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2016-01-04

2016年1月1日 中國黃山 中国の名山を歩く

黄山飛来石
中国には、絵画や文学に大きな影響を与えた名山がある。三山五嶽といわれる山々で、山東省の泰山や陝西省の華山などがある。その中で三山の一つに数えられる安徽省の黄山は、ゴツゴツした岩が露出し、奇岩や松の山谷に霧がかかるとまさに山水画の景色が展開する。唐代に道教を信奉する玄宗皇帝により仙丹をつくる場所として、今の黄山と改称された。中国十大景勝地の一つに選定されたり、世界遺産に登録されている。中国文化を理解するには、一度は登ってみる価値の山である。中国版図内には、チベットの世界の屋根の山々や、四川省雲南省奥の高山などもあるが、これらの人煙のまれな山々は、三山五嶽とはまた別の範疇だ。

西側の太平索道山上駅から歩き、東側の雲谷索道山上駅まで歩く
登攀高度は最大200数十メートル
黃山の位置
今回は、この山を単独に登りに行くのではなく、台湾からの旅行団に参加して訪れた。標高1800数十メートルの山の約1600mぐらいまでケーブルカーで登り、約7キロほどの石畳山道を歩く二日間の山行である。体力的には、楽な行程だ。勿論麓から山道があるので、それを登ることもできる。また、訪れた場所も黄山のうちの約1/3ぐらいの範囲なので、機会があれば麓から自分の足で登り、全域を訪ねてみたいものだ。

合肥から途中の三河古鎮
現在は安徽省に属するが、もともとは徽州という歴史のある商売人の町、黄山市の北に位置する。普通はこの黄山市のほうから行くのが多いようだ。今回は、黄山の北に位置する安徽省の省都、合肥からの移動で北側からのアプローチだ。中国は、台湾と同じに旧暦正月がほんとうの正月であるが、新暦の正月も休みになる。1月1日から3日まで連休で、中国人の旅行先として黄山も多くの遊楽客が押し掛ける。幸い我々は、北大門に近いホテルから朝早く出発したので、ロープウェイもまったく待つことなく乗車できた。標高1600mぐらいの山上駅から歩き始め、黄山の主要なピークの一つ光明峰を登り、その後下って北海賓館にチェックインした。昼食のあと、始信峰や獅子峰を歩いた。翌日1月2日は、やはり朝の早いうちに南側のケーブルカーで下った。麓の駅では、ケーブルカーを待つ長蛇の行列ができていた。

黃山市屯溪老街の様子、商売の街徽州の面影が残る
高い白壁に小さい窓、隣との間の壁(馬頭牆)、徽州建築の特徴
太平索道下りのゴンドラとすれ違う
大晦日を黄山市黄山区の軒轅國際大飯店で過ごした後、翌新年1月1日7時半過ぎに出発、約30分でロープウェイ(黃山太平索道)の松谷駅に到着する。入口は、長い行列に対応できるような柵があるが、幸い行列は全くない。中国の連休は、どこもあふれる人で大変だ。中国へ仕事や旅行で行き始めたころの十数年前は、一般の中国庶民は経済的に旅行も難しかったが、今は高度経済成長期の日本と同じで、連休は民族大移動かと思うほどの人出になる。セキュリティーチェックを過ぎて、一度に100人の乗客を乗せられるロープウェイの乗車待合室で少し待つ。壁にはPM2.5の濃度を示す掲示板がある。今日は1立方メートルあたり24マイクログラムと表示されている。待合室には、外国人(自分もそうだが)がちらほら見受けられる。

ゴンドラから見る、黄山北側の風景
道標や案内板が完備
8時45分、入口が開きロープウェイに乗り込む。今日は快晴だ。登るにつれ、黄山の山容が展開していく。数分登っていくと、岩のゴツゴツした黄山特有の谷が広がる。その向こうには、別の山並みも見えてくる。このロープウェイは、何台ものゴンドラが動くのではなく、ちょうどケーブルカーのように二台のゴンドラが往復するものだ。半ばで下っていくゴンドラとすれ違う。岩にしがみ付いて生える松の木も見えて、まさに黄山の様子になっていく。約標高600mの麓松谷駅から長さ約3.7㎞高度差約1000mを十分ほどで登り、8時55分山上駅に到着する。

排雲亭から望む深い渓谷
石段を登っていく
駅から歩き始める。台湾の山々でも見受ける、花崗岩をつかった石階段道を少し下る。ここは、山であるが中国の著名観光地でもある。道案内や説明文が道脇に完備されている。分岐部まで行き、そこから排雲亭に向かう。ほんの三、四分で排雲亭に来る。眼下には深い西海渓谷が落ち込む。この谷にはケーブルカーや歩道があり、こちらからの登山もできる。天気がよく谷底も見渡せるが、これに霧がかかればまさに山水画の世界である。

飛來石



排雲亭から、先ほどのロープウェイからの分岐に戻り、9時38分光明峰に向けて石段を登り始める。黄山は、1000m以上の大小ピークが77座、そのうち1800mを超える主要な三座のピークを含む山塊の総称である。光明峰は標高1860mで、1864mの蓮花峰に次ぐ二番目の高峰になる。今回のメンバーは、普段山登りをしていない人もいる。標高差約200数十メートルでも大変な様子で、急階段に難儀している。嘯谷亭や行知亭という涼亭を過ぎ、10時18分に飛来石に来る。高台の上に高さ約15mの巨石が載っている。まさに、黄山の奇景だ。

飛來石から北方向を見る
大きな荷物を担いで下っていく
上から荷物を担いだ人夫が下ってくる。黄山の物資は、すべてこうした担ぎ人夫が運んでいるそうだ。日本でのボッカとは違い、背負うのでなく天秤棒で運ぶ。道が良いのでできるのだろうが、担ぐ重量は多い人で70~80kgにも及ぶという。石畳道をさらに登っていく。10時53分、小ピーク上の二階建て建物につく。売店が下にある。建物脇からは、西海方向が見える。今日宿泊するホテルは、北海賓館であるが、ここは渓谷を海と呼んでいる。雲海を海に見立てた名づけなのだろう。ここからは道は緩やかになり、左に大きな鉄塔が建つ峰が見えてくる。道端には、数日前に降った雪がまだ少し残っている。11時05分、球状のレーダードームをいただいた気象庁の建物がある光明峰に到着する。

先に通り過ぎた飛来石を下に見る
途中のピークから西海方向を見る
気象庁施設のある光明頂
光明峰の脇には道教の仙丹をつくる意味の煉丹峰がある。少し登り、上から見渡す。気象庁建物下の広場に戻り、北海賓館にむけて下り始める。大勢の遊楽客が、反対方向から上ってくる。途中、仙桃岩が対岸に見える。地震でもあれば転げ落ちてしまうだろうこうした独立の奇岩が、たくさんあるのも黄山の特徴だ。12時19分北海賓館に到着する。チェックインしたあと、食堂で昼食をとり休憩する。物資は人力で持ち上げているので、値段は高い。

光明頂の道案内地図
大勢の遊楽客が登ってくる
ちょこんとのっかっている仙桃岩
獅子峰側からみる北海賓館
14時過ぎ、空身で始信峰へ向かう。始信峰は、三方が断崖絶壁で変わった松が生え、ここにきて初めて黄山は天下一であることを信じると、いうことから命名されたそうだ。中国が文化大革命時代を過ぎ、経済開放が始まった1979年に、それを推進した鄧小平は黄山を訪れ北海賓館に投宿したそうだ。その時、黄山の観光資源を有効に利用し、天下に打って出るように勧めたということだ。それから三十数年、中国は確実に経済発展をし、国民の生活水準は向上した。筆者は、解放間もない1981年にはじめて中国を訪れたが、当時と比較すると目覚ましい社会資本の充実や、生活水準向上を見ている。
鄧小平の言葉が被海濱館の壁に掲げられている
黒虎松
連理松
始信峰へ向けて階段道を登っていく。まもなく黒虎松を見る。高さ約9メートルで、四方に枝を伸ばした松は、その昔高僧が近くの獅子林で瞑想しているときに、黒い虎が松の木の上にいるのを見た。実際そこに行ってみると虎はおらず、松だけがあったことから命名されたということだ。そこから左に進み、夫婦松とも言われる連理松を過ぎる。根本が同じの二つの幹が分かれている。14時50分過ぎに、始信峰の登り口にくる。右側から上っていくと、数百メートルの断崖の上に出る。そこから稜線にそった道をいったん下がり、渡仙橋と呼ばれる石橋を渡って登り返したところが、接引松が生える始信峰(標高1683m)である。上からは、北海賓館が深い谷の向こうに見える。その右奥は獅子峰だ。

始信峰
始信峰からの景色、左に北梅賓館、右の峰には曙光亭
獅子峰への途中から東側を望む
始信峰から下り、来た道を北海賓館へ向けて戻る。16時にホテル手前に戻ってくる。日暮れまで時間があるので、獅子峰方向へ歩いていく。登ってすぐ、右に曙光亭を見てそのまま進む。5分ほどで、松谷へ下っていく登山道を分ける。これを下っていけば、朝ロープウェイでやってきた、北門へ続く。左にとり、獅子峰へ登っていく。岩壁には、中国のほかの景勝地にあるように多くの文字が刻まれている。

猴子觀海
16時15分、獅子峰(標高1620m)に到着する。ここも三方が切り立った絶壁である。谷を挟んだピークの上には、サルのように見える岩がちょこんと載っている(猴子觀海)。夕方の気配が濃くなり、寒くなってきた。やってきた道を戻り、16時35分北海賓館へもどった。

獅子峰から望む、左に始信峰、右に北海賓館
雲谷索道ロープウェイで下る
翌日1月2日は、8時にホテルを出発、先に黒虎松へ登り、そこから右へさらに登っていく。峠を越して下ると雲谷索道ロープウェイ駅に着く。8時半過ぎ、下りのロープウェイに乗り下山する。10分足らず下の駅に到着。外に出てみると、これから乗車し黄山に登る遊楽客の長蛇の列ができていた。駅からは、専用バスでさらに麓まで下っていった。

長蛇の列がロープウェイ山下駅にできている








今回は、団体旅行の一部なので、ルートなどはすでに決まっているものだ。歩いた距離は約7㎞である。途中の休憩や、観光を含めて約5時間半ほどの行動時間だ。今回のようなところであれば、まったく楽である。あえて困難度を言えば、ルートについてはクラス1、体力的にはクラス2といったところだ。山では遊楽客に交じって、本格的な登山者も見かけた、このような場所ではすこし大げさかもしれない。いずれチャンスがあれば、今度は上り下りも自分の足で全域を歩いてみたいものだ。

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