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雲嘉大尖山山頂にて |
一月は、台北はほとんど雨天であった。月末四日ほど日本に帰っていたが、戻るとまた雨である。実にうっとうしい。雨が降ると、暖房が完備していない台北では余計に肌寒い。そこで、今回は冬でも天気が良い南部の山を目指すことにした。それでは、どこにするか。一日で台北から往復するとなると、活動時間はそれほど長くとれない。そんなことで、雲林県と嘉義県との境界に位置する雲嘉大尖山(標高1305m)に行くことになった。先月上旬に訪れた、
台南大凍山や
高雄旗尾山に引き続き、南部の小百岳の登山である。
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台湾南部雲林嘉義にある雲嘉五連峰 |
今回歩いた大尖山と二尖山は、いわゆる雲嘉五連峰のうちの二峰である。台湾は台中から南の西側に平地が広がる。その平地から東へ台湾中央の高山山脈の前衛となる雲林県と嘉義県の県境に位置する山である。東に進めば、台湾一の高山
玉山に行く。もともと時間的余裕があれば、二尖山からさらに南に馬鞍山、梨子腳山、太平山の三山を加えて全部五峰を縦走できたが、やはり台北からアクセスでは時間的に余裕がなく、この三山は次の機会に回した。
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西の福華宮か時計回りに回遊 |
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大尖山の急登のあと、緩やかな下り |
大尖山は、ふもと古坑に台湾コーヒーの産地を擁する。日本統治時代に三菱が昭和9年(1934年)にコーヒー園を始めたのが始まりで、最終的に標高300m~800mの地域に集中して栽培されるようになった、ということだ。今は古坑華山は、コーヒーで有名である。台湾のコーヒー嗜好も非常に普及し、今回出発点の華山には多くの喫茶店がある。また、コーヒーだけでなく高山茶の産地でもある。そのため、車の通れる産業道路も高いところまで続いている。実際、二尖山は歩かず車で来ることもできる。大尖山も二尖山から稜線沿いの歩道をやってくれば、ほとんど苦労なしでも登れる。
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コーヒー園の中を行く道、右は檳榔林 |
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福華宮 |
今回のルートは、華山の福華宮から出発し第10号歩道を最高点大尖山に登り、稜線を二尖山へ、さらに龍興宮へと下っていく。そこから西に山道を下り、さらに産業道路と第四歩道、また産業道路経由で出発点へ戻る回遊式の歩きである。第四歩道を下って、さらにそこから先また歩道があるようだが、明らかにあまり歩かれておらず、途中渡った竹の橋が壊れてしまったので、安全のため引き返し車道を下った。稜線近くで一時青空が見えたが、ほとんど濃霧中の行動であった。
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10-1号歩道入口 |
今回の山行は、三人だ。車を提供するメンバーは桃園在住なので、7時少し前先に鶯歌で落ち合う。雨で薄暗いなか高速道路を南部へ向かう。台中を過ぎるころから、空は明るくなり希望がでてきた。途中レストエリアとコンビニで立ち寄り、目的地福華宮に10時に到着した。3時間強の道のりだ。高速道路網が完備してきたので、南部でも結構早く着く。10時10分、支度をして出発する。福華宮のトイレ脇に10-1号登山道と記された大きな石碑がある。10-1とは、おそらく途中で車道に出て切れるので、それを区切りに10-1、-2という風にしているようだ。
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ぬれて滑りやすい石段道 |
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10-3号歩道入口 |
10-1号歩道は、すぐに石段になる。昨日までの雨でぬれて、滑りやすい。研堤咖啡庭園まで10分とあるが、この道を登ってこのカフェまで行く顧客がいるのだろうか。あまり歩かれている様子はない。まもなく檳榔の林の中を行く。左にカフェへの道を分けたあと、10時25分道は人家の道に出る。それを左に行き、門をでると車道に合流する。車道を右にしばらく登っていく。霧が濃い。道脇にはカフェが何軒もある。天気がよければ風景を見ながら、コーヒーというところだろう。上豪民宿をすぎ、10時36分、10-3号歩道入口にくる。10-2号はどこへ行ったのだろうか。この歩道もあまり歩かれていない。数分でまた車道にでて、登っていく。
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10-4号歩道入口 |
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霧の中の茶畑 |
10時44分、10-4号歩道の石碑がある。右に進む細い舗装路がそうだ。濃霧の中、道の左右には茶畑とコーヒー畑が広がる。茶畑は、檳榔の樹で区分けされている。道なりに進んでいくと、下り始める。11時、道標があるがその先は、草深くてほとんど歩かれていないようだ。地図を確認すると、どうやら途中の分岐を見過ごしたようだ。そこで、引き返して探す。すると、先ほど下り始めたすぐ近くで左に小屋のあるところが、正しい道のようだ。枕木階段が、コーヒー園の中を登っていく。11時17分、霧の中に涼亭が現れる。一部壊れており、しばらく手入れされていなようだ。少し休憩する。
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霧の中の涼亭 |
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10-5号歩道入口 |
道を進むと石段になるが、下り部分はとても滑りやすい。11時27分、民家脇に出る。道案内があるが、文字は判読できない。左に進み雲林縣華山教育農園の看板をみて、少し車道を行く。すると10-5号歩道の石碑が現れた。マーカーリボンたくさんあり、ここから本当の登山道というところだろう。おそらく多くのハイカーはここから登り始めるので、いままでやってきた下の部分は、ほとんど歩かれず手入れもされていない、というところなのだろう。
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竹林の中に展望台 |
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手すりのある急登セクション |
11時32分、濃霧の檳榔林の中を急な石段が登っていく。そのうち竹林に換わり、また細い産業道路にでる。その先少しで涼亭がある。左右の竹林には、タケノコの盗採を防ぐためだろう、落とし穴ありという注意書きがある。12時、展望台を過ぎるが濃霧では何も見えない。ただ、晴れていたとしても樹木が高くなっているので、展望は無理だろう。その少し先右が切れて、ここからは晴れていれば展望があるはずだ。石段は急になる。しばらくは、急登が続く。12時28分、左右に手すりの部分が始まる。勾配はさらにきつくなってくる。12時40分、坂はすこし緩やかになり、青空が霧になかに見え隠れする。前方の稜線も見え隠れしている。
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薄日が竹林に差し込む |
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青空が見えた |
薄日が差し込む竹林の道は、気分がよい。12時53分、最後の急登が現れる。登り切り13時大尖山頂上に到着する。一等三角点のある頂上は、周囲に樹木があるものの、晴れていればよい展望があるはずだ。先ほど晴れてきて期待していたが、空は明るいものの霧で展望はない。今日は平日だが、他にもハイカーが頂上で休んでいる。ここで昼食をとる。
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大尖山頂上、中央に一等三角点 |
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桂竹林の間を行く稜線道 |
13時35分、稜線を二尖山へ歩き始める。稜線は、とてもよい石畳の道だ。左には茶畑が広がる。赤く塗られた手すりが印象的だ。ガサガッサと、サルが移動した。先ほどの登り道にサルに注意という表示があったが、実際に生息している。竹林の中を進む道は、美しい。天気がよければ茶畑から遠くの山々が見えるはずだが、すべて霧の中。かろうじて振り返ると大尖山がわかる。14時、二尖山の茶畑内に建つ涼亭につく。三人お茶を沸かして楽しんでいる。寒暖計は17度を示している。少し進み、頂上の食事処を通る。駐車場には車が数台駐車している。ここまで車で来れば、大尖山は一時間もかからずに往復できる。
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茶畑の間の二尖山涼亭、右の建物は頂上の食事処 |
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稜線道を進む、前方はコーヒー園 |
駐車場の脇から右に産業道路が下っていく。この道を行っても下山できるが、ここまで一緒にきた大尖山で知り合ったハイカーと分かれてそのまま稜線を進む。枕木の稜線道を数分進む。子供三名をいれた家族が、コーヒー園で作業している。
Facebook上でアカウントを開いているそうで、それをアクセスするとドリップコーヒーパックがもらえる。更に稜線を進む。その先の竹林を過ぎると、茶畑の斜面に木製の階段道が下っていく。晴れていれば、とてもきれいだろう。
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もらったコーヒーパック |
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茶畑の階段道 |
下りきったところは、展望台がある分岐だ。すぐ左に龍興宮が見える。時刻は14時40分。直進して稜線を登れば、馬鞍山からもう一つの小百岳梨仔腳山、さらに太平山の峰々に続くが、今日は時間が少し遅い。あと2時間早ければこれらを登ったあと、下山して出発点に戻ることも可能だが、今日はここから右に下山する。
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龍興宮近くの鞍部分岐、左に下る |
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緩やかな下り道 |
霧は相変わらず濃い。午前登ってきた石段道を考えて滑りやすく大変かと心配したが、こちらは往来が多いのだろう、それほどでもない。勾配も最初はきついが、そのうち山腹をトラバース気味に下っていく。古道の趣だ。途中檳榔林を抜け、15時に産業道路に出た。山道はここで終わりだ。左に産業道路を下っていく。下で別の道と合流すると、霧の中に涼亭が現れた。よく見ると、右下に廟がある。ここは廟の施設だ。しばし休憩する。
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梅の花が咲いている |
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道端の小石の造作 |
15時25分、産業道路を下り始める。山桜や梅の花が霧の中に咲いている。ここは嘉152号県道になる。数分で、分岐にくる。左は梅山へ行く。我々は直進する龜仔頭への道をとる。少し行くと、道脇に小石を積み上げた造作がある。誰がこんなものを作ったのか。そこそこ時間がかかったと思われる。この辺りから、しばらく登りが続く。5分ほどで登り切り、また下りが始まる。相変わらずの濃霧で、見えるのは、檳榔の樹だけだ。15時54分、第4‐2号歩道と合流する。道標では、二尖山へ続くようだ。おそらく先ほど稜線上で左に降りていた産業道路につながるのだろう。
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4‐1号歩道を下る |
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長命健康歩道 |
急な産業道路をさらに二、三分下ると左に山道が分かれていく。産業道路をそのまま下ってもいけるが、山道をとって下る。茶畑の間を下り民家が現れると、16時11分また産業道路に合流する。4-1号歩道の石碑がある。ここまで来ると、霧は少し晴れてきて二尖山方向が少し見える。地図では、ここからも山道があるようだ。産業道路を右に二、三分下ると、左下に山道が降りていく。長命健康歩道という立派な石碑がある。しかし、どう見てもほとんど歩かれていないようだ。少し行くと、竹の橋がある。メンバーの一人が渡るとき、竹が折れて落ちてしまった。幸いにして大事にはならなかったが、その先も状態がわからないのでそこで折り返して、産業道路に戻った。
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霧が晴れて二尖山の支稜が前上方に見える |
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自作漢字の土留壁 |
残りは、車道を下っていくだけだ。右から、先ほどの4-1号歩道入口で分かれた産業道路と合流する。きれいに塗られた二つの土地公祠を右に見て、さらに下る。土留壁には、おもしろい漢字がたくさん書かれている。自分で作った字のようだ。16時43分、頂厝の集落を過ぎる。更に数分で、左に華山の歴史やコーヒー栽培の由来などを書いた、大きな石板が土留壁に取り付けられている。その先少し下がったところから、多くのカフェが現れる。咖啡大街と呼ばれるところだ。16時54分、車を泊めた福華宮への分岐にあるカフェに立ち寄りコーヒーを飲む。やはり、いれたてのコーヒーはおいしい。17時26分に福華宮へ戻り、車で一路台北へ帰った。
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華山の様々な事由を記した石版が並ぶ |
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立ち寄ったカフェ |
時間の制約で雲嘉五連峰のうちの龍興宮から先の三座は訪れることができなかったが、二座でも約900mの標高差を登り十分登りがいがある。登山道上部はかなり急登が続くので、それなりに大変だ。歩行距離は約14キロ、休憩込みで6時間40分ほどだ。産業道路の部分が4,5㎞あり、また道も良いのでそこそこ速い。困難度はコースは、クラス2~3、体力的にクラス3だ。また、雲嘉五連峰残りの三座を改めて登ることにしよう。
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