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2012-03-03

2012年3月1日 烏來山-大桶山縱走

大桶山忠治登山道入口
烏來の山は今回はじめて登る。台北を取り巻く山としてみると、烏来の山々は前衛の山々の後ろに控える奥まった山である。前衛に位置する山とは違い、台北の街はもう見えない。前回の直潭山は前衛の山で、稜線から台北を俯瞰することができたが、今回の山行では台北方向は、これら前衛の山のひとつ獅仔頭山が見えるのみである。また、 烏來の山は標高も相対的に高い。台湾の背骨を形成する雪山山脈などに連なっていく山である。

烏来の山々は奥まったところにある
左下の烏来から出発(クリックで拡大)
烏来山(標高820m)や大桶山(916m)はこの烏来山塊の中で、一番台北に近い山である。台北からの交通アクセスの利便もあり、登山客も多い。大桶山は、登山道が5つあるが、ひとつは不通になっているようだ。今回は、烏来バス終点の脇にある妙心寺の近くから取り付いて烏来山に登り、尾根を縦走して大桶山へ、その後北方向に伸びる尾根を行く忠治村への登山道を下った。烏来山への登りは、等高線が立て込んでいる、標高差700m弱の非常に急な登り一本の道で、地方行政のメンテなどは無いような、自然に近い道である。一方、大桶山から忠治村への道は、石畳ではないが枕木を使ったよく整備された道である。大桶山山頂の看板では烏来山への道には入らないように、という注意書がしてある。実際、補助ロープがかかっている岩場などが結構あり、尾根道部分は幅も狭いので、山慣れていないと危ない。特に下りに選ぶと、雨の日などは大変苦労するだろう。

車窓から見る大桶山と南勢渓
冬のころに比べると、晴れの日が多くなっているが、それでも数日降り続いた雨が途切れ、晴れ間が訪れた。朝7時前に自宅を出発、公館から849番バスに乗る。前の便が出た直後のようで、15分ぐらい待って乗車した。それでも便数が多いので気楽だ。前回と同じように新店MRT駅で、バスは満員になる。新店渓に沿っていくと、霧が晴れ始め大きな山容の大桶山が姿を現した。直潭山登山口の民壮亭を過ぎ、新下亀山橋を越えると南勢渓に沿っていく。大桶山が近くに迫ってくる。公館から約1時間、8時半に烏来終点に到着した。

出発点の烏来バス停と脇の妙心寺山門
身支度を整え、バス停の直ぐ脇にある妙心寺の山門をくぐり登り始める。しばらく行くと左に石段がある。登山クラブのリボンがかかっている。ここが登山道入口である。はじめは水管に沿って道が続き、大きな青色の水タンクがある場所にたどり着く。道はさらに山腹に沿って延びていくが、登山道は角を曲がった直ぐ右から登っていく。ここから烏来山前峰まで、途中標高550mぐらいから少しの間なだらかになる以外は、ほぼ一本の急な登りとなる。ただ、道幅もそこそこあり、結構歩かれている感じだ。道は落ち葉などがたくさんあるが、数日続いた雨降りの後でも、ぬかるみはない。しばらく行くと、補助ロープがある急な登りも現れ始める。登りはじめて30分ぐらいで、柱だけ残った道しるべがある。かなり前に地方行政が道しるべを立てたのだろうが、メンテされていないので朽ち果てたのだろう。同じような道しるべは、まだ標識の腕が残っているものもあるが、大桶山まで数箇所あった。

登って間もなく現れる水タンク

登山道は補助ロープ箇所が多数ある


やせ尾根を行く
尾根上の岩場
歩き始めて約1時間で、烏来山の西にのびる枝尾根に取り付く。さらに30分ぐらいいくと、太陽光がさしてきて、山道は明るくなる。途中、何度も手も足も使って登る場面が出てくる。中国語で山登りは「爬山」とも言うが、「爬」とは這うことである。この山道はまさに文字どおり手も足も使って登らなければならない。木の根やロープをつかむので、手袋は必須だ。登りはじめて1時間半、標高を約450mぐらい稼いだところで、道はなだらかなのぼりとなった。ここは尾根幅も広い。気楽な道だ。しかし、それも約10分ぐらいで終わり、また急なのぼりとなる。左に木々の間から大桶山の大きな山容が見え隠れする。尾根の幅も狭まり左右は切り立っている。そこに岩場が出てくるので注意が必要だ。朝方雨が降ったのだろうか、岩は湿っている。木々が途切れた岩場は、つかまる根もなく、ロープが頼りだ。登りきると下の谷間に出発点の烏来集落が展望できる。向かい側は拔刀爾山(標高1117m)だ。その後ろには卡保山(1582m)、北插天山(1727m)の山脈が続いている。この場所から、さらに登ること25分、11時15分烏来山前峰に着いた。途中、左に木々の間から獅仔頭山,東獅仔頭山また、獅仔頭山から延びる尾根上に造成された大台北華城が見えた。

獅仔頭山・東獅仔頭山、右にのびる尾根にある建物群は大台北華城

岩場の上部から見る烏来集落と背後の拔刀爾山、左奥のとがったピークは卡保山
烏来山前峰(789m)は、西の烏来方向に開けているが、その他は木々に周囲を覆われている。そこそこ広く、数人が休憩するにも十分だ。それまでほとんど休憩に適したところが無いので、ここはよい休憩場所だ。食事休憩とする。登り一本だったので、けっこぅ疲れた。天気もよく、気温も程度で快適だ。休憩後、烏来山に進む。少し下った後、またやせ尾根の登りがあるが、15分で烏来山(820m)に着いた。頂上は、山道から少し離れた左に登ったところにあるが、周囲はすべて木にかこまれて展望はまったく無い。そこそこに山道へもどり、大桶山に向けて進む。

烏来山前峰頂上
道脇の花
道は今までの東から北方向になる。左には、これから行く大桶山が大きく見える。頂上には設置されている通信設備のアンテナも見える。尾根は幅が広くなり、登りはあるものの烏来山前峰までの部分に比べるとずっと楽だ。数十メートルの小ピークを2つほど越えていく。ピークの上から南方向が開けて見える。内洞林道が山腹を走る大保克山が対岸に控えている。ピークから下り鞍部につくと朽ちた道しるべがある。道しるべは標示板が残っており、大桶山方向2.8kmとなっている。ただ、これは反対方向の烏来まで2.8kmの間違いだろう。歩いていみれば、ここから大桶山まで1kmもなかった。途中にはもうひとつ大桶山方向0.5kmという道しるべも立っているが、これのほうが正しいのだろう。鞍部からは、標高差100mをゆっくりした山腹の登りを行き、12時50分、烏来から登りはじめて約4時間で、大桶山(916m)頂上に到着した。
稜線から南方向を見る、大保克山
大桶山、頂上にはアンテナが見える
大桶山への鞍部と朽ちた道標示
広くなだらかな大桶山頂上は、通信設備が設けられている。周囲はすべて樹木で覆われて、景観はまったくない。奥まったところから、忠治村へつながる別の道が始まるが、ふさがれている。注意書きにはこの道は崩れて不通とのこと。頂上で2度目の休憩をとり、少し食事をする。休んでいるうちに、忠治村方向から、登山客が登ってきた。今日はじめて出会う登山客である。話によると、登りの途中で烏来山を経て下ってきた、別の登山客とすれ違ったそうだ。結構登山客がいるものだ。

大桶山頂上

杉の美林を下る
30分ほど休憩した後、下り始める。ほとんど平らな道を大桶山東峰に向かっていく。道はかなりぬかっている場所もある。数分で落鳳山への分岐についた。道案内には東峰を指しているものもある。とりあえず行ってみると、ほんのわずかで三角点があった。ここが東峰だろう。ただ、ピークでもなければ景観もない。三角点ハンターには意義があるだろうが。大桶山は頂上が大きな山容である、ここまで全体が頂上というところだろう。分岐に戻って、下り道を下る。周囲は杉の美林である。以前陽明山系の頂山付近で広範囲の杉林を見たが、それにくらべるとこちらは樹齢が若いようだ。道は、雨水が流れる溝になってしまって、土が結構掘れてしまっている場所もあるが、そのうち枕木が現れ始め、歩きやすくなる。大桶山頂上から下ること30分で、桂山路への分岐点を過ぎる。ここから道は北へ延びる尾根上を行く。

危険地帯の案内
少し下ると、危険地帯という標識のある場所をすぎる。手すりのロープがはってあり、標識には速やかに通り過ぎるようにと書いてあるが、烏来山の登り道のほうがはるかに危険である。少し登り返すと、この地帯特有の豆腐石という風化についての説明板がある。この後は、ほとんど下り一本である。枕木の階段の後には、砂利がしいてある平坦部分も現れる。烏来山登山道と比べたら、ここはさしずめハイウェイだ。砂利道が終わるところで、右に四崁水山への山道が分岐するが、何も標識がないので注意しないと気付かないだろう。ここから、道は北西方向へと下る。枕木の下り道が終わると、道幅がとても広くなる。舗装されていない産業道路のようだ。2時50分、登山口についた。泰雅族の男女のレリーフが入口の左右に取り付けれている、とても立派な入口である。ここまで、烏来から約6時間10分、残るは舗装路を忠治村のバス停まで下るだけだ。

快適な砂利道ハイウェイ
産業道路を下り始め振り返ると、大桶山が大きい。右に尾根が下がっていく。烏来山はこの尾根の後ろで見えない。歩き始めて間もなく、後ろから車がやってきた。先ほど大桶山で出会った登山客のLさんが、登山口近くに泊めておいた車を運転して下ってきた。Lさんは私のところで、車を止めて便乗を申し出てくれた。目的地が違うので、新店までだがとても助かった。話によればLさんも、一人でさまざまな山々を登っているとのこと。日本の富士山や白馬山なども登った経験があるそうだ。

下りの産業道路から振り返ると大桶山が大きい
今回は、最後の産業道路部分は便乗させてもらったので、予定より少し短くなったが、歩行距離約7km、時間は休憩も入れて6時間半である。距離の割りに時間がかかっているのは、まさしく登りの烏来山登山道が非常に急な登りであることの結果である。春の訪れで、虫たちの活動が始まっている。森の中で風が無かったため、頭のまわりを虫が飛び回りうるさかった。道端の花も咲き始めている。

高度プロファイル、登りが急だ
烏来の山は、ひとことで言えば、山が深い。烏来集落から直接取り付けるような今回のような山であれば、まだよいが、少し奥まった高い山は一人で行くのは控えたほうがよいかもしれない。それでも、こうした条件でもあと2,3箇所登れる山がある。台北からのアクセスも便利なので、またそのうち登りに行こう。登りはきつくても、下りが楽なルートであれば、心配が少ない。

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