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烏塗渓遊歩道から見る、遠くは皇帝殿山と手前の高速道路高架橋 |
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なぜ犬の写真か、それは本文をご覧ください |
石碇の老街は、最近観光スポットとして注目を浴びている。もちろん九份のような賑わいではないが、一度さびれた石炭の街は今観光客が訪れる。豆腐も有名だ。新北市石碇区は、南に翡翠水庫を擁するがその北側に尾根が東西に走る。
今年1月雨の中を訪れた風路嘴から小格頭までの稜線はその一部だ。今回は、風路嘴から東に歩いて粗坑崙へ登り、その後山の北斜面を四分子古道と台松煤礦輕便車路を経て烏塗窟に下った。烏塗窟には早く到着したので、烏塗溪にそった遊歩道を石碇老街まで歩いた。
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南の風路嘴から北へ山を下る(クリックで拡大) |
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下りがメインのルート |
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最近の付近の山行を表示 |
石碇区内には、昔の炭鉱跡が点在する。烏塗窟の奥にも鉱山があり、石炭の輸送にトロッコが使われていた。その跡が山道として歩かれている。台松煤礦輕便道だ。その上の四分子からは、古道が月扇湖山の裾を登って47-1号郷道へ続いている。途中には石炭を蒸し焼きにしてコークするにすための煤窯が打ち捨てられて残っている。石炭産業の名残のある場所だ。47-1号郷道は山桜がまだわずかだが咲いていた。今回の山行は、高いところからスタートして下って行くという、手抜き山行だ。北宜公路が、粗坑崙のすぐ下を走っているので、100mぐらいの登りで頂上に着く。ここがこの周辺では最高点である。あとは下るだけだ。
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産業道路の登りから見る二格山 |
坪林へ北宜公路を行く緑12番バスで向かう。今回はMRT新店駅7時15分発のバスだ。通学時間なので、双峰国小へ通学する小学生が大勢乗車する。途上でも多く乗ってくる。双峰国小で下車すると、車内は大分静かになり乗客も半分ぐらいになった。ただ、途中には青潭国小などの小学校があるが、なぜバスに乗ってまで通うのかわからない。小格門までくると、霧の中を進む。ただすぐに霧は晴れ、7時50分風路嘴に着いた。バス停の対面は、テラスのあるお店がある。テラスに立つと、谷向こうは
筆架山連峰が屏風のように連なっている。その右には
皇帝殿山のギザギザピークがある。この二つの山の交わるところの谷間が、今日の目的地石碇の老街だ。
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筆架山を見る |
風路嘴から粗坑崙へは二つのルートがある。47-1号郷道の分岐部にある茗緣茶園から始まる稜線上の山道と、47-1号郷道を少し入った後右に始まる産業道路を進み、茶畑の上部から山腹を登る道である。前者は森の中で展望がないと判断し、産業道路を進む。少し登ると、二格山が見える。
先月栳寮から歩いた二格山への道がわかる。道は右に回りこみ、一面の茶畑が広がる。思った通り、こちらの道は展望ができる。舗装路の産業道路は終わり、そこから山道が始まっている。風路嘴から約15分の歩きだ。
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茶畑から見るパノラマ、左が筆架山連峰、その右に皇帝殿山、更に右は月扇湖山 |
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粗坑崙頂上 |
ここ数日間好天の日が続いているが、道は結構ぬかっている。日が当たらないためだ。急な坂は補助ロープがかかっている。10分ほど登ると稜線道に合流する。8時半少し前、粗坑崙頂上(標高688m)に着く。頂上の樹木は南側が少し切れ間があるので、展望ができる。見える範囲では雲海が谷を埋めている。この雲海の下には翡翠水庫があるのだろう。今日の主要な登りはこれで終わり。あっけない。頂上からすぐ下に左に真っ直ぐ降りていく道がある。これを行けば次の四分子古道の入口が近いが、稜線を大格門まで行く。稜線道はそこそこ歩かれているし、標識リボンも多い。20分ほど歩くと、左に樹が切られ開けた場所に出る。ここからももちろん二格山から筆架山連峰が望める。手前には枝尾根が下がっていく、その突端のピークは月扇湖山だ。ここからは低く見える。そしてその右奥に第5号高速道路の高架橋が望める。更に尾根道を行くと、杉林や竹林を過ぎていく。
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粗坑崙の稜線から見る月扇湖山、右奥の谷に石碇が見える |
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大格門古道の下り |
9時10分、粗坑崙から約40分で十字路の鞍部に出た。ここは大格門(標高605m)である。峠の左右に下っていく道は、大格門古道とういうことだ。清朝時代台北から宜蘭への街道、淡蘭道は瑞芳の
金字碑古道や貢寮の
草嶺古道が一部である表街道と、石碇、坪林を経由していく裏街道の二つがあった。大格門古道は淡蘭道の裏街道の一部ではないか、ということだ。稜線をそのまま進めば、獭狸尖をへて坪林へつながる。今回は左に取り峠を下る。道はコンクリ製の階段だ。峠の反対側も同様にコンクリの道である。緑の苔が生え、たくさん落ち葉が落ちている。足を止めると杉林の中で小鳥の鳴き声にだけなる。自然に包まれているのを実感する。下ること数分で47-1号郷道に出る。少し下がり右にとれば、そのまま烏塗窟へ続く。左にとり、四分子古道の入口へ進む。トラックが大きな音とともに登ってきた。
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郷道わきの山桜 |
郷道はほとんど車両の往来はない。まだ花が咲いている山桜もある。大部分はすでに葉桜だ。少し登り気味の道を進む。陽射しの中、山の景色を見ながら歩を進める。十数分歩くと、左に標識リボンのある踏跡入口が見える。粗坑崙頂上から直接下がってくる道だ。この付近から見ると標高差は100数十メートルだが、粗坑崙はけっこう高い。ところどころ樹木を栽培している農園の入口がある。道が回りこんで正面に月扇湖山が見える。藍天登山隊の標識が電柱に貼り付けられている。四分子古道は、電柱のわきから下っていく。時刻は9時45分、歩き始めて2時間弱、車道わきで軽食を取り少し休む。
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四分子古道下り始め |
四分子古道に入ると、道はつづら折りで高度を下げる。草がけっこう深い。稜線の道より歩かれていないのだろう。山腹から沢沿いの道になり、少し下ると右に石を積み上げた場所が現れる。ここは修記煤窯ということだ。古道の入口から15分ぐらいだ。窯の入口が二つ開いている。まだしっかりしているが、わきには太い樹も生えているので、廃棄されてからかなり年月が経つのだろう。しかし、コークスを作るといっても、原料の石炭はどこから運んできたのだろうか。もし谷筋から持ち上げてここで作業し、その後またコークスを谷へ運んでいては効率が悪い。どのような運営をしていたのか。
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廃棄された修記煤窯 |
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古道わきの土地公祠 |
煤窯から少し下ると、右には土地公の石製祠がある。中をのぞいてみると香炉に線香が二本立っているが、あまり参拝されている様子はない。この古道は、我々のような登山者が歩くだけで、土地の人の生活とは関係が薄いようだ。祠は苔がびっしり生え、刻まれているだろう文字などは全く分からない。祠から下がると、今度は作業小屋がある。そこから沢方向に降りるが、古道は右に下っていく。まっすぐに行く道もある。はじめはこの分岐に気づかず直進した。しばらく進むが、様子がちょっと違う。道が細くなってきて沢に向かっている。どうやら違うようだとと気付き、標識テープのある場所まで引き返してみると、古道は別の方向に下っていくのを発見した。古道を進むと、大岩の間から石段で下っていく。土地公の祠やこの石段、古道としての要素はたっぷりだ。沢を大きな岩で渡した橋をこえて進むと、茶畑が現れる。古道はこの茶畑の中を進み、まもなく人家が現れ終了する。人家の犬が遠くからみつけ、吠えながら駆け寄ってくる。住人がなだめる。いつもある場面だ。
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クラッシックカー |
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沢を渡る、クロが先導 |
ここから産業道路が始まる。人家が数軒集まっている。少し下ると、道端に面しているガレージの中に四台のクラッシクカーがある。リストア作業をしているのだろう。車種の分からないオープンビンテージカーもある。更に行くと十字路が現れる。左に折れて下っていく。次の台松煤礦輕便道へ向かう。下って行くと左に人家がある。前で話をしていた民家の人が一人でどこへ行くのか訪ねてきた。台松煤礦輕便道の入口を探している旨を話したら、家の前の道の突き当たりから下って沢を渡ると、道があるということだ。早速そちらへ進む。すると、その家の飼い犬だと思う一匹の黒の台湾犬がついて来た。先になって道を行き、案内をするかのようだ。沢に降りると、渡渉していく。自分も後を追って渡る。対岸には標識リボンがかかっているが、踏み跡は草にほぼ埋もれてよくわからない。リボンの示す方向に、足元に注意し下っていく。そのうち踏み跡がはっきりしてきた。クロ(犬)は、後を付いて下りてくる。写真をとったりして立ち止まると、先になって歩いて行く。まるで、自分の飼い犬をつれて山歩きをしているようだ。
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煤礦輕便道入口の廃屋 |
台松煤礦輕便道は、もともと炭鉱の石炭を運ぶためのトロッコ道だったが、今はすっかり自然に戻ってしまっている。今日の行程の中では一番整備されていない、自然に近い道だ。補助ロープなどもない。草も深い。ただ、標識リボンはしっかり付いているので、助かる。左に道が分岐する。これは月扇湖山へ尾根伝いの登る道だ。11時20分、台松煤礦輕便道に入るところの民家から約20分ほど下ってくると、ひょっこり開けた場所にでた。正面に人家、手前の左側にはレンガ壁だけが残った廃屋がある。廃屋には石碇郷烏塗窟52号の標識が付けられているが、意味があるのか。ここからは舗装路が始まる。クロはまだついて来る。眼前には筆架山連峰の西帽子岩が目立つ。橋をこえ郷道に合流し下る。右にレンガ造りの古い家が現れた。そのすぐ先は見たことがある町並みだ。11時半、烏塗窟に着いた。
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自然にできた醋漿草の花と落ち葉のパターン |
もともとは、ここからバスで帰るつもりだったが、あまりも早く着いてしまった。天気もよいし、石碇へ烏塗溪沿いの遊歩道を歩くことにする。烏塗窟の集落を過ぎると、橋が河にかかっている。これを渡ると遊歩道が始まる。クロもまだついてくる。沢沿いの道は、石畳のよい道、軽快に進む。十数分進むと、一旦河床に降りた後登り返し民家が現れる。遊歩道を歩くハイカーにすれ違う。クロは河のわきで別の方向を見て話しているカップルのわきに、ぬーっとそり寄っていく。座っている女性が、クロに気づいてびっくりしている。その先にも別のカップルがいて、クロは同じように近づいていく。この犬は、本当に冗談を楽しんでいるのかのようだ。更に進み11時50分過ぎに、
摸乳巷古道の入口に着く。ベンチに座り食事をとり休憩する。クロにも昼飯を分けてやる。
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石碇のトロッコを押す坑夫の模型、背後は高速道路 |
休憩後石碇へ進む。上を高速道路の橋が越えているいく場所の近くで、クロはウロウロしている。そのうち見えなくなった。そろそろ冒険も終わりということがわかったのだろう。それまでは、しばらく遠くへ行っても、戻ってきて一緒について来たが。一人の山行だったが、きょうは後半の部分で犬の連れができて、愉快な歩きで終わった。
今回の行程は、歩行距離11.3km、所要時間4時間15分だ。手抜き山行だと思っていたが、それでも登攀高度累計は423mある。春が近づいて天気がよくなってきているが、また寒波が来るまでのこの好天の一週間は、楽しい山行を実行できている。
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