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菜頭崙上のメンバー |
筆者の台北の住まい近くの大通りから北を望むと、晴れの日は通りの向こうに小觀音山が望める。頭に航空用通信施設やその他放送通信関係のアンテナをいただくこの山は、台北市最高峰の七星山と大きな山容の大屯山主峰の間に挟まれて、ちょっと存在が薄い。さらに、七星山や大屯山は、陽明山国家公園が維持管理する立派な石畳登山道があるが、小觀音山はそうした立派な登山道は全くない。数年前までは、矢竹に覆われた稜線は、歩くのも大変だった。云わば、物好きな登山者だけの秘境だった。しかし、台湾の登山人口増加に伴い、ボランティアがそうした矢竹を刈り取り、或いは新しい道を切り開き、今ではかなりの登山が行われている。
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南から北へと山を越える |
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一度谷に下り、また登り返す |
新しく切り開かれた道に、
今月初めに訪れた保羅尖と同じく、故ポール・リーさんのグループが開いたものがある。
小觀音山から三板橋方向に下る北西北稜線の中ほどから、枝尾根を伝って大屯溪古道へ直接下る道である。この枝尾根は清風嶺と名付けられている。今回のルートは、小觀音山西峰を登り、北西北稜線をたどって清風嶺経由で大屯溪の谷間に下る。その後少し登り返して
竿尾崙の稜線へ登り、小觀音山西北峰を往復し小觀音山北北峰から菜頭崙へ、そこから五腳松古道をずっと下って五腳松咖啡の登り口へ、さらに産業道路を後店バス停へ歩いた。天気予報では午後から少し回復の様子だが、一日中霧雨が降る天気で、稜線ではかなり強い寒い風に曝され、休みもあまりとることなく歩き終えた。
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鞍部バス停は雨の中 |
MRT劍潭駅わきの紅五番バス停に集合し、7時半ごろのバスで陽明山バスターミナルに向かう。乗り込んだときは雨は降っていないかったが、高度を上げるにつれ雨が降り出す。陽明山バスターミナルにつくと、108番バスが発車するところだ。ここで待っていたメンバーと合流し、百拉卡公路の鞍部バス停に向かう。気象台がある鞍部は、まさに大屯山と小觀音山との鞍部にある。
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雨具をつけて出発だ、背後の家屋は取り壊され平地になっている |
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きれいに刈られた矢竹の道 |
8時18分、雨のそぼ降る鞍部で降りる。もともと脇にあった家は一軒を除いて取り壊され、更地になっている。違法建築だったのだろうか。相変わらず野良犬は多い。上下の雨具を取り付け、8時35分に出発する。舗装路を数分登る。左に山道の入り口がある。初めて訪れた4年前にはなかった新しい道である。入ってすぐに、左から山の家遺跡(日本時代に建てた山小屋、今は煙突と土台だけが残っている)を合わせる。右にとり坂を上っていく。間もなく、この山の特徴である矢竹の中を行く。矢竹はしっかり刈られて、良い道だ。9時4分、右からやってくる道(以前はこの道しかなかった)と合流、左にとり進む。濃霧に包まれた稜線上の矢竹がない場所は、右側から強い風が吹きつける。ちょっとした岩場を過ぎ、9時20分西峰(標高1048m)に着く。
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小觀音山西峰 |
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強風の吹きすさぶ稜線 |
更に10分ほど稜線を進む。右に
大屯溪古道へ下る道を分け、岩の北竹子山頂上(標高1056m、以前は1056m峰と呼ばれている)を通り過ぎる。その先わずかで北西北稜線の分岐が現れる。急な坂道を下り始める。三年前は藪漕ぎしながら下った道は、しっかり矢竹が刈られて広くよい道になっている。9時57分、右へ清風嶺の分岐がある。こちらも急な坂道だ。冷たい風が、矢竹を揺さぶりながら稜線を吹き抜ける。10時9分、清風崙と思われる場所(矢竹に取り付けられた標識は文字が消えてしまっている)を過ぎる。
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急坂を下る |
先の急坂にましてさらに急な、それこそ70度はあるのではないかと思われる長い急坂が始まる。矢竹をつかみ、取り付けらた補助ロープを頼りに下る。天気がよくて下のほうが見えると、かなり怖いかもしれないが、霧の中で見える範囲が限られそうした感じはわかない。それよりも濡れたロープをつかむと、袖の中に水が入ってくるほうが嫌だ。一度、右にトラバースし、更に下る。10時42分、坂の緩やかな場所になる
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矢竹に取り付けられたペナント |
更に矢竹の稜線道を下り、10時52分神雁關と記されたペナントを見る。その先少しで、矢竹は終わり森の中に入る。坂は相変わらず急だ。沢音が大きくなり、11時12分大屯溪古道の分岐に降りる。右に古道を歩き始める。ここからは、上りが始まる。すぐに沢を越え、右岸を登っていく。右岸から左岸、また右岸へと進む。11時22分、大きな滑滝の前を横切り、少し登った開けた場所で食事休憩をとる。霧雨は引き続き降っている。その中で食事をとる。
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矢竹の間の尾根道 |
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大屯溪古道の滑滝を上に見て沢をこえる |
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雨の中で昼食休憩 |
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霧の中の小觀音山西北峰 |
休んでいると寒い。11時50分、古道を歩き始める。沢底が右下低くなる。11時57分、左に竿尾崙の稜線へ直接登る道の分岐に来る。左にとり急坂を登り始める。踏み跡は古道に比べると細く、歩く登山者があまり多くないことがわかる。山腹から、小尾根にとりつく。12時31分、左に竿尾崙への道を分ける。さらに少し登り、もう一つの分岐に来る。左に取り少し行く、小觀音山西北峰への分岐を見て、少しの急坂を登り12時42分西北峰に着く。晴れていれば、障害のない頂上から対岸に先ほど下った清風嶺などが見えるはずだが、真っ白な濃霧の中、風に吹かれて写真を撮り、早々に往路を戻る。
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小觀音山北北峰 |
先ほどの分岐から、尾根上の道を登る。標高差はあと100mほどだ。登るにつれ、矢竹が現れる。13時12分、小觀音山北北峰(標高1040m)がある分岐に来る。主稜線を左に少し進み、菜頭崙(標高1037m)を過ぎる。ここから後はずっと下りだ。矢竹の急坂をまた下る。13時23分、大石のわきを過ぎる。天気が良ければここも広い展望があるが、残念だ。13時50分、矢竹から森の中に入りその少し先で、分岐に来る。右は
五腳松古道,左は
茄冬坑古道だ。
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霧の中の大石展望台 |
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紅葉瀑布への分岐点 |
茄冬坑古道は谷を、五腳松古道は尾根を平行に進む道である。分岐から少し登り始める。また矢竹が長く続くが、こちらはあまり刈られていないので、濡れた葉の中を泳いでいかなければならない。暫くして下りはじめ、まだかまだかと思う頃、矢竹から出て14時12分右に紅葉瀑布へと続く道を分け、少し下っていくと金孔平に着く。1930年台に金鉱を探すため、ここで採掘作業が行われていた。金の竪穴があるので、金孔平の名前である。尾根上にある比較的平らな場所だ。以前は作業小屋などもあったのだろう。
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金孔平にて |
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厚葉衛矛樹に取り付けられた道標 |
金孔平から尾根をちょっと登り返す途中、右に深い竪穴がある。落ちてしまうと大変だ。
前回訪れた時はここに犬が誤って落ちており、後日この犬の救出が有志によって行われた。矢竹の間の820峰を過ぎ、また下り始める。14時30分、厚葉衛矛樹の分岐を過ぎる。ここから先は、筆者にとって初めて歩くセクションだ。矢竹はまだしばらく続く。14時45分、矢竹の道は終わり雑木林の森に入る。坂も緩やかになり、下草の生える雑木林の道は、雨さえ降っていなければ実に快適だ。またちょっと急坂を下り、15時32分幅の広い土の道を横切る。最後に桂竹の間を下り15時39分、青山街の五腳松咖啡のわきに降り立つ。これで山道は終わりだ。
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広い道を横切る |
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五腳松咖啡わきの登山口 |
帰りは、F132のバスが近くを通るが、17時頃にならないと来ない。更に雨を防ぐ場所もない。そこで後店バス停に行き877番バスで淡水に戻ることにする。車道を行き、分岐を左に取って下る。下り切ったところで左に折れて後店に16時半過ぎに到着する。コンクリ製あずま屋のバス停で、雨具をとり着替える。じっとしていると寒い。877番バスは17時22分、10数分遅れてやってきた。
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877番バスがやってきた |
今回は、終日雨の活動だった。寒い雨のそぼ降る中で、一日かけて山を越えたわけだ。景色もなく、矢竹でぬれて歩くのは、山が好きでなければやらないだろう。山が好きであっても、こうした山行は好き好んでやっているわけでもない。午後からの天気回復を期待していたが、実現しなかった。水平移動距離9㎞、累計の登坂800m、下降1370m、行動時間8時間だ。一度下って登り返すというルートだが、全体としては下りの多い歩きだ。清風嶺の道は、かなり急な道なので経験者向きだ。その他はクラス3だ。
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