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2021-07-31

2021年7月31日 宜蘭大元山 廃棄古魯林道経由の長距離往復登山

古魯林道派出所跡付近から大元山(右奥が山頂)の山並みを望む

台灣の東側の山は、ほかの山域と比べるとあまり足を踏み入れていなかった。東側といっても宜蘭から花蓮、そして台東と長く広くかなりの山がある。今回はそのうち中央山脈の北端になる宜蘭の蘭陽平野すぐ近くにある山域である。中央山脈の3000m高山は南湖大山などの峰々で南に延びていくが、その北側には日本時代の三大林場の一つであった太平山がある。そしてそのさらに北に位置するのが今回の目的地大元山である。

古魯林道入口出発時のメンバー
大元山林場は広義の大平山林場の一つでもある。太平山付近の林業(新/舊太平山)については、以前これらの場所をおとずれた記録に記してある。大元山林場は、日本が去った後の国民政府になって大きく伐採が始まった場所である。今回登頂の大元山の直下、南澳北溪の左岸の山腹上には当時の林場関係者の子女が通う大元小学校もあった。しかし、林業は斜陽産業となり、台湾のほかの林場がそうであるように1980年代初めには収束する。材木搬出やその他物資人員輸送に使われた、太平山に近い翠峰湖まで続く古魯林道は、廃棄され自然のなすままに任された。林道は、入り口から約2㎞ぐらいの廃棄派出所(檢查哨)まで最近整理されているが、その先は崖崩れなどで車両は通行できない。

北側の林道入口から山頂を往復
今回は、この古魯林道を経由し大元山を登頂した。本来登頂したあとに、登山口から下って当時の事務所跡や小学校跡を訪れる計画であった。ところが登頂直前に降り始めた雨は、雨脚が強く止む気配もなく、時間も少し遅めなので訪れることなく往路を下った。朝に渡渉した沢は、この雨で増水し、往路ではふくらはぎぐらいの水量が膝を少し超えるぐらいに増量していた。幸い沢幅もあまりなく、勢いも強くないので注意深く渡り、林道入口に戻った。

宜蘭のすぐ南に位置する登山対象
台湾の新コロナウィルスの状況は、警戒レベル2になっているが、まだマスクは戸外での着用が求めらている。5月半ばからのレベル3で、二カ月ほど山を登っておらず、今月半ばに再開しての二回は比較的な楽な山行をした。3日前の登山では、登坂能力回復のためのルートを歩いたが、暑さのためだろうかなり苦労した。そうしたことで、今回の長い行程は大丈夫かすこし不安があったが、標高が高く少し風もあり、午前中は良い天気だったが暑さにそれほど困らず登頂できた。下山時はずっと雨であったので、ぬれることはあったが全く問題なく終了した。

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宜33線から遠望する大元山
久しぶりのシェアカーでのアクセスである。行動予定時間が長く、また遠いので5時に集合し出発する。車三台、メンバーは14名である。早朝なので、第5号高速道路は全く混雑なく、5時40分に雪山隧道を抜ける。高架橋からは、蘭陽平野の縁を取り囲む山々が望める。前方には目的の山塊が迫ってくる。6時少し前に羅東インターチェンジを降りて近くのコンビニに立ち寄る。羅東の街をぬけて羅東溪にそって走り、目的地の大元山が次第に近づいてくる。羅東溪の支流蕃社坑溪がすぐわきを流れる宜33線に入ると、間もなく寒溪農場をみて、6時40分に林道の入口に着く。

林道わきの咕嚕橋の説明板とまだ残る橋の主塔
コンクリ河床が造られた沢を越す
前方に大元山を見て林道を行く
林道の入口はまだ新しい立派な鉄の門ができている。入口の少し手前に車を駐車し、6時53分歩き始める。林道は、バイクや自転車、歩行は問題なく通れる。急な坂はコンクリ舗装され、沢が超える場所にもしっかりコンクリが敷かれている。道端には歴史や景観などについての、まだ新しい説明板もある。おそらく観光目的で整備がされたのだろう。沢沿いに進む林道の対岸の滝や、当時の吊橋の支柱が現れる。林道の名前古魯は、以前にあったタイヤル族の部落コロ社から来ている。日本統治時代に移住し、今は集落はない。7時28分、左に旧派出所を見る。林業が盛んな頃は、山に入るにはここでチェックが必要だった。今もこの林道は入山許可書をとる必要があるが、今はだれもチェックはしない。右に手すりも設けれら、また旧派出所の隣には新し建物もたてられている。正面には、大元山がだいぶ近く高くなっている。

當歸の花が咲く林道を歩く
派出所跡が左に現れ良い林道歩きも終わりだ
草に埋もれた林道を行く
小休憩のあと細い山道を行く。もともとは林道だった部分だが、草が茂り人が歩く幅だけが草の間を進む。昨日の雨でぬれた草でズボンがぬれる。12,3分ほどで沢を越す。沢を渡ったあとは、尾根に向けて急坂が始まる。林務局羅東林區管理處のマーカーリボンがある。この道は林務局で整備されているようだ。10分ほどの上りで尾根にとりつく。右から細い頼りない道が合わさる。この道は先ほど沢を渡る前に右へ分かれた山道のようだ。

沢を渡渉する


草原の向こうに大元山から古魯山の稜線
尾根の道も勾配は急だ。10分ほど歩くと、しばらく緩やかな坂になる。森の中に陽光が差し込んでくる。森が切れた草むらの奥に大元山が高い。右に古魯山南峰へと連なっている。8時42分、急な坂の途中で少し平らな場所で休憩をとる。不調を訴えるメンバーが現れ、三人は登頂を諦め、戻って我々を待つという。休憩後、残りの11名で引き続き急坂を登っていく。勾配の強いところは、補助ロープが取り付けられている。額から汗が滴り、停まらない。9時3分、林道に出る。林道といっても草に埋もれている。すぐ右にまた尾根にとりついていく近道の山道があるはずだが、入り口がわからない。そのまま林道を進むことにする。9時20分、林道の木陰で休憩をとる。

急な尾根道を登る
草深い林道を進む
林道の分岐部、カヤが深くほかの道は不明
林道は、近道に比べて長いが勾配が緩い。主稜線の峠部分では右に大きく曲がる。ここは分岐で峠の反対側や蕃社坑山への道があるはずだが、密生したカヤにふさがれ踏み跡は全くわからない。幸い我々の林道は道筋ははっきりしている。少し行くと、右に樹木が切れて朝に歩いた蕃社坑溪の谷や、その向こうには羅東の平地が望める。さらに上り、右から近道が合うと思われる場所があるが、踏跡はわからない。今はだれも歩いていないようだ。

右に羅東方向が望める
少し開けた部分、この先は林道から離れる
左に山襞を回り込み、少し平らになった部分を過ぎる。ここはテントが張れそうだ。すぐ近くの小沢を越え、道はまた急坂となる。林道は山腹をまいていくのだろうが、おそらく崩れてしまっているのか、今はこの山道で峠へと高度を上げる。9時55分、広くなった草の茂る峠部分に着く。右へ尾根を経て大元山への道がある。入口を示しているらしいマーカーリボンがあるが、ほとんど踏み跡はないようだ。

峠部分

遠くに南澳北溪の河床が望める
最初の高巻を進む
比較的よい林道セクション
全員がそろい峠から右に山腹を行く林道を進む。樹木の向こうに広い谷間が見える。南澳北溪だ。この沢は、下流では急流の渓谷だが、ここでは全く趣を異にする広い河原だ。谷の奥は銅山方向だが、頂上あたりはガスの中だ。林道は間もなく高巻きになる。山腹を進む道は、大水などでがけ崩れにさらされる場所が多い。しばらく緩い道が続き、10時10分また高巻部分に来る。この高巻きは少し規模が大きい。10時20分、林道にまた降り立ちさらに少し林道を進む。10時25分、ヤカンや鍋が転がる平らな場所で休憩をとる。ここが地図上の獵寮營地だろう。

林道上で休憩
左下に南澳北溪
少し崩れたギャップ
林道は、間もなく小沢を越す。小さな下巻や高巻を過ぎて、緩い坂の林道を進む。道の状態はおおむね良い。11時20分、最後の高巻を過ぎ11時25分、大元山登山口に来る。左に降りていけば大元小学校の建物が残る場所へ行く。蝉しぐれが森の中に響き渡る。ここで食事休憩をとる。時々陽光がさしてくる。昨晩冷凍庫で凍らした八寶粥を取り出し食する。ズボンにとりついた山蛭に塩をかけると、ポロっと落ちる。食事が終わるころ、少し雨粒を感じる。

林道上の分岐、大元山は右へ登る
古い道しるべ
12時少し前、大元山を目指して右に登る。この道は林道とは異なり、歩く人が少ないようで、踏み跡はもう少しだ。ただ、マーカーリボンは十分にあるので方向を見定めるのは問題ない。杉林の道は、間もなくとても勾配がきつくなる。標高差は300m足らずだが、距離が短い。登るにつれ、霧が濃くなる。40分足らず登り、頂上までわずかな場所で強い雨が降り出した。全員、急遽雨具を取り付ける。13時に急坂が終わり、最後わずかな緩やかな道を行く。冷たい風が吹いてくる。13時7分、雨の降る大元山山頂(標高1489m)に着く。展望は勿論ない。

細い踏み跡
急坂を登る
大元山山頂
13時15分、往路を下り始める。急坂の土は、水を含んで表面がとても滑りやすい。注意して下っていく。40分ほどで先ほど昼食をとった登山口分岐部に戻る。雨は引き続き雨脚が強い。大元小学校跡はなどは、今回は諦めてそのまま下ることにする。林道を下っていく。往路ではあまり勾配を感じなかったが、緩やかではあるが道は確かに下りだ。高巻部分は面倒だ。15時過ぎに峠に戻る。急坂を下り、また林道を進む。朝に見えた平野方向は、霧で全く景色が見えない。

雨でぬれた土はとても滑りやすい

雨で景色はない
尾根道を下る
下りで尚且つ雨が停まらないので、引き続き休まずに下っていく。15時40分、林道から尾根の山道に入る。16時10分、勾配が少し緩くなった場所で小休憩をとる。雨はまだ降っている。残りの急坂を下り、16時29分、沢岸に出る。思ったように、増水している。慎重に水に入る。水深は膝を越えているので、長靴にはたちまち水が流れ込む。幸い沢幅も勢いもそれほどでないので渡り切り、全員が続く。沢沿いの道を進み、16時42分、派出所跡に着く。幸い雨が小降りになってきた。建物脇で長靴の水を出したり、靴下を絞ったりする。下りでも、汗が流れたので、氷がとけて飲み頃のビールがうまい。

草原から大元山方向を見る
増水した沢を渡る
林道入口に着いた
17時過ぎ、林道の最後の部分を行く。道は良いので、心配はない。雨はまだぱらついているが、気分は楽だ。途中で先に下山したメンバーが出迎えにやってきて出会う。一緒に下り、17時30分過ぎ林道入口に戻りつく。山頂はまだだが、山肌は霧が晴れていく。車脇で着替えを済ませ、18時前帰途に就く。感染防止対策のため店での食事はできないので、今日はそのまま台北へと帰る。雪山トンネルはさすがに混雑しており、19時半前に台北に帰り着いた。

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林道を管理する林務局のマーカー
皮肉なもので、警戒レベル3の時はあまり雨天がなかったが、山に登れるようになると雨の日が多くなった。午前中は晴れてていたものの、台湾の他の場所は雨が降っていたようだ。台北もかなりの大雨に見舞われたという。午後だけの雨だったのは、ラッキーというべきか。歩行距離17.7㎞、登坂高度1435m、登坂速度毎時415m、休憩込み10時間40分である。コース定数40だ。ブランク後のちょっときついルートだが、体力的にはそれほどのきつさを感じなかった。登山の体力が戻りつつあるのだろうか。台湾の感染数は今のところ一日20人以下に収まっているが、まだまだ安心できない。そうしたことを考慮して、登山の計画実行をしていく必要がある。

今回訪れなかった、大元山林業時代の遺跡などは、いずれ翠峰湖へ一泊二日の縦走をして、その時に訪れてもいいと思う。上から眺めた南澳北溪に沿って歩くのも面白と思う。


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