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九芎根親水公園からみる九芎根山 |
坪林は台北から宜蘭へ続く北宜公路の中間点だ。
前回は同じく宜蘭へ通じる北部濱海公路について触れたが、北宜公路も雪山隧道開通前は、よく通った道だ。当時の印象は遠い場所であったが、第五号高速道路が開通した後は、思いのほか近い。地元政府は、お茶をテーマに観光に力を入れているようで、
七月に登った獅公髻尾山への途中にある南山寺と、今回登山の出発点、金瓜寮の九芎根へ無料観光シャトルバスを運行している。前者は休日だけだが、後者は平日も運行、休日には増便している。このバスを利用すると、今回登った九芎根山へのアクセスは容易になる。新店から高速道路経由の923番バスで30分、金瓜寮行きの観光バスは約20数分、MRTの乗車時間も入れて約1時間半で登山口に行ける。この登山口から九芎根山を登り、その後尾根伝いに芋圓尖へ、芋圓尖登頂後は一部同じ道を引き返して王宅への道を下り、九芎根親水公園へ戻った。
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坪林と烏來の中間ぐらいに位置する(クリックで拡大表示) |
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ほぼO型に歩いた、芋園尖は往復 |
九芎根山は、ぐるっとひと回りの回遊式山道が整備されている。一方、芋圓尖は不人気な山なのだろう、九芎根歩道から別れ尾根道に入ると、いきなり踏み跡然のレベルになる。下りに歩いた王宅への道は、一部が歩かれていないため、大雨などのため崩れて不通になっている。標識リボンもあることはあるが、新しく付けられているものは少ない。芋圓尖から北方向、火炎山方面にも山道はあるが、ネット情報では草深く歩きづらい道のようだ。この山塊は、南側には烏來の山々へ通じる奥深い場所でもある。初めての訪問なので、このあたりの山を知るために、今回はこの二座だけを歩いた。芋圓尖は思っていたより手ごわかった。
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坪林ビジターセンター前の金瓜寮行マイクロバス |
新店からの923番バスは、休日は始発便が7時半である。少し早め7時5分過ぎに新店に着いた。バス乗場には、まだ数名が待っているだけだったが、そのうち長い行列ができた。早めに来てよかったようで、高速道路を経由する923番は立ち席がないので、3分の1ぐらいの乗客が積み残しとなった。高速道路に上がるまでのバス停でも、待っている乗客は乗車できなかった。好天の休日は行楽客も多いので、この点の注意が必要のようだ。
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九芎根步道登山口 |
坪林観光センターバス停で下車すると、金瓜寮行きマイクロバスが停まっている。大型の南山寺行きバスが先に発車していく。そのうち8時20分に出発した。このバスルートは、往路と復路が別々の道を経由していく。乗ったF723大林線というバスは、行きに茶業博物館や大林橋を通って行く。山を一つ越え、金瓜寮の谷に下る。北宜公路から分岐し渡南橋頭を経由してくる道と合流し、九芎根に向かい走る。左には深い渓谷が見える。この渓谷に沿って、歩道が整備されている。渓谷が開けると道は小盆地に下り、九芎根親水公園の前を過ぎる。他の乗客はすべてここで下車した。乗客一人となり、終点の九芎根101バス停に8時45分に着いた。
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急坂を登る |
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ブナ林の中の登山道 |
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九芎根山山頂 |
産業道路を歩く。地元の人が挨拶してくる。沢を越える。道脇に犬が一匹いる。普段山でであう犬はけたたましく吠えるが、この犬はおとなしいので、はじめは気づかなかった。ほどなく舗装路は終了し、人家わきから山道が始まる。よく歩かれている良い道だ。道標も新北市政府の立派なもの。この道は、新北市政府が紹介している登山道だ。沢沿いに数分進むと、道は右に折れ尾根に取り付く。急なところは補助ロープも張られている。登りはキツイが、道幅も広く歩きやすい。10分ほどの登りを過ぎると、道標が建っている。左方向には倒吊子山4.5kmとなっているが、道は踏み跡的なもので、ほとんど歩かれていないようだ。道はブナ林の中を登っていく。登山者が一人ロープの手直しをしている。のちほど九芎根山で休憩しているとき、登ってきて知り合いになったが、この登山者は地元の何さんで、日常からよく登り、ボランティアとして山道を整備しているそうだ。その上に丸太の椅子が設けてある休憩所がある。尾根の道を更に登り、出発してから約50分、9時37分に九芎根山(標高610m)頂上に着いた。
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金紙崙への分岐 |
三角点のある九芎根山は尾根上の小ピークで、周囲はすべて樹木。展望はまったくない。少し早いが食事休憩をとる。休んでいると、何さんがやって来た。よくこの山やその先の金紙崙、また足を伸ばして鳥嘴尖まで歩いているそうだ。芋圓尖へ登ることを話すと、尾根上の道はよくないので、九芎根歩道を一旦下り、登り返したほうがよいと話した。何さんは、今日は九芎根山までということで、先に下っていった。それから間もなく、反対方向に自分も歩き始める。
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下草の中を行く芋圓尖への尾根道 |
道は更に登っていく。約10数分で、左に金紙崙への道を分岐する。金紙崙やその東の鳥嘴尖は、大桶山から続いてくる桶後古道に並行する尾根上にある。すでに烏來の山の範疇だ。ここは烏來にも宜蘭にも近い場所である。道を右にとり、上り坂を歩く。間もなく道は最高点に着き、方向を北に変え下り始める。道はやはり幅の広い良い道である。途中720峰を越える。分岐から約30分で、九芎根歩道は尾根を離れ、右に下っていく。ここから芋圓尖へ尾根道が続いているが、九芎根歩道に比べると程度はずっと落ちる。何さんが言っていたとおりだ。どのようなものか、この道を進んでみる。標識リボンも適度に現れ、確かに下草に隠された部分もあるが、今まで歩いた経験からして特に困難とは思えない。そのままこの道を芋圓尖へ向かう。今日の登山は、展望がほとんどない。終日周囲が見える地点には出会わなかったが、木々の間からほんの僅か遠くの山が見える場所がある。ここから見える山は、頂上近くに送電鉄塔が並んでいる。どうやら
中崙山から直潭山に続く山並みのようだ。10月に中崙山から翡翠水庫を挟んで対岸に見えていた山を今歩いているわけだ。
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木々の間から見る直潭山(右)、遠くに台北華城の山腹別荘も見える |
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トゲトゲの草 |
この稜線は雑木林の森の中を行くが、あまり歩かれていないだけあって草の葉が覆っているところが多い。棘のある草がとても多い。歩いていると服に引っかかる。棘に注意し、枝を外すことがしばしばだ。茎全部が棘だらけの草も多い。今までの山行の中では、一番多いだろう。尾根上を忠実に追って登り下りを歩いて行くと、11時20分に右に道が分岐している。これは王宅へに続く分岐だ。またここまで戻ってくるとは、この時は思わなかった。左に道をとり進むと、数分で右に下っていく道を分岐する。これは山腹を横切り、少し前に通りすぎた分岐からの道と合流し王宅へ下る道だ。ここには、藍天隊の道標が幹に付けられている。王宅まで約60分の表示がある。小さなピークを一つ越え、芋圓尖へ登り返す。最後に急坂を登ると、芋圓尖(標高641m)に着いた。時刻は11時48分、九芎根山から約1時間50分の歩きだった。
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芋園尖山頂と三角点基石 |
芋圓尖は狭い頂上だ。三角点がある。周囲は草木で覆われている。ネット上には、展望があるという事だったが、古いのでその間に樹木が育って視界が塞がれてしまったのだろう。真上には樹木がないので、太陽が照りつけ暑い。水分をとったあと、引き返すことにする。十数分で山腹を行く道の分岐に着いた。左にとり進む。すぐに道は草深くなる。下がり気味に道は行く。行くにつれ、道の様子がほとんど歩かれていないようになる。標識リボンがあるが、みな随分以前のもののように見える。10分ほど下ると、崩れている場所にきた。ここから先は全く道が見えない。リボンも見つからない。このまま進むのは無理と判断し、先程の分岐へ戻る。分岐からは、もう一つの王宅への道の分岐へ戻って来た。ここから、更に尾根道を南へ戻り、九芎根山歩道から下ることも可能だが、この道を下ってみることにする。時間も早いし、ダメなら戻ってくればよい。
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王宅への山腹道、ほとんど歩かれていない
もう少し先で撤退し、引き返した |
この道は主稜線から東に伸びる枝尾根上を進む。ところどころ立ち止まり方向を確認する。この道を進んで10分ぐらい、石が露出した急な下りが現れた。他の場所なら補助ロープが設けられているようなところだ。慎重に石を踏んで下る。12時55分、山腹道との分岐に着いた。家に帰りGPSの軌跡を確認すると、先ほど引換したした地点は、かなりこの分岐の近くまで来ていたようだ。さらに下っていく道の様子だと、王宅へはこのまま行っても大丈夫のようだ。15分ぐらい下って行くと、13時10分、別の分岐が現れた。藍天隊の標識では、右に下る沢沿いの道が新道、直進する尾根道が旧道となっている。しかし、右の道はすぐに踏み跡が不明になってしまった。この道もほとんど歩かれていないのだろう。問題がありそうなときは、尾根道を選ぶのが常道だ。沢沿いの道は、山崩れなど問題が発生しやすいが、尾根道は比較的大丈夫だ。尾根道をとり進む。先に登り返しがあり、そのあと下りが始まる。
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草薮にでた、正面に九芎根山が見える |
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王宅に着いた |
新旧道の分岐から下ること10数分、草藪に出た。草が踏まれており、迷わずに下れる。ススキの間から、九芎根山が見える。草薮が終わり、また雑木林の中を下って間もなく、山腹をゆく道に合流した。標識が無く、方向が分からない。右からの道は先程分岐した谷筋の新山道かと思い、左に進むと水場の先で道はなくなった。引き返し右への道を歩いて行くと、大きな金属タンクが現れ民家が見える。どうやら王宅のようだ。時刻は13時38分、残りは舗装路を下るだけだ。10分ほど休憩する。
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この上に見えている王宅のご主人のようだ、道で出会う |
王宅の民家の脇に降り立つ。ここまで立派な舗装路がきている。下り始めると、この家の主人と思われる老人が笑顔で舗装路を登ってくる。挨拶をして下っていく。王宅で行き止まりのこの道を通る車は、この一軒家に用事のあるものだけだろう、車はまったく来ない。九芎根親水公園に14時に着いた。ここからは、周囲の山が見える。九芎根山が目の前だ。ヘチマが実っている。鶏も放し飼い。山に囲まれたこの小盆地は、さしずめ世外桃源なのかもしれない。14時22分、観光シャトルバスがやって来た。途中行楽客を乗せ、往路と同じ道を通り14時46分、坪林バス停に着いた。15時発の923番バスで新店へ帰った。
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親水公園付近からみる小盆地のパノラマ、中間の山が九芎根山 |
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放し飼いの鶏 |
今日の行程は、距離9.5km、休憩込みの行動時間5時間10分だ。九芎根の高度がすでに約350mあるので、累計登攀高度は650mだった。ほとんど展望がないこの山は、それ以外に登山者を引きつける要素も少ない。九芎根山歩道を除くとあまり歩かれていないのも、うなずける。棘のある草も多く、文字通りイバラの道の部分もある。正直言って、金紙崙や鳥嘴尖を除いて、またこの山々にくることはないかもしれない。今回は歩いていないが、バスの車窓から見た金瓜寮溪谷をいく歩道は、しっかりした道だった。行楽客も多く歩いている。ここは山道に比べたら上下も少なく、特に夏の時期には行楽として来るには良いかもしれない。
もし、この山を歩く場合は、九芎根山歩道以外は状態が良くなく、不通の部分もあることを確認した上で行く事を勧める。
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