|
流民窩山山頂 |
台北から南に約数十キロの新竹縣には、標高3000m台の山がある一方、海にかけて低い山々が展開する。筆者は新竹縣東側の高い山々は県内最高峰
大霸尖山などを含め歩いているが、西側の低い山はほとんどなかった。今回歩いた場所は、第三高速道路の關西インターチェンジと芎林竹東インターチェンジとの区間西側に連なる低山である。中部以南の山々を訪れるときにそのわきを頻繁に通り過ぎた場所でもある。
|
東側關西から西へ進み芎林へ下る |
今回の山行は、雨がちな台北を離れ割合と天気がよい南の山を選定する際、一般交通機関で往復できることを条件に選んだ。苗栗や新竹であれば、朝早く出発すれば7,8時間の行動時間が取れる。今回も台北から高速道路経由バスと地元ローカルバスを利用して登山口へアクセスした。今回の目的地は、日本でいえば里山といった性格の山である。山の山腹には果樹園や菜園、或いは樹木苗床といった利用がされている。当然そこまでの道はある。しかし地元民は稜線をつないで歩くようなことはしない。したがって、稜線を行く登山道は、あまり良くない。幸いに、新竹のボランティア登山者が道の整備をしてくれたので、一部は草で覆われたところもあったが、道筋はおおむねはっきりしていた。
|
流民窩山山頂のメンバー |
----------------------------
|
台北轉運站四階の竹東行バス乗り場 |
台北バスターミナル(台北轉運站)を朝7時10分発國光客運1820系統バスで出発する。このバスは竹東行だが、途中關西インターチェンジでおり、關西の街まで往復する(通過する便もあるので注意)。台北バスターミナルを出たバスは、途中西門や板橋のバス停に立ち寄り、数名のメンバーが乗車する。8時45分、インターチェンジを降りてすぐのバス停で下車すると、メンバーは全員で14名となっていた。
|
乗り換えた 5619番バスは旱圳バス停で下車 |
|
鳳山溪親水步道入口 |
通りを挟んだバス停の対面にある店子岡バス停で、新竹客運5619番新竹行バスを待つ。待つこと十数分でバスはやってきた。9時7分、約4キロほど先の旱圳バス停で下車する。道路を渡り、鳳山溪親水步道を行く。川の堤防上の道で、初めは草木が川との間を塞ぐが、少し進むとなくなり展望できる。川の下流向こうには、これから登る樟樹窩山が望める。天気予報では下り坂だが、空はまだ青い。
|
堤防上の歩道から樟樹窩山を望む |
|
大根フィギアが出迎え |
10分ほどの堤防歩きが終り、左に曲がって橋を越す。大根をフィギアとした上林社區の歓迎表示を見て右に曲がり、坂道を登る。登り切って右に曲がり、香緣土雞城看板のある路地入口に来る。脇には、立派な思源亭と山門がある。18世紀中国廣東惠州から移民してきた范家族は、この地に根を下ろし財を成した。ここはその末裔がこの地に祖先を祭る場所だそうだ。
|
登山口近くの山門と涼亭 |
|
香緣土雞城の脇を登山口へ登る |
|
古いマーカのある頼りない踏み跡 |
|
藪漕ぎをして登る |
9時35分路地から道を登り、香緣土雞城の建物を過ぎて左にマーカーのある登山口を見る。山道に入り間もなく、右に曲がって登る。しばらくすると、道は不鮮明になる。踏み跡らしいものがあるので、強引に登っていくと古いマーカーリボンがある。樹木や草が邪魔をする厄介な上りを行き、10時3分樟樹窩山山頂(標高231m)に出る。山頂へは別のはっきりした道が昇ってきている。地図上では登山口から二本の道があるが、手入れされた道は別のほうで、我々がやってきたのは未整備の道だったようだ。山頂には、少し崩れた昭和の文字が判読できるコンクリ製基石がある。
|
樟樹窩山山頂のメンバー |
|
下橫坑山山頂 |
|
新竹州水利基石 |
全員が山頂に登り、10時22分稜線の縦走を始める。幸い踏み跡はしっかりしている。樹木の間の稜線道を進むこと3,4分でまた別の山頂に出る。下橫坑山(標高237m)という表示だ。ここには新竹州水利と刻まれた基石がある。新竹州とは日本統治時代の行政区画である。その範囲は現在の新竹県だけでなく、桃園や苗栗も含む広い範囲である。
|
稜線上の踏み跡は明瞭だ |
|
厄介な倒木 |
樹木の間の稜線道は小さな上り下りを追って少しづつ高度を上げていく。御多分にもれず所々で倒木が道を塞ぐ。288峰や300峰などのコブを越え、11時10分三叉峰(標高298m)につく。少し開けているので休憩をとる。ここは、北側から十四股山や南和山を越えてくる稜線道との合流点である。
|
人工石積み |
|
290峰 |
|
三叉峰 |
|
十四股山へ下る |
主稜線を流民窩山へ向けて進む前に、十四股山へ往復する。道はすぐに急な坂で下り、少し登り返すと南和山(標高280m)がある。道筋は、主稜線に比べるとちょっと心細い。さらに下っていき、11時41分十四股山(標高265m)へ着く。山頂は割合と広く、ここで昼食休憩をとる。木々を通し、左側には歩いてきた樟樹窩山からの稜線、そして右にはこれから歩く稜線が望める。気温もあがり、汗ばむ。
|
十四股山への稜線道 |
|
十四股山山頂 |
|
右側が開けた、前方に流民窩山 |
|
三角点の山頂に到着、前方は三叉山 |
12時15分、往路を登り返し三叉峰へもどり、主稜線をさらに進む。歩くこと数分で、今までは両サイド樹木であったが、急に右側が開ける。農園などの上部で樹木が取り払われているからだろう。うっすら遠くの街も望める。おそらく新埔あたりだろう。コンクリ製水槽脇を通り、最後に登り返すと流民窩山山頂(標高302m)である。
|
咲き始めた山桜 |
|
山頂の筆者 |
到着して間もなく三名の登山者が別方向から登ってきた。休日であるが、主稜線縦走中今日唯一の別パーティである。開けた山頂には低い石で四角く囲まれた中に三等三角点が鎮座している。北側には樹木が少なく、見晴らしのある山頂だ。山桜がちらほら咲き始めている。山名の流民窩はちょっと変わった名前だ。過去の開拓時代に関係があるのか。窩とはねぐらの意味だが、ここ客家人の里では集落を意味するということだ。
|
山頂からやってきた方向を見る |
|
五姊妹樹 |
流民窩山が今日の最高点である。といっても、稜線上には上り下りが続き、全体としては下っているが、あまり下っているという感覚はない。五姊妹樹とあるガジュマル樹を通り過ぎ、13時8分炭焼窯跡を見る。稜線上には炭の材料である相思樹が多い。石を積み上げた低い壁が稜線上に長く続く。境界の意味だろうか。13時18分、觀景點と表示がある場所にくる。少し開けているが、樹木が伸びてしまったためだろう、それほどの景観はない。
|
炭焼窯跡 |
|
觀景點 |
|
所々竹林を抜けていく |
|
七兄弟樹 |
七兄弟樹と名のついたガジュマル樹をみて進み、13時43分廃棄果樹園脇に出る。少し下って舗装路に降りる。十字鞍部という表示がある。休憩をとる。近くのミカン畑は放置状態である。人手不足なのか、実っているミカンは収穫されていない。
|
十字鞍部 |
|
草に覆われた踏み跡 |
ちょっと長めの20分ほどの休憩後、稜線をさらに進む。舗装路はすぐに終わってまた土の道になる。まだ新しい新竹社區大學樂山隊という表示のマーカーリボンが続く。空模様は雲が低くなってきている。14時15分水坑磨山(標高253m)の表示を過ぎる。道は幅が広くなり、その少し先でまた右に細い山道に入る。下ってトタン屋根が右に見えると、左に折れて急坂を登る。ロープも取り付けられている。登りきると竹林の間に狭い水坑廣山山頂(標高235m)を見る。
|
水坑磨山 |
|
竹林の中の水坑廣山山頂 |
|
竹やぶに乗り捨てられた車 |
主稜線の縦走は終わり、下って舗装された廃棄産業道路にでる。途中竹林の中に、まだ新しいVWの高級車が乗り捨ててある。ナンバープレートは取り外されているので、何か犯罪に関係するのでは、メンバーはいう。さらに下って、14時42分舗装路に出る。
|
舗装路に降りる |
|
舗装路を進む |
|
吠えかかってきた犬は飼主に叱られつながれてしまった |
舗装路は山の上を進んでいく。周囲は果樹園のようで、収穫のトラクターとすれ違う。文林古道方向の道を取り、車進入防止のための鎖が渡してある道をとる。少し登って15時3分、古道上の紙寮窩六賢涼亭に着き休憩をとる。ここから先は文林古道だ。過去に地元民が歩いた道だがその後廃棄され、またハイキングルートとして地元の努力により復活した。道の状態もよく、道標もしっかりしている。ハイカーも多い。
|
鎖の架かる道に入る |
|
文林古道紙寮窩六賢涼亭 |
休憩後涼亭脇の道を進み登る。竹林を進み、木製階段を登る。さらに登りきるとベンチがある紙寮窩山山頂だ。木製階段を下り、少し平らに進み分岐を左にとって登ると今日最後の山頂となる高梘頭山(標高175m)だ。山頂から下り、15時46分古道入口の案内板を見る。急な舗装路を下り、住宅地の脇を鄧雨賢公園へ下る。公園から出て街中の道路を進み、高速道路下をくぐって16時20分、芎林バス停に着いた。ほどなく台北行の1820番バスがやってきた。
|
ベンチの紙寮窩山山頂 |
|
分岐のすぐ上が高梘頭山山頂だ |
|
高梘頭山山頂 |
|
文林古道入口 |
|
鄧雨賢公園 |
-----------------------
|
1820バスに間に合った |
強力な寒波が訪れる直前の山行で、後半は雲がだいぶ低くなってきていた。帰路のバスに乗って間もなく、車窓から見る午前歩いた付近の道路はすでに濡れていた。幸運だった。休憩込み7時間10分、12.6㎞、総上昇330m、下降360m、コース定数21である。
0 件のコメント:
コメントを投稿