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2016-10-03

2016年10月2日 平溪平湖山-平湖尖-司公碗帽山 ボランティアが整理した道を歩く

十分駅から望む平湖山から灰窯山への山並み、岩壁が目立つ(2012年夏撮影)
筆者は、去る八月に台湾のネットハイキング雑誌、『健行筆記』で紹介された。その際に、日本の山との比較を尋ねられ、その一つとして台北近郊の山は、ボランティアが新しい道を開いたりメンテをしたりということを、指摘した。山道は、以前生活や軍事のために開かれた古道以外に、純粋に登山活動のための道がある。この道は、政府機関がメンテするものもあるが、ボランティアが開いた道が多くある。彼らは、日本と同様に退職後、山登など戸外活動を活発に行っているメンバーが多い。台湾は65歳を待たずに50代で退職する人が多いので、パワーがある。もちろん、まだ現役で週末などの自由時間を当てている人も多い。自発的に、多くの不特定山仲間のために活動しているのだ。

東側の南山坪から歩き始める
歩行高度プロファイル
今回の山は、今や台北近郊の有名な観光地となった平溪十分の近くにある。天燈(スカイランタン)と言えば、わかる人もいるだろう。天燈自身については、環境保護の立場から賛否議論はある。十分駅から、基隆河を挟んで対岸に大きな岩壁の山が目立つ。平湖山から司公碗帽山(石後山)を経て灰窯山への山塊だ。標高は400m内外で高い山ではない。アクセスもとても良いが、ここは長らく人気のない山だ。十年以上も前に、藍天隊が入り道の整備をしているが、その後あまり歩かれておらず。不人気ルートの例にならい自然の姿に戻り、歩くのは困難であった。今年の5月に基隆在住のメンバーを中心とする聯合探勘隊が入り、草を刈り枝を除け、危険個所や急坂にロープを取り付け、そして道標を分岐に取り付けるという作業を行った。このメンバーの一人は、今年春半平山の山腹道を歩いた時にであった、ポール・リーさんだ。

司公碗帽山から十分方向を望む、歩いた平湖山からの稜線が、また遠く右には九份の山々も見える
前方にこれから登る山が続く
実際に歩いてみると、とてもアクセスが良いにも関わらず不人気な理由がわかないでもない。標高が低いが急な上り下りが多く、途中には垂直に近い登り降りもある。近くには有名な孝子山石筍尖など、とても良い道の山が多い。何も苦労してこのような山を登らなくても、ということかもしれない。石後山という別称のある司公碗帽山(この名前も正直、ヘンテコリンである。石壁の後ろの山ということで石後山のほうが、個人的にはあっていると思うが)からは、九份金瓜石の山々も含めた、雄大な景色が望める。とてもいい山だと思う。

汐止登山会のメンバーが行く
今回は、筆者も入れて六名のメンバーだ。しばらくご無沙汰していた木柵から795番バスで向かう。数年前にこのバスで平溪を訪れ始めたころに比べ、今は台湾好行バスとして便数も多くなり乗客も多くの遊楽客が増えた。炭鉱の町として賑わい、石炭産業の没落とともに寂れた平溪が、観光地として発展した結果がここに見える。7時40分に、バスがやってくる。時間がまだ早いので、車内は登山客は多いが遊楽客はまだ少ない。約一時間の乗車で、福德宮バス停で下車する。驚いたことに、大勢の登山客がいる。よく見ると汐止登山會のメンバーで、同じ山を登るようだ。

道には台風で吹き飛ばされた枝が落ちている
新しい道標の分岐、ここは先に左に進む
彼らに前後して8時42分、歩き始める。すぐに舗装路突き当りの民家に来る。ここから左に登山道が始まる。と、いっても草深い道だ。汐止登山會は、おそらく30名はいるだろう。少数の我々に道を譲ってくれる。先週、台湾にかなりの被害をもたらした梅姫台風の残した傷跡を心配してきたが、倒木や吹き飛ばされた枝などがあるものの、思ったよりは影響が少ない。沢を越え、8時57分分岐に来る。左は蝙蝠洞(湿洞あるいは、東洞)を経て平湖山へ続く、右は蝙蝠洞(乾洞あるいは、西洞)を経て平湖尖や司公碗帽山へ続く。ここで、まずは左の道をとり登っていく。平湖山と平湖尖は、一字違いだが異なったピークで、さらに途中は断崖で切れている。そのまま縦走できない。ひとまず平湖山へ登り、平湖尖はまた下って登り返す必要がある。

蝙蝠洞
蝙蝠洞内部、水がある
急登が続く
本来は草深い山道は、しっかりと草が刈ってあり問題ない。石段のようなところもあり、ここはもともと住民が歩いた道なのかと思う。分岐から20分ほどで蝙蝠洞に来る。中は水たまりがある。湿洞と呼ばれている理由だ。蝙蝠が洞の上部にたくさん止まっている。藍天隊の説明札は2005年の日付だ。十数分写真などを写した後、また登り始める。ここから、道はがぜん急になる。補助ロープが脇の樹木に渡してある。標高差は100十数メートルだが、結構きつい。蝙蝠洞から約15分の急登後9時35分、稜線に出る。風が吹いており、それまでの暑い登りから、解放される。稜線を右に進む。狭い稜線の左は、産業道路が下に見える。ほんの数分で、平湖山頂上(標高405m)に着く。ここで一休みする。

平湖山頂上
頂上からの眺め、断崖を挟んで手前に今日歩く稜線が見える
来た道を下る
岩壁上の頂上からは、深い谷を挟んで平湖尖、その先に灰窯山、そのさらに向こうには中央尖と峰頭尖がのぞいている。来た道を戻り、登りで苦労した急坂を下る。蝙蝠洞を通り過ぎ、10時25分に分岐に戻る。登りは約40分、下りは30分だ。分岐を右にとり、もう一つの蝙蝠洞へ向かう。道は途中で二つに分かれるがそのさき一緒になる。数分で分岐に着き、左に蝙蝠洞へ向かう。こちらの洞窟は、先のものに比べずっと大きい。ここでまた休憩する。日陰で風が吹いてくるので、ここは気持ちがよい。

もう一つの蝙蝠洞
平湖尖山頂、左に平湖山の断崖が見える
10時50分過ぎ、平湖尖に向け登り始める。ここも急坂が続く。11時18分、頂上(標高386m)につく。視線をさえぎる樹木が切ってあるので、対岸の平湖山がくっきり見える。こちらより少し高く、断崖がひときわ目立つ。少し早いが昼食をとる。日差しが強いが日陰だと、風がありOKだ。さすがに10月なので、夏のような暑さはない。約30分ほどの休憩後、稜線を次の目標にむかって歩き始める。すぐに、垂直の下りが現れる。補助ロープを頼りに下る。岩をまいて進み、分岐を右に下る。急な坂を上り切ると南山坪山の頂上(標高392m)だ。谷を挟んで、岩壁の目立つ灰窯山が立っている。

南山坪山山頂
垂直壁を下る
同じ道を稜線に戻り、さらに下る。最低鞍部に向かう途中、垂直に切り立った、4,5メートルの岩を下る。ロープがあるので助かるが、なければほとんど下降は無理だ。ボランティアの仕事に頭が下がる。そこから登り返すと、12時33分、分岐に来る。前方に送電鉄塔があるがその保守のための保線路が左に下っていく。尾根をそのまま直進する。ものを輸送することができるように、簡易モノレールの線路が上がってきている。何を運ぶためのものなのか。その先すこし行ったところで、すこし休憩する。1時間ほど歩いた。

司公碗帽山への登りから見る広い景色
司公碗帽山山頂
休憩後、登り始める。12時59分、尾根にのりそこから司公碗帽山へと登りが続く。まばらな灌木の間の登りは、風が吹き抜けていくので楽だ。急な登りを越えると、視界が広がる。背後には、先ほど通り過ぎた平湖山は平湖尖だけでなく、その遠く向こうには基隆山をはじめとして、燦光寮山草山までの九份金瓜石の山並みが続いてる。今日は天気が良く、とても視界が広い。登るにつれ、視野はさらに広がり基隆河対岸の五分山から姜子寮山までの山並みが北側に、また北から西方向にかけて内大平林山や大平林山の山並みが続いている。13時18分、司公碗帽山山頂(標高445m)に到着する。今日の行程中の最高点だ。ベンチが二つ設けられており、場違いの感じだ。冷えたビールを開け、休憩する。十分の谷間を挟んで、左右の山々がずっと見渡せる。歩いてきた稜線も見える。

立派な地方政府による道標
約30分ほどの休憩後、下山を開始する。ここから灰窯山をへて下る稜線の道が続く。この部分もボランティアによって整備された部分だ。しかし、メンバーは疲れ気味で直接産業道路へ下ることにする。すぐに立派な道標が現れ、左に急坂を下る。道脇にはこれまた立派なロープ手すりが取り付けられている。ここは地元政府による整備だ。14時登山口に着く。ここでまた一休みする。

道を塞ぐ倒木
のこりは、バスの通う106号公路まで下るだけだ。急な舗装路を下っていく。道には台風でなぎ倒された樹が道をふさいでいる。下りきり、左からの産業道路を合わせ、右にさらに進む。萬寶洞へと続く道を左に分け、今日は右へ行く。15時6分、106号公路に出る。左に少し進み、莫內咖啡(モネ・カフェ)で休憩する。冷たい飲み物がとてもうれしい。ほとんど車やバイクでやってくる顧客の中では我々はちょっと異色だ。16時過ぎのバスで帰途についた。

モネ・カフェ内部
司公碗帽山山頂のメンバー
今回のルートは、標高は大したことがないが、かなり急な上り下りが現れ、ちょっと手ごわい。低いだけに馬鹿にしていると、面食らうだろう。尾根もかなり痩せた場所があり、誤って落ちれば断崖だ。休憩が長いこともあるが、わずか6㎞足らずを6時間かけている。今回はボランティアのおかげで歩ける、実に感謝だ。願わくば、一時の賑わいでなく、今後も登山者が訪れまた草に埋もれることがないようにと思う。今日のルートは、山道自体はクラス4、体力は3だ。経験者向けのルートである。

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