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2012-09-23

2012年9月22日 朝天洞枝尾根から皇帝殿山を登る

西峰登山道から見る皇帝殿山連峰、右の尾根が登りの朝天洞枝尾根
石碇の皇帝殿山は、岩が露出した尾根が続く、スリルある三大岩稜山の一つである。もし、今日のような足場や手すりが無ければ、かなり危険な道だが、主要ルートはしっかり整備されているので、台北からアクセスも便利で人気がある。子供と登りに来る人もいる。友人Wさんの希望もあり、皇帝殿山を一緒に登ってきた。休日なので登山客も多く、難所は対向方向の人たちとのすれ違いの時待つこともあった。朝方はすこし曇っていたが、そのうち晴れて快適な登山ができた。

回遊式に登山した反時計周りのルート
今回は三度目の皇帝殿山登山になる。主稜線の部分は前回と同じだが、登りに小粗坑の登山口から朝天洞のある枝尾根を登った。この尾根道は、主要ルートとは対照的に、登山クラブメンバーが道標を残しているような、踏み跡的ルートだ。実際、主稜線へは石段の道が谷の中並行している。尾根上に深い朝天洞があるこの枝尾根の道は、小粗坑から東峰への石段道が始まってまもなく、右にある階段から始まる。尾根上に取り付き朝天洞を過ぎたあと、途中右に華梵大學のすぐ上にある崩山大崙への道を分け、登りつめると蝙蝠洞への分岐を過ぎて、主稜線のほぼ下で小粗坑からの石段道と合流する。東峰への主稜線道を往復、その後折り返して西峰へ縦走したあと、湳窟山登山道を石碇へ下った。

106乙公路、左側に登山口への道が分岐する、高架橋は第5号高速道路
小粗坑登山口山門
石碇への666番バスは、さらに奥の烏塗窟まで行く便は多いが、小粗坑登山口のある皇帝殿バス停までの便は少ない。MRT木柵駅バス停でWさんと落ち合い6時47分に、MRT景美駅6時30分発の烏塗窟行バスに乗車する。時間が早いのか、登山客はあまり多くない。7時10分過ぎに石碇バス停で下車した。支度を済ませ106乙公路を小粗坑登山口に向かって歩く。石碇老街の近くを通り過ぎるが、時間が早いのでまだ静かだ。公路は登って行くと二車線の広い道になるが、交通量はそれほど多くない。時々オートバイや自転車が通り過ぎていく。谷あいの公路を歩くこと二十数分、小粗坑登山口の山門に着く。道の右側に、第五号高速道路の高架橋がとても高い。

東峰登山口、ここから石段の道が始まる
踏み跡の山道を尾根へ登る
山門をくぐり山に向かって歩き始める。道の右脇に石で造られている「皇帝殿風景區小粗坑登山口」の標識を過ぎると、舗装路は二本に別れる。地図を確認するといずれの道を取っても、あとで合流するようで、ここは左の道をゆく。放し飼い鶏の囲いや人家をすぎていく。先ほど別れた道が合流し、右に駐車場を見る。勾配がきつくなり、ジグザグに登って行くと、8時少し過ぎに石段の登山道入口についた。ここは標高約270m、石碇から約50分の道のりだ。石段を登ってまもなく、右に苔の生えた小さな階段がある。ここが朝天洞への道の入口だ。この道は地方行政が整備している山道ではない。踏み跡のような道が進む。さしあたりCクラス登山道といったところ。登って行くと、倒木がある。これをくぐって行くと踏み跡が細くなってしまった。標識リボンも見当たらない。道を戻って探ると、倒木の上の方にリボンがある。木が倒れて、このあたりの踏跡がわかりくくなってしまったようだ。

石段の入口から登ること二十分弱、道は尾根に取り付く。もともと木に打ち付けてあった、詩の紙が地面に落ちている。ここからは下草が少なくなるが、それまで草深い中を来たので念のために、ズボンの裾を上げて見ると、果たして蛭が一匹血を吸っていた。尾根道を更に十分ぐらい登ると、左側にロープで囲われている一角がある。これが朝天洞だ。どれだけの深さかわからないが、直径1mぐらいの穴がポッカリ口を開ている。蝙蝠洞への分岐がある枝尾根の最上部の約中間地点だ。歩き始めて約1時間半なので、ここで休憩する。

朝天洞
枝尾根ピーク部、蝙蝠洞へ分岐する
尾根道は下草も少なく、歩きやすい。朝天洞から20分ほどで右に崩山大崙への道を分ける。この道は山腹を急な坂で下っていく。尾根道はかなり狭い部分も現れる。ところどころ緑の苔で覆われた岩も現れる。補助ロープを使って登る。一度下り、登り返すと崩山大崙分岐からさらに10分で、蝙蝠洞への道を分岐する。ここは枝尾根の最上部になる。左に道をとり下がっていくと、山腹を蝙蝠洞へ行く道との分岐に着く。ここも左に取って進むと、急な土の坂が現れる。とても滑りやすい。下りきると人声がきこえてきた。小粗坑からの石段道がすぐ近くだ。ひょっこり石段の道が現れる。そこで休んでいたハイカーは、我々が来た道を知らないようで、石段の道にどこからか突然現れ、不思議に思っているようだ。補助ロープを使って登り、9時半少し前東峰へ続く主稜線も道に出た。小粗坑登山口から、1時間半の枝尾根歩きである。

東峰から西方向を見る、左のピークが朝天洞枝尾根のピーク、右は天王峰
今年六月に下ってきた東峰への道を登る。この道は、登ってきた朝天洞枝尾根に比べれば、ずっと状態がよいBクラスの道だ。急な岩場を補助ロープなどを使い、しっかり登る。約10分ほどの登りで、9時38分、東峰(標高593m)についた。前回来訪時からの間に付けられたのだろう、東峰の大岩に藍天隊の標識がある。上りの途中は、木々の間から見える隣の山はぼんやりしていたが、天気が晴れてきて、六月の時ほどではないが周囲の山々が望める。石覇尖(皇帝殿山北峰)やその奥の峰頭尖が見える。七月にWさんも一緒に登った、獅公髻尾山から伏獅山の尾根も見える。南方向を見れば、登ってきた朝天洞枝尾根の最高点ピークが判別できる。食事をとり休憩する。

大岩の下をくぐって進む
天王峰への岩尾根登り
10時に東峰を出発、先ほど登ってきた道を下る。主稜線は登山客が多い。登ってくる登山チームとすれ違う。分岐をすぎ、天王峰に向けて道を進む。二番目の分岐で、左に道を分けたあと、また登り下りを繰り返す。天王峰の前に一つピークを越す。ここは岩の露出した頂上だが、その先は大岩の下りになる。十数名の登山チームが登ってくる。行き違いはできないので、ここで通り過ぎるまで数分待つ。下りきり少し行くと、三番目の分岐で左に石畳の下り道を分岐する。露出した岩に刻まれた階段を登る。先ほど待つ間に登山者が登っているのが見えた階段だ。登り切ると天王峰(標高562m)の頂上だ。時刻は10時40分、ここも藍天隊の新しい標識が岩につけてある。これが無いと、気づかずに通りすぎてしまいそうな頂上である。周囲に木があるが、東側は展望があり東峰が見える。ここで三度目の休憩をする。

下りまた左に道を分け、その先から皇帝殿山主稜線のハイライト、岩尾根がずっと続く。ステンレス製棒とロープを使った手すりが無い、裸岩が続く。一度森に入り、次の岩尾根セクションになる。ここで、また対向のハイカーを待つ。このグループには、まだ幼稚園児と思える子供もいる。楽しそうに歩いている。数分待った後、尾根道を進む。11時15分に、右下に仏光寺が見える、最後の裸岩のピークに着いた。ここからは西峰が近くに見える。登山道途中のスレンレス製梯子を登っている、登山者が見える。

山腹に建つ仏光寺と中央坑の谷あい
西峰への最後の梯子を登る
大岩を補助ロープを使って下りきり、左に駐車場への道、そのすぐ先で右に佛光寺への道を分け、西峰への道を進む。道端の緑色の大きな道標看板は、「西、東峰」と矢印を示しているが、西峰は間違っている。一番目のスレンレス梯子を登ると、西峰が大分近くなった。その先に道端に少し土や砂利で盛り上がっている場所がある。二番目の梯子のあたりから人声が聞こえる。どうやら山慣れていないハイカーのようで、下りるのに苦労している様子だ。このまま行っても、梯子の下でかなりの時間待たなければならない。そこで、ここで休憩することにした。景観は無いが木陰なのでよしとする。時々吹いてくる微風が涼しい。

十分ほど休憩した頃、どうやら全員梯子をおり切った様子なので、出発する。梯子の下に着くと、六人のうちの最後の一人がまだ降りている。この梯子は三つある登りでの梯子のうち一番高い。途中梯子が岩に張り付くような箇所がいくつあり、足を置きにくく特に下りではそこで戸惑うのだろう。三番目の梯子を登りきり、最後の急な坂を登ると西峰(標高579m)だ。狭い西峰の頂上は、写真を写した後休まず下ることにする。下りはステンレス梯子が2箇所ある。二つ目の梯子を下りきったところで、登りの数名の若者グループとすれ違う。主稜線ルートは、実に人気ルートだ。土の道が終わり石段が現れると、縦走コースは終わりだ。ここの分岐は左にとり、石碇へ下る。昨年初めて皇帝殿山に来たときは、この道を登ってきた。

大岩の脇をくだる
この山道は湳窟山登山道と名付けられているが、湳窟山へは行かない。石碇から登り、西峰への分岐を分けた後、石段のこの登山道は下って、串穴湖へ通じる産業道路の登山口に通じる。湳窟山は、そこから更に産業道路を左に取って、別の土の山道を登ってはじめて行ける。むしろ、皇帝山西峰登山道としたほうが、誤解が少ないのではないだろうか。石段の道は、かなり急に高度を下げていく。数カ所、道脇にベンチが設けられている。途中、石段が崩れている部分がある。下り部分三分の二ぐらい下ると、あづま屋に着く。時刻は12時40分。犬が三、四匹道に寝そべっている。石は冷たくて気持ちがいいのだろう。近づくと吠えてくる。あずま屋の入口の脇に、餌が置いてある。土地の人が養っているようだ。ここでしばらく休憩する。Wさんは一ヶ月ぶりの登山のようで、少し疲れ気味だ。


あすま屋の前で昼寝する犬
二十分ほど休憩した後、最後の下りを行く。登山口を過ぎ、西峰登山口の山門をくぐると、そこは石碇老街だ。時間は13時13分、まだ早いので老街を見ていくことにする。橋を渡り老街に入る。ここは岩璧の脇に造られた街である。百年石頭などを見たあと、名物の豆腐をビールと共に食べる。山登りの後の、ビールは特にうまい。14時20分、皇帝殿バス停から下りてきた666番バスで木柵へ帰った。

今回の行程は、距離10km、休憩込みの所要時間6時間6分、登攀累計高度は828mだった。三度目の皇帝殿山だったが、登りの部分は初めてである。この山はよく整備されている山道以外にも登山道が結構ある。次回行く事があれば、そうした道から登ってみたい。

高度プロファイル

2012-09-20

2012年9月19日 天母古道から七星山を登る - 玉山登山の事前訓練

天母古道入口(出発点)
霧の中の七星山主峰頂上(到着点)
前回、陽明山山系の山は今後非正規ルートの山道から登ると言いながら、今回は正規黄金ルートでの登山である。それには、理由がある。来月台湾の最高峰玉山への登山予定があり、登山メンバーの一人であるHさんと一緒に訓練の目的で、できるだけ大きな標高差で身近に実行できる山行として登った。玉山の登山口塔塔加は標高2610m、玉山主峰は3952mその差約1340m、歩行距離は往復で約21kmある。一方、出発点の台北市天母は標高約30m、台北市の最高峰である七星山主峰は1120m、その差約1100mだ。実際の玉山では、高山のため空気が薄いし、登山道の状態も違う。そのため、単純に天母から七星山を問題なく登ったから、本番でも問題ないとは言えない。ただ、この登山を通じて自分の体力と先月の肉離れが完治していることを、確認できた。玉山登山は、入山許可が必要で、その要件として一定の時間内に完歩できることがある。もし、体力が不足で時間内に通過点まで達せなければ登頂ができない。自分の現状がどの程度か、事前に認識していることが重要だ。

天母から七星山頂上へ歩く
天母から紗帽山の麓まで、水道管にそって登っていく道が天母古道である。台北市の親山歩道になっている。標高差310m、距離は約3kmある。道は、文化大学キャンパスの下あたりで終了する。そのあと沢を越えて紗帽路を陽明山の前山公園へ歩き、バスターミナルから始まる人車分離道を苗圃登山口へ、そこから登山道を七星山主峰と東峰の鞍部を経由して主峰まで登った。陽明山バスターミナルは標高約420mなので、七星山主峰までは700mの標高差だ。下りは、東峰経由で冷水坑へ下り、そこから菁山人車分道を中山樓まで歩いた。下り部分の標高差は登りより少ないが、紅15番バスでMRT劍潭駅へ帰った。天気が下り坂で、七星山は霧の中、雨も降り出した。Hさんは初めての登頂なので、景色がほとんど見れずじまいで、残念だったかもしれない。

水道管沿いにゆく天母(水管)古道
朝7時半にMRT石牌駅でHさんと落ち合う。紅19番バスで十数分、8時過ぎ天母バス停に着いた。天母へ来るのも久しぶりのことだ。ロータリーの先に更に続く中山北路七段を登り、天母古道の登山口に着く。1932年に水道水として紗帽山山腹に湧きだす水を送るため、送水管敷設が完成した。80年前のことだ。その水道管沿いの道が、整備され親山歩道として歩かれている。本来の天母古道は別の道ということだが、一般にはこの道が天母古道(水管路)とされている。道は石段の登りがずっと続く。数分で人家の脇を歩く部分が終わり、樹木の中を登るようになる。歩く人が多い。山登りの装いをした人、軽装の近隣住人など様々な人が、自分のペースで上り下りしている。

平な歩道部分、猿についての看板
水源地の入口
登山口から十数分で右に下竹林歩道を分岐する。更に登って行くと、左に太くて黒い水道管が道に並行して走っている。水管路と呼ばれる由縁だ。水管が見えなくなるとあずま屋が左にある。ここが石段登りの終点だ。下東勢産業道路への道が右に分岐する。8時32分、中山北路の登山口から20分の登りだ。ここから、道は左に小砂利の平な道が続いていく。木製の柵がずっと続く。ここはかなり高い山腹をトラバースしていく部分だ。猿に注意という看板があるが、全く出会わなかった。木々の切れ目に大屯山が見える。左に下る道を分岐するところに親山歩道のスタンプ台がある。さらに平な道をすすむと、正面に鉄製ドアがある。湧き水がある水源第三浄水場だ。ここは一般には開放されていないが、一年に一度オープンされるようだ。

天母古道入口、背後の山は紗帽山
水源の入口前で右におれて石段を少し登ると、天母親山歩道の終点だ。天母古道歩きは約50分であった。次には陽明山の前山公園を目指すが、先に間違って右に行ってしまった。もし、天母親山歩道だけであったら仰徳大道に出てバスで帰るのでそれでいいのだが。気がついて愛富三街を戻り、登山口の前を通りすぎて磺溪內溪の沢に下る。橋をわたって登り返すと、紗帽路にでる。橋から沢沿いに進み、紗帽路に合流する山道があるが、現在工事中で通行止めだ。紗帽路をゆくと、硫黄の臭いに気づく。20分ほどで陽明山バスターミナルに着いた。ターミナルの脇を通り過ぎ、人車分道の入口トンネルに入り階段をのぼる。出口近くで休憩する。天母から1時間半ほど歩いてきた。ここで登り行程の約三分の一だ。

ビジターセンター近くから見る七星山
苗圃登山口
休んでいると、大勢の高齢者団体が人車分道を登っていく。陽明山は老若男女、みな身近で楽しめる観光地だ。それぞれの体力や興味に合わせ、ルートを選べる。腹ごしらえを終え、次の登りをはじめる。先ほどの団体を追越し陽明山ビジターセンターへ登る。ビジターセンターへ来るの何度目かだが、今日はセンター内に入り展示物を見た。自然や歴史の紹介があり、陽明山についての認識を新たにする。昔の写真展示などもあり、興味深い。ビジターセンターから見る七星山は、上半分が雲の中だ。苗圃登山口から右に折れ、登りが始まる。ところどころ急な部分も現れるが、よく整備されている石段の道は歩きやすい。9時50分、冷水坑への道の分岐に着く。左に折れてさらに数分登り、七星公園への道を分岐する。あずま屋やベンチも設けられており、休憩する。標高は約820m、七星山主峰まであと300m、残りは約三分の一だ。

急な上り坂
霧の中の杉と登山道
霧の中を登る、頂上まであと少しだ
分岐から七星山への道は、急な坂道になる。ここは去年五月以来だ。最近草刈りがされたようで、道には切られた葉っぱが残っている。雨がふりだした。幸いにまだ樹木の下なので、雨粒はそれほど落ちてこない。ジグザグに急坂が登っていく。駆け足で下りてくる身軽な登山者もいる。トレールランの訓練なのか。霧が濃くなり、杉の大樹がその中にぼんやり見える。樹木が切れ、草薮になる前で雨具をつけた。道がゆるやかになると、稜線上の道に合流する。左に折れて40m上の主峰を目指す。最後のひと踏ん張りだ。11時40分、主峰についた。天母から約3時間半の登りだった。休憩などを含めない実動時間だと、1100mの高度差を3時間でカバーしたことになる。登りの速度としてはそこそこだろう。

霧が晴れたつかの間の景観、七星山南峰と背後の山、左は纱帽山、右は大屯山(クリックで拡大)
頂上で休憩していると、突然南側のガスが途切れ、七星山南峰、その向こうに紗帽山、右側には大屯山の一部、遠くには観音山も見える。急いでつかの間の景観写真をとる。数分でまた雨がふりだし、すべてが霧のかなたに消えた。今回で五回目の七星山だが、展望が得られたのは二回だけだ。雨脚も少し強くなってきた。鞍部に一旦下り、東峰へ登り返す。これが今日最後の登りだ。ここもガスの中、そのまま通り過ぎ下り始める。途中、数名の登山者を追越し、約30分で夢幻湖への分岐に着いた。右に折れて進むと展望台があるが、何も見えないので通り過ぎる。このあたりの石段は表面がフラットで草刈りの葉が載っているので、滑りやすい。急な坂を下り、12時50分中山樓への分岐についた。直進すれば冷水坑のビジターセンターだ。霧のなか下方から車や人の話し声が聞こえてくる。疲れていれば、冷水坑からバスで下ることも考えていたが、HさんもOKなのでそのまま歩くことにする。

菁山路人車分道上の分岐点
右に折れて、菁山路人車分道を進む。陽明山は、人車分道が多く存在する。長いのは5.2kmの陽金公路に沿った人車分道だ。中山樓への人車分道は全長4km、陽金公路の人車分道と比べると、歩いている人が多いのか石畳はそれほど苔に覆われていない。一部は最近入れ替えられたのか、全く苔のない部分もある。雨が降っているが、森の中なので雨具を脱ぐ。右に苗圃登山道を分岐する。雨天の森は、薄暗い。根が岩をしっかり囲っている木(樹包石)が道端にある。そのすぐ先には木製の立派な橋が掛かっている。このあたりは、本来並行する菁山路101巷舗装路から結構奥に入っている。車両の音は聞こえない。

一串紅の咲く道
そのうち左に下って行くようになり、ポッカリ菁山路101巷にでた。舗装路を下ると右に菁山自然センターがある。その対面から人車分道が始まる。このセクションは小砂利の幅の広い道だ。入口には歩道なので車両進入禁止となっている。赤い一串紅が道の両脇に茂っている。展望台が道わきに設けられている。雨は降ったりやんだりだが、あづま屋があるのでここで休憩する。霧がかかっているので全容は見えないが、対面に竹篙山がある。眼下の谷は絹絲瀑布の山道が通っている。石段が現れると舗装路が現れる。左に絹絲瀑布歩道の入口がある。ここで右に新園街が分岐するが、人車分道も沿って右に折れる。この部分は、車道わきの側道と行った感じで人車分道の意味があまりない。雨に濡れた石畳はツルツルで、交通量の少ない車道を歩いたほうが滑らない。

菁山遊憩区の正門前を過ぎると、右に人車分道は下っていく。舗装路が遠くを回って高度を下げるが、そのショートカットとなる。ジグザグ道を下りきり、平な道をしばし進む。右に谷を挟んで山が見える。チラッと七星山の頂上が雲のなかから覗いた。また、下り道が現れ進むと、左に展望台がある休憩所についた。展望台の周囲は樹木で、何の目的でこの展望台が造られたのだろうか。木製の階段をくだると新園街に合流し、そのあとはずっと道路側道のような人車分道を下っていく。ここは今年五月に七星山を登った後、108番バスで下ったことを覚えている。14時20分、中山樓の正門に着いた。人車分道は1時間半で下ってきたことになる。近くのバス停で待ち、まもなくやって来た紅15番バスに劍潭駅まで乗った。

新園街から見る傻帽山、あと僅かで今日の行程も終わりだ
今回の訓練登山は、行程16.2km、休憩を含む所要時間6時間20分だ。GPSの登攀高度累計は1432mとなっている。歩行距離は、玉山と比べると数キロ少なく、まだ本番との差はある。ただし、これだけの高度差と距離を歩くとどんなものなのか、実際に体験したことは本番で役に立つと思う。陽明山の正規登山道は、200m毎に路程があり、高度もわかるので訓練として歩くのには励みになる。天候が良くなかったが、それも訓練としてはプラスなのかもしれない。

高度プロフィル、単純な単一峰登山

2012-09-18

2012年9月17日 陽明山荷蘭(オランダ)古道をへて草原の山々へ

北五指山近くの草原上の池、七星山擎天崗方向を望む
久しぶりに陽明山歩きをしてきた。以前は、陽明山国家公園の正規登山道を歩いたが、かなりの部分をカバーしたので、今後はそれ以外の山道歩きをしていくつもりであった。その最初として、興味をそそる名前の荷蘭古道と下りに内寮古道を選んで歩いた。こうした登山道は、もちろん公園管理局の管轄ではなく、道の整備度や道標など当然正規登山道の水準には及ばない。天候が悪かったり、山歩き経験が少ない場合など、おすすめできる道ではない。ただ、そのかわり静かで思いがけない景観に巡り合える。


内寮古道の土地公祠、古道の特徴だ
なぜ「荷蘭」古道なのか、その来歴は次のように言われている。台灣は、十七世紀半ば鄭成功がオランダ軍を滅ぼし、明朝政権が中国本土の領土回復基地として台湾の統治を開始する前、十七世紀初頭スペインとオランダがやって来て植民地統治を開始していた。オランダは台南を中心とした南部、スペインは淡水や宜蘭など北部を中心に支配を拡大していた。全世界での勢力拡大を目指すオランダは、1642年スペイン軍を打ち破り、単独の台湾植民支配を確立した。荷蘭古道は、そのときオランダ軍が進軍に使用した道だというのだ。この説に対し、清朝統治下、この付近は湖南省出身の兵士が守備をしていた、台湾語で湖南は河南に音が近く、それが古道の命名のいきさつで更に歴史的な尾ひれが付き、音が近い荷蘭になってしまった、というものもある。


右下の內雙溪から荷蘭古道を登り、西側の内寮古道を下る。
荷蘭古道は、台北市士林区內雙溪の至善路の奥まったところから始まり、高頂山の尾根を登って草原に出る。草原の道を進むと左に北五指山を分岐し、擎天崗から風櫃嘴へ連なる陽明山公園の登山道頂山石梯歩道のほぼ中間地点、杏林山の近くで合流する。内寮古道は、平等里の内寮から竹篙山の麓を谷沿いに擎天崗へと続く道である。途中土地公の祠や、石積みの廃屋もあり、昔から歩かれている古道の趣がある。今回のルートは、登りに荷蘭古道を取り、尾根道を石梯嶺を越えて擎天崗へ歩いた。その後環形步道を竹篙山へ向かい、竹篙山歩道の分岐からまもなく左に別れる道を竹篙山南峰へ、そこから内寮古道を経て内寮へ下った。


バス停から舗装路を歩く
MRT劍潭駅から至善路を內雙溪の坪頂古圳步道口まで行く小18番バスがある。このバスは7時半に出発する便があるので、7時前に自宅を出発した。劍潭駅のバス停では、陽明山へ行く紅5番バスは長い行列ができているが、小18番バスは数名の乗客だけだ。途中ラッシュアワーの影響を受けるが、至善路に入ると車は少なく、8時10分過ぎに終点の歩道口駅に着いた。昨日まで三日間、雨や曇りの天気だったが、今日は晴れに恵まれた。ただ、吹いてくる風は涼しい秋の風だ。今年最後のツクツクボウシが鳴いている。支度を済ませ、8時20分に出発する。


萬溪產業道路から見る五指山から、大崙頭・尾山へ続く尾根筋(クリックで拡大)
風行咖啡の荷蘭古道登山口
登山口バス停から、舗装路を登っていく。途中左に大崎頭歩道が別れ山腹を登っていく。道が大きく左に曲がるところで、坪頂古圳登山道が始まる。石畳の台北市親山歩道である。すぐに田尾仔橋が現れ、平林坑溪を渡ると、石段の上りが続く。登って10分ほど、左に親山歩道が折れていく。そのまま直進し登ると、登峰圳水路脇の道になる。これを左に折れて登ると、萬溪產業道路に出る。バス停からここまで約25分であった。眼前には、大崙尾山から大崙頭山をへて、五指山へ伸びる山稜のパノラマが広がる。右の近い山は鵝尾山だ。

左に産業道路を登っていく。結構急坂だ。道が右に曲がると荷蘭古道の道標がある。風行咖啡觀光果園の登山口だ。この先に行ったところにも登山口があるそうだが、こちらが近いので左に曲り、土の登山道を行く。歩いてまもなく右から道が合流する、もう一つの登山口からのものだ。道は、なだらかな登りだ。石段や苔むした石積みの低い囲いが現れる。古道の特徴だ。沢が近づいてくる。水量はあまりないが。ここで右に直進する道は、沢沿いをゆく荷蘭古道の東線だ。大石がゴロゴロする沢を渡り、稜線をゆく西線をとる。時刻は9時10分、風行咖啡の登山口から約20分である。


苔むした石積みの屏わきを行く
山道は、ほどなく急な登りとなる。滑りやすいところには、補助ロープも渡してある。石に白ペンキで5.7kと記してある。この山道は、他のこうした類の道で多く見かける登山クラブの標識リボンが殆ど無い。聴くところによると、わざと外して行く人がいるとのこと。このペンキ路程石は、劉さんというボランティアの人が書いたものだろう。数年前にこのあたりを整備しているそうだ。登ること十数分、木々の下の広場にでた。ここは、道が四方向に続いている。すぐ左に折れる道は、下って內雙溪古道へ続くものだろう。次の左に折れる道は、道はそこそこ歩かれているようだが、どこへの道かわからない。方角からすれば內雙溪古道へ下るのだろうか。高頂山へは直進の道だ。苔が生え始めているが、ペンキで5.6kと書かれた石が、この道の脇に置かれている。他には何の道標もないので地図など事前に用意していないと、困るだろう。


四方向の道が別れる尾根上の小広場、左下にペンキの路程石
迷い防止ロープと説明板
尾根道はゆるかやな登りが続く。まだ森の中だが、木漏れ日が明るい。一箇所だけ、標識リボンが結びつけてあった。尾根道を15分歩くと、森が切れ草原の入口になる。標識が立っている。ここからは(地面をはっていく)迷い防止ロープに沿っていくと、頂山石梯歩道につながる、とある。今日は天気が良いが、霧の中だと草の上は踏み跡がはっきりせず、迷うおそれがある。そこで、この黄色いロープが設けられたわけだ。草原に出た後、しばらくゆるい登りを行く。道から少し左に外れると、三角点がある。ここが高頂山(標高787m)の頂上だ。時刻は9時48分、歩き始めて約1時間半だ。陽射しはまだ強いが、暑さを感じない。三角点の上に腰掛けて、食事休憩をする。
ロープに沿って進む
休憩後ロープに沿って進む。数分草原の道を歩く。草薮もところどころ生えている。左に草原の尾根が伸びているようだ。これを行けば北五指山へ続くはずだ。何も標識がないが、草原をそちらに進む。ところどころ土の踏み跡が現れ、正しいことを確認する。途中には牛が水浴びや飲み水に使う池がいくつかある。今日は、ここには牛は一匹もいないが。わずかの歩きで、北五指山(標高790m)に着いた。頂上といっても三角点があるのでそう言えるだけで、だだっ広い草原である。ここは高頂山よりさらに良い展望がある。台北市街もうっすらと見える。101ビルがかすかに判断できる。七星山や擎天崗、石梯嶺と杏林山が見える。その奥には磺嘴山の山容が大きい。もう少し空気が澄んでいれば最高だが。


北五指山頂上、基石がある。竹篙山と背後の七星山が見える
広がる草原、左の山は石梯嶺、右の小さい山は杏林山 、中間に遠く見えるのは磺嘴山(クリックで拡大)
やって来た道を戻る。このあたりは迷い防止ロープもなく、霧の中では困るだろう。ロープ道に戻り頂山石梯歩道へ進む。道は、草むらや草原が交互に現れる中を下っていく。石畳の頂山石梯歩道近くまで来ると、牛が一匹ずっとこちらを見ている。10時半に頂山石梯歩道に合流した。ここには牛に注意と、歩道から離れるな、という看板が立っている。標識リボンと小さな道標が脇の幹につけてある。去年5月に来たときは、台北近郊登山の日も浅く、そのまま風櫃嘴へ正規登山道を歩いた。こうした草原のあることも知らなかった。


杏林山が手前に、頂山石梯步道はもうすぐだ
荷蘭古道と石畳の山道との分岐
擎天崗へ頂山石梯歩道を進む。ここは杏林山の巻き道部分になる。進むと小草原が現れる。風の影響で幹が曲がっている杉が何本もある。視線を遠くに移せば、これから登る石梯嶺の下に草原が広がっている。下がっていくと、小さな杉林を抜けて、草原の登りが始まる。ベンチが二箇所設けられ、上側のベンチには登山客が休んでいる。ここから見ると、大尖山がぽっこり頭をのぞかせている。杏林山の右には先ほど行った北五指山が連なっている。草原が切れると潅木の中の上りとなる。登りがほぼ終わりの頃に、左側に小さな草原がある。基石があり、ベンチも設けられている。時刻は11時10分、ここで少し休憩した後、歩道を登り石梯嶺の頂上(標高865m)を過ぎる。今日の行程の最高地点だ。頂上は長細く、道がそこを越していく。七星山や擎天崗が大分近くなってきた。


石梯山への登り道の草原、左から大尖山、杏林山、北五指山
石梯嶺 から下りきり、磺嘴山歩道の分岐に着く。磺嘴山は保護地区になっているので、入山には許可が必要だ。いずれは登ってみたいものだ。少し行くと、左に道が森の中を下りていく。入口には何の道標もないが、覗きこむと枝に標識リボンが結ばれている。これを下って行くと、內雙溪古道につながる。さらに潅木の道を下りきる、草薮の中を擎天崗東峰(標高791m)へ少し登り返す。下って牛止め木の柵を過ぎると、左に環形歩道が、右に魚路古道が分岐する。右下の方からエンジンの音が聞こえる。下を覗いてみると、四名の作業員が魚路古道の草刈りをしていた。正規登山道はこうした草刈りも定期的に行われている。


路上の柵、擎天崗はもうすぐだ
石畳の環形歩道を進む。トーチカの脇を過ぎる。擎天崗の草原を行き来する観光客が見える。黄色の衣服を着た数人のグループが、何か運動をしている。コマーシャルビデオでも映しているのだろうか。道は下って行き、沢を越える。このそばから土の道が下っていく。これは內雙溪古道の入口だろう。石畳の道を登り返し、トーチカのある竹篙山への分岐を左に曲がる。環形歩道では、数名の歩行者とすれ違った。ここはやはり、人気のある観光地なのだ。竹篙山を僅かにいくと、左に道が分岐する。これが内寮古道へつながる道の入口だ。この部分は、前回来た時にも注意していた。


環形歩道と竹篙山步道の分岐、トーチカがある
内寮古道への分岐
道は下りはじめ、草むらと草原が交互に現れる。ところどころ、リボンが草に結びつけてある。数分で3.3kとペンキで書いてある石が真ん中に置かれている分岐に着いた。ここが擎天崗南峰だろう。左に行けば內雙溪古道につながる。右に取り内寮古道へ向かう。わずかで三分岐に着く、左の二本は瑪礁古道だ。右の道は急に高度を下げて涸沢に下りる。坂がゆるやかになってくると、沢音が聞こえ始めた。左に瑪礁古道からの分岐道が合流する。そのすぐ先で、番婆厝の石積み廃屋がある。かなり高い石の壁が残っている。この先で沢を越える。超えた先は二本の大木が生えている広場がある。時刻は1時10分、前の休憩から2時間ほど歩いてきたので、ここで食事をとり、休憩する。


大樹二本の広場、ここでひと休憩
最後の分岐、右の山腹道を内寮へ歩く
休憩後歩き始めると、すぐ竹篙山南峰からの道と合流する。ちょうど二人の登山者が下りてきて、先に下っていく。福徳宮の石の祠が道端に置かれている。この祠は今も拝まれている。その先で、また沢を越える。木の柵が造られている、わきには左へ瑪礁古道へつながる道が分岐する。この周辺は、多くの道が入り込んでいる。もう一度沢を越える。若い二名の登山者が登ってきた。その先で、左へ沢沿いに行く道を分岐するが、そのまま山腹を行く道を選んで下っていく。竹林の脇を行くと、下りが急になり、右に曲がった後舗装路が現れた。この舗装路を道なりに行くと、内寮についた。ちょうど14時発の小19番バスが出発するところで、運良く乗車できた。バスはかなりの高度を下って行き、朝通過した至善路を経由し、35分でMRT劍潭駅に着いた。

今日の登山行程は、距離約12km、休憩込の所要時間5時間40分である。登攀高度累計は1064mだ。登山開始(約250m)地点より終点(約500m)のほうが高い。今回の頂山石梯歩道は、来月仲間グループで訪れる予定がある。その下見としても役立った。內雙溪の周辺は、この二本以外にも多くの山道がある。いずれは、こうした道も歩いてみよう。


高度プロファイル