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淡基橫斷古道の道しるべ |
中国明朝最後の砦となった台湾は、1683年鄭成功の政権が倒され清朝の領域となる。その統治は台湾海峡に面した西側平野が主体で、東側や山岳原住民の領域にはほとんど及ばなかった。清朝統治の末期1874年、日本との間に起きた牡丹事件は、清朝の台湾政策に変化をもたらす。具体的には、後山と総称された東側への積極アプローチや台湾の近代化である。そうした政策で、中央山脈を越える道路が開かれ、また軍事的強化も図られた。その一つが現在の陽明山を越えて、淡水と基隆を結ぶ淡基橫斷道路である。当時は淡水は台湾北部の政治中心であり、一方基隆は重要な港となっていく過程であり、この二か所をつなぐ道が開通した。清朝官製道路の最後の道といわれている。
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東側基隆市大武崙から新北市汐止へと歩く |
ほかのいわゆる古道と同じで、淡基橫斷古道もその後一部は車道になったり、廃棄されて埋もれていた。それが約20年ほど前に陽明山公園の依頼で調査が行われその存在が知られるようになった。実は、筆者は今までに淡基橫斷古道の一部になる部分は歩いたことがある。しかし、今回は淡基橫斷古道という視点で臨み、そうした問題意識を以って歩いた。そうしてみると、海岸を通らずいかに最短距離と最低昇降で淡水と基隆を結んでいるのかを認識する。
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夢湖にて |
今回は、東側基隆市の大武崙からスタートし西へ一部は車道ををつないで古道を進み、今や界寮縱走路として道が良くなった三界山から五指山へと続く稜線上の峠まで歩き、その後は新山を経て下山した。稜線上の峠には、兵士が駐屯した跡がのこる。実は、これは最近の道整理で草に埋もれていたものが取り除かれてその姿を現していた。今まで何度か通り過ぎたときには、まったく気づかなった。
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953区間バスを大武崙で下車 |
台北から953区間バスで集合点大武崙へ向かう。このバスはベッドタウンとなった基隆市に住む通勤者が台北に通うのが主体なので、祭日の今日は便数が少ない。台北科技大学バス停8時発が始発だ。もともと通勤方向とは逆なので、高速道路は平日でも少ないが、スムースに進んで8時45分に到着する。今回の四連休は、前半土日の二日は南部一部を除いて雨だった。今日は持ち直したこともあり、18人が集まった。
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古道ははじめ地元民菜園の脇をいく |
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沢を渡り三層山へ向かう |
9時に歩き始める。高速道路の出口になる車往来の多い道を渡り、東都社區へと少し登る。二棟のビル中間の道の端から淡基橫斷古道が始まる。家庭菜園のような間から沢沿いに道は進む。右に工場の建物などをみて竹林に入る。9時17分、竹林を抜けてすぐ沢を渡り分岐がある。左に三層山への道が分岐する。初めにこの山を登る。2009年の道しるべが方向を示す。数日来の雨で道の表面はたっぷり水を含んでいる。10分ほどで狭い山頂(標高109m)に上がる。
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狭い三層山山頂 |
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沢を渡る |
三層山から往路を下り、分岐からさらに古道(三層保甲路)を進む。タケノコ畑や小さな菜園を過ぎ、左に分岐を分け道は三、四か所沢を横切る。苔むした石段が現れ古道の趣を添える。雑木林の中の道を登り、9時53分突然と木製の展望台が現れる。見たところそれほど古くないが、メンテもされていないし、訪れる人もあまりいないのだろう。道は下って右に七安産道舗装路に出る。土の道は左にまだ続く。また登っていき、左に湳子大崙へと道は大きく曲がる。ほぼ平らな道をいき10時6分、東側の草が刈られて出発点大武崙などが見える山頂(標高216m)に着く。遠くには三角ピークの基隆山が目立つ。
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忽然と現れた展望台 |
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七安道路に降りる |
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湳子大崙山頂 |
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山頂のパノラマ、下方の谷は大武崙、遠くに三角ピークの基隆山 |
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枕木道 |
往路を少しもどり分岐からさらに進む。石のベンチや枕木が道にある。ここも遊歩道として整備されたのだろうが、草深いこの道はメンテがされていない。10時26分、七安産道に降り立つ。しばらく舗装路を進む。数分進むと、右に登山道入り口がある。地図上ではこの道からさらに続く山道がある。入って様子を見るが方向が異なる。戻ってさらに舗装路を進み、10時54分右に広い土の道が分岐する。この道を追っていく。進むこと10分、舗装路に出る。左に曲がり、竹がまばらに生える開けた道を進む。11時17分、舗装路脇の大牛稠山登山口に着く。ここは
以前訪れた場所だ。
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開けた農地を行く |
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古道入口 |
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沢を渡る、長靴が実に便利だ |
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廃棄鉄パイプ |
小休憩のあと、舗装路を少し行き、左に急坂で下っていく古道に入る。石段も現れ古道であることを示す。沢音が大きくなり、沢を渡り左岸を行く。腐食した廃棄鉄パイプが道を横切る。そのうち開けて畑が現れる。数台の車が停めてある橋を渡り、その先もう一つの橋を渡って、右にまた登っていく古道を進む。11時46分、舗装路に上がる。土地公と面桶寮二號涼亭と記されたあずま屋がある。食事休憩をとる。
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二つ目の橋 |
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涼亭で昼食休憩、前方に土地公祠 |
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峠へ畑を登る |
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遊楽客も訪れる苓蘭生態農園を突っ切る |
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古道の橋を渡る |
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沢に降りて少し遡る |
食事休憩後、土地公の道を挟んで反対側から古道を進む。タケノコ畑の間を登り、峠を越えて下る。新しいログ小屋の脇を行き、12時32分
苓蘭生態農園に出る。休日の今日は、園内には家族づれ遊楽客を見る。農園の中を突っ切り、登って大華三路を進む。道脇にはパンの木が並ぶ。12時44分、左に土の道をとる。草でふさがれているので、注意しないと見逃す。すぐに沢を渡り、道は沢沿いに登っていく。ここにはマーカーリボンはあるが、藍天隊のものではない。遺構の脇を進み12時56分、道は沢に降りる。少し沢を遡り右に菜園に上がる。菜園から少し登り舗装路出る。対面はちょうどまた古道の入口だ。
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古道の入口 |
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苔むした石段を登る |
稜線上の峠へと続くこの古道も以前歩いた。前回は下りにとった道を、今日は登る。石段なども多く現れる。13時41分、峠に着く。界寮縱走として多く登山者が訪れるようになったこの峠は、数年前の草深い状態とは全く異なる。広い峠の一角には、清朝軍が駐在した小屋の土台がある。以前は草に埋もれて全く気付かなかった。ここからは、淡基橫斷古道から離れて稜線を進む。稜線を登ること約20分、14時9分七分寮山(標高443m)に着く。頂上すぐ下の送電鉄塔の脇を行き、分岐をすぐて14時19分、七分寮農道に出る。
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峠の清朝時代の兵士駐在跡 |
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七分寮山山頂 |
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七分寮農道へ降りる |
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七分寮農路から瑪七產道へ |
稜線を進むこともできるが、時間もすでに14時を回っているので、歩きやすい舗装された農道を進む。前方に新山の三角ピークを見て、七分寮農道を下り瑪七產道に入る。ほぼ平らな道は14時36分、登り気味になり七汐農道へと続く。左が開け展望がきく。14時50分、左に新山への登山口が開く。聯合艦隊により最近整備され、道筋がはっきりの道を行き、3,4分で展望台に着く。休憩をとる。
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七汐農路からの広いパノラマ |
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二つ目の展望台から右へ急坂 |
道を進む。左にもう一つの展望台を見ると、道は急坂になり鞍部へと10分ほど下る。登り返しもとても急だ。15時23分、分岐で左に道を分け、すぐに新山山頂直下の岩場を過ぎる。岩を登り、風が強い山頂に出る。19人の岩場通過は少し時間がかかる。15分ほどで全員が上がり、左に下りはじめる。ここからは、多くの登山者とであう。新山は、すぐ足元の夢湖と合わせ、かなり高い場所まで車やバイクで来れるので、人気の山だ。
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新山へ急坂を登る |
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頂上直下の岩場を登る |
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新山山頂からのパノラマ |
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夢湖へ下る |
登山者が多いので、道は整備されているが、土がかなり削り取られている場所もある。14時56分、稜線道から右に折れ、16時14分夢湖に着く。ここも大勢の人がいる。しばらく休憩し、16時23分、保線路道をとる。この登山道は、十年前に初めて新山を訪れたときに登ってきた道だ。すぐに沢を越え、枝尾根の山腹を行く。送電鉄塔の保線路なので、途中鉄塔脇を行く。台湾電力が整備するので、道の状態はすこぶる良い。ところどころ登り返しもある。17時、最後の鉄塔脇をいき、前方に最近登った北港山を見る。17時、舗装路に降り山道歩きは終わりだ。道なりに進み、17時24分、烘內バス停に着く。まもなくやってきた587番バスで多くのメンバーは汐止へ向かい、さらに数分待って筆者も含んだ数名は896番バスで南港へと向かった。
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満水の夢湖 |
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保線路を下る |
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16.3km,累計登坂851m、下降852m、所要時間(休憩を含む)8時間半であった。コース定数は29となる。人数が多いので、予定より少し時間はかかったが、曇り空のもとでの登山で、気温もそれほどでなくよい登山だった。ただ、雨の後なので道は、ぬかったところも多い、長靴は泥だらけだ。幸い道筋で簡単に洗える。淡基橫斷古道というテーマで、何回かに分けて全行程を歩こうと思う。
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