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2012-08-09

2012年8月8日 瑞芳三貂嶺瀑布群から獅子嘴岩へ - 滝と小沢の道

枇杷洞瀑布
夏の暑い時期は、沢沿いの道を歩くのも一興だ。今回は、大きな滝が上下に連なる,瑞芳の奥まった三貂嶺にある三つの滝を見た後、小沢にそって歩く中坑古道を経て獅子嘴奇岩を往復、柴寮古道を下って侯硐へ歩いた。人気のあるルートのようで、平日だが複数の登山パーティにであった。

獅子嘴奇岩
三貂嶺から基隆河を遡ると、有名な十分瀑布がある。三貂嶺瀑布群の滝は、水量は当然十分瀑布に及ばないが、落差が大きく、特に上の二つの滝、摩天瀑布と枇杷洞瀑布は、オーバーハングした岩から二、三十メートル流れ落ちる様は、豪快だ。滝の道を登りつめると、今度は中坑古道の森の道を行く。この道は緩やかな谷や山腹を通るが、いくつかの小沢にであい、また峠を越ていく。中坑古道は獅子嘴奇岩へ連なる尾根の峠で終わり、そこから侯硐へは柴寮古道が始まる。獅子嘴奇岩へは、この峠から以外に柴寮古道の途中から直接登る道、また三貂嶺瀑布群歩道へ直接下る道もあるが、今回は峠から途中烏塗窟山を経て往復した。

瑞芳の奥、三貂嶺にある滝と古道

三貂嶺駅からスタートし、侯硐駅まで歩く

先週台湾北部に上陸した蘇拉颱風は、驚異的な量の雨を降らせた。特に北東部の雨は、山間で大きな災害をもたらした。それから数日が経たが、沢の水量は多く、道も流れた雨水に大きく掘られてしまっているところも多々あった。今回の山道は、獅子嘴岩への道を除いて、地方行政により整備されている道で、通行不能のようなところはなかったが、倒れた木の枝が道を覆う場面はあった。もちろん、水量の多い滝は見応えがあるので、それ自身は歓迎だが。

碩仁國小脇の登山道案内
朝7時に家を出発、台北発7時35分の宜蘭行き電車で三貂嶺へ向かう。夏休中なので学生の乗客は少ない。乗車約1時間、8時33分に三貂嶺に着いた。谷あいのこの小駅は、宜蘭への本線と平渓線の分岐点だ。線路沿いの道を進む。基隆河の対岸に、かすかにトンネルの入口が見える。本線複線化に伴い廃棄された三爪子隧道だ。樹木が前に茂り、案内の看板が無ければ気づかないだろう。このトンネル入口の上部には、日本統治時代19人の台湾総督のうち、唯一台湾に骨を埋めた明石元二郎の書になる「至誠動天地」という、石板が埋め込まれているそうだ。ここからは、樹木が覆い隠し残念ながら見えないが。

合谷瀑布、水量が豊富だ
本線と分岐し、平渓線が右に曲がっていく。鉄橋のペンキ塗装工事が進行中だ。その先は、線路床が広くなり、右に廃棄された碩仁國小の建物が見える。今は観光目的に使用されている。広がった線路床は、以前ここで列車がすれちがいできるように、待避線があったのだろうか。ちょうど平渓線のディーゼル列車がやって来た。線路を渡り、碩仁國小の前を行く。孫文の胸像が建っている。集落を抜けるると、三貂嶺歩道がはじまる。

一番目の吊り橋

石段を登って行くと、道は平坦になる。小砂利が敷いてある道が数分続く。それが切れると、素朴な土の道となる。雑木林の道は、相変わらず平坦だ。竹林の脇に、獅子嘴岩への道が分岐する。ここまで、三貂嶺駅から約四十分だ。獅子嘴岩への道は、ネット情報だと路基が流されてしまったりで、大変だということだが、今はどうだろうか。機会があったら、歩いて見よう。更に歩くこと数分、一番目の滝、合谷瀑布の展望台についた。木製の展望台は、手すりの一部が壊れている。建てられたころから植物が大分成長したのだろう、滝の下部が樹木に遮られて見えない。手すりのたもとに花束と果物が添えてある。何なのだろうか。展望台の脇には、土地公の祠があるが、最近整理されたのだろう、立派な基礎が造られている。人々がお参りに来ているようだ。

摩天瀑布
岩場の梯子
展望台から進むと、吊り橋がある。もともとあった橋が流され、この新しい橋が造られた。沢沿いの道を行くと、もう一つの吊り橋を越す。道はゆるい上りとなり、ずっと沢沿いに進んでいく。十数分ほど進むと、滝の音が聞こえてきた。摩天瀑布だ。オーバーハングした上部から、水が一気に宙を舞い、下の大岩に砕ける。水簾型の滝ということだ。展望台が造られている。道は滝から離れる形で、急な登りをいく。岩場に木製の梯子が下がっている。その脇には岩壁に足場が刻まれている。補助ロープや鉄の鎖も下がっている。しっかり掴んで登れば問題ない。

岩場を登りきり進むと、今度は二つ目の水簾型滝、枇杷洞瀑布がある。時間は10時20分過ぎ、歩き始めて1時間半強だ。この滝は下の摩天瀑布に比べると前に広くて平な河床があり、休憩には適している。沢を渡り、反対側で休憩する。微風もあり、水近くでの食事休憩は快適だ。河床の岩は、小石と水が長い年月をかけて造った大小様々な穴が沢山あいている。


枇杷洞瀑布のオーバーハング
福興宮の分岐点、脇から中坑古道がはじまる
休憩後急な登りを行くと、右に滝のオーバーハング下の方向に進める。摩天瀑布も同様な道が造られている。ここから見ると、滝の水が宙を駆け落ちていく様がよく分かる。左に進むと木の梯子、その先には金属梯子が下がっている。これを登ると、滝沿いの道は終わりだ。コンクリートの歩道が左右に続いている。左に行けば五分寮を経て大華駅へ続く。右を取り進む。枇杷洞瀑布の上部の沢をコンクリ製飛び石の橋で越す。大雨で流された樹木の枝が飛び石に引っかかっている。少し登り、沢沿いの平な道を行くと、福興宮がある分岐だ。左の道は五寮分産業道路へつながる。道の脇に流し台があり、塩ビ管で引かれた水が流れている。顔を洗い、リフレッシュする。駐車場も近くにあり、滝を見るにはここから出発すれば一番近い。

古道の特徴、石の祠福龍宮
中坑古道は、福興宮の脇から始まる。はじめはコンクリ製の階段があるが、まもなく本来の土の古道の姿になる。小沢に沿って道は進み、何度か木製の橋で越える。ところどころぬかっている場所も現れる。枕木階段が現れ、登りが始まる。登りつめると休憩所があり、峠を越える。下り、また登り返す。この峠のすぐ下には、苔むした福龍宮の石の祠が道端にある。お供え物が前に置かれている。

下りきると、沢を越える。ここは橋が無いので、飛び石を踏んで渡る。この沢は水量がある。沢から登り返し、中腹を行くと十数人の登山パーティとすれ違う。こちらが一人だとわかると感心する。自分は殆ど単独行なので、そうなのかなと思う。岩に丸い穴が開いた、湿った岩の道を進む。この穴は、水と小石の侵食作用でできたように見えるが、なぜ水も流れていないこの高さの位置にあるのだろうか、不思議だ。その先で、道はまた沢に降りる。反対側には道がない。どうやらここは河床を歩くようだ。十メートルほど河床を登ると、右に道が登っていく。大雨の直後などは、この部分を歩くのは水量が増えて難儀するだろう。

沢の河床を歩く
小沢を渡る橋
登り返し峠を越す。下ると、右に觀瀑台へ続く道を分岐する。この道は獅子嘴岩から三貂嶺歩道へ下る道に合流する。あまり歩かれていないようで、道は草に埋もれている。ここで、中坑歩道の約半分を歩いたことになる。登り下りを繰り返し、また沢沿いの道になる。道は沢の右、左と橋を越えて進む。ゆるい登りを進むと、小滝が現れた。中坑古道を歩き始めて1時間ぐらいだ。この滝の上も二段ほど段差のある流れがある。三貂嶺瀑布群に比べれば、はるかに規模が小さいが、森の中のこうした滝も良いものである。歩みを止めて、しばし眺める。


ゆるい登りを続けて歩く。コケむした石を積み上げた壁らしきものがある。途中の福興宮の石の祠もそうだが、この道が古くから歩かれていることを示している。沢から離れ、枕木階段を登りつめると、中坑歩道の終点だ。時刻は12時半、約一時間半の道のりだった。ここは柴寮古道と獅子嘴岩への分岐でもある。砂利の敷き詰められた休憩所にもなっている。時々微風が吹いてくる。枇杷洞瀑布から休みなしで来たので、ここで休憩し食事をとる。

獅子嘴岩への分岐点の峠
中坑古道は思っていたより結構登り下りがあり、少しバテ気味だったが、水分を補給し食事をすると元気が戻った。20分の休憩後、獅子嘴岩へ向かう。道標には50分とある。尾根上の道は、急に高度を上げる。補助ロープも現れ登っていく。樹木が切れて、手前に茂っている山林投の向こうに、三爪子坑山の山並みが見える。侯硐の街も少し見える。ここから、平坦な道を行くと、烏塗窟山(標高422m)についた。基石が埋まっている小さな頂上は、周りが樹木で囲まれ展望はない。そのまま進み、獅子嘴岩の鞍部へ下る。山林投の枯れ葉が道に沢山落ちている。この道は、行政単位の整備対象ではなく、程度はそれまでの古道より落ちるが、あまり歩かれていない他の山の道に比べたらよい方だ。

急な道を下がりきると、三貂嶺歩道へ続く道と合流、そのすこし先で、柴寮古道から分岐して直接登ってくる道と合流する。ここには長い電柱のような柱が転がっているが、これは何なのだろうか。樹木の切れ間に獅子嘴岩の絶壁が見える。13時17分、獅子嘴岩頂上(標高400m)についた。中坑古道終点の峠から30分ほど、思っていたより早かった。頂上は、一部樹木がきれて、北西と北東方向の展望がある。来る途中ちらっと見えた、侯硐と基隆河の谷間が眼下にはっきり見える。その背後は大粗坑や牡丹山の山並み、その奥にはすそ野が前の山に遮らているが、基隆山のピラミッドがある。牡丹山の向こうには、燦光寮山の頂上がチョコッとのぞいている。今日の行程中唯一の展望だ。

侯硐の谷を望む、左に基隆山がのぞく、右は大粗坑山と牡丹山
小沢の脇で休憩
休憩後、今やって来た道を戻る。鞍部から直接下る道もあるがとても急坂なようだ。今日は気楽に下りたいので、烏塗窟山の登り返しがあるものの、戻ることにする。同じく30分ほどで14時に峠へ戻り、柴寮古道を下る。はじめは枕木階段だが、数分で本来の土の道になる。下って行くと、水の流れ道となる部分は、流れた雨水に彫り込まれ、溝のようになっている。今回初めての訪問なので比較できないが、最近の大量降雨が関係しているはずだ。下って15分ぐらい、小沢を越えるところで休憩する。沢の水で顔を洗う。すっきりする。残っていた果物などもここですべて食べた。

柴寮古道の民家近くから見る獅子嘴岩
柴寮古道の終点、線路下をくぐる
更に下ると、木製の立派な橋が現れた。道は緩やかになり、右が開けて視界が広がる。先ほど登った獅子嘴岩と烏塗窟山が高くそびえている。獅子嘴岩が奇岩と呼ばれていることに納得する。ここから見ると、確かに切り立った岩のピークで、左に幾つかの小ピークがつらなり、なかなか壮観だ。こちらに面した岩場だけ見ると、登攀不能かのようだ。人家も現れ、里が近いことが感じられる。古道は、道幅が広がりセメントの路面が続く。だいぶ下ると、左に山道が分岐する。これが本来の古道で、石の階段を下っていく。また幅広の道に合流すると、古道は終点だ。線路の下をくぐり、基隆河のわきにでる。ここは旧內寮仔炭鉱寮の建物がある。今は、炭鉱博物館の一部だが、ほんの三、四十年前は石炭産業の重要な一部だった。ここから侯硐駅まで、残すところ1kmぐらいだ。

侯硐駅から見る獅子嘴岩と烏塗窟山
線路沿いに道を進む。獅子嘴岩から見えていた川向うの寺院や駐車場などを通り過ぎ、15時半に侯硐駅に着いた。ここから振返ると、獅子嘴岩と烏塗窟山が並んでいるのが見える。この角度からだと、獅子嘴岩は柴寮古道から見たような奇岩の景観はなく、右側が垂直に切れた山容だ。15時47分発の電車で七堵へ、そこで乗り換え17時少し過ぎに台北駅に戻った。

今回は、歩行距離11.6km、歩行時間は休憩も含め6時間40分である。登攀高度合計は、山自身は低いが、登り下りが結構あったので、759mだった。滝や小沢沿いの道は、大雨直後は増水して危険もあるが、夏の日に歩くのは楽しいものだ。今日八月八日は、華人世界では父の日(八八=爸爸、音が近い)である。台風の後で道の状況が不安だったが、父の日の登山としては、満足できる行程だった。滝見や沢沿いの道として、おすすめのルートだ。

高度プロファイル



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