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天母古道入口(出発点) |
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霧の中の七星山主峰頂上(到着点) |
前回、陽明山山系の山は今後非正規ルートの山道から登ると言いながら、今回は正規黄金ルートでの登山である。それには、理由がある。来月台湾の最高峰玉山への登山予定があり、登山メンバーの一人であるHさんと一緒に訓練の目的で、できるだけ大きな標高差で身近に実行できる山行として登った。玉山の登山口塔塔加は標高2610m、玉山主峰は3952mその差約1340m、歩行距離は往復で約21kmある。一方、出発点の台北市天母は標高約30m、台北市の最高峰である七星山主峰は1120m、その差約1100mだ。実際の玉山では、高山のため空気が薄いし、登山道の状態も違う。そのため、単純に天母から七星山を問題なく登ったから、本番でも問題ないとは言えない。ただ、この登山を通じて自分の体力と先月の肉離れが完治していることを、確認できた。玉山登山は、入山許可が必要で、その要件として一定の時間内に完歩できることがある。もし、体力が不足で時間内に通過点まで達せなければ登頂ができない。自分の現状がどの程度か、事前に認識していることが重要だ。
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天母から七星山頂上へ歩く |
天母から紗帽山の麓まで、水道管にそって登っていく道が天母古道である。台北市の親山歩道になっている。標高差310m、距離は約3kmある。道は、文化大学キャンパスの下あたりで終了する。そのあと沢を越えて紗帽路を陽明山の前山公園へ歩き、バスターミナルから始まる人車分離道を苗圃登山口へ、そこから登山道を七星山主峰と東峰の鞍部を経由して主峰まで登った。陽明山バスターミナルは標高約420mなので、七星山主峰までは700mの標高差だ。下りは、東峰経由で冷水坑へ下り、そこから菁山人車分道を中山樓まで歩いた。下り部分の標高差は登りより少ないが、紅15番バスでMRT劍潭駅へ帰った。天気が下り坂で、七星山は霧の中、雨も降り出した。Hさんは初めての登頂なので、景色がほとんど見れずじまいで、残念だったかもしれない。
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水道管沿いにゆく天母(水管)古道 |
朝7時半にMRT石牌駅でHさんと落ち合う。紅19番バスで十数分、8時過ぎ天母バス停に着いた。天母へ来るのも久しぶりのことだ。ロータリーの先に更に続く中山北路七段を登り、天母古道の登山口に着く。1932年に水道水として紗帽山山腹に湧きだす水を送るため、送水管敷設が完成した。80年前のことだ。その水道管沿いの道が、整備され親山歩道として歩かれている。本来の天母古道は別の道ということだが、一般にはこの道が天母古道(水管路)とされている。道は石段の登りがずっと続く。数分で人家の脇を歩く部分が終わり、樹木の中を登るようになる。歩く人が多い。山登りの装いをした人、軽装の近隣住人など様々な人が、自分のペースで上り下りしている。
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平な歩道部分、猿についての看板 |
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水源地の入口 |
登山口から十数分で右に下竹林歩道を分岐する。更に登って行くと、左に太くて黒い水道管が道に並行して走っている。水管路と呼ばれる由縁だ。水管が見えなくなるとあずま屋が左にある。ここが石段登りの終点だ。下東勢産業道路への道が右に分岐する。8時32分、中山北路の登山口から20分の登りだ。ここから、道は左に小砂利の平な道が続いていく。木製の柵がずっと続く。ここはかなり高い山腹をトラバースしていく部分だ。猿に注意という看板があるが、全く出会わなかった。木々の切れ目に大屯山が見える。左に下る道を分岐するところに親山歩道のスタンプ台がある。さらに平な道をすすむと、正面に鉄製ドアがある。湧き水がある水源第三浄水場だ。ここは一般には開放されていないが、一年に一度オープンされるようだ。
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天母古道入口、背後の山は紗帽山 |
水源の入口前で右におれて石段を少し登ると、天母親山歩道の終点だ。天母古道歩きは約50分であった。次には陽明山の前山公園を目指すが、先に間違って右に行ってしまった。もし、天母親山歩道だけであったら仰徳大道に出てバスで帰るのでそれでいいのだが。気がついて愛富三街を戻り、登山口の前を通りすぎて磺溪內溪の沢に下る。橋をわたって登り返すと、紗帽路にでる。橋から沢沿いに進み、紗帽路に合流する山道があるが、現在工事中で通行止めだ。紗帽路をゆくと、硫黄の臭いに気づく。20分ほどで陽明山バスターミナルに着いた。ターミナルの脇を通り過ぎ、人車分道の入口トンネルに入り階段をのぼる。出口近くで休憩する。天母から1時間半ほど歩いてきた。ここで登り行程の約三分の一だ。
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ビジターセンター近くから見る七星山 |
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苗圃登山口 |
休んでいると、大勢の高齢者団体が人車分道を登っていく。陽明山は老若男女、みな身近で楽しめる観光地だ。それぞれの体力や興味に合わせ、ルートを選べる。腹ごしらえを終え、次の登りをはじめる。先ほどの団体を追越し陽明山ビジターセンターへ登る。ビジターセンターへ来るの何度目かだが、今日はセンター内に入り展示物を見た。自然や歴史の紹介があり、陽明山についての認識を新たにする。昔の写真展示などもあり、興味深い。ビジターセンターから見る七星山は、上半分が雲の中だ。苗圃登山口から右に折れ、登りが始まる。ところどころ急な部分も現れるが、よく整備されている石段の道は歩きやすい。9時50分、冷水坑への道の分岐に着く。左に折れてさらに数分登り、七星公園への道を分岐する。あずま屋やベンチも設けられており、休憩する。標高は約820m、七星山主峰まであと300m、残りは約三分の一だ。
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急な上り坂 |
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霧の中の杉と登山道 |
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霧の中を登る、頂上まであと少しだ |
分岐から七星山への道は、急な坂道になる。ここは
去年五月以来だ。最近草刈りがされたようで、道には切られた葉っぱが残っている。雨がふりだした。幸いにまだ樹木の下なので、雨粒はそれほど落ちてこない。ジグザグに急坂が登っていく。駆け足で下りてくる身軽な登山者もいる。トレールランの訓練なのか。霧が濃くなり、杉の大樹がその中にぼんやり見える。樹木が切れ、草薮になる前で雨具をつけた。道がゆるやかになると、稜線上の道に合流する。左に折れて40m上の主峰を目指す。最後のひと踏ん張りだ。11時40分、主峰についた。天母から約3時間半の登りだった。休憩などを含めない実動時間だと、1100mの高度差を3時間でカバーしたことになる。登りの速度としてはそこそこだろう。
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霧が晴れたつかの間の景観、七星山南峰と背後の山、左は纱帽山、右は大屯山(クリックで拡大) |
頂上で休憩していると、突然南側のガスが途切れ、七星山南峰、その向こうに紗帽山、右側には大屯山の一部、遠くには観音山も見える。急いでつかの間の景観写真をとる。数分でまた雨がふりだし、すべてが霧のかなたに消えた。今回で五回目の七星山だが、展望が得られたのは二回だけだ。雨脚も少し強くなってきた。鞍部に一旦下り、東峰へ登り返す。これが今日最後の登りだ。ここもガスの中、そのまま通り過ぎ下り始める。途中、数名の登山者を追越し、約30分で夢幻湖への分岐に着いた。右に折れて進むと展望台があるが、何も見えないので通り過ぎる。このあたりの石段は表面がフラットで草刈りの葉が載っているので、滑りやすい。急な坂を下り、12時50分中山樓への分岐についた。直進すれば冷水坑のビジターセンターだ。霧のなか下方から車や人の話し声が聞こえてくる。疲れていれば、冷水坑からバスで下ることも考えていたが、HさんもOKなのでそのまま歩くことにする。
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菁山路人車分道上の分岐点 |
右に折れて、菁山路人車分道を進む。陽明山は、人車分道が多く存在する。長いのは5.2kmの
陽金公路に沿った人車分道だ。中山樓への人車分道は全長4km、陽金公路の人車分道と比べると、歩いている人が多いのか石畳はそれほど苔に覆われていない。一部は最近入れ替えられたのか、全く苔のない部分もある。雨が降っているが、森の中なので雨具を脱ぐ。右に苗圃登山道を分岐する。雨天の森は、薄暗い。根が岩をしっかり囲っている木(樹包石)が道端にある。そのすぐ先には木製の立派な橋が掛かっている。このあたりは、本来並行する菁山路101巷舗装路から結構奥に入っている。車両の音は聞こえない。
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一串紅の咲く道 |
そのうち左に下って行くようになり、ポッカリ菁山路101巷にでた。舗装路を下ると右に菁山自然センターがある。その対面から人車分道が始まる。このセクションは小砂利の幅の広い道だ。入口には歩道なので車両進入禁止となっている。赤い一串紅が道の両脇に茂っている。展望台が道わきに設けられている。雨は降ったりやんだりだが、あづま屋があるのでここで休憩する。霧がかかっているので全容は見えないが、対面に竹篙山がある。眼下の谷は絹絲瀑布の山道が通っている。石段が現れると舗装路が現れる。左に絹絲瀑布歩道の入口がある。ここで右に新園街が分岐するが、人車分道も沿って右に折れる。この部分は、車道わきの側道と行った感じで人車分道の意味があまりない。雨に濡れた石畳はツルツルで、交通量の少ない車道を歩いたほうが滑らない。
菁山遊憩区の正門前を過ぎると、右に人車分道は下っていく。舗装路が遠くを回って高度を下げるが、そのショートカットとなる。ジグザグ道を下りきり、平な道をしばし進む。右に谷を挟んで山が見える。チラッと七星山の頂上が雲のなかから覗いた。また、下り道が現れ進むと、左に展望台がある休憩所についた。展望台の周囲は樹木で、何の目的でこの展望台が造られたのだろうか。木製の階段をくだると新園街に合流し、そのあとはずっと道路側道のような人車分道を下っていく。ここは今年
五月に七星山を登った後、108番バスで下ったことを覚えている。14時20分、中山樓の正門に着いた。人車分道は1時間半で下ってきたことになる。近くのバス停で待ち、まもなくやって来た紅15番バスに劍潭駅まで乗った。
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新園街から見る傻帽山、あと僅かで今日の行程も終わりだ |
今回の訓練登山は、行程16.2km、休憩を含む所要時間6時間20分だ。GPSの登攀高度累計は1432mとなっている。歩行距離は、玉山と比べると数キロ少なく、まだ本番との差はある。ただし、これだけの高度差と距離を歩くとどんなものなのか、実際に体験したことは本番で役に立つと思う。陽明山の正規登山道は、200m毎に路程があり、高度もわかるので訓練として歩くのには励みになる。天候が良くなかったが、それも訓練としてはプラスなのかもしれない。
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高度プロフィル、単純な単一峰登山 |