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2013-09-30

2013年9月28日 宜蘭太平山 翠峰湖 山毛櫸步道 かつての林業中心地を訪ねる

翠峰湖
台湾の北東に位置する宜蘭県の太平山は、日本統治時代から林業で有名な山域だ。20世紀初頭、政府に反抗する原住民泰雅族が帰順し、山林の資源開発が可能になると、南部の阿里山などについで開発が始まった。その後材木搬出のために、森林鉄道やロープウェイが設置され、産出量が高まり阿里山を抜いて台湾第一の林業中心地となった。しかし、70年代以降林業の衰退とともに縮小され、1989年には林業から観光の国家森林遊楽区として生まれ変わった。

苔の密生した森の中を歩く(翠峰湖遊歩道)
太平山は、単独のピークとしてあるのではなく、標高2000mを越える幾つかの山々をまとめた総称として使われている。台湾島を構成する背骨となる中央の山脈は、北側にある雪山山脈と並行し中央山脈が東側を走っている。この二つの山脈は、大平山への登口がある蘭陽溪を挟んで対峙している。台湾の南端まで続く中央山脈の北端に太平山がある。太平洋に近いこの山域は、雨も多く降雨量は台湾でも一,二を競う、水分が豊富な山でもある。そのため、山は鬱蒼とした樹木に覆われている。

台湾の北東に位置する宜蘭県蘭陽平野の南から中央山脈が始まる、太平山はその北端に位置する
地図では水が表示されていないが、翠峰湖をめぐり、その後山毛欅歩道を往復
歩行高度プロファイル
国家遊楽区としての太平山は、観光資源として整備開発がされている。標高1854mにある翠峰湖は、台湾最大の高山湖としてその周りに遊歩道が整備されている。その他以前の森林鉄道軌道跡や林道などが整備され、それぞれ特徴ある歩道となっている。今回の山行は、登山グループ慢集団の企画で、台北から日帰りで翠峰湖歩道と山毛欅歩道を歩いた。山毛欅とは、欅という字があるがケヤキではなくブナである。

平元林道を翠峰湖へ向かう
今回の活動は参加人員が四十数人と多いが、翠峰湖への道はバスが入れないため、参加者は自家用車に分乗して目的地を往復した。筆者は、友人Lさんが運転する車にMRT木柵駅前から便乗した。第5号高速道路から羅東まで向かい、7時半過ぎに集合場所であるファミリーマートで他のメンバーと落ち合う。そこから更に、7号国道で太平山遊楽区の入口、以前の木材出荷地土場へ向かう。途中、他のメンバーの車から離れるが、無事また落ち合い遊楽区入口を過ぎ、25キロの山道を登る。10時半、太平山山荘と翠峰湖へとの分岐に到着する。標高はすでに1900mを越え、車外に出ると半袖では涼しい。大きな木材を載せた台車があり、木材には翠峰湖観光道路と記してある。

翠峰湖遊歩道の入口
ここから16キロの平元林道(翠峰湖観光道路)を行く。走ってまもなく、左側に三星山への登山口を見る。三星山は標高2351m、太平山山域中の最高峰で、小百岳の一つでもある。今回は登ることはないが、いずれは登ってみたいものだ。更に平元林道を進む。山腹を進んで行く道は、最後に峠を越え翠峰湖へ下っていく。左に翠峰湖歩道の入口を見たあと、もう一つの入口近くの駐車場へ車を停める。時刻は11時を少し回ったところだ。ここで、昼食をとる。多くのメンバーは、コンロを持ってきていろいろな温かい食べ物を用意し、皆に振る舞う。慢集団の昼食はこうした方法が多い。

展望台から望む翠峰湖、遊歩道は右側の低い山を越え、正面の山の中腹を進む
平元自然道の分岐近く
ゆっくり食事を済ませ、12時に行動開始だ。駐車場から少し車道を戻る。入口には大きな標識がある。集合写真を写したあと、出発だ。国家森林遊楽区なので、歩道も立派だ。木製桟道が続く。入ってまもなく、右に望洋山への道を分岐する。その先に湖の展望台がある。翠峰湖は、水量が変化する。1月~4月が渇水期だそうだが、今日は満々と水を湛えている。霧に隠れることも多いが、今日は時々青空がのぞき、湖水は穏やかだ。周辺の木々は、青々とした針葉樹だ。展望台には大勢の遊楽客が休んでいる。

材木を使った桟道が苔の密生した林床をまたいで行く
森の中を進む
太平山は雨量の多い説明
道は、ここから土の道になる。砂利が敷いてあり歩きやすい。約10分ほどで平元自然歩道の分岐にくる。左にとり、登り始める。道は湖を囲む一つのピークへ登っていく。まもなく、森の中の道になる。材木を二本並べ、鉄の金具で留めて桟道にしてある。濡れていて滑りやすが、地面への影響を少なくするための対応だろう。森の地面は緑の苔で覆われている。京都に有名な苔寺西芳寺があるが、その庭が森全体に広がっているような感じだ。雨が降っていなくても、霧に包まれることが多く、大平山の森は苔が生えるにはとてもよい環境だ。伐採も行われていないこの森は、自然の営みが進んでいる。

丸太を輪切りにした階段道
幹のトンネル
分岐から10数分歩いてくると、展望台がある。樹木の間を通して、湖面がのぞく。その先には、白木森という、立枯れの木が目立つ森のわきを過ぎる。翠峰湖遊歩道の約半分ぐらいの位置だ。一度下り、また登り返す。立枯れの幹のトンネルをくぐる。また道は下り、檜林の中を進む。幾つかの細い沢を、木製橋で越える。山腹を進むと、また湖面が望める。遊歩道入口に近い展望台から、湖の対岸に見えていた山の中腹にいるわけだ。一番奥の山は、望洋山か。霧が反対側の山肌をつたって登り、山の半分を隠している。13時56分、見晴峰説明小屋にやってくる。小屋の前には、昔使用されていた森林鉄道見晴線の軌道が残されている。小屋の中では、林業が盛んなころの説明が壁に架けられている。この小屋は、もともとディーゼル機関車の燃料小屋のあったところだそうだ。この小屋の脇から、上に登る道がある。上方に展望台が設けられており、湖の全貌が望める。霧がだいぶ出てきたが、まだ湖畔が見える。

見晴峰休憩所付近から望む湖、霧がだいぶ出てきた
山毛欅歩道入口
更に三ヶ所橋を越え、14時25分に3.8kmの翠峰湖遊歩道のもう一つの入口についた。約2時間ほどの歩きだった。この入口は、午前中に駐車場へ行く途中に通りすぎた場所にある。車道を戻り、駐車場へ帰る。14時40分過ぎに、駐車場へ戻ってきた。時間がまだ早いので、別の歩道を歩くことになる。近くには山毛欅歩道と望洋山歩道があるが、山毛欅歩道へ行く。この道は、途中土砂崩れで道が途切れているが、行けるところまで行き引き返すことで出発だ。

里程2.4km付近を行く
入口で集合写真をとり、15時に歩き始める。この歩道も、もともと森林鉄道の軌道跡なので、望洋山山腹を横切って行く。100mごとに路程表が道端に設けられている。パーティの先頭はとても早足で檜林の中を進む。ちょうど道の整備工事が進行中で、人夫が木材を担いで運んでいる。2.4km地点から、道は下り始める。2.8kmキロポストからまもなく、道は終わりになる。15時40分、約40分の歩きだ。もともと、3.8kmの山毛欅歩道の終わりあたりは、その名の通り、ブナの原生林がある。霧が出てきて遠くが望めないが、最終点あたりには細いブナの木があった。

帰り道、鉄の輪の踏み石が苔にうもれている
帰りは同じ道を引き返す。高度差100mほど下ってきたので、先に登り返し平な歩道を帰る。霧がだいぶ濃くなり、森の中は薄暗い。16時20分、歩道入口に戻ってきた。往復合計で約6kmを1時間20分で歩いた。他のメンバーが戻ったが、もう時間も遅いので望洋山への行動は無理だ。今日は、これで帰ることになる。翠峰湖遊歩道の入口は濃霧の中だ。我々が歩いた時は湖水全面が見えたが、今は望むべくもない。天候が変わりやすい太平山、運が良かったというべきだろう。17時、山を下り始める。平元林道を戻り、さらに太平山道路を下る。途中、羅東への途中で食事をとり、台北へ帰った。土曜日の5号高速道路は、入口で制限があり、1時間ほど待たされた。台北の自宅へ帰り着いたのは22時過ぎであった。

二つの歩道合わせて、合計約11km歩いた。行動時間は約4時間、登攀は累計で約500mであった。第5高速が開通し交通が高速化されたとはいえ、太平山は台北からは遠い。日帰りで登るには、このように歩道を歩こことが精一杯だろう。山荘に泊まれば、1回ですべての歩道を歩く、或いはそこから更に山道を歩いていくことも可能だ。あるいた歩道の難度は、それぞれ道の整備度はクラス2、体力要求度も2だ。誰でも歩ける遊歩道である。

森林鉄道で使われていた蒸機と木材運搬車 (2013/1羅東の公園にて撮影)

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