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柑腳溪から見る下內平林山と近くの送電鉄塔 |
台北付近の山はだいぶ歩き、未踏のピークは少なくなってきている。既に登った山でも、別のルートで登ったり、逆にたどるとまた新しい側面が見える。今回のピークは下內平林山で数年前に歩いたことがある。この山は別名赤皮崙と呼ばれ、その名を関した古道が近くへ登っている。つい最近、藍天隊がこの道を整備した。この道を歩くことが主目的だ。また下內平林山は、その稜線は淡蘭古道の一部に指定され、行政によりアップグレードされた。もともと土地公山古道と呼ばれる古道を下ることも、今回の目的である。
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北側の赤皮崙古道を登り土地公山古道を下る |
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F812バスがやってきた |
半日で終わってしまう山歩きは少し物足りない感じもあるが、時にはそうした軽いハイキングもよい。場所が新北市雙溪區の奥なので、アクセスに時間がかかる。7時半過ぎの区間電車で台北から雙溪へ向かう。台北付近では、通勤時間帯なので満員だが汐止を過ぎると乗客はぐっと減る。8時55分に雙溪駅に到着、駅前のバス停でF812番バスを待つ。このバスは新北市の予算で運転されている無料バスである。民間バスでは採算が合わず、交通の便がない集落をつないでいく公共バスである。日本と同様に、地方では老齢化が進み車を運転できない住民の足となっている。
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F812バス車窓から |
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長源1鄰バス停で下車 |
雙溪駅前のバス停には、数名の老齢者がバスを待っている。バスは地元民が駅近くのマーケットで買い物をして、帰宅する足である。9時25分F812番バスがやってくる。地元住民の乗車は幸い多くない。今日は、筆者を入れて12名、20人乗りのバスは満員になる。有料の國光客運 781番バスは、台2丙線基福公路を行くがF812は山沿いの細い道を行く。9時47分、長源1鄰バス停で下車する。自家用車でやってきたメンバーが一人ここで加わる。
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泰發炭窯コークス窯跡 |
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感礁溪沿いに歩く |
支度を済ませ9時5分前に歩き始める。舗装路のこのセクションは、新北市政府が整備している淡蘭古道の一部とされており、立派な道しるべがある。道を行いくとすぐに泰發炭窯の遺跡を見る。コークスを焼くための窯が並んでいて壮観だ。今は静かな寒村の柑腳だが、その昔は炭鉱で栄えた場所だ。当時の名残りである。これも最近の淡蘭古道整備工事の一環として、修復されたようだ。
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赤皮崙古道入口の獅子像 |
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刈られた草がまだ青い |
柑腳溪沿いに進み、土地公山橋を渡る。そのすぐ先長源橋でまた柑腳溪を渡る。電柱にまだ取り付けられた間もない4月3日付けの道しるべが、赤皮崙古道への方向を示している。道の突き当りに階段道が始まる(標高107m)。階段の脇には数個の小さな石獅子像が取り付けられていて、この道は以前かなり重要なものだったと思わせる。階段がづっと続く。まだ青い刈られたばかりの草や、切り口が真新しい樹木が道にある。階段が崩れた場所も現れる。住民が通わなくなった道は、自然に帰りつつある。
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急坂の入口 |
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石段の道 |
道はそのうち幅が広がり、農園にでると間もなく北38鄉道(平雙產業道路)に合流する。赤皮崙古道を過去のものに追いやった平雙產業道路も、今はトンネルで平溪と雙溪とを結ぶ台2丙線(基福公路)ができたので、沿線の地元民が使うだけの道になっいる。右に舗装路を進む。民宅の前にいる地元民が、古道の入口はすぐ先だと教えてくれる。10時25分、電柱脇からまた急な草刈りされたばかりの土の道が始まる。一部には石段も残る。
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エキライオンの文字がある空瓶 |
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鄭求住居跡 |
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農具も残る |
10時35分、道の左にかなり広い平らな場所を見る。石積の壁が残る住宅跡だ。鄭求古厝遺址との表示がある。メンバーがまだ刈られて草が重なる中から、空瓶を見つける。瓶にはエキライオンという片仮名表示もあり、日本時代のもののようだ。その他にもコトブキという会社名の空瓶もある。もっと山奥の旧警備道駐在所跡などでは、よく見かける日本時代の空瓶が、こうした近郊の山にあるのは珍しい。
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黃家梁家三合院廃屋 |
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赤皮崙9號民宅 |
古道をさらに2,3分ほど登ると、またさらに大きな廃棄家屋跡にでる。黃家梁家三合院古厝地と記されている。こちらは屋根は落ちているが、中には電気製品が残されていて、電気も来ていた。かなり最近までここで暮らしていたのだろう。厠と思われる場所をすぎて進むと、赤皮崙9號の住所表示の民家に出た。まだ暮らしているようだ。方向が違うようで、廃棄家屋跡に戻り道を探す。道は果たして民家跡に入るところから、右に続いている。
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棚田跡と思われるところを過ぎる |
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稜線道分岐 |
道はそのうち、谷間を行く。石積の土留壁が現れる。棚田跡のようだ。コンクリ製水槽を見て、右に人造林の間の急坂を登る。そのうち枝尾根にとりつき、11時半、下内平林山の稜線道に合流する。この稜線道は、今は淡蘭古道の一部に指定されている。数年前に歩いたときに比べると、丸太で階段が造られ、随分とよくなっている。小さなピークを越え、11時48分送電鉄塔の下に出る。送電鉄塔は、稜線から突き出た形でとても良い展望台だ。過去に歩いた瑞芳,雙溪の山々が、谷を挟んで連なる。遠く宜蘭の
鶯仔嶺や鶯仔頂山まで判別できる。
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稜線の道はとてもよい |
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送電鉄塔からのパノラマ |
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鉄塔台座上のメンバー |
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下內平林山山頂の筆者 |
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急坂を下る |
展開する風景を見ていると、吹き抜ける風が冷たく感じる。登山道をさらに進み、12時下内平林山山頂(標高504m、赤皮崙)に着く。山頂で昼食をとる。12時40分、下山を始める。淡蘭古道になっている稜線道とは別に、近道となる急な坂道が開かれている。途中右に北38鄉道上の區界涼亭へと登る道を分け、12時56分北38鄉道にでる。そのすぐ先で、道しるべに従い土地公山古道に入る。この古道も淡蘭古道になっているので、よく整備されている。自然工法と称される、その地の石などを使って道を整える方法だ。13時12分、右に絹絲瀑布への道を分けさらに下る。
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土地公山古道入口 |
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土地公山古道を進む |
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土地公山古道入口はすぐ下だ |
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淡蘭古道の道しるべを見て曲がる |
13時16分、眼前が突然開け、畑の脇を土地公山5號の民家脇登山口(標高約150m)に降りる。舗装路を下っていく。13時24分、淡蘭古道の道しるべをみて三叉路を左に進む。土地公山橋を渡り、泰發炭窯遺跡を過ぎる。その先から右へ折れて歩道を行く。柑腳溪を渡る。橋からは、先ほど歩いた山や送電鉄塔が高い。階段を登り威惠廟へ上がる。13時47分、威惠廟すぐ下の長源バス停に着く。これで歩きは終わりだ。14時5分発の781番バスで雙溪駅へ戻り、14時半過ぎの区間電車で帰京した。
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威惠廟 |
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781バスで帰途につく |
距離6.1km、休憩込みで約4時間、登坂527m、下降458mであった。コース定数15で、楽なハイキングである。道の状態も整備されて間もなく、問題ない。アクセスがちょと遠いが、昔炭鉱で栄えた柑腳を訪れ、
近く古道や炭鉱跡を巡って歩くのも良いかもしれない。
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満開の山香圓(ショウベンノキ) |
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