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2014-05-21

2014年5月18日 桃園縣復興鄉塔曼山 - 巨木檜の原生林道を歩く

巨木原生林の森をゆく
台北郊外の山々は、一般の公共交通機関で簡単にアクセスできる。少し遠くても、2時間内外で登山口に行ける。それよりも、遠くの山になると一般交通機関利用での日帰りは難しい。桃園県の奥にある山々は、自家用車で行けば日帰りが可能だ。今回は、時々一緒に登るLさんが、車を運転してくれることになった。そこで、Taipei Hiker Clubで乗合で行く仲間を求め、今回の山行となった。ここは、桃園県でも奥深い復興郷巴陵の拉拉山森林保護区内にある山々で、台北からだと片道3時間かかる。
教育観館から回遊する
歩行高度プロファイル
桃園県の最高峰となる塔曼山は、桃園県と新北市烏來区との境界上にある。この辺りは、もともと原住民(統治時代の高砂族)泰雅族のテリトリーでもある。これを北にたどっていけば、拉拉山,北插天山を越え、昨年訪れた逐鹿山まで尾根が続く。さらにこれを北に行けば紅河谷古道の峠を過ぎ、更に九加嶺や竹坑山を過ぎて獅仔頭山までと、台湾北部を東西に分ける主要な尾根筋が脈々と続いている。插天山脈とでも言えるこの山々は、今後さらに登って行きたいと考えているが、その第一回のパイロット山行の意味もある。

北から南に続く中央の山脈に位置する塔曼山
北橫公路巴陵大橋を渡る
ここの山々は乙種入山許可証が必要だ。乙種の場合は、最寄の駐在所でその場で申請もできる。今回は、事前にインターネットを通じて申請した。また拉拉山は、拉拉山森林保護区内にあるので途中通過する巴福越嶺古道も含めて、保護区の立入許可を行動日の15日以前までに申請する事が必要だ。これもネット上での申請が可能である。こうした入山許可は、台北郊外の山々では陽明山山系の磺嘴山を除いて必要がないので、初めての場合は注意が必要だ。

巴陵派出所
今回は、LさんとWさんの三人の山行である。MRT木柵駅近くで待ち合わせ、6時半過ぎにLさんの運転する乗用車に乗り出発する。第三号高速道路を三峡ジャンクションで降り、第7乙号省道を三民に向かい、そこから第7号省道北横公路を進む。時々窓ガラスに雨水が降りかかり、天候が心配だ。台北に流れ込む、大漢渓上流の谷あいをうねって進む北横公路を走るのは、もう十数年ぶりだ。その間に道の拡張工事や新しいトンネルができているのに感心する。巴陵に近づくにつれて、薄日が指すようになりほっとする。巴陵大橋を渡り、左に上巴陵へ上り道が始まる。標高600mぐらいの谷底から1100数十メートルの上巴陵へ一気に登っていく。上巴陵の集落は、塔曼山から南西に延びる尾根上に存在する。8時40分に派出所のある広場に着く、約2時間の乗車だ。

巴陵派出所からの眺め、左の山は拉拉山,中央が塔曼山
遊歩道をゆく
巴陵派出所に立寄る。すでにネットで入山許可証を入手ししているので、その場で印刷した許可証を渡すだけだ。派出所の警察官は、今日の行動予定を訪ねてきた。予定の拉拉山生態教育館から塔曼山や拉拉山を登る予定を伝えると、初めて登るのは道が湿っていて大変だ、中心路を行き、水槽わきに車を停めて塔曼山の南西尾根を登るようにと、勧められた。車に戻り相談して、やはり元々の予定で進むことにする。この山域は初めてであるが、いわゆる中級山は登ったことがあり、自分自身も登山経験はそこそこなので、万一は途中引き返すことも含めて、この決定をした。終わってみれば、道は他の場所に比べてみても問題は無く、高度が近郊の山々に比べて高いので、天候に注意すれば大丈夫である。勿論、これは山を甘く見るとう言うことではない。

遊歩道の木製階段を登る、左は巴福古道
北横公路の谷底から登ってきた114号県道巴陵道路を、更に拉拉山遊樂區に向けて進む。遊樂區の入口を過ぎる。数年前までは入場料が必要だったが、今は無料になっている。派出所から約30分足らず、9時20分に出発点の拉拉山生態教育館に到着する。台北から約3時間である。駐車場に車を停め、身支度をすませて出発する。

登山道は急登がつづく
駐車場のわきから歩道が始まる。園区の道は巾広い砂利道である。ここは、観光地でもあるので、一般遊楽客が多く歩いている。10分ほどで、道端に第一号巨木がある。推定樹齢1400年の紅檜で高さ41m、周囲は10m近い。その後も、第二、第三巨木のわきを行く。それぞれ同じような高さ太さの巨木である。小沢わきのあずま屋を過ぎ、神木遊歩道の木製階段が右に登っていく。直進する道は、烏來区福山へ続く巴福古道である。この古道は、前述のように保護区立入許可が必要である。遊歩道を登っていく。上には達觀亭のあずま屋がある。9時55分、ここで一休みする。

巨木のわきを登る
根こそぎ倒れた檜の倒木
塔曼山への登山道は、達觀亭下数メートルの遊歩道わきから始まる。道標はないが、標識リボンが付けられている。すぐに急登の土の山道が始まる。落ち葉が敷き詰められている道を踏みしめて登る。標高はすでに1600mぐらいなので、樹相も台北近郊の山とは異なる。しばらくすると檜の巨木が現れる。10時半、稜線までの約半分の高さを登ってきた。周囲は先ほどの遊歩道わきでみた巨木と同じような太い檜が数本、高くそびえている。ここは原生林である。これら檜は少なくとも数百年の年月をかけてここにある。それに比べ自分はいかにちっぽけな存在か。古人ならずとも、畏敬の念を禁じ得ない。

原生林の登りが続く
原生林の道はなおも続く。下草はシダ類がまばらに生えているだけで少ない。巨木の根がところ狭しとはっているところもある。休憩場所から20分ほどで、坂はゆるやかになり山腹をトラバースしていく。11時8分、稜線上に着く。ここは、巴福古道からやってくる稜線道との分岐でもある。標高約1950m、塔曼山山頂とはまだ落差約200mである。一休みする。

稜線上の分岐、左がわから登ってきた、午後は右の道を進む
道脇の竹笙(キヌガサタケ)
稜線上の道を塔曼山へ進む。すぐに道端に黄色の網状のきのこを見つける。中国料理で使う竹笙(キヌガサタケ)だ。野生の物を見るのは初めてだ。ただ、普通に見るような頭の部分がない。尾根道は、まもなく急登が始まる。尾根の巾が狭い。左側、東の谷は霧が登ってきている。急登部分を過ぎ、尾根の巾が広がる。尾根上は、上り下りが現れる。尾根上も、先ほどの山腹道と同じように、下草はまばらな感じだ。樹木の高さは中腹の巨木に比べれば低いが、それは風が吹き抜けていくからか。

腐った大木を踏んで歩く
途中補助ロープの急登が二、三ヶ所現れるが、長くはない。最後に高度差数十メートルを登り、12時20分に塔曼山山頂(標高2130m)に到着する。頂上下の最後の登りの時に、人声が上から聞こえていたが、頂上につくと誰もいない。三角点基石の上に、箱のような物が置かれている。周囲はすべて樹木、ここは展望はない。中級山の多くは、頂上からの展望がないところが多い。しかし、歩いてきた原生林は、それを補って余りある。食事をとり、休憩する。そのうち、数人の登山者がやってきた。先ほどの話し声の登山者だが、少し尾根をいったところの巨木を見てきたそうだ。登りは、南西尾根をやってきたとのこと。我々より先に往路を下っていった。

塔曼山山頂
板状の根に苔が生えている
巨木の幹や枝からシダ類が生えている
20分ほど休憩し、先の登山者と同じに玫瑰西摩山方向へ二、三分ほど進む。巨木があるが、途中見てきたものに比べ、特に大きいわけではない。頂上へもどり、往路の稜線道を下る。約45分で分岐に戻ってきた。午前中は薄日がさしていたが、天気は下り坂のようだ。ここから稜線道を巴福古道へ向けて下る。この部分は、登山者が少ないようで今まで歩いてきた道に比べると、踏跡が細い。急坂を下り、緩やかな道になる。分岐から約20分のところで、板状の根が張っている巨木が少し開けた場所に生えている。板根には苔が生え、枝には新緑のシダ類が載っかっている。幻想的な木だ。霧も少し出てきた。

シダの密生する中を下る



また、急坂が始まる。草も深く踏跡が見えない。ポツリポツリと降り始めた雨は、急に雨脚が強くなった。雨具をつける。とうとう雨に見舞われた。雨の中を下り、14時42分、巴福古道に着く。降るに従い、雨は強くなってくる。巴福古道を進んで拉拉山へ登るつもりであったが、往復には2時間ぐらい見る必要があり、この状態では芳しくない。今回は、拉拉山を諦めそのまま戻ることにする。幸い巴福古道は状態がとても良い。道幅も広く、踏跡もはっきりしている。雨は強く降っているが、傘もさして歩くことができる。ほぼ等高線にそって進む道は、上り下りもあまりない。

巴福古道と15kmキロポスト
古道15km、16kmキロポストをすぎ、山ひだを縫って進む。15時20分過ぎ、巴福古道入口の柵へ戻ってくる。朝方登っていった遊歩道の入口でもある。その先のあずま屋で少し休憩する。先ほど雨具をつける時は、靴を脱いで雨具のズボンを履くことができなかったので、靴の中にも水が流れ込み、脚は靴の中で泳いでいる。靴を脱いで靴下を絞る。

教育館に戻ってきた
更に十数分遊歩道を下り16時7分、教育館へ戻ってくる。教育館に入り、窓から谷あいをみる。雨はほぼ止んで、霧が山肌を上がっていく。全身濡れてしまったので、持ってきた着替えに着替える。車に乗り、上巴陵の集落へ戻る。道すがら、雨があがって晴れていく山々が望める。17時少し前、派出所までやってくる。ここで食事をとって、帰京することにする。付近の料理店で今日の山行成功を祝して食事をとる。食事を終え外にでると、天候はすっかり回復し、拉拉山や塔曼山も望める。食事後、派出所わきの展望台から最後の眺めを満喫したあと、17時45分台北に帰路についた。

教育館から上巴陵への道から見る山々、天気が回復し霧が晴れていいく
初めての相乗り中級山山行であった。雨のため拉拉山へはいかなかったが、巴陵周辺の様子は分かった。次回の登山に役立てることができる。歩いた距離は約10km、休憩を含んで7時間の行動時間である。累計で750mほどの登りだ。中級山は標高は高いが、登山口も相対して高いので、登りが特に多いわけではない。注意するのは、天候や人里から距離があることである。今後も、このような中級山登山をしていきたい。

食事処付近から見る、左奥が拉拉山、右は塔曼山南西尾根上の埤谷山


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