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2020-04-30

2020年4月30日 紀州寮山 - 鳥嘴尖山 - 桶后林道 坪林から山を越えて烏來へ

木々の向こうに鳥嘴尖が見えた、これを越せば烏來だ
距離感というものは、地図で見れば明らかに近いのに交通機関で要する時間によって、その遠近が形成されることが多い。坪林と烏來は、実は北勢溪と南勢溪との合流部から立ち上がる大桶山から宜蘭の蘭陽平野を囲む山脈の山峰烘爐地山へと続く山脈によって隔てられている。この山脈を越えれば、一カ所からもう一カ所へと行くことができるが、車で行けば途中石碇や新店などの土地を通り、かなりの大回りをしなければならない。

北側坪林から南側烏來へ縦走
山越えの歩行高度表
今回縦走の位置
今回の山行はまさに、自分の足で山を越え坪林から烏來へと歩くものだ。山脈は、標高1000mクラスの山が続き、人里からは遠く山深い。特に烏來側は、深い桶後溪に刻まれた谷があるので、もともと人里は孝義を過ぎるとない。100年以上前は、この地は原住民タイヤル族の領域、坪林側は漢族の領域ということもあり、そうした歴史背景がこの両地をつなぐものがなかったということも関係しているかもしれない。今回のルートは、以前より興味があった。ところが、ほとんど登山者が歩かない奥深い山は、台風で壊滅的な被害が発生した桶後溪の山谷が再び開放されるまでは、アクセスが難しかった。過去二、三か月の間に藍天隊が今回歩いた地域に、回数を分けて入り山道を整備してくれたことも、実現できた大きな理由だ。

鳥嘴尖にて
今回の出発点九芎根から紀州寮山は二月に、終着点の桶后林道13K地点は二週間前に大礁溪山登山の時に訪れている。そうしたことも、計画実行には助けになる。アクセスについては、坪林側は新北市のコミュニティバスが九芎根101まであるが、烏來側は公共交通機関がない。縦走でA地点からB地点へと、出発点と到着店が異なるので車で行くわけにはいかない。そこでタクシーを予約しておき、迎えてもらった。

終点九芎根101に到着したF722バス
F722新巴士金瓜寮線は、休日は便数が多いが、平日はその半分しかない。8時過ぎに坪林國中バス停を発車する便を逃すわけにはいかない。また20人の定員制限がある。そこで乗車を確保するためにMRT大坪林近くから、メンバー14名は7時発台北客運9028番バスで向かう。7時半過ぎに到着し、行列してF722バスを待つ。8時過ぎにやってきたF722は、923番バスの接続を待ち出発する。北宜公路を少し走った後、南勢溪を渡り金瓜溪にそって進む。8時40分、終点九芎根101バス停に到着する。二日続く晴天が今日も続き、空が青くすがすがしい。

登り始めてすぐ、金瓜寮溪対岸の芋圓尖の山並みを背後に見る
最初の分岐、右への道の道標の腕が切り取られている
目的の山越え地点へは、金瓜溪左岸の九芎根山から金紙崙へと進んで向かうこともできる。今回は右岸になる紀州寮山から鳥嘴尖へと続く尾根を進んで向かう。距離的には、ほぼ同じようなものだが、鳥嘴尖の方が高く急坂を登る必要がある。8時50分、バス停近くの登山口から出発する。2月に来た時に比べると、二日間の晴れが道を乾かして歩きやすくなっている。すぐに雑木林の中の急登になる。15分ほどで一度くだり、道標を見る。本来は右に下る道があったようだが、今は草に埋もれている。もともとあった芋圓尖と記された道標の腕は切り取られている。正しくないことに気づいたのだろう。またしばらく急坂が続く。その後しばらくは緩やかな尾根を進んでいく。

倒木を越えて進む
山名板が取り付けられた紀州寮山山頂
9時40分、左に道を分ける分岐を通過する。左は、尾根を越えて姑婆寮尖へと記すが、一度谷に下り姑婆寮山へ登り返す道を歩く登山者がいるのだろうか。右に急坂を登る。10分足らずで主稜線の分岐に来る。右へ紀州寮山へ向かう。わずかな上り下りのあと、分岐に来る。左にすすみ、10時3分二度目の紀州寮山山頂(標高725m)につく。2月に訪れ時にはなかった新しい山名板もある。

大きながけ崩れの上を進む
ロープの急坂を登る、背後には歩いた尾根
先ほどの分岐にもどり、主稜線を進む。先に鞍部に下り登り返す。鞍部付近は、左(東)側の沢源頭部が大きながけ崩れになっている。対岸遠くには、姑婆寮山方向の稜線が見える。しばらく小さな起伏の尾根を行く。11時ごろから急坂が始まる。草はしっかり刈られ、急坂にはロープが渡してある。実に助かる。樹木のない坂道からは、先ほどのがけ崩れがある稜線や紀州寮山が見える。稜線上は風が吹いているので、坂道はつらいがそれほど暑くない。11時20分平らな場所で休憩をとる。

金石榴
芋圓尖を中心に対岸の山並み、遠くにニ格山や台北101が望める
倒肖楠山に登りつく
急坂はさらに続く。稜線上の樹木は、風が強く当たるせいなのか樹木が少ないところもある。高度が上がってきたので、遠くまで見える。右側は、金紙崙から北に延びている金瓜寮溪左岸の山々だ。その遠くは、先日歩いた直潭山列二格山だ。かすかに台北101ビルが稜線上に頭を出している。道脇には金石榴の群生が多い。11時55分、倒肖楠山山頂(標高955m)に着く。樹木のまばらな山頂は、大きくはないが数名が腰を下ろして食事するには十分だ。風が吹いていく山頂で昼食をとる。

尾根を鳥嘴尖へ進む
尾根の左(東)側に姑婆寮山の山並みが続く
鳥嘴尖山山頂に到着
12時40分過ぎ歩きはじめる。前方に木々を通して鳥嘴尖山が見える。高度差は100mほどだが、上り下りが続き、距離に比べて時間がかかる。シダがしっかり刈られ、乾いていて歩きやすい。最後にちょっと長い上りを行き、13時30分鳥嘴尖山(別名鳥口尖山、標高1043m)に着く。周囲は樹木だ。文字も判読できない古い道標の脇には、今年2月の道しるべが新しい。

成長した樹木に取り込まれてしまった古い山名板
烘爐地山(右)へと続く坪林-烏來境界の主稜線
金紙崙への分岐
刈られたカヤの間の道を下る
小休憩のあと下り始める。まだ少し上り下りがある。14時4分、道わきの樹木に古い道しるべがあるが判読できない。おそらく稜線上を姑婆寮山へ行く道の分岐なのだろうが、草木で道筋がわからない。主稜線についたので、展望のきく草むらからは桶後溪流域の山々が見える。姑婆寮山から烘爐地山へと続く山並が望める。14時17分、右に金紙崙への道を分ける。桶後溪への下り道が始まる。カヤがしっかり刈られた道が続く。とても助かる。対岸の小礁溪山や大礁溪山は頭に雲をかぶっている。14時半、杉人造林に入る。森の中をストレートに下る道は、とても急だ。14時45分、廃棄された林道に降りる。小休憩をとる。

杉林の急坂を下る
平らな廃棄林道に降りる
山腹道は沢を渡る
山道はまた森の中の急坂を行く。ひたすら下る。15時12分、また廃棄林道に降りる。新しい道しるべが取り付けられている。道は山腹を横切る形で下っていく。15時24分、沢を越え山腹を縫っていく。おそらく以前の林業作業道だろう。林業作業が停止されて久しく、道の整備もされていない。ところどころ崩れている。

山崩れ部分を通過
送電鉄塔脇の廃棄設備、ここから保線路を下る
15時半、送電鉄塔に着く。ここから先は、台湾電力の保線路だ。道幅が広がり状態も良くなる。ジグザグに杉林の間を下り、15時44分廃棄された台湾電力の現場建物につく。桶後溪はすぐ下だ。草に埋もれたコンクリ舗装の道や階段を下り、吊橋に着く。吊橋は破損し通過できないので、沢に降りて渡渉する。浅瀬を選び渡る。16時、予約しているタクシーは17時過ぎまで来ないので、沢沿いでくつろぎ待つ。17時過ぎにタクシーがやってきた。

台湾電力の廃棄された建物
壊れた吊橋の下で桶後溪を渡渉する
前回訪れた雨の桶後溪とは違い、明るい沢沿いはとても気持ちが良い。車で13K地点まで来れるようになったので、これから夏にかけて多くの人が訪れるようになるだろう。それに従い、数年間ほっておかれた桶後溪周辺の山登りも復活してくるだろう。筆者にとってまだ未踏の山や道が多い桶後溪の山々は、これから歩いていきたいと思う。今回は、歩行距離約9㎞、登坂累計約1000m、休憩込み所要時間7時間半というところ。道がよい今は、レベル3だが、歩かれなくなり道が自然に戻ってしまうと、いきなりレベル4以上というところだ。

2020-04-29

2020年4月26日 直潭山列縱走 8年ぶりの縦走

直潭山から東に延びる列山(2018年6月撮影)
翡翠水庫の北側に連なる山々は、多くの送電鉄塔を頂く直潭山からいくつかの山を越えて東方向に連なる。一番東側の雷公埤山までの間の山々の縦走は、直潭山列縱走路として去年藍天隊が整備をした。この山々は、8年前に一人で縦走した場所でもある。その時は、雷公埤山からではなく、雞心尖からであるので、まったくの重複ではない。雷公埤山は、その後別の機会に訪れている。今回は天候がすぐれず、ダムはほぼ霧の中で展望がなかったのは残念だ。昼頃霧雨が少し強くなり、また下山途中でも降られたが、予定コースは歩いた。
翡翠水庫の北に連なる山々、東から歩きはじめる
次第に高度を上げていく
二格公園バス停で緑12番バスを下車、付近にはバイク
休日の北宜公路は、いまやバイクやスポーツカーのレーストラック化している。そして、時々サイクリストが申し訳なさそうに、道の端を行く。7時38分、名称が二格公園と変更された栳寮に緑12番バスで下車すると、すぐわきに多くのバイクが停まっている。ライダーは10名ぐらいいるだろうか。今日はメンバー全員で12名だ。支度をして宜蘭方向へ少し行く。右に登山口がある。樹木を育てている斜面を登り、すぐに尾根上を行く山道になる。道脇の幹に取りつけられた直潭山列縱走と記された表示が新しい。

直潭山列縱走の道標
二格山方向は雲がかかっている
道筋ははっきりしており、常に歩かれているようだ。やせた尾根を進む。破傘蕨の尾根上からは、右に二格山-筆架山方向とその間の谷間がうっすらと見える。8時、右へ北宜公路への道を分ける。その数分先で、また分岐がある。左に雷公埤山方向へ登る。8時16分、また分岐がある。右は谷間に降りていく。坂を少し行き、8時18分雷公埤山山頂(標高548m)に着く。縦走第一番目のピークで、続く山峰のなかでもっとも低い。樹木の山頂は展望がない。もともと直進して下っていくつもりだったが、ルートを知っているメンバーがその先は整備されていないとのこと。そこで折り返し別ルートで進むことにする。

右に谷へ道が下る、倒木に道標
雷公埤山山頂
棚田跡の谷間を下る
すぐに先ほどの分岐に着く。道にツツジの仲間の西施花が落ちている。見上げると真上にはまだ花が咲いている。すぐに谷間に降り、沢沿いの棚田跡が現れる。数枚の棚田を下り、8時40分右からの道を合わせる。先ほど雷公埤山へ登る途中で右に分かれた道だ。ここから先は雷公埤古道ということだ。谷間の道を下っていく。石で水路が造られ、道はそのわきを行く。右は棚田跡のようだ。人が生活していた跡がのごる。8時47分、分岐に来る。古道は沢沿いに下っていく。古道は、翡翠水庫ができる前、湖底に沈んた集落へと続く道だった。右にとり、山腹沿いの道を進む。沢を渡る丸木橋は、苔が生えて滑りやすい。

分岐の丸木橋、左はダム方向へ下る雷公埤古道、右の道を進む
崖崩れ高巻きを登る
廃坑空気取り入れ口
すこし登っていく。前面にがけ崩れが現れる。最近起きた崖崩れのようで、まだ傷跡が生々しい。少し高巻いて登り、本来の山腹を行く道に降りる。9時7分、右の山壁に穴が開いている。そばに取り付けられた説明では、坑道の空気取り入れ口とのこと。以前は近くに炭鉱があったのだろう。あまり起伏のない道を行くこと約10分、右からの道を合わせる。北宜公路へと続く蕃薯寮古道だ。分岐部分で休みを取る。

右に蕃薯寮古道が下る分岐
農道から左に下る
車閂寮古道の分岐部を行く
数分のぼると、幅のある土の農道にでる。右にとり道なりに登っていく。畑が現れ、地元民が仕事をしている。9時36分、左に山道が分岐する。こちらを取り下る。下り切ったところに分岐がある。左は、車閂寮古道で、谷間に下った後雷公埤山へと続く。前にはこちらを歩いて雷公埤山へと歩いた。右にとり進む。すぐに秀峰路105號の住所プレートが付く、無人の民家の前を通る。すぐ下には別の民家があり、犬の吠え声が聞こえてくる。

秀峰路105號の前を進む
古い道標がある雞心尖への分岐
右に秀峰路が分かれる。山道を進んでいく。そのうち尾根上を進み、10時3分古い道しるべの残る雞心尖からの道と合流する。尾根上の道を追っていく。少し開けた場所がある。隘勇線の隘寮遺跡だ。直潭山からの稜線は、その昔原住民タイヤル族との境界の役割の隘勇線があった。隘寮はその境界線の警備員の駐在場所だ。その先道を右に分け、最後の坂を登る。年代物の鉄板製の立派な道しるべが幹に取り付けられている。この周辺は、昔から山登りが行われていた場所のようだ。カヤの間を登り、10時23分、二番目のピークとなる中嶺山山頂(標高625m)につく。霧で周囲は真っ白、展望はない。

霧の中の中嶺山山頂
ダム湖面がかろうじて見える
同じ地点から天気がよければこのように見える(2012年10月撮影)
金属板道標のある分岐は、左へ
石碇後山山頂のメンバー
十数分の休憩後、下り始める。10分ほど下り、山の文字がくっきりわかる林務局のコンクリ柱をみてすぐ、左側が開ける。かろうじてダムの湖面が見えるが、その先の山々は霧の中だ。隘寮の遺跡と思われる低い石積壁がある場所で右に秀峰路へと続く下山道を分ける。左に登り始める。間もなく、古い道しるべを見る。周囲は霧が濃い。急坂を通り過ぎ、11時22分、石碇後山(標高669m)につく。きれいに草が刈られた山頂は、天気が良ければ翡翠水庫などが良く見えるはずだが、すべて霧の中だ。実は、この山頂は遺失していた三角点基石がみつかり、それが戻された場所で8年前に通過した場所とは異なる。

岩の露出する稜線を行く
尾根上の道は、ところどころ岩が現れ幅も狭いところを通過する。上り下りをすぎ、急坂を登る。11時54分、赤腳蘭山山頂(標高640m)に着く。ちょうど昼時なので、ここで昼食休憩とする。食事をしている間に、木の葉を通してぽつぽつ雨が落ち始める。雨具を出し取り付ける。午後から回復基調のはずだが、いよいよ雨となった。12時半前、下り始める。すぐに送電鉄塔の下にくる。ここから右に下山の道がある。メンバー中二人はここで分かれ、下山する。我々はそのまま暗寶劍山へ向かう。

赤腳蘭山山頂で昼食、雨が降り出した
急坂を登る
さらに下り、左から烏嘴尖から道を合わせる。先ほどの赤腳蘭山から烏嘴尖への道もそうだが、あまり歩かれていないようで、草深い。登り返しが始まる。補助ロープがあるけっこう急な坂を登る。ちょっと規模の大きい隘寮遺跡を見る。下って登り返す。13時3分、暗寶劍山山頂(標高670m)につく。雨は止み、空は明るくなってきている。雨具を脱ぐ。雨脚が強まれば途中で下山も考えたが、この様子では予定通り歩けるようだ。

隘寮遺跡
暗寶劍山山頂
翠峰路が前方に見えた
下って間もなくまた隘寮遺跡を通過し、送電鉄塔を過ぎると保線路となり、道の状態は良くなる。13時29分、翠峰路にでる。直潭山への登山口で小休憩をとり、登り始める。はじめは緩やかな坂が続く。急な坂が現れ登っていく。分岐をすぎて13時56分直潭山山頂(標高728m)に着く。山頂は天候観測の機器が据えられ、前と同じだ。縦走最後のピークへは、考えていたより早く到着した。

直潭山山頂にて
急坂を下る
14時17分、山頂から下り始める。少し戻り、二龍山方向への尾根道を下る。間もなく急坂が始まる。遠くには、雲の下の新店方向が見える。岩の露出する部分を通り過ぎ、14時36分花園新城方向への道が右に分岐する。こちらを取り下り始める。この道はあまり歩かれていないようだ。それでも新しいロープもあり、メンテはされているようだ。下っていくと、地図上とは方向が違う道の分岐がある。どちらが正しいのか、探ってみる。手持ちの地図にはないが、方向は正しいので右に平らな道を進む。14時53分、果たしてすぐに永福路にでる。

永福路にでた
大型犬がしきりに吠える
舗装路を下る。車はここまでほとんど来ないようで路面には苔が生えている。つづら折りに下っていく。15時、民家が現れる。犬が猛烈に吠え立てる。さらに下っていく。すぐに右に小沢を見る。汚れた長靴を洗う。雨が降り出し、傘をさす。15時30分、右に梅崗路に入り少し登っていく。周囲には油桐花が咲いている。湖興福德宮を通り過ぎ花園新城に入ってく。山腹に広がる民家脇の階段を下り、16時バス停に着く。着替えなどすませ16時30分発の緑3番バスで帰途に就いた。

民家をみて永福路を下っていく
油桐花が満開だ
距離約15キロ、累計登坂1000m弱だ。休憩込みで約8時間を要した。人数は12名であったが、足並みがそろっていたので、考えていたより速く進行できた。道の状態が良いのも勿論関係している。天候が良くなく、展望がなかったのは残念だ。前回は、遠くまで眺めがきいたのとは差が大きい。ただ、予定通りのルートを素早く歩いたのは、それはそれで成就感がある。現在の状態であれば、ルートはレベル3、体力的にはレベル3.5といったところか。足に自信があれば、お薦めだ。
花園新城のバス停に到着
草の上に落ちた西施花