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相思樹の黄色い小花が沢山落ちる縦走路 |
梅雨期は天気が不安定だ。朝は晴空が広がっていても、午後に雷雨に見まあうことも多々だ。今回は、そうした要素も考えて、三峡の鳶山山系でまだ歩いていないピークを縦走した。朝は晴れていたが、期待より早く雨が降り出し、雨の中を下ることになった。ただ、こうした可能性も考えていたので、困難はなかった。
山はちょうど相思樹(台湾アカシア)の黄色い小花が満開だった。この花が山道にたくさん落ちて、縦走路はさしずめ黄色の水玉絨毯だ。鳶山山系も油桐が多いが、すでに時期は過ぎており、ところどころ白い桐花が落ちているだけだ。油桐樹は、日本統治時代に油を取るために多く植林されたが、炭の材料になる相思樹も、多く植えられたそうだ。人里近いこの山は、こうした樹木を多く植林するのに適していたということだろう。
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南側妙法寺からスタート(マウスクリックで拡大表示) |
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三峡の山群 |
鳶山山系は、大漢溪にそって続く標高2、300m級ピークが続く山並みである。谷を挟んだ桃園側から見ると、その背後にある雪山山脈の枝尾根上の1000m超の山々の前に並ぶ屏風のようだ。この山系の北側部分は、
去年四月に一度訪れた。ちょうど油桐が多く咲いていた。鳶山の周辺は、地元の人が多く歩き、雨をしのぐあずま屋も多く設けられている。今回は山系の南端にある、娘子坑山から稜線を追って行き、福徳坑山、長春嶺を過ぎた後、朱府王爺廟へ下った。ネットの登山記録を見ると、北側から歩いて娘子坑山で終えるのがほとんどだ。南側から歩いたのは、理由がある。一つはバス便の頻度差だ。娘子坑山の登山口、妙法寺は9103番が通過するが、便数は少ない。一方、三峡は多くのルートのバスがかなりの頻度で乗れる。下山した時に、待たずに乗れる。雨が降っている時は、すぐ乗れるのは助かる。もう一つの理由は、山系北側は、あずま屋が多いので、雨宿りができることだ。南側は、あずま屋が全くない。雨脚が強いときは、雨宿りができないので辛い。実際、雨が降りだしたとき、ちょうどこのあずま屋の一つにたどり着き、最も激しく降っている間、雨宿りができた。
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出発点、妙法寺。この時は天気良好 |
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民家のわきに登山口 |
MRT永寧駅で、大溪行き9103番バスに乗る。台北市内6時45分発のバスは、7時40分にやって来た。
去年大溪金面山へ行く時にも、乗ったがその時より5分ほど到着が遅い。土城の市街を抜けると、車内はガラガラになる。三峡の市街を過ぎ、3号省道の峠を越えた後、8時35分に妙法寺バス停に着いた。ここは桃園県大渓鎮になる。青空が広がり、金色に塗られた山門の狛狗や、参道両脇の仏像が眩しい。娘子坑山へは、参道わきを登っていく信義路657巷の産業道路を行く。材木工場を過ぎ、十分足らずで産業道路のどん詰りにある民家に来る。犬が吠えてうるさい。山道が民家のわきから始まる。この付近の山は、人気の山ではないので、道も踏跡程度だ。さしずめCクラスということろ。道には黄色の小花が沢山落ちている。相思樹の花だ。
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樹木に囲まれた娘子坑山頂上 |
急坂を登りつめると、尾根上を進むようになる。雑木林や竹林を過ぎ、登山口から20数分、9時8分に娘子坑山頂上(標高238m)に着く。基石が埋まっている。周囲は樹木で展望がない。少し戻る形で、進み次のピーク、烏塗窟山へ向かう。雑木林の中を進む道は、下草もすくなく道筋もはっきりしている。数分歩くと、墓地の上部にでる。ここは樹木がなく右側の展望が利く。
大渓の白石山の右奥に高い山群が見える。各々の山頂はまだ判別できないが、雪山山脈の枝尾根にある山々だろう。尾根道を進むと、檳榔樹林の上部に出る。そこから下っていくと、十字路鞍部に来る。ここは直進だ。最近取り付けられたように見える、ボランティアの道標がある。娘子坑山から約30分の位置だ。あまり上下のない気楽な道を進む。更に20分ほどで、電柱のある土の道に出る。これを下って行くと、茅埔路から上がってくる峠道に出る。車やバイクが通りすぎていく。烏塗窟山へは、左に進み民家わきの山道を登る。
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烏塗窟山への稜線から見る景色、左の白石山の向こうは石門水庫、そして雪山山系の枝尾根ピーク群 |
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山道は黄色小花の絨毯 |
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山道から見上げる花満開の相思樹 |
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赤に黄色の花、自然の造形 |
少し登ると、左側の展望が開ける。大漢渓を挟んで、対岸八徳市の住宅群など市街が見える。雑木林を登って少し、道が途切れてしまった。観察すると、大きな樹が折れて道を塞いでいる。この樹木を乗り越えると、山道が現れた。10時11分、烏塗窟山(標高283m)に着いた。妙法寺から約1時間半の道のりだ。頂上は広いが、木々の間の一部にかろうじて遠方が望めるだけだ。三角点の上には鉄塔が造られている。食事をとり、十数分休憩する。
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烏塗窟山の登りからみる八徳方向の景色 |
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烏塗窟山頂上 |
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山道のタケノコ |
頂上から下るとまもなくコンクリの道に出る。山道は、その道を横切り進む。山腹の急坂を下る。T字路にでた。左側の道は草深い。標識リボンがある、右側にも行けそうだ。右側に少し行ってみると、どうやらこれは違うようだ。道をもとにもどり反対側を進んでみる。そのうち、標識リボンが多く現れこれが正しいようだ。尾根にとりつき、進むようになる。竹林の中でタケノコが枯葉の地面から頭を出している。人里離れたあまり歩かれていない山道なので、残っているが、他所ならば採られてしまっているかもしれない。緩いピークの登り途中、左側と右側に樹木が切れている場所がある。左側からは、先に登った烏塗窟山が、右側には
五寮尖の山並みがある。山腹には、まだ油桐の白い花が見うけられる。
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五十分山への道 |
ピークから下って行くと、舗装路にでる。廃棄された産業道路だろう。草に埋もれている。ここは左に折れる。濡れて苔が生えている舗装路は、土の道より滑りやすい。舗装路が終わると土の道が少し登っていく。道は雨の時の排水路になってしまっているので、深い溝が自然にできている。山道のこの部分は、山腹を横切っていくので、排水が悪く、梅雨のこの時期は水たまりが多くある。
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五十分山はあと少し、右に弘道路への下山道が分岐 |
烏塗窟山から約1時間ぐらいの地点で、また別の三叉路がある。ここは道標が右に90度に折れる方向を示している。ここから五十分山の登りが始まる。急坂を登って数分、右に弘道路へ下りる山道との分岐に来る。五十分山頂上(標高296m)はそこから二、三分の登りだ。11時33分、頂上に到着。頂上には金属製椅子など、そこそこ広い頂上に置かれている。今日の行程中では、ここから北方向が多く歩かれている部分である。蜘蛛の巣をどれだけ引っ掛けたのか、帽子には蜘蛛の糸がびっしり付いている。おまけに相思樹の花や小枝まで飾りのように載っている。空はすっかり曇り、頂上は西側が開けているが、遠くも望めなくなっている。雨が近づいているようだ。北東方向はこれから歩く福徳坑山と、その右に鳶山が見える。しばし休憩する。
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五十分山頂上 |
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五十分山頂上から鳶山方向を望む |
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蜘蛛の糸にまみれた帽子、小花や枝まで付いている |
15分の休憩後、福德坑山へ向かう。5分ほど下るとT字路に来る。直進する道は、弘道路への下山道だ。縦走路は左に下がる急坂だ。補助ロープのある坂を下り、頂上から十数分で産業道路の鞍部に出る。路面は相思樹の小花がびっしりだ。道路反対側の尾根を登る。古タイアの階段がある。五十分山からの山道は、それまでに比べるとずっと程度が良い。Bクラスの道だ。登って行くと、また山道に合流する。左にとり進むと、岩が露出した部分に福德坑山への道標がある。左にそのままゆく道は、山腹をトラバースしていく道のようだ。
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産業道路の鞍部、道にはびっしり黄色の小花 |
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今季最後の桐花 |
補助ロープの垂れる岩を登る。山道はしばらく登り坂が続く。油桐の花が落ちている。今年の油桐はこれで終わりだろう。登りつめると金属椅子が置いてある無名のピークだ。その先少しには、快楽亭のあずま屋がある。周囲には運動道具もある。少し下がった山腹にあるあずま屋には立ち寄らず、そのまま尾根道を進む。地元政府の立派な道標がある、弘道路への下山道を右に分けた後、一度少し下り、登り返すと左に茅埔路への道を分ける。木製梯子を登り、12時40分福徳坑山頂上(標高321m)に着く。今日の行程中の最高点である。ここからは、
一度歩いた道だ。
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福徳坑山頂上 |
雨がパラツキ始めた。曇っていて展望も望めず、先を急ぐ。雨脚がだんだん強くなってくる。今日は、どうやら雨の前に下山することは無理のようだ。急坂を下り、約数分であずま屋に到着する。ここは地元ボランティが造ったもののようだ。帆布張りの屋根や壁だが、雨を防ぐには十分だ。掃除も行き届いている。雨は勢いを増し、左側の桃園県八徳市の市街なども、すべて見えなくなった。ここで食事休憩をしながら、雨宿りをすることにする。
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雨宿りの縦走路上のあずま屋 |
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雨の山道は薄暗い |
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長春嶺のあずま屋で雨具を着ける |
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朱府王爺廟への下り道、濡れた岩は滑りやすい |
30分ほど経つと、雨脚が緩んできた。遠景も少し望めるようになる。頃合いと判断し、13時37分に出発する。雨で、道は水が流れている。木々の中の道は夕方のように薄暗い。十数分で長春嶺の分岐に着く。ここもあずま屋がある。森の中で雨は直接かからないが、滴り落ちる雨水は多い。ここで雨具を着ける。鳶山方向へ少し下る。すぐ鞍部に着き、左に朱府王爺廟への道が分岐する。天気がよければ更に鳶山へ行くことも考えていたが、今日は無理だ。左に折れ進む。初めは枕木もあるが、そのうちに土の道となる。急坂で濡れた石は滑りやすい。雨水で溝状になっている部分を越えていく。沢沿いに進む部分を過ぎ、再び枕木が現れ、山道が終了した。14時半に朱府王爺廟に着いた。約30分の下りだ。
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朱府王爺廟 |
廟の前は屋根がかかっている。ここで雨具をとり、ズボン下半分を外す。三峡の街までまだ2キロぐらいあるが、後は舗装路なので、傘で十分だ。山腹に建てられた廟からは、大漢溪の対岸に鶯歌の街と、その背後の
大棟山山系の山々が望める。支度をしていると、廟の人が出てきた。雨の中を山登りするのか尋ねられた。軒下を借りたお礼を述べ、14時47分廟から出発する。
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廟の前から鶯歌方向を望む、雨に霞んだ大棟山山系が鶯歌市街の背後に見える |
茅埔路へ下り立つ。その先第3号高速道路をくぐり、反対側にでる。高速道路沿いを進み、もう一度高速道路をくぐる。雨は引き続き降っているが、それほどの雨脚ではない。右に鳶山が高く見える。一部は霧がかかっている。白鷺が三羽、ゆっくりと田んぼの中に飛んできた。中山路から復興路へ歩き、15時12分に恩主公医院バス停に到着した。バス停で整理をしていると、そのうちに高速経由永寧行きの922番バスがやって来た。
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田んぼにおりた白鷺 |
今回は都合11km歩いた。所要時間7時間半だが、途中雨宿りなど、休憩時間が長い。実際の歩行時間は6時間半弱だ。登攀累計は約700mである。筆者は、運動中の心拍数や運動強度、消費エネルギーなどをモニターして歩くが、今回は約2500キロカロリーを消費している。そこそこの運動量があったわけだが、それほどの感覚はない。休み時間が多かったためだろう。気温が高くなっているので、汗はそうとう流れた。雨の中の山歩きは、あまり楽しいものではない。しかし、梅雨期間はそれも止む得ないことがある。
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