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2014-12-25

2014年12月24日 三峽詩朗山縱走 名山の条件を備えた無名山

金敏から望む詩朗山(左)と金敏子山、左端のピークは塞口坑山枝尾根上の無名峰
金敏子山直下の岩壁
烏來と高い山で境界を分ける三峽には、多くの1000m超の山々がある。今年も数回訪れ逐鹿山卡保山樂佩山などを登った。これらの山々の登山口になる熊空へ向かう途中、大豹溪を挟んで対岸にある詩朗山は、行き帰りの際に通過するだけで登ることはなかった。車窓から岩壁が望める場所もあり、また山名も文学的な響きがあるので、以前から気にはかけていた。しかし、標高も600、700m台であり大したことではないとタカをくくっていた。

東側の金龍橋頭から縦走し、湊合橋へ下る
歩行高度プロファイル
具体的に山行を予定したが天候がよくなく、延び延びになっていたが、今回寒波の間隙の好天に恵まれ足を運んできた。実際に訪れると、この山は実は名山になってもおかしくない自然条件を備えていた。夏には豔紅鹿子百合という稀少種の百合も咲くそうだ。過去に炭鉱が麓にあったりかなり高い場所まで産業道路が通じていたりと、人里に近いが公共交通機関で訪れようとすると、少し不便だ。そうしたことが関係しているのか、それほど人気のある山でもない。ネット上の情報もそれほど多くない。

三峽から熊空への途中にある
登山口に近い湊合橋へは807番バスと新北市無料バスF627とF628が、もう一つの金龍橋頭へは807番バスが行く。しかし朝の便は7時に出たあとF628が8時45分、807番は9時半までない。今回は金龍橋頭からのスタートとしたので、三峽第一站バスターミナルに集合し、9時半発807番バスで向かう。行動時間は6、7時間でいけるので、冬で日暮れが早い時期でもこの遅いバスでOKだ。9時55分メンバー四名は、金龍橋頭バス停で下車する。バス停のすぐ前は土産物屋だ。大板根リゾート村から近いので、土産物屋があるのだろう。支度をすませ、出発する。今日は寒波が遠のいて青空が広がり、気温も高い。絶好の登山日和だ。

金龍橋から熊空方向を望む、右の尾根は内金敏山からの尾根
紅粉撲花の咲く産業道路を登る
県道114号線から下り、金龍橋を渡る。沢は広い。遠くに熊空方面が開けている。反対側は谷の間から五寮尖が頭を出している。橋を渡り産業道路を登り始める。今日のルートであると、初めはかなりの距離の産業道路を登る。標高150mぐらいの大豹溪から300mほどの標高差を産業道路を歩いて登る。右に道路を登っていく。左に沢沿いに巻き込み高度を上げる。前方に見える山は、塞口坑山の枝尾根上の無名ピークであるが立派だ。紅粉撲花の赤い花が道端に咲いている。25分ほど歩いて右からの道を合流する。標高は260mぐらいだ。分岐部は舗装が新しいが、最近道路工事が行われたようだ。対岸の白雞山が見えるようになる。左に折れ、更に高度を稼いでいく。

産業道路を行く、前方に賽口坑山が見える
鍵がかかっているが、右側を通り抜けられる
炭鉱坑道入口(廃坑)や紫雲堂を過ぎる。ここから先は車の往来が少ないようで、路面には苔が目立つ。勾配も急だ。道は方向を南から東に変る。ヘアピンカーブを越えて進むと、かぎのかかった鉄製柵が閉じている。車は通行できないが、人はわきを通れる。10時57分、金敏169-3号民家に着く。もう誰も住んでいないようだ。庭からは左にこれから登る塞口坑山と、正面遠くに五寮尖から龍山巖へ続く尾根上の峰々が望める。周囲には果実がなっている。コーヒーの樹もある。その上は他の果樹が植えられている。先ほどの柵は泥棒対策かもしれない。ジグザグの道を更に登り、11時11分、土の登山道入口に着く。ここまで約3.4km、平均時速は約3km、舗装路を登ってきたのでかなり速い。

民家の前から望む、左は塞口坑山、遠くに五寮尖が見える
竹や倒木が邪魔をする
道は桂竹林の中に入っていく。踏跡は、かなりしっかりしている。先週の大丘田山山行に比べれは大違いだ。上り気味の道を進み、11時20分尾根に出る。ここから反対側に下る道は、東眼産業道路へつながる。右に行けば塞口坑山である。先に左に内金敏山を往復する。道には枯れ竹が折れて塞ぎ歩きにくい。5分ほどで内金敏山頂上に着く。總統府図原点の基石のわきには藍天隊の山名プレートが落ちている。これには標高654mと記されているが、わきの樹木に取りつけられているプレートには594mとある。GPSでみても後者が正しいようだ。やって来た道を戻り、十字路分岐へ帰る。

内金敏山頂上の基石、標高は654mでなく594mが正しい
岩場を越えて登る、真ん中の窪んだ部分を乗り越える
灌木やロープを頼りに急坂を登る
山道は尾根上を忠実に追っていく。竹林が現れたあと、枝がうねって伸びているガジュマロ樹のわきを過ぎていく。12時少し休憩する。その後すぐに、補助ロープの岩壁急坂も現れる。全体に下草はあまり多くなく、踏跡もはっきりしている。岩の間を通り過ぎたり、わきを巻いたりして登りが続く。ところどころに竹林もある。先に無名ピークを越え少し下ったあと、また急坂を登る。最後の非常に急な斜面をロープや灌木を頼りに登り切る。経験の少ない登山者には少し怖いかもしれない。緩い坂になり、まもなく12時45分に塞口坑山(標高755m)の頂上に着く。今日の最高点だ。北側は樹木が少なく、対岸には白雞山が見える。ここで食事休憩を取る。

塞口坑山頂上で休憩する、ここには基石はない
孟宗竹林を抜けて稜線道を進む
桂竹に囲まれた詩朗山頂上
30分ほどの休憩後、詩朗山へ向けて歩き始める。登ってきた時と比べると、こちら側はゆっくりした下りだ。杉林を過ぎ13時27分分岐に着く。左に東眼産業道路への道が分岐する。稜線道を進む。分岐から10分ほどで、孟宗竹林につく。いつ見ても孟宗竹は美しい。更に進む。もう一つの孟宗竹林に出る。下る道がない。そこで少し戻ると、竹林の前に右に道が下っていく。竹林に注意を取られて、見過ごしたようだ。少しの登り下りを過ぎ、13時52分に詩朗山頂上(標高662m)に着く。塞口坑山から約40分足らずである。周囲は竹で囲まれていて展望はない。図原補点基石が植わっている。

産業道路わきの十字路分岐部、直進すれば金敏子山へ続く
金敏子山頂上からの眺め、前方の山は白雞山,雞罩山
金敏子山頂上の標識プレート
狭い竹林の中の道を進む。左右の竹がリュックのポケットに引っかかる。14時5分産業道路に飛び出る。その先下り産業道路が左に曲がるところで分岐がある。。ここは直進すると金敏子山頂上へ、右へ行けば金敏子山下の岩壁わきを通り、登山口へ下山する。先に直進して金敏子山へ向かう。稜線を10分ほど進み、金敏子山頂上(標高630m)が現れる。ここが今日の最後のピークだ。最近周囲の樹木を切ったようで、切り口がまだ新しい。ここから北側の展望が広がる。三峡の街も望める。実は、この時までこの頂上から直接下山できると思っていた。ところが草の中の道らしいものをわずかに下ると、様子がおかしい。頂上に戻っても先ほどやって来た道以外に道らしいものはない。地図を再び見直してみる。どうやら先の分岐にある岩壁を経ていく道が下山路のようだ。

絶壁上から眺める、遠くは白雞山から熊空山への稜線
歩いてきた稜線、中央のピークは賽口坑山
絶壁上の筆者
14時32分、産業道路わきの分岐から岩壁下の道に入る。しばらく進むと、左側に大きな岩壁があらわれる。覆いかぶさるような大岩の下を数分進む。右に観望台へ2分と道標がある。そこでこの道を進む。果たして、断崖絶壁の上に出る。ここは約200mぐらいの落差のある切り立った岩の上だ。足を踏み外せば、まさに奈落の底へ落ちる。今日歩いてきた塞口坑山や詩朗山の山並みが見える。深い谷の向こうには白雞山から熊空山の峰々が続いている。実に雄大な眺めだ。足もとをみれば、今いるピークが谷に長い影を落としている。時刻は14時56分、冬の日は短く夕方はつるべ落としでやってくる。

岩壁わきの下り坂
草深い中を下る
岩壁下の道に戻り、さらに壁際に沿って下る。ここからは、坂が急になる。対岸に五寮尖が近い。ネット資料によれば、夏にはこのあたりに豔紅鹿子百合が咲くようだ。13時12分、岩壁から離れ右側に谷を下り始める。谷にはいるとジメジメした環境になり、姑婆芋など下草が覆い茂り、踏跡を覆い隠す。苔が生えた岩は滑りやすい。慎重に下る。十数分下ってくると、足もとには石の階段が現れる。15時44分、畑が現れる。開けた畑から振り返る。先ほど登った金敏子山の岩壁が上方に高くそびえている。15時53分、産業道路の登山口にひっこり飛び出る。産業道路は右にとり下る。ヘアピンカーブになっているところで、最後の休憩を取る。

金敏子山の岩壁を振り返る


残っていた果物などを食べ、16時13分産業道路を下り始める。前方の白雞山の山腹には夕陽があたっている。民家を過ぎ、分岐を左にとる。わきの樹木には、藍天隊の道標が打ち付けてある。自家用車でくる登山者は、このあたりに車をとめ回遊式に歩いているようだ。我々は、金圳橋へむけ車道を歩く。最後に今日歩いた山を眺め、道なりに左に大きく曲がっていく。插角國小金敏分校を通り過ぎる。更に道は左に曲がり、下ると金圳橋を越える。7乙号線を右に下り、16時37分湊合橋に着く。ここは熊空への県道114号線と7乙号線の分岐点である。熊空を16時ごろに発車する807番バスはすでに通りすぎてしまったあとのようで、17時5分まで待ってF627番バスで三峡の街へ帰った。

金圳橋を渡る
この山は、思っていたよりはるかに優れた山登りができる。見応えのある岩壁沿いの道や絶壁上の景観、美しい竹林などそれだけで十分に優れた自然条件である。岩壁の急登などもスリルがあって楽しい。ただ、産業道路部分の歩きもそこそこ長く、また交通条件にも優れていないのがそれほど人気がない理由だと思う。我々四人は、休憩も含め6時間半で歩いた。距離は10.5kmである。まとまっているので、それほど時間はかからない。困難度は道についても体力的にもレベル3である。岩壁部分は勿論注意が必要で、経験の少ないハイカーは単独で行かないほうが良い。もう少し見直されてもよい山だと思う。

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