このブログを検索:山名などキーワードを入れてください

2012-07-02

2012年7月1日 平溪峰頭尖 - 平溪三尖中の不遇な山

薯榔尖から見る峰頭尖の全容(2011年10月撮影)
平渓三尖と称される山、薯榔尖(標高622m),石筍尖(標高520m)そしてこの峰頭尖(標高606m)は、昔日石炭産業で栄えた平渓の菁桐を見下ろす三座の山である。薯榔尖,石筍尖の二座は、谷を流れる基隆河の北側に、峰頭山は南側にそびえる。薯榔尖は、その三角形で富士山に似た形から、日本統治時代は平渓富士と称された。石炭産業に携わっていた日本人幹部の宿舎は、この平渓富士が眺められる場所に建てられていた(現在は民宿となっている)。薯榔尖石筍尖とも登山ルートはいくつかあるが、いずれも菁桐から石段の立派な登山道がある。頂上には国旗も掲揚されている。一方、今回登山の峰頭尖は、前二者より山容ははるかに大きく、登山に要する時間も長い。そのためか、登山道は行政単位の手が入っていない、自然に近い道である。登山客も相対的に少ないようで、好天の日曜日であるにもかかわらず、他の登山者とは出会うことはなかった。


峰頭尖は平渓の谷の南側(マウスクリックで拡大)
平渓国中の登山口から白石脚の登山口-菁桐まで歩く
皇帝殿山東峰からみる峰頭尖、手前は皇帝殿山北峰
峰頭尖は、東西に伸びる細長い山容だ。基隆河方向からみると屏風のように長く、幾つものピークが尾根上に突き出ている。全体でみると薯榔尖,石筍尖のように単一の顕著なピークとはいえない。地図上での峰頭尖は、一番西側のピークに付けられている。一方、峰頭尖の西にある皇帝殿山から眺めると、峰頭尖は顕著な尖ったピークが見える。これなら「尖」の名がつけられることが納得できる。


沢の堤防を行き、反対側に渡る

今回の登山行程は、平渓国中から東勢格古道を少し歩き、沢に下って渡り、石燭尖にまず登る。その後この尾根を九龍山へ、そこから更に急な坂を登りつめ、峰頭尖の稜線にでる。稜線上のピークを数個越し、白石脚への分岐を過ぎ峰頭尖へ往復。分岐にもどり白石脚への沢沿い道を下って白石脚、そこから菁桐へ出た。道はそれなりに歩かれているが、安全対策がこれでもかと施された、付近の他の山道に比べると、最低限の補助ロープなどだけでずっと自然に近い山道だ。


コケに覆われた長い石段の道
今日は、登山経験豊富なWさんが一緒に登る。峰頭尖は、自分と同じに初回の登山だ。木柵の捷運木柵站バス停で落ち合い、7時20分過ぎに1076番バスに乗る。平日であればスクールバスの性格の1076番バスは、今日は登山バスである。途中でかなりの乗客が下車し、登山客数名だけのバスは8時に平渓国中に着いた。天気は快晴、平渓国中の向こうに薯榔尖や石荀尖が見える。双青公路脇の登山口の階段をのぼると、石燭尖と記してある道標に従い、右の道を進む。民家を過ぎ道は土の道になる。しかし道の様子は農業用のようで行き止まりになった。別の道も探ってみたが、どうも山道らしいものがない。戻って農家の人に尋ねると、先ほどの分岐で別の道を取るようとのはなしだ。


石燭尖の大岩への登り



道標の分岐にもどり、階段の道を登る。この道は三月に臭頭山から下ってきた東勢格古道へ続く。もし、石燭尖への道の入口がわからなければ、峰頭尖東峰経由の道もあるので、東勢格古道を進む。数分歩くと、慈母峰と平渓国中を記している道標がある。石燭尖という表示は無いが、道標の脇から道が沢に降りている。これを進んでみると、右側から道が合流した。この道が、もともと民家の近くから続いている道だろう。どこで迷ったのだろうか。何れにしても、石燭尖への道とおもわれる山道なので、それを取り進む。道は沢に降り、小堤防を越える。この道で間違いないようだ。堤防の内側の水は深くないが、小魚が泳いでいるのがわかる。

沢の対岸の道を登る。右に登っていく道がある。少し行ってみるが、これではないようだ。戻って左の沢沿いの道を行くと、果たして緑のコケに覆われた石段が長く登っていく。登りつめると巨石が控えている。その下には洞窟があるが、中は何もない。石に刻まれた階段を登り、急な坂が始まる。手袋を取り出し、手足を使った登りに備える。細い露出したい岩に刻まれた石段を登る。補助ロープがあるので助かる。左に下りていく道があるが、そのまま進むと露出した大岩の上についた。時刻は9時。切り立った大岩の向こうには、石燭尖がスクっと立っている。まさに石のローソクのようだ。遮るものがないので、周囲展望できる。標高は320mでまだ高くないが、中央尖、これから歩く尾根や峰頭尖東峰が見える。西側には、峰頭尖稜線からくだる枝尾根の向こうに薯榔尖も望める。


石燭尖と周囲の山々

少し戻り、先の左側の道を下り、大岩の付け根を巻いて登っていく。露出した岩尾根も現れる。岩についたコケは非常に滑りやすい。補助ロープを利用して慎重に進む。天燈の残骸が道端に二、三残っている。尾根の幅が広がり、九時半に平坦な場所に出た。ここで休憩する。もともと九龍山かと思ったが、九龍山はその先比較的平な道を数分進んだところであった。今までの登りで、全身汗だくだ。


九龍山頂上


稜線への登りの途中から見る中央尖、左奥の遠い山は東北角九份の山々
九龍山(標高473m)からは一旦下り、急な登りが始まる。20分ほど登ると、大岩がありその脇から東方向に展望が得られる。ここから見る中央尖は、トンガってその「尖」の名に恥じない。左側は結構切り立っているが、3月はそこをロープを使って登った。中央尖左側の遠くには、東北角九份の山々が見える。更に、手足を使って登る急坂を10分ほど登ると、開けた平坦部になった。ここで一休みする。10時20分、石燭尖から約1時間の登りだ。


稜線の分岐
稜線まではほんの僅かの登りで、10時半に到着。稜線上はあまり休憩できるところも無いので、先ほどの休憩場所は人数が多い時は、最適だ。稜線道を左に取れば、東峰を経由して東勢格古道に下る。右にとり、峰頭尖を目指す。尾根上の道も、手足を使った登り下りが続き、気楽な稜線歩きは望めない。尾根上にも天燈の残骸が枝に引っかかっている。一つピークを越したところで、腹ごしらえをする。時刻は10時45分。

稜線上の分岐から峰頭尖の頂上ピークまで、ざっと数えて七つの小ピークがある。そのうち三つ目は、他に比べて顕著な三角形で高い。このピーク前で基隆河側が開けて展望ができる。対岸の真正面の山は薯榔尖だ。ピークを越え下ると、852峰への道を分岐する。これは東勢格へ下る道だ。時刻は11時40分、ここで尾根道全体の約半分を過ぎた。少し休憩を取る。


尾根上の道、登り下りが多い
稜線上から平渓の谷方向を望む、右のピークは峰頭山稜線上中間の比較的大きな無名ピーク
稜線上の道、コケに覆われた岩を登る
分岐からは道は先に山腹を巻いていくが、そのうちまた稜線をゆく。稜線上には露出した岩があるが、コケに覆われていて滑りやすい。補助ロープなどもなく、慎重に歩く。ピークの登りで、また基隆河側が開けた。振り返ると先ほど852峰分岐の前に越したピークが高い。自身から派生する枝尾根を従え、単独で~~尖」と名付けられてもおかしくないような山容だ。12時20分、白石脚へ下る道の分岐についた。ここはそのまま通過し、峰頭尖を目指す。途中に一つピークを越え、12時半前に峰頭尖頂上に着いた。細長い頂上は基石があるが、周囲を樹木に囲われていて展望はない。竿が高く伸びているが、その他何もない。しばらく休憩をとる。
今日の目的地、峰頭尖頂上
岩がゴロゴロした涸沢の下り道
やって来た道を分岐へ戻る。途中のピークからは台北方面が望める。101ビルも見える。1時に分岐に付き、急な下り道をさがりはじめる。10分ほど土と木の根の道を下って行くと、石がゴロゴロする涸沢の道をいくようになる。補助ロープなどなく、滑りやすい石の道を慎重に下る。更に20分下ると、やっとこの涸沢の道が終わりになる。小沢を一つ超す。タオルを浸し絞って顔を拭くと、気持ちが良い。そこから沢沿いの山道を下っていく。ここまで来ると、通常の山道となり歩きやすい。稜線の分岐から下ること50分で、畑が現れた。沢を二度渡り進むと、小さな堤防が現れる。釣人が魚を釣っている。釣人があまり来ないのか、餌を垂らすとすぐ捕れるそうだ。12時10分、登山道の入口についた。ここには平渓区役所が設けた案内板が道脇にある。

下り道の小堤防と釣人
残るは舗装路を菁桐へ歩くだけだ。舗装路を下ると、正面に薯榔尖が大きい。ここから見ると、三角形の山容が顕著だ。平渓富士と名付けられたのもうなずける。双青公路と並行し基隆河のこちら側を行く道に合流し、下っていく。右に雑貨屋がある。ここでビールを買って飲む。実にうまい。雑貨屋の左先の道を取る。旧日本宿舎や旧台陽公司クラブハウスのある前を通り過ぎ、菁桐へ着いた。今までは、山から下るとすぐ帰ってしまったが、今日は他の多くの観光客に混じり、かつて台湾石炭産業の雄、菁桐を観光してみる。菁桐駅の後ろの山にある、石底大斜坑道口や炭鉱関連の建物遺跡を歩いてみる。帰りは16時30分発の台鉄平渓線で八堵へ行き、乗り換えて台北に戻った。


白石脚から見る薯榔尖、平渓富士
今回の山行は、歩行距離は7.6kmと短い。しかし、急坂や尾根上での繰り返しの登り下りで、結構体力が要求される。下り道も慎重さが求められる。歩行時間は休憩も含めて6時間50分、登攀高度合計は714mだ。これで平渓の山は、石荀尖を除いて、主要な山々はみな歩いたことになる。


高度プロファイル

0 件のコメント:

コメントを投稿