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2021-08-15

2021年8月14日 苗栗泰安上島山(鳥嘴山) - 三叉峰

虎山から見る上島山から三叉峰への稜線、背後の平らな山頂は洗水山 (2020/4)

苗栗縣泰安を訪れるのは、昨年の四月以来だ。その時は、一泊二日で一日目ウォームアップとして洗水山を登り、翌日強行軍の虎加龍縦走を行った。二日目は長時間の登山なので登山口近くに泊まる必要があった。今回は、同じく泰安でも汶水溪を挟んだ対岸の上島山(鳥嘴山)から三叉峰を往復した。当初の予定は、三叉峰から主稜線を進み洗水山をへて下山するものだった。新コロナのためずっと登山をしていなかったメンバーが苦労していること、その先の道のりも長く、尚且つ時間もすでに12時半であったことから、そこで折り返すことにした。最長で12時間の予定であるが、7時半前からの登りはじめすでに5時間を経過していた。主要な登坂部分は過ぎたが、稜線上には多くの上下があり、体力を消耗することなど、リスクを考えた結果だ。人数が多いと、問題も出やすい。今回は全員で16名だが、これだけの人数だと前日近くに泊まり、翌日夜明けぐらいに出発するような計画にすべきであったかもしれない。

泰安溫泉停車場から往復
三叉峰はその名の通り、三方向からの合流点だ。西に行けば洗水山へと続く。東は東洗水山だ。ちょうど1年前に雪見遊樂區からこのピークに登った。東洗水山から北へ進めば樂山へとつながる。この山脈の東山腹には、日本時代の警備道である北坑溪古道がある。この古道は一度整備されたがその後は度重なる崩落などで封鎖され、ほとんど歩く人はいない。また警備道は、曙鞍部と呼ばれた稜線上の鞍部から西側上島温泉(現在の泰安溫泉)へと下る支線(洗水古道)があった。この部分もほとんど残っていないようだ。地図をみてもその位置が今のどこになるのか、正確にはわからない。ただ、今回の上島山への登山道の一部は当時の警備道であったのではないか、と思われる緩やかで幅のあるセクションがあった。本当にそうなのかは、さらに調査しないと確定はできないが。

上島山山頂
今年四月初めに訪ずれた霞喀羅古道は、この北坑溪古道からさらに北へ行き田村台でつながる。この一連の警備道は、本来屈強なタイヤル(泰雅)部族民をコントロールするための警備道であったが、沿線の部落がみな帰順したあとは、登山道としての利用もあった。当時は、民間からの名付けが募集され、この非常に密度の高い警備道は総称して鹿場温泉道路とも呼ばれた。鹿場大山(現在の樂山)を中心に巡り、井上温泉(現在の清泉温泉)や上島温泉を結んでいた警備道群は、確かにその名前が適していた。

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高速道路から見る雪山山脈
上島山のピークが天を衝く
登山口まで車で2時間ほどの道のりなので、5時に台北を三台の車で出発する。第一高速道路を進むにつれて夜が明けてくる。天気が良いので、桃園を過ぎるころから高速道路高架橋からは、東側に山が連なっているのがわかる。そのうちに雪山山脈も判別できるようになる。特徴ある大霸尖山がその位置を示している。6時10分、苗栗インターチェンジで高速を降り、近くのコンビニに立ち寄る。ここで三台が集まり、一緒に登山口へ向かう。72号快速道路から苗62県道を進む。鳥のくちばしとも称される上島山(鳥嘴山)が、その独特の形状を表す。終点の泰安溫泉停車場に6時50分過ぎに到着する。別の車で各自やってきた三人がここで合流する。

振り返ると虎山が朝陽に聳える
まだ新しい登山案内地図
急坂を登る
7時15分に出発する。駐車場から上の温泉旅館へと続く道を少し登る。振り返れば岩壁の要塞のような虎山が朝陽にその三角頭をスクッとそびえたたせている。ヘアピンカーブのたもとにまだ新しい地図解説板のある登山口(標高約595m)から山道が始まる。もともとは舗装されていたようだが、草が茂り人ひとりの幅の道筋が続く。まもなく道は左に分かれて山にとりつき、急坂で高度を上げ始める。登ること十数分で、木板の階段や手すりセクションを過ぎる。手すりは設置されて時がたち、メンテされていなので倒れてしまっているものもある。7時37分、救助用確認2番の札を過ぎる。電話の通じる場所の札もある。


しばらく緩やかな山腹道を行く
7時51分、樹木が切れて左側谷の向こうに虎山がくっきりそのとがった頂を空についている。その先少しの平らな場所でで休憩をとる。少し遅れ気味のメンバーを隊列の前に移動し、さらに坂を上る。8時8分、救助3号札を見ると道は緩やかに山腹をトラバースしていく。数分で、また坂は急になりジグザグに高度を上げる。8時23分、道が緩やかになり救助4号札を過ぎると、また勾配がきつくなる。8時37分、ゆるかで広く大石が目立つ場所を通り過ぎ、急坂がまた始まる直前で二回目の休憩(標高1127m)をとる。


大石のある平らな場所
杉林の中の急坂を登る
9時、急坂にとりつく。しばらく杉人造林の間を登っていく。9時16分、道しるべと救助5号札を見ると、道は山腹を緩やかな坂で進んでいく。道しるべは登山口から2.4㎞、山頂まで09㎞と示す。登頂を終え下ってくる3人パーティとすれ違う。緩やかな道は一部ジグザグで高度を上げるが、道幅もあり以前歩いている警備道のような様だ。9時32分、救助6号札をみてまたジグザグで高度を上げ、最後の緩やかな道を行くこと数分、木製梯子でギャップを超える。右の沢音が大きく響いてくる。9時44分、左に急な坂が始まる。今までの道はそのまま山腹を進んでいくようだ。しばらく歩いてきた緩やかな道の部分は日本時代の洗水古道の一部なのだろうか。

道しるべ、前方に救助5号札

ジグザグ道を登る
木製梯子でギャップを超える
対岸に洗水山の稜線
上島山山頂
最後の急坂は、すぐ左が切れ落ちている。数分登ると左の樹木が切れて、谷を挟んで洗水山の稜線が見える。また、朝車で通り過ぎた汶水溪の谷間が眼下に望める。10時山頂のすぐ手前に着き、荷物を降ろして山頂(標高1438m)にでる。谷を挟んで、虎山が同じぐらいの高さに聳え、その後ろには橫龍山から加里山方向への稜線が長く右へ伸びている。この稜線は加里山東南峰を越えて高度を上げ、樂山へと連なる分水嶺だ。こちら側の汶水溪の谷間が次第に高度を上げて山襞の間に消える。

上島山山頂からの展望
警告板を過ぎて稜線を進む
10時27分、三叉峰に向けて出発する。先ほどは青空が広がっていたが、霧が立ち込め始める。天候が変化し始めている。標高1814mの三叉峰までは、単純に落差400m足らずだが、途中には上り下りがある。ただ幸い下り幅はそれほど大きくない。広葉樹雑木林は、登るにつれ杉林に代わっていく。ここはその昔は伐採植林が行われたところだろう。今までの登山道と比べ、上島山から先を行く登山者は少なく、道筋の程度はぐっと落ちる。地面には杉の落ち葉が敷き詰められている。マーカーリボンは適量取り付けられている。11時13分、少し平らな場所(標高1568m)で休憩をとる。食事をしていると雨粒を感じる。

杉落ち葉の上を進む
尾根が細くなってくる
最後の頑張り
ここから、最後の登りである。稜線を忠実に追っていくので、勾配はけっこうきつい。尾根幅が狭まり、最後の急坂を登りきる。12時26分、三叉峰に着く。木々はまばらだが霧が濃い。標高もあり、気温はそこそこ涼しい。本来の予定は、ここから右にとり洗水山へ行くというものだが、時間はすでに12時半、日暮れまで5時間半、ここからは下りがメインだが途中にはかなりの上り下りがある。距離的には、まだ3分の1をこなしただけだ。疲労度の高いメンバーもいる。こうした理由でここで引き返すことに決める。

霧の中の三叉峰山頂

急坂を下る
13時前、往路を下り始める。霧は下るにつれて薄れてくる。そのうち、杉林に立ち込める霧を通じて陽光も差し込み明るくなる。どうやらにわか雨には降られずに済みそうだ。天気が問題ないのなら、予定通り歩けなかったことが余計残念に感じるが、今度は別の歩き方で未踏の部分を歩けばよい。下りは休むことなく進み、14時11分上島山へ戻る。天気はすっかり回復し、山頂からまた対岸の山々や、朝には雲に隠れていた遠くの海岸線なども判別できる。これはこれで、うれしい意外だ。

遠く海岸が見える
岩壁の目立つ虎山
下り道残りもわずかだ
14時40分、山頂を後に下り始める。道の様子がわかっているので、気楽だ。急坂は注意して下る。15時19分、大石の平地で休憩をとり、さらに下る。16時17分、登山口に出る。全員が登山口に着き、駐車場へ降りる。汗でぬれた衣服を着替え、16時45分帰路に着く。台北は午後雨だったそうだ。我々の帰路上でも台北近くでかなり強い雨があった。台北には19時に帰り着いた。

登山口についた
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三叉峰の道しるべ
冒頭でも記したが、十数名のメンバーでこのような距離のある長丁場ルート(推定コース定数51)を行くのには、もっと多くの時間を用意すべきであったと思う。時期的は、新コロナウィルスによる登山ができないために体力的に大変だったメンバーなども、予定通りに進行できなかったことの原因の一つでもある。いずれにしても、重要なのは安全に登山を行うことだ。その点に関しては後悔はない。距離11.2㎞、累計登坂1390m、下降1399m、休憩込み活動時間9時間10分、コース定数35である。


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