階段を登る
觀音亭
碇內尖山へ登る
長めの休憩後、12時20分碇內尖山へ登る。尾根に上がり、左に碇內尖山山頂へ進む。数分で砲台の盛土が囲む山頂(標高370m)に到着する。草がしっかり刈り取られ、その規模の大きさがわかる。少し進むと、広い展望ができる。冬陽が差し込む、木の葉が落ちた灌木林の山は、筆者が若いころ歩いた日本奥多摩の低山の冬景色を思い出させる。

草が刈られた山頂下から基隆港方向を望む
碇內尖山山頂から急坂を下る
分岐へ戻り、急坂を下る。車道をまたいで、また急坂を登る。12時50分、倒木の龍門山山頂(標高380m)につく。この山はこれで三度目の登頂だ。ここは木々に囲まれ、展望はない。下り道は、それほど急坂ではない。10分ほで分岐につく。稜線をそのまま行き、廃屋のある鞍部からも下れるが、コブを越さなければいけない。そこで、ここで上車路の車道へ降りることにする。しばらく下ると、左に樹上ハウスを見て、間もなく車道に降りた。対面には、コークス窯跡が下方谷間にある山道が開く。

碇內尖山を背後に龍門山へ登る
龍門山山頂
この分岐から左へ車道に下る
樹上ハウス、右背後は碇內尖山
上車路に出た、右に谷に下る登山口
舗装路を進む
ここからしばらく車道歩きである。車道といってもほとんど車通りがない。最近行われた良好な舗装面が続く。緩やかな登りを行き、13時40分道の左に粗坑頭山への登山口が現れる。ここから先ほどの碇內尖山や龍門山と谷を挟んで平行に並ぶ稜線を歩く。手始めは、尖って尖山の名がついてもよい粗坑頭山である。道はすぐに急になり、最後は岩壁を登り切り、登山口から10分ほどで山頂(標高401m)についた。本日行程中の最高点だ。

粗坑頭山登山口
ロープの急坂
最後の登り
岩壁上部
粗坑頭山山頂、左の岩壁から登ってきた
砲台遺跡の道標
山頂から下ってわずか、右に砲台陣地と道標がある。それに従い行くと、石積塹壕が現れ、右には大きな窪がある。樹木がかなり茂り、その規模がどこまであるのかもう一つ不明瞭だが、碇內砲台よりも大きいのではないだろうか。手入れされていないのが残念だ。山道に戻り、尾根を追っていく。次のピークまでは少し距離がある。こちらも小さなコブが次々と現れる。

塹壕を進む
草木の生茂る砲台遺跡
台風による倒木が多い砲台遺跡
竹林の間を下る
基本下りの尾根道を進む。10月末の台風でなぎ倒された倒木などが現れる。この稜線道は、二年ほど前に整備された。午前中の道に比べると、倒木などの障害物が多く程度が落ちる。14時43分、カヤが密生する広場に降りる。幸い最近歩いた登山者がいるようで、草の間には踏み跡がある。カヤを過ぎると、広い土道にでた。そこで少し休憩する。



急坂の下り
台風で折られた枝

カヤの繁る平地に降りる
道脇で休憩
チラホラ桜が咲き始めている
土道わきには山桜が植樹されている。花が少し咲き始めている。しばし進むと、右に滴水山への登山口がある。急な坂を登ることわずか5,6分で山頂(標高249m)についた。地図上では足跡山と表示されている当座は、本日の最後のピークである。メンバーはほっとする。残りは下りだけだ。

滴水山へ登る
滴水山山頂
最後の分岐、右は滴水山北峰へ
基本は下りだが、まだ少し登り下りがある。滴水山から10分ほどで、分岐に来る。右は滴水山北峰をへて下る道だが、あまり歩かれていないようで道筋は不明瞭だ。左にとり引き続き下っていく。送電鉄塔からは保線路を下り、15時43分長興宮の対面にある登山口に降り立つ。山道歩きは終わりだ。粗坑口路一巷の道から、交通量の多い瑞八公路、そして基隆河の橋を渡って四腳亭の街中を行く。15時58分四腳亭駅に到着、16時18分の区間電車で帰途についた。

最後の下り
あとわずか
鉄塔下から四腳亭の街を望む
粗坑口路一巷の登山口
基隆河の橋頭から降りてきた山の方向を見る
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標高が400m以下の山々であるが、稜線上の小ピークが多く続いているので、それほど楽なルートではない。累計で770mほど登っている。距離は約11㎞、休憩を含め7時間の行動時間である。コース定数は24である。

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