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2013-10-27

2013年10月27日 新店和美山 - 灣潭山 秋空のもとの郊外ハイキング

新店吊橋から望む灣潭山(左、上流側)と和美山
新店は、その奥にある山々への往来の途中に立ち寄ることが多いが、ここから歩き始めて近くの山に登るのは初めてである。新店のすぐわきには、新店溪が流れ碧潭とうい名所がある。吊橋がかかり、その周囲は前から台北市民の遊楽場所でもある。有名な吊橋は、1937年に完成したもので、すでに数十年の年月がたち、老朽化が問題になっていた。その後、原型にて補修が施され、2013年には新北市の古跡にも指定されている。この橋を越えて、対岸にある山が和美山である。別名碧潭山とも言う、標高152mの低い山だが、登ると新店の街や遠くの山々の展望できる、気軽に行ける展望台である。

新店から反時計周りに回遊
和美山と灣潭山の二つのピーク
新店周囲の登山軌跡
人力渡し船
和美山はよい登山道がある。頂上から先は、麓の住宅地区に続く山道から分かれ、金龍路へ下る保線路を下り、さらに灣潭山へ登る。灣潭山は、打って変わって草深い山道である。一般遊楽客は来ない山だ。標高141mと、これもまた低い山だが、和美山とは違って草をかき分け、倒木を越え、急坂を登り下りする道である。幸いに低いので、長い道ではない。灣潭山を下った後は、新店溪の岸辺から人力渡し船で右岸に渡り、河沿いの道を新店へ戻った。

吊橋、背後は和美山
今日は、昨日の苗栗縣向天湖山とは異なり、ゆっくりとした出発だ。9時にMRT新店駅に集合する。今日はWさん夫婦、Iさんが参加し四名での行動だ。駅から河沿いの道を歩く。河沿いの岸は広く、整備されてとてもりっぱになっている。遊楽客はまだ少ない。地元住民がのんびり散歩などしている。新店も、高い住宅ビルが沢山たてられ、随分と都会化したものだ。ほどなく、吊橋の橋脚下に来る。一度堤防の上にあがり、橋をわたる。大きいがやはり吊橋である、歩くと足もとが揺れる。晴れ渡った空のもと、橋下の新店溪はエメラルド色に染まり、まさに碧潭という名がつけられたことにうなずく。左岸の岩壁には、碧潭の大きな文字が彫られている。上流方向には、登る予定の灣潭山も望める。

吊橋から望むコバルトブルーの新店溪
和美山登山口
吊橋を渡り終えると、橋脚の左に和美山登山道入口がある。木製の塀、内側にはイルミネイトされた写真などがあり、ちょっと見ると登山道入口らしくない。このトンネル状の塀はしばらく続くが、道幅が狭く登り下りする歩行者がすれ違うので精一杯だ。少し登ると、左に木製階段が登っていく。その右に古い道がある。これは以前の登山道だ。この辺りは、数年ほど前に整備されたようだ。踊り場から左に河沿いに進む藍色水岸步道と、右に山を登っていく道が分岐する。右にとり石段道を登る。屋根が抜け落ちた廃屋が右にある。廃業して久しい碧潭樂園のころの建物だ。以前の登山道が交じあうが、長期整備されず危険なので入るなという警告板がある。それでも、他の山の踏跡然の道に比べたら、とっても状態がよいが。

とてもよい登山道


山腹を進んでいく道は、左から登ってくる藍色步道と踊り場で合流。また右に幸福広場への道と、左に藍色步道に分かれる。わずかな登りで幸福広場に来る。時刻は9時55分、登山口から約20分の道のりだ。そこそこ広い場所だが、BB弾銃で銃撃遊戯をやっている連中がいる。自分たちは大相な装備で、ヘルメットや厚着をしているが、他人にあたったらどうするのか。こんな近場でやるべきではないだろう。樹木の切れ目から新店溪が望める。人力渡船の船着場がある。その奥の方の山は、直潭山や大崎頭山だろう。

枕木の登山道
幸福広場から少し行くと、また少し広い場所に降り、その突き当りから土の登山道になる。枕木が埋められたよい道だ。枕木上にメスのクワガタ虫がいる。その少し上にも、同じく別のクワガタ虫が草のなかにいる。10時12分、和美山頂上に着いた。展望プラットフォームも造られている、広い頂上だ。高い樹木もあまりなく、展望がきく。北は中和の裏山から陽明山山系、南港山などがうっすらと見える。吊橋はみえないが、その少し先の第二高速道路のアーチ橋、そしてその周辺の高層住宅ビルが、河を挟んだ対岸にある。その右は獅頭山である。更に右を見ていくと、最近歩いた崎頭崙から六分山への尾根筋、その遠く先には二格山、また左に鵝角格山など木柵の山々がある。展望台から少し進み、奥の石がある場所で少し休憩する。

和美山山頂、北側を望む
東側を望む、木柵方面の山が望める
金龍路の保線路入口
20分ほど過ごした後、下り始める。初めは枕木の良い道が続く。おおぜいの登山団体とすれ違う。数分で、左に草の中に続く細い道を取る。すぐに右からの保線路に合流し、下り始める。保線路は、送電線鉄塔などのメンテのためにある道で、程度がよい。補助ロープのある急坂も現れるが、20分ほどの下りで10時57分に金龍路に降り立つ。左には、そのまま河に下る車道が分岐する。金龍路は右にゆっくり下る道だ。金龍路を10分ほど歩いてくる。右の山腹に狛狗がある石段が登っていく。灣潭山の登山口がある、大観音像への階段だ。石段を登ると、大きな白い観音像が立っている。その右奥の灌木のところから、土の登山道が始まる。

倒木のある急坂を登る
和美山とは違い、灣潭山は登山者しか来ない。道もいきなり補助ロープの直線的な急坂で始まる。倒木が急坂に現れ、枝の間を抜けて登る。和美山の道とは落差が大きい。急坂が終わり、竹林のなかなど草深い道を進む。登山口から10数分、11時27分、基石のうまっている頂上に着いた。樹木に囲まれ風景は望めない。山名プレートが、楠の大樹に打ち付けられている。蚊がとても多い。そのまま、下り始める。こちら側も急坂がしばらく続く。赤や白のテープ状補助ロープが付けられている。これらは、登山ボランティアによるものだ。ありがたい。

草原から浄水場を望む、背後は塗潭山
道端に残された100数十年前の墓石
草の密集する中を下る。新店溪が大きく曲り、その部分に浄水場がある。その向こうは塗潭山だ。尾根をたどると獅仔頭山も望める。巻き貝状の生物が道端にある。ひっくり返してみると、中は生きている。蝸牛の一種なのか。尾根道がゆっくりになると山道は終わりだ。12時7分に、金龍路に着く。ここは、先ほど和美山から降りてきた場所の斜め向かいだ。舗装路を渡し船の船着場へ向かって下る。下って程なく、道端にお墓がある。墓石には、清朝咸豐年代の文字がある。もう百数十年前のものだ。道が拡張されたので、このように道のすぐわきになってしまったのだろう。つづら折りを下りきり、灣潭路と合流、その少し先は岸辺だ。カヌー訓練の人達が陸に上がってきている。ちょうど渡し船が出るところで、乗り込む。今どき人力による渡し船は珍しい。観光目的でなく、通常の交通手段として利用されている。

渡し船に乗る
乗り込むとすぐに出発、三、四分で対岸に着く。晴天の秋の陽、昼間の穏やかな流れを周りの風景をみて渡るのは、とてもすがすがしい。台北からとても近いのに、このような場所があるのはとても貴重だ。対岸には、自転車サイクリング道がずっと市内から続いている。サイクリストも多い。川釣りを楽しんでいる人もいる。河沿いの道を進む。途中、岸の拡張工事が進行中だ。公園整備工事なのだろう。数分で、吊橋のたもと近くへ戻ってきた。堤防を上がり、おしゃれな川岸アーケードを抜けて、老街へと出る。時間は12時40分を回ったところ、老街の食べ物屋で食事を取り、その後帰途についた。

右岸の渡し船乗場から新店溪と対岸の山を望む、左端の山は灣潭山、右は和美山
行動時間3時間40分、歩行距離6.2kmだった。それでも累計で400mも登っているのは意外だ。天気に恵まれたこともあるが、和美山周辺はとてもよいハイキングコースだ。灣潭山の山道はクラス4だが、それ以外はクラス1~2、体力要求度も灣潭山へ行かなければクラス1~2。誰でも歩けるよいコースでお勧めだ。

GPSロケーションデータ付写真はここです。

2013年10月26日 苗栗縣南莊向天湖山 - 小百岳を登る

向天湖と背後の向天湖山(左)、光天高山(尾根上の右の突起)
苗栗県は、台北から南に100kmほど行ったところにある。海側まで丘が連なり、中央には高山も擁する山がちの土地である。台湾第二の高山雪山は、苗栗県と台中市の境界上にある。南荘は山に近い場所で2000mを越える山も多い。台湾原住民部族の一つである賽夏族の領域でもある。賽夏族には、矮靈祭という奉納祭がある。伝説によると河を挟んで対岸に小人族(矮人)が住んでいた。この二つの部族は、奉納祭を一緒に行っていたが、矮人は魔術を使い賽夏族の婦女に対し度々非礼をしていた。ただ、賽夏族は魔術をおそれ報復できないでいたが、ある年の奉納祭のあと策略をたて、賽夏族は三人を除いて矮人族を滅ぼした。しかし、その後農作物は不作が続き、これは矮人のたたりと恐れられ、それから矮霊祭が始まったとされる。

駐車場から反時計回りに三山を回遊する

歩行高度プロファイル
なぜ、長々矮霊祭のことを書いたか。それは、この向天湖山の麓にある向天湖で、この矮霊祭が執り行われ、筆者は十数年前に友人によばれて矮靈祭に参加したことがあるからだ。夜を徹して焚き火の周りを踊り、小米酒という粟で造ったお酒を飲んだ。その時は、山には登らなかったが長い時間を隔てて、向天湖への再訪となった。もうかなり前の事になるので、記憶ははっきりしていないが、実際に訪れると昔日の場面が思い出された。

南荘は山中の集落、その更に奥にある向天湖、北にある五指山も登ったことのある小百岳
山道へ向かう、木々の奥に向天湖山が控えている
向天湖山は、標高1225mで所謂中級山の中では低いほうだが、台湾小百岳の一つに数えられている名山である。西に光天高山、北に伸びる尾根先に三角湖山があり、今回はこの三山をめぐる歩きだ。台湾の山々は、一般的に標高超3000mの高山、それより低い1000mぐらいまでの中級山、そして大都市に近い低山の郊山というように分類されることが多い。筆者は、台北の郊山は多く登っているが、中級山はまだ少ない。アプローチが長く、一般交通機関利用ではなかなか登れない。今回は、登山グループの活動に参加し登った。人数が集まれば、バスや自動車で行くことができる。なお、新店にも向天湖山があるが、これとは別だ。

向天湖山と光天高山との分岐点(看板上の山名は誤記)
朝6時半、台北のベッドタウン板橋駅の前から出発する。高速道路を経由し、頭份ジャンクションから一般道へ、谷の間を南荘の集落へ向かう。ここは、昔日炭鉱で栄えた場所だが、観光スポットしてまた賑わっている。ちょうどマラソンが行われているようで、一休みしている時に選手が道を走って行く。さらに山へ向かい、大きく登って9時に終點の向天湖駐車場に着いた。標高はすでに750mを越える。今回は、全員で40名と大人数の活動である。

身支度後出発する。向天湖は、遊歩道を歩いた先にある。観光地なので、道の両わきには食べ物屋など多くの店がある。商店を抜けると、湖が広がる。快晴の空の下、背後にこれから登る光天高山から向天湖山の稜線が伸びている。湖のほとりにはススキが穂を出し始めている。苦茶の林を抜ける。白い花が多く咲いている。その先の分岐を左に曲り、道は山に向け登り始める。9時43分、駐車場から約30分ほどで舗装路から山道の分岐に着く。山道を進んでまもなく、向天湖山から直接下ってくる道の分岐に着く。ここは右にとり、光天高山へと向かう。

崩れて岩肌が露出した場所を通過する
杉林の中を進むメンバー
この山塊は、山肌はほとんどすべて杉の木で覆われている。全山が植林されている。スクっと伸びる杉林の中を行くのは、日本の山を登っているかのようだ。ただ、下草が多くその種類も違うので、また別の様相ではある。大きく山崩れが起こり、岩肌が大きく露出している部分を過ぎる。山腹をゆっくり登っていく道は、ところどころに丸太の橋がかかっている。滑りやすいので注意深く越す。登山道入口から約40分ほど登ると、土砂で道が流され岩が露出している涸れ沢がある。補助ロープを使用してこれを越す。人数が多いので、通りすぎるのには時間を要する。その先、山腹を登る道は坂が急になり、また補助ロープの岩登りがある。11時20分に、光天高山と向天湖山との稜線鞍部に着く。ここから右に進み、少しの登りで11時28分光天高山(標高1123m)に到着した。引き続き、後部を歩くメンバーも到着する。

光天高山頂上から北側を望む、向天湖、その背後は三角湖山とその後ろの鵝公髻山
向天湖が見える
東側は向天湖山への尾根、一番奥が向天湖山
向天湖山への杉林尾根道
40名からのメンバーで頂上は満員だ。北側が樹木の間より望める。下方に、先ほどの出発点向天湖、そのすぐ上には今日の最終目的地、三角湖山が、その奥には鵝公髻山(標高1572m)の大きな山容が控えている。鵝公髻山は賽夏族の聖山として崇められていたそうだ。頭には雲をかぶり、威風堂々とした姿である。小百岳の一つでもある。東側も樹木がきれて景色が望める。こちらは尾根を伝っていくと、向天湖山がどっしり座っている。その右奥のほうには、三角ピークが頭を出している。標高2220mの加里山だろう。これも小百岳の一つだ。

向天湖山頂上と三角点




11時50分過ぎに、次の目標向天湖山へ進む。一度鞍部に降り、そこから比較的緩い尾根を登っていく。山のほとんどが杉林の道には、杉の枯葉が絨毯のように落ちている。ワラビの下草も生えている。12時6分、右に加里山方面への分岐を分け左に登る。12時25分、三角湖方向への分岐点に着く。向天湖山頂上は、そのすぐ先だ。頂上(標高1225m)は、山という字がほられた三角点基石が埋められている。そこそこ広い頂上は、四方すべて樹木に覆われ展望はない。全員が登ってきたあと、ここで昼食となる。この慢集団の昼食は、時間に余裕がある場合は、スープや麺などをその場で調理し、皆で分けて食べる。メンバーの中には、ステーキを持参しそこで焼いて皆に分ける人もいる。山頂でのステーキ、皆思わずニッコリである。

三角湖山への分岐
1時間以上の休憩を終え、13時半に出発する。降り始めまもなく、先ほど登ってきた尾根道を左に分け、右に進んでいく。中腹を下る形で進む。頂上から約30分ほどで、向天湖へ下る道を分岐する。こちらの方が多く歩かれているようだ。右に少し登る道が、三角湖山への道だ。尾根を少し進んだあと、大きく下り始める。杉林の中の急坂が終わると、竹林の中を進む。その後、また杉林の中を登り返す。ここからは、けっこう長い尾根道が続き、途中に幾つかの小ピークを乗り越えていく。右側はザクッと切れた断崖で、木々の間から500mほど下に流れる河が望める。遭難救助用の連絡位置を示す番号板が、同じ間隔で幹に取り付けられている。分岐から12番で始まり、歩くにつれ少なくなっていく。15時、8番の番号があるところで、一休みする。ここはちょうど木々が少なく、谷間や歩いてきた尾根の方向が望める。尾根道の約半分の位置だ。

尾根道の右側は絶壁、500m下に河が見える
向天山から三角湖山へは、基本は下り坂である。もちろん途中のピークはあるが、概ね緩い下り坂が基調だ。5番板を過ぎ、山腹を下って行くとまた尾根が始まり、樹木のない開けた場所にポッカリ出た。時間は16時をまわり、夕日の光線だ。南方向を望むと、朝歩いた光天高山から向天湖山への稜線がシルエットになっている。すぐ下は向天湖だ。ここは杉が刈られて、若木が植えられている。16時16分、下り道との分岐に来る。三角湖山は、尾根の突端にある。一度下り、登り返すと頂上だ。標高855mの頂上には、三角点基石がある。それほど広い頂上ではないので、先に到着したメンバーと入れ替えで記念写真などを写す。

樹木のない斜面、遠くに向天湖山のシルエットが夕日に浮かぶ、下方には向天湖
夕日の中を若い杉林の尾根道を進む
分岐にもどり、まだ若い杉林の中を直線的にいく土の急坂道を下る。濡れていないので、助かる。濡れていれば、そうとう滑りやすい斜面だ。20分ほどで、下りきり沢に下りる。沢を越え、反対側に登り産業道路に出る。左に進む。振り返れば、先ほど歩いた尾根道が左上の方に見える。道路はまもなく、朝の商店ちかくに来る。ここには遊楽客が来ている。17時15分、駐車場に戻ってきた。秋の日暮れは早い。バスに乗り坂道を下るころには、すっかり日が暮れた。南荘にある歴史50年の老舗料理店で客家料理を味わい、台北への帰途に着いた。

産業道路から三角湖山(左端のピーク)方向を望む、
歩行距離は約8.5km、活動時間は約8時間である。休憩が長いので、実働は6時間ぐらいか。累計の登攀高度は666mで、それほどの登りがあるわけでなく、また距離も長いわけではない。人数が多く、また体力的にもばらつきがあるので、やはりそれほど速くない。台湾の中級山は、それこそ数えきれないほど多い。小百岳も、これで23座登ったことになるが、まだまだ四分の三が未踏だ。

2013-10-24

2103年10月23日 木柵貓空三玄宮山 - 新店崎頭崙縱走

貓空纜車(指南宮駅と猫空駅の間、正面は貓空圓山、左奥に二格山)
台北市木柵区と新北市石碇区にまたがる二格山を中心に、筆架連山が東側に、猫空尖から崎頭崙への連山が西側に連なっている。西側の連山は、猫空尖を越え四面頭山への途中から北側に十六分山、三玄宮山へ稜線が分かれる。二格山からこの稜線分岐までは歩いているが、その先新店へ下っていく四面頭山、六分山そして崎頭崙は未踏だった。いつか歩くつもりであった。今回、猫空へ行く用事があるので、ついでに歩くことにした。

北側の猫空駅から歩き、尾根を縦走して新店中生橋へ
出発点が高い歩行高度プロファイル
木柵、新店の山々と今までの歩行軌跡
正面に猴山岳前峰が望める
秋が深まり、気温が低くなってきている。東北風という、北方の高気圧から吹き出す風は、台湾北部で雨を降らせることが多い。前晩からの雨が上がってきて、晴れ間がのぞきはじめた。山道は濡れているだろうが、山で雨にふられることはないようだ。普段より遅い、10時過ぎに家を出る。MRT文湖線終點の動物園駅で下車、少し歩いてケーブルカー駅へ向かう。実のところ、猫空は数回行っているが、いつも歩いて登っているので、ケーブルカーに乗るのは今回初めてだ。平日だが、そこそこ乗客が行列をなして待っている。猫の眼水晶カーという、床が透明ガラスのゴンドラが、数台に一台の割で運転している。通常ゴンドラとは別に待つが、こちらの方は行列が長い。

ケーブルカー上から見る木柵の街
数分待ちで、普通ゴンドラに乗る。空いていることもあるだろうが、定員数まで押し込むのではなく、同行者グループごとにゴンドラに乗るので、同行者がいない場合は一人で専有することもある。筆者も一人だが、すぐ後ろにはケーブルカー整備関係者が待っていたので、誘い二人で乗車する。動物園駅を出発して、急斜面を登り切ると前面に猴山岳前峰が見え始める。動物園内駅を過ぎるころ振り返ると、南港山の向こうに台北101ビルが頭を出している。ケーブルカーは方向を換え、猴山岳前峰の前を進む。木柵の街やその先に新店の街が望める。台北市中心方向も、少しぼやけているが望める。同乗者は、仕事で何回も乗っているそうだが、ここが猫空ケーブルカーで一番景色がよいセクションとのこと。

猫空駅の対面にある歩道入口と猫の石像
指南宮駅を過ぎると、最終駅猫空が谷の対岸に望める。左側にあとで上る三玄宮山が控えている。一度下り登り返し、11時24分に猫空駅に到着した。約30分の乗車である。MRT動物園駅から、棕15番バスでもやってこれるが、ケーブルカーでは別の景色を鑑賞することができるので、これはこれで愉快だ。支度を済ませ、駅前の指南路三段40巷の道を渡り、石段を登り始める。ここは以前下りで歩いた道だ。少し登ると、右に樟湖歩道が分岐する。その先には展望台がある。足もとには茶畑が広がる。道は山腹に取り付き、登っていく。約20分ほどで、あずま屋がある鞍部に着く。ここからは、右に鵝角格山への道が分岐する。下れば沢沿いに銀河洞へ続く。左へ土の道を登り、十六分山への分岐から左へ少し登ってあずま屋に11時54分に着く。休憩し、食事をとる。

石畳歩道から見る三玄宮山
石階段を峠に向けて登る
苔の石段山道を十六分山へ登る
雨は降っていないが、残念ながら遠くまでは見えない。先ほど乗ったケーブルカーが谷間に動いている。分岐に戻り、十六分山を目指す。一度下ったあと、また登り返す。道にはところどころ苔に覆われた石段がある。ここは昔から歩かれている古道の一部なのだろう。約15分ほどで、十六分山への分岐が現れる。去年三月に歩いた時は、そのまま通り過ぎたが今日は頂上へ往復する。杉林の山腹を登ることほんの数分、十六分山頂上(標高514m)に着いた。周囲は樹木で展望はない。まだ新しい四等三角点基石が埋まっている。頂上から引き続き下る道があるが、方向が異なるので、登ってきた道を下る。

十六分山山頂
猫空尖と四面頭山への分岐点
雑草に埋まる茶畑
十六分山分岐の少し先は、猫空尖と四面頭山への分岐だ。朽ちた古い道標が倒れている。真ん中に大きな石がある。腰掛けにちょうどよい。左にとれば、猫空尖を経て二格山方面へ行く。右にとり、四面頭山へ登り始める。シダの下草が生える道を登る。開けた場所に出る。草原の下を巻いていくと、茶畑であった。雑草が茂り茶の木が見えなかったのだ。しかしこの茶畑は、ほとんど手入れはされていなように見える。12時38分、基石の埋まっている四面頭山(標高520m)に着く。ここも竹や樹木に囲まれて、展望はない。下りは、登りに比べて急で長い。水がたまっているコンクリ製池のわきを過ぎる。もともとは灌漑用に造られたのだろうか。補助ロープのある急坂を下り、13時5分産業道路に下り立つ。産業道路を少し進むと、舗装路になり切り通しの峠に着く。

峠の肆方巖
肆方巖のわきで見かけた岩に生える奇妙な植物
峠は屋根に覆われた肆方巖という廟である。壁の岩が彫り込まれ、祭壇になっている。祭壇には電灯が灯り、神像が鎮座している。ここは日ごろ参拝されているようだ。その少し先にも、左に同じく岩に祭壇が彫り込まれている。産業道路を下れば、北宜公路へ続く。六分山へは、右に登っていく階段を進む。大きなお墓までは良い道が続く。右に登っていく道とお墓の前を進む道がある。標識リボンはなく、墓の前の道を進んで見る。その先、右に山を登っていく道がある。入口にはリボンがあり、これが六分山山道のようだ。登って行くと、右から道が合流する。これは先ほどお墓のところで右に登っていく道のようで、どちらを通ってもよかったようだ。

道脇の根節蘭の黄色い花
稜線を行く山道は、四面頭山の道と比べると倒木などが多い。根節蘭の黄色い花が、ところどころに二、三株まとまって咲いている。高度が上がってきて、まばらな樹木の間から対岸の鵝角格山から三玄宮山の稜線が望める。13時27分に、六分山頂上(標高463m)に到着した。幹に打ち付けられた山名プレートは、文字が薄れてほとんど判読できない。南側は樹木が茂っているが、北側は開けて展望がきく。待老坑山から鵝角格山の稜線が、銀河洞の谷を挟んで望める。鵝角格山のすぐ左奥には、台北101ビルがうっすらと立っているのが判る。猫空駅から歩き始めて3.6km、今日の行程の中間点だ。六分山から先は基本下り道だが、そこそこ長いので少し休憩する。

六分山頂上
六分山から北側が展望できる、正面中央は待老坑山、右は鵝角格山
六分山の急坂を下る
銀河洞と崎頭崙の分岐
六分山からは、急な下り坂が始まる。補助ロープがない場所でも、かなり危ないところもある。慎重に下ること十数分、銀河洞との分岐にたどり着く。左にとり、崎頭崙へ向かう。道は、いままでに増して草深くなる。草に覆われて踏跡が見えないところ、倒木で踏跡が途切れているところなど、次々に現れる。茶花が道に落ちているところに、しばしば行き当たる。分岐から20分ほど進む。稜線をやって来た道は、ここで方向を換えて下る。その先今度は大きく回りこんで、また尾根に向かう。なぜか、道は大きく迂回している。尾根上をそのまま行くには、なにか障害物でもあるのだろうか。その後は、ずっと尾根上の道を進んでいく。

崎頭崙への尾根道は倒木が多い
踏跡が草に埋もれている
茶花が道に落ちている
岩の現れるところ、倒木が二本重なりあい、それに草がからみ合って道が途切れて見える場所など、変化が尽きない。竹林をすぎ、14時50分に保線路にでる。右にまがって保線路を下れば、銀河洞へいく。左に折れ保線路を進み、二、三分登る。三角点基石のある崎頭崙(標高231m)に着いた。今日の最後のピークだ。尾根上の道は、そこそこ長く、六分山から1時間以上かかった。ここも林の中の頂上、展望はない。誰かが残した傘が、枝に掛けてある。

二本の倒木が重なり草に埋もれて、道がわかりにくい
崎頭崙山頂
今日の歩きは、のこりわずかだ。尾根上を直線的に下っていく。前日の雨で、赤土の道は滑りやすい。5,6分ほど下ってくると、道は尾根を外れ山腹を進む。こちらも急な下り坂が続く。長い赤土の急坂には、長い補助ロープがある。ジメジメして暗い道を下る。崎頭崙の尾根上からも道行く車やバイクの音が聞こえていたが、15時19分に北宜公路の登山口に下り立つ。台北方向に向けて公路を下る。交通量はそこそこある。公路はかなり先まで行って大きくカーブする。けっこう距離がある。手持ちの地図を見ると、直線的にバス停のある中生橋まで行ける道がある。先ほど、左に見えたコンクリ壁の切り目の部分が入口のようだ。そこで、公路を登り返し入口まで行く。道行く車から投げ捨てられたと思えるゴミがいっぱいあるが、コンクリの階段が下っている。その先には標識リボンもある。この道が近道だ。下りきり、国史館へと続く道に出た後、登り返すと中生橋のすぐ手前で北宜公路へ出た。道を対面のバス停に渡る。15時38分、今日の歩きはこれで終わりだ。ほどなくやって来た650番バスで、MRT新店駅へ向かった。

北宜公路わきの登山口、標識リボンが枝に掛かっている
中生橋バス停、650番バスがやって来た
歩行距離7.8km、所要時間4時間5分(休憩込み)であった。登攀累計は405mである。出発点の猫空駅がすでに標高約300mあるので、登りが少ない歩きだ。今回の歩きで、東は石碇老街から西は新店中生橋まで、連山を端から端まで歩いたことになる。これを一気に縦走することは、かなり大変だろう。今日のルートの山道はクラス1~4とかなり落差が大きい。猫空駅近くは石畳の立派な道だが、後半の崎頭崙への尾根道は、踏跡がかすかな部分もある。体力的には、出発点が高いこともあり、クラス3である。体力はそれほど要求されない。

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