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峭壁雄峰とその上の登山客 |
台北付近の標高1000mを超えないが、岩が露出した尾根が続くことで知られている山が三座ある。
石碇の皇帝殿山、
深坑の筆架山、そして今回山行の三峡五寮尖である。五寮尖は標高645mで、周囲の山に比べても、頂上のあたりが尖っている以外は、特に目立つ山ではない。頂上から東に伸びる尾根と北に伸びる尾根がある。その内の東の尾根は、三峽溪の登山口から急に高度をあげ、登山道に岩も多く出てくる。そのうちに岩が露出した稜線をいくようになる。登ったかと思うと、また岩をロープを伝って下り、手足全員動員の登山は体力を要求される。岩尾根の山三座は、みなそうした岩を上り下りするところがあるが、五寮尖はそれが圧縮された区間に大きな高度差をもって現れ、三座のなかでは一番苦労する山道だ。
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五寮山は三峡の南に位置する |
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合作橋から登り、互助橋へ降りた、その後大埔へ歩く |
五寮尖は、去年すでに知っており、ずっと山行とを考えていた。
四月の鳶山行の時も、南側に見えていた。三峽までは交通の便が良いが、五寮尖登山口に行くバスは本数が少ない上、午前中は三峽発7時である。もちろん車などで行けば解決だが、一般交通機関を使用して登山するのを、Taipei Hikerの原則としているので行きかねていた。最近三峡区の社区バス五寮線が日曜日は7時半発があることを知り、これであれば台北からでも十分乗れるので、急遽山行を決めた。今回は、合作橋から岩尾根の道を行き、帰りは普通の山道である、北側の尾根道(龍山脈前道)を玉観音方面へ下り、互助橋へでた。
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社区バスを合作橋で下車、登山客車が駐車している |
今日は、6時少し過ぎに出発である。MRT忠孝新生駅から永寧までは30分足らず、916番バスは少し待ったが高速道路経由で三峡の台北大学三峡校区バス停にはちょうど7時に着いた。社区バスの出発点は近くの大仁路・大勇路となっている。そこは路線バスの三峡一站である。だが、社区バスの案内は全くない。周りの人に尋ねてもわからない。そこで、社区バスの2番目のバス停三峡国小まで行ったところ、ちょうど社区バスが停まっていた。運転手に尋ねると、その車が五寮線だということ。
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登り始めて10分足らずで岩場が現れる |
そのうち、社区バスは動き出しおそらく大仁路・大勇路へ行った後、戻ってきて三峡国小バス停で止まった。数名の乗客が乗り発車だ。社区バスは、地元住民の足という性格なので、路線バスよりももっと住宅の路地に入り込み進む。その後、大埔から三峡渓にそって7乙省道を行く。約30分の乗車で、7時50分登山口のある合作橋についた。
合作橋の周りには、車が数台駐車している。おそらく登山客のものだろう。何人かが登山の準備をしている。玉里売店のすぐ脇に階段がある。登山口だ。道は枕木が敷いてあるが、結構急だ。そのうち補助ロープがある岩が現れた。道はしっかり歩かれている。人気のある登山コースである。登山口から約20分ぐらい歩き、岩を登り切ると登山客が2人岩上で休んでいる。高度が上がってきたので、展望できるようになる。遠くに
観音山と占山が
大棟山系から頭を出している。
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登りの途中、大棟山とその後ろに観音山が見える |
更に登ると、竹の林の中をゆく。道は少しゆるかになったかと思うと、すぐまた岩が現れ、ロープをつたって登ることを繰り返す。枕木の道になり少し下り登り返したところで、4番となっている道標がある。道標は龍鳳山玉観音蓮華寺が建てたものだ。右から斉公廟から上がってくる道が合流する。合作橋登山口からここまで約1時間の道のりだった。
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斉公からの道の合流点、帆布下は道整備用材料 |
分岐から進むと、登山道整備工事中の材料置き場などがある。ステンレスの手すり支柱が打ち込まれている。手すりロープはまだ張られていない。木々が切れて展望できる岩についた。先の展望点では、手前の山で隠れていた陽明山系も台北の街の向こうに見える。
白鶏山が近くにそびえているが、頂上はここよりもまだ高い。大豹渓とその奥の熊空山なども見える。ここで休んでいた数名の登山客が先に出発した。自分も少し休憩し、軽く食事をとる。
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鳳冠山近くからのパノラマ展望、手前の尾根を登ってきた、対岸は白雞山 |
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ロープを使って登る登山者 |
ここから少し登ると、露出した岩尾根の道が始まる。岩尾根の向こうには、三角ピラミッドの五寮尖が現れる。岩尾根には、ロープの手すりがずっと設置してある。手すりがなかったら、かなり勇気がいる歩行だ。左右は切り立っているので、落ちたら大変だ。ここが鳳冠山である。時刻は9時半。少し降りたところに、脇にステンレス手すりがつくられている小洞がある。小洞の中には、もともと神像があったのだろうが、今は工事中なのか空である。
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露出した岩尾根の道 |
一段降り、また登りかえす。登り返すと、裸の岩尾根がしばらく続く。遮るものがないので、周囲360度展望ができる。南側の金平山の山塊も大きい。五寮尖頂上も近く見える。この岩尾根の突端が、峭壁雄峰と言われている、大きな岩壁の下りだ。ロープが2本ほど並行して下がっている。このロープを伝って三十数メートル下る。ここは同時に何名も下れないので、登山客が多いと待ちになる。早めに出発したので、日曜日だが誰もおらず、待たずに下れた。
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峭壁雄峰の上からみる五寮尖山頂 |
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峭壁雄峰の上から下を覗く |
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峭壁雄峰の下から仰ぐ |
峭壁雄峰の下から、すぐそばにそびえている独立の峰に登ることができるが、道を右にとってそのまま進む。更に岩を下り、6番の案内板がある鞍部に着く。ここも三十閔窪登山道が登ってきて合流する。しばし休み、また登り返す。岩尾根がまた現れる。ここはステンレス柱とロープの手すりはない。先ほどの峭壁雄峰には数名の登山客が並んでいる。ここから見ると、本当に絶壁でかなり迫力がある。
頂上へは、まだまだ岩場の登りがある。登り切ると今度は岩場を下り、6番案内板のある鞍部に着く。茄冬樹の大樹から、最後の頂上への登りが始まる。左右どちらの道も頂上につながるが、左の道は途中で龍山岩への分岐を分ける。ここは左の道を行った。急な登りが続き、分岐を右をとると、程なく五寮尖頂上についた。11時半、登山口から3時間40分の登りだった。
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鞍部へ下る |
頂上は、西と南側は樹木の背が高く視界が遮られるが、その他はとてもよい眺めが得られる。三峡やその先には台北方向が見える。白雞山の高さも同じぐらいになった。真ん中に植えられている基石は総督府基石という、100年以上前の日本統治時代の基石である。植民地運営の一環である地図作成のために、早い時期にこの地の測量が行われたことを示している。休んでいると一人、別の登山道から登山客が登ってきた。食事を終えるころ、今度は途中追い越した数名のグループが到着した。五寮山はきついが、やはり人気の高い山である。吹いてくる風が心地よい。疲れたが、あとは単純な山道の下りだけなので気が楽だ。
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総督府基石のある五寮尖頂上 |
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五寮尖頂上からの景色、左に鳶山、その奥に大棟山、中央は白雞山、その右奥は熊空山 |
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頂上から見る峭壁雄峰の岩尾根 |
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頂上直下の梯子 |
玉観音への尾根道龍山脈前道は、縄梯子の下りで始まる。頂上の脇の木に案内板が打ち付けてあるが、それがまさに下を指している、その脇に梯子が括りつけてある。二階建てぐらいの高さを梯子を伝って下ると、下り道が始まる。下りは、岩やロープなど全くない、普通の山道である。ところどころ急なところもあるが、それは登ってきた岩尾根道と比べると、大したことはない。この山に未婚男女がやってくると、良い縁が結ばれるというお寺の看板が木につけてある。実際、未婚の男が岩尾根に未婚の女を連れてやって来れば、あの大変で辛い登り下りでは、当然大いに「男らしさ」を発揮するだろうし、女は女でたくましい姿を見ることになるで、縁がより深くなることは十分あるだろう。ただ、この尾根道を登りに取ると、それはないだろうが。
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下りの尾根道、お寺の看板 |
先ほど頂上で出会った単独の登山客が後ろから降りてきた。彼は中和からで、普段は山岳クラブの山行に参加したり、時々単独で登っているとのこと。山道は、途中三、四箇所水桶がおいてある。尾根道が左に折れて山腹を下り、その先には舗装の産業道路に降り立つ。頂上からここまで約40分弱だ。そこから道なりに下る。番犬がけたたましく吠える家の脇を通り過ぎ、レンガの古い家が立つ分岐点へつく。ここにも玉観音製の道案内板がある。更にくだると、12時50分互助橋で省道に合流した。
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大埔への省道から見る五寮山(右) |
互助橋はバス停があるが、807番バスも社区バスも、次まで相当待たなければならない。そこで、3号省道との分岐点大埔まで歩くことにした。歩くに従い、周囲の山々の眺めも変わる。白雞山系が大きい。五寮尖は、近すぎて全容が見えないが、大埔に近づくにつれ全体の姿を現す。歩くこと自体はいいが、交通量が多いのが玉に傷である。省道を歩くこと30分で、大埔に着いた。さすがに喉が乾き、角のコンビニに立ち寄る。ここで20分ほど待つと、13時50分頃大溪からの9103バスがやって来た。永寧駅までバスに乗り、そこからMRTで台北に帰った。
今回の山行は、歩行距離は約8.3km、高度差約570mである。登り下りを繰り返しているので、トータルの上昇高度は840mある。要した時間は、5時間25分である。歩行距離の約半分は省道なので、実際の山道は約5kmというところだが、非常に体力を要求された。自分は運動効果を確認するため、SUUNTO製の心拍計をつけて歩いている。この心拍計が示した運動効果指数は4.7。運動効果は1から5までの指標になっている。以前歩いた残り二ヶ所の岩尾根の山、
皇帝殿山では3.2、また
筆架山では3.3であったので、もちろん体調やその他の要素はあるが、数字の上でも五寮尖登山がきついことを示している。登山経験のない初心者が行く場合は、経験のある登山者と同行したほうがよい。事前に運動をして、準備した上で登ることをすすめる。普段全く運動せず、いきなり五寮尖に登ると、途中でバテる可能性大だ。
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高度プロファイル |
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