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石筍尖から望む薯榔尖と右に伸びる北稜 |
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薯榔尖の登りから望む石筍尖と左に伸びる北稜(日陰の部分) |
平渓の
薯榔尖(平渓富士山)と
石筍尖は、ともに所謂平渓三尖の内の二座で、人気のある山だ。頂上からの良好な展望に加え、後者は登山道上半分に補助ロープを使用する岩場も適度に現れ、そこそこスリルもある。麓の菁桐からは、整備された登山道があり、薯榔尖について言えば石階段道を往復する限りでは、とても安全な登山ができる。一日で二座とも登ることも多く、その場合は一方を登った後一度谷に降りて、もう一つの山に登ることが多いようだ。
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南側の菁桐から反時計回りに縦走する |
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ギザギザの尾根上歩行高度プロファイル |
実は、この二座はその後ろ側に、経験者向けの尾根道がある。ともに北稜と呼ばれ、
四分尾山 -
耳空龜山 -
姜子寮山の主稜線につながっている。北稜は、高低差の大きな小ピークが続き、急な登り降りがあるだけでなく、岩場も現れる。特に石筍尖北稜は、垂直の岩壁が二ヶ所あり補助ロープが付けられているが、かなりの高度がある。岩場に慣れていないと、苦労するだろう。今回は、遠回りになるが、この北稜を経由して二座を縦走した。薯榔尖と石筍尖は、谷を挟んで双立しているが、ぐるっと回って歩いたわけだ。二座の頂上もそうだが、この北稜を歩くことが今回山行の目的である。
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二坑口の集落付近から望む薯榔尖(左)と石筍尖 |
九月になって、朝は少し涼しくなってきた。MRT文山內湖線で木柵駅へ向かう。7時10分にMRT木柵駅バス停に着く。ここで、同行のZさんと落ち合う。15分ほど待ち、795番バスに乗る。今日は土曜日だが、次週の中秋節休日の振替で出勤のところが多い。そのため、登山者はあまり多くない。約45分の乗車で、二坑口バス停に到着した。谷あいから見上げる空は青く、好天の登山が期待できる。
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二坑口の集落民家前を進む |
支度を済ませ出発する。バス停待合所のわきにある、登山案内板のところの階段が登り口だ。これを登るとすぐ、菁桐からの道に合流する。道脇にある数件の民家を通り過ぎる。家の前では、老齢の住人が世間話をしている。正面には、左に薯榔尖と右に石筍尖がそびえている。石筍尖頂上の赤い中華民国国旗が判別できる。そのまま進み、右へ石筍尖への階段道が分岐する。左にとり、沢を渡り登り返すと分岐が現れる。直進は菁桐古道である。左にとり、薯榔尖へ向かう。また分岐が現れる。実は、左の道は、二坑口から登ってくる別の登山道である。こちらを歩いてきてもOKだ。
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薯榔尖登山道から中央尖が望める |
石段の道は、よく歩かれているようだ。二、三度つづら折りを曲がると、階段からフラットな石畳道になる。それが終わると、また石段が続く。木々の下の道なので、汗はもちろん流れるが、陽射しが遮られ、助かる。木々の切れ目から、平渓の山々が見えるが、登るにつれ相対的に低くなる。長く続く直線的な登りを過ぎ、急なつづら折り階段の前に来た。時刻は9時、頂上まで遠くないが歩き始めて約45分、一休みする。
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ロープ手すりのある登山道頂上近く |
急坂部分は、階段の幅が狭く登りにくい場所もある。ロープ手すりが取り付けられている。もともとあったコンクリ製の手すりは、壊れてしまったので取り替えられたようだ。少し登ると、樹木も少なくなり展望が利くようになる。後ほど歩く、薯榔尖北稜が望める。休憩場所から約10分、9時15分に頂上(標高622m)に着いた。
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薯榔尖から東側を望む |
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西側遠くには台北が望める |
天気が良いので、とてもよい展望だ。東は遠くに瑞芳の山々、手前には石筍尖とそれから伸びる北稜が見える。岩が露出した、鋭いピークが並んでいる。その奥には、姜子寮山、
五分山が控えている。西側は、台北市まで望める。その手前の尾根筋は、
石底觀音山と刀石崙の稜線が、581峰へと伸びている。基隆河の谷を挟んだ南側は平渓三尖の一つ、
峰頭尖だ。2011年秋に来た時に増して、よく見える頂上からのパノラマを満喫する。
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北稜上から薯榔尖を望む |
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北稜から二坑口の民家が望める |
北稜は、その名の通り、北側に伸びる尾根だ。細い道に入ると、すぐ急な下りが始まる。その後、少し登り返し痩せた尾根上を進む。ここからは展望がよい。振り返れば、薯榔尖が控えている。岩の先から、急な下りが始まる。この先は絶壁のため、山道は大きく下り、この岩壁の下を巻いて進む。一本橋を越え、急坂を登り返し、稜線に戻る。もうひとつピークを乗り越える。その後、またもう一度登っていく。大岩を巻いて最後に少し登ると、主稜線の分岐に出た。途中で、一度休んでいるが、薯榔尖から1時間15分かかっている。距離は1km位だが、登り下りが激しいので、時間を要している。
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一坑口の谷を挟んで石底観音山から主稜線への枝尾根 |
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一本橋を渡る |
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主稜線の分岐部 |
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主稜線の耳空龜山歩道 |
主稜線の道は耳空龜山歩道として、地元行政により整備がされている。北稜に比べれば、格段によい道である。十数分歩き、風が吹いているピーク上で休む。暑いこともあるが、少し疲れ気味だ。握り飯などで腹ごしらえをする。しばらく休むと、元気が出てきた。更に主稜線を進み、11時40分に福興宮のある汐平公路の登山口に着いた。行動予定の半分を歩いた。ここから、幅の広い菁桐古道を進む。少し登り肉板峠を越える。その先、右に菁桐古道の右側の道を分け、そのまま三坑山への分岐へ向け下る。最低部を過ぎ、少し登り返すと三坑山の分岐だ。道を右に取り、坂を登っていく。最高部を過ぎ少し下ると、石筍尖北稜の入口がある。道案内看板もあるが、幹に付けられている藍天隊の道標には、危険、急峻な尾根に注意と、記してある。12時20分、時間はまだ早い。北稜に挑む前に入口で一休みする。
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石筍尖北稜のはじめのピークから2番めのピークを望む、左に中央尖などが望める |
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垂直な岩壁を登る |
北稜の道は、すぐに急坂になる。そこそこ歩かれているようで、道筋はしっかりしている。はじめのピークを越えると、前方に次のピークが見える。上部は岩が露出している。ここからは、石筍尖は後ろに隠れて見えない。ピークの左側には、平渓の谷を挟んで
中央尖、さらに遠くには
内平林山の山塊が望める。急坂道を降り、鞍部からまた登り返す。急な坂を登りつめ、岩壁の下部に着く。先のピークから見えていた岩の部分だ。二段ある岩壁の上部は、数メートルの垂直の岩壁に数本のロープがかかってハシゴ状なっている。ロープ梯子はぶらぶらするだけでなく、上下の間隔も一定でなく、登りにくい。岩の足場を選んで登るほうが楽だ。登りつめた後、ピーク上で一休みする。この場所は、下るほうが楽だろう。
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石筍尖が見えた、こちら側は切り立った岩壁だ |
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急坂を登り返す |
少し進むと、今度は目標の石筍尖が見えた。こちら側は切り立った岩壁である。頂上の国旗も確認できる。直線距離は大したことがないが、一旦下ってまた登り返す。登って行くと、左に岩壁の下を巻いていく。その先を登りつめると、今度は右に岩壁の下をトラバースする。いよいよ岩登りだ。下の部分は、ちょうど樹木の枝が走っており、これがよい補助になっている。その先は、オーバーハングした岩だ。ここにもロープ梯子が架かっている。これを登りつめ、さらに少し進むと石筍尖の頂上少し下に着いた。時刻は14時、石筍尖北稜は、直線距離では500m位だが、とても手ごわい山道だ。こんなに短いのに、1時間20分ほど要した。これで、今日の行程の主要部分は過ぎた。ゆっくりと休んだ後、頂上へ登り写真を撮る。残りは、菁桐へ下るだけだ。
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ふもと菁桐の対岸は峰頭尖 |
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頂上の国旗と薯榔尖北稜のシルエット |
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石階段道は歩きやすい |
頂上(標高520m)から見ると、薯榔尖北稜もギザギザの鋸形状だ。薯榔尖に近いピークは、北側が岩で切れ落ちている。大きく下って、登り返したことがよく判る。14時半、下り始める。上部は、補助ロープも架かっている急な土の坂道が続く。途中、三坑山への分岐を分け、十数分で石階段の道になる。北稜を歩いて行きた後は、こうした良い道はありがたく感じる。15時7分、菁桐駅に辿り着いた。約30数分の下りである。駅のトイレの水道で、顔や手を洗い、シャツを着替える。近くの雑貨店で、Zさんとビールを飲む。いつものことだが、これが止められない。そのうち15時30分の795番バスが、店の手前の停留所にやって来た。タイミングよく乗車し、木柵へ帰った。
歩行距離は、約7.6kmと少ない。休憩込みの所要時間は約6時間50分を要した。登攀累計は、709mである。距離や高度の割には、苦労した。それは、まさに両座の北稜が手ごわかったことが、理由である。困難度は、山道は2~4+(北稜部分)、体力要求度は4というところだ。経験を積んでいる登山者は問題なく通過できるが、特に石筍尖北稜は途中逃げ場もなく、それなりの心構えで歩くことを勧める。初心者は、腕力や脚力に自信があり、尚且つ経験者の同行が必要だ。