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2012-09-12

2012年9月12日 北投軍艦岩-丹鳳山 弘法大師碑を訪ねる

軍艦岩と左から七星山、紗帽山、文化大学の建物
先週の内湖の親山歩道に引き続き、今回も台北市北投区軍艦岩の親山歩道を選び、歩いてきた。この山並みは烏尖連峰というそうだ。このルートを選んだのは、単にまだ足の回復期で無理せずに歩くということだけでなく、軍艦岩から丹鳳山まで続く尾根道から少し入ったところに、日本の弘法大師の紀念碑があると知ったからだ。宗教とは関係なく、日本統治時代に建立された石碑がまだ健在だということに興味を引かれた。温泉郷の北投は、日本統治時代にも様々な開発がされており、こうした宗教的なものが建てられたこと自体は不思議ではない。しかし、戦後の混乱期を乗り越えて石碑が残り、更に人々により手入れや焼香がされていることは、得難いことだ。


弘法大師紀念碑
今日のルートは、MRT石牌駅から歩き、陽明大学キャンパス内にある軍艦岩登山口から登った。途中、唭哩岸山に立ち寄った後、軍艦岩へ登り、その後尾根を260峰まで、そこから西に折れて尾根道を丹鳳山まで歩いた。軍艦岩親山歩道は、260峰への前で山腹をゆく道に分岐し照明禅寺を経由していくが、そちらではなくずっと尾根道を辿った。尾根道の途中では、熱海岩場と弘法大師紀念碑に立ち寄った。丹鳳山から下り、公館路、三合街をMRT奇岩駅へ歩いた。


軍艦岩歩道は標高100~200m台の烏尖連峰をゆく、以前の軌跡も表示
下側の石牌駅から奇岩駅まで歩く(クリックで拡大)
朝七時に出発、吹いてくる風が涼しい。秋が近づいているのだろう。天気予報では、二、三日後東北風が吹きはじめ、今までの夏型気圧配置も終わるという事だ。MRTで石牌駅へ向かう。電車は、士林を過ぎると乗客が少なくなった。7時35分に石牌駅に到着、乗車は20分足らず、便利だ。駅の出口には、親山歩道の道標が複数あるが、具体的な歩道の名前が無く、示す方向も違う。地図で確認しMRT高架橋沿いの道を進む。高架橋下では、十数名の人たちが太極拳を練習している。


陽明大学キャンパス内の登山道入口
四本目の路地で右に曲り、立農街の陽明大学正門をくぐる。暫く行くと、道は登りはじめる。早朝から山歩きをしたと思われる人たちが、三々五々下りてくる。地元の人達なのだろう。右に折れる道のすぐ先に隧道がある。そのまま歩いて行くと、親山歩道の案内板や道標が現れた。8時少し前、石牌駅から約20分の道のりだ。山道は石段の立派な道だ。石段を登り切ると、右に曲がって山腹を行く。威靈頓社區への道を左に分け、また登りが始まる。登って行くと、左に唭哩岸山が見え、道標は無いがコンクリート製手すりの切れ目から土の道が下りていく。これを下ると、水平に道が左右に伸びている。威靈頓社區への道のようだ。先の分岐でこちらを歩いてくれば、登り下りをする必要がなかった。唭哩岸山への道は、少し右に行ったところから登りはじめる。草がきれて、白い砂岩の上を歩く。道なりに登って行くと、左に陽明大学のグラウンドが見える。道の両側には木製ポストがあるが、有るべきロープ手すりはない。かなり以前に造られたものなのだろう。登り切ると鉄塔が立っている唭哩岸山(標高164m)の頂上だ。


唭哩岸山
唭哩岸山頂上からのパノラマ、これから歩く稜線とその前に威靈頓社區が見える(クリックで拡大)
唭哩岸山は南側に潅木があるが、それ以外は低い草なので展望が利く。これから歩く軍艦岩から最後の丹鳳山までの烏尖連峰の山並みと、その山腹に造成されている威靈頓社區が広がっている。その奥は大屯山山塊だ。写真を写し終えた後、来た道を引き返し軍艦岩歩道へ登り返す。このあたりは、樹木も少なく天気が良いと辛い。朝もまだ早いので、幸いにそれほどの暑さではない。あづま屋を通り過ぎ、緩やかな登りを行く。前に大きな岩が見えてきた。軍艦岩だ。時刻は8時40分、MRT石牌駅を出発して1時間だ。


軍艦岩から天母、士林方向を望む
軍艦岩、船の舳先のようだ
岩の周囲は比較的ゆるやかで大きな斜面だ。白い砂岩が眩しい。最高点に立つと遮るもののない360度の展望ができる。七星山や紗帽山、文化大学のキャンパスなどが遠く高くそびえている。天母の街は朝の光線では、逆光になりもうひとつはっきりしない。その先の劍潭山大崙尾山などは霞んでいる。夜に来れば、ここは絶好な夜景展望台だ。少し道を戻り、木陰で休憩し簡単に食事をする。休んでいる間に登山者が二人やって来た。


260峰への路上のスタンプ台とあずま屋
分岐の道標までもどり、大岩の下を横切る。ここから見ると、まさに軍艦の舳先の感じだ。道は軍艦岩までのタイル張りの道から土の道に変わる。少し下り、小道を分岐した後、今回行程の最高点260峰まで、標高差100mぐらいのゆっくりとした登りが続く。道はあづま屋とスタンプ台の脇を通り、森の中を進む。ここまで来ると、深山の趣がある。軍艦岩から10分ほどで、親山歩道の道標は左へ照明禅寺へ続く道を指しているが、そのまま直進し260峰へ登る。わずかの登りで260峰へ着いた。頂上には大きな柱が立っている。そのまま進めば墓地の上の道が磺溪山へ続く。周囲は樹木が茂っているので、残念ながら展望はない。


260峰頂上
森の中を行く尾根道
いままで北方向に歩いてきたが、ここからは西方向に進む。尾根上の道は、しっかり歩かれている。下り始めは、潅木もまばらな日が当たる道だが、そのうち森の木陰の道となる。ところどころ、石や木材の階段を下る。260峰から約20分ほどで、通信用鉄塔の下に着いた。道が右にわかれている。道標はないが、熱海岩場へ続く道だ。この道を進むと登山クラブのリボンが沢山樹の枝に結ばれている。その先へ進むと、岩場に出た。ここからは、北投の温泉街が眼下に、その奥には大屯山山塊、右に七星山と紗帽山が連なっている。大屯山の手前には、去年登った中正山がかなり高く見える。


熱海岩場からのパノラマ、新北投の温泉郷と奥には大屯山の山塊(クリックで拡大)
縦走路に戻った後、尾根道を進む。左にこの鉄塔メンテのためとおもわれる土の幅広道が分岐していく。尾根道上には小屋がある。尾根道を下って行くと、また幅広道に合流する。その先に丹鳳山方向を示した道標があり、コンクリの道が続いている。幅広道は下って行くと照明禅寺へ続く。コンクリ道を下って行くと、路面に黄色のペンキで新北投公園と記してある分岐に着いた。これは弘法大師紀念碑へ続く道のようだ。下って少し、果たして石碑があった。


大師岩、大日如来の祠が岩に彫り込まれている、右に大師石碑
わきの不動明王の祠
ここは単に石碑だけでなく、自然の大石が露出し、その前が少し広場状になっている。大師岩というそうだ。この大石の端近くが彫り込まれ大日如来の祠が形作られている。祠のすぐ下には、これが建立された日付明治四十三年(1910年)三月二十一日、削られて不明な某某大師、それに建設の資金寄付者と思われる人名が沢山彫り込まれている。祠はかなり高い位置に造られているが、その下には小型の灯籠が二基置かれている。すぐ脇には、この場所の手入れをしていると思われる信者衆による説明文も建てられている。説明文によれば、戦後見捨てられ荒れるに任されていたようだが、近年復興されお参りが始まった。大日如来の奥には、大日如来の別の姿とされる不動明王の祠も同じように大岩に彫り込まれ作らている。ここは、謂わば真言宗のお寺なのだ。

弘法大師紀念碑は、頭が斜めに切れている。もともとは平で、壊された(壊れた)のだろうか。それともはじめからこの姿のだろうか。碑面には、


見下ろせば 里乃草木も 花さきて 大師わ山よ 光りかがやく

という和歌と建立者「台北茶榮講」が掘られている。裏面は、寄付者だろう、数名の人名が彫り込まれている。石碑の手前には香炉が置かれ、焼香されている。この場所を紹介しているブログの中には、昔の写真があるが、それを見ると当時は樹木がなく、見晴らしが良かったことが察せられる。今は、木々が周囲を覆っている。アブラゼミに混じりツクツクボウシも鳴いている。やはり秋が近いのだ。


自分は尾根道から下りてきたが、新北投からここまで登る道がある。今、登ってきてお参りをする日本人がいるのだろうか。そんなことを、考えながらゆっくりここを観察した後、下ってきた道を登り返し縦走路に戻る。コンクリの下り道を数分進むと、10時半過ぎにぽっかり広場にでた。ここが丹鳳山(標高117m)だ。鳥の形を模した赤いモニュメントがある。ここからも、北投の街が眼下に広がる。遠くには八里の觀音山がうっすらと見える。目を反対側に移すと、今日歩いてきた軍艦岩から続く尾根がのびている。説明文によると、この山は以前は弘法大師にちなんで、大師山と呼ばれていたそうだ。

丹鳳山頂上と案内板
丹鳳山からのパノラマ、北投と左奥に観音山が見える
奇岩路の登山口
頂上は日陰が少ないが、脇の木陰で少し休憩する。あとは、MRT奇岩駅まで歩くだけだ。最初はコンクリの道が続くが、数分で土の道となる。下っていくと、道の中央にコンクリ製のキノコ型あずま屋が二、三箇所造られている。下りきると奇岩路の登山口についた。石積みの壁面には、民国四十五年三月の期日はわかるが、その脇はコンクリが刷り込まれて消されている文字が並んでる。先ほど下り道から壊れた建造物が見えたが、寂れた感じがする。奇岩路を少し進み、石段を公館路へ降りる。更に三合街へ進み、11時20分に奇岩駅に到着した。三合街からは、今日歩いた山並みが見えた。向こうから歩いてきたおばさんが、「暑くて大変ね、山登りお疲れ様」と挨拶してきたので、恐縮した。確かに暑いが、こちらはすき好んで山登りをしているので。

今日の行程は、行動時間3時間45分(休憩を含む)、歩行距離は9.2kmだ。登攀高度合計は423mだった。途中立ち寄った熱海岩場や弘法大師岩で、少し時間を使ったが、途中登りでは少し早足で登ってみた。山道の前半は、木陰が少なく陽に焼けた。秋が近いとはいえ、日中は陽射しはまだまだとても強い。

高度プロファイル

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